- オイラー座屈って結局どういう現象なの?
- 公式 π²EI/Lk² の記号が何を指すか分からない
- なぜ長さの2乗に反比例するの?
- なぜ座屈は圧縮強度と関係ないの?
- 座屈長さLkと実際の柱の長さLは違うの?
- 端末条件係数の値が覚えられない
- 細長比λって何?どう計算する?
- 限界細長比100って何の境目?
- オイラー式が使える適用範囲はどこまで?
- 導出の微分方程式が難しすぎる
上記の様な悩みを解決します。
オイラー座屈は、細長い柱が圧縮力を受けて横に「ぐにゃ」と飛び出す現象で、その時の荷重がオイラー座屈荷重Pcr=π²EI/Lk²で計算できます。構造力学の中でも理屈が抽象的で、公式の記号や細長比、限界細長比、適用範囲がごちゃ混ぜになって苦手意識を持つ人が多い単元です。今回は座屈現象と公式の意味を押さえた上で、端末条件・細長比・座屈応力度・適用範囲(オイラー式が使える範囲)・導出、さらに現場で座屈がどう効くかと防ぎ方まで、数式が苦手な人でも一歩ずつ追える粒度で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
オイラー座屈とは?
オイラー座屈とは、結論「細長い柱が圧縮力を受けて、材料が壊れるより前に横へ大きくたわんで急激に耐力を失う現象」のことです。
プラスチックの定規を両端から手で押すと、ある荷重を超えた瞬間に「ぐにゃっ」と横へ飛び出しますよね。あれがまさに座屈です。注目すべきは、定規は折れて(圧縮で潰れて)壊れたわけではなく、横に変形して使い物にならなくなった点です。つまり座屈は「材料の圧縮強度に達する前」に起きる、形状に起因する不安定現象なんですね。スイスの数学者オイラーがこの座屈荷重を理論的に導いたことから、弾性範囲での柱の座屈を「オイラー座屈」と呼びます。
座屈そのものの種類(曲げ座屈・局部座屈・横座屈など)を整理したい場合は、こちらが参考になります。

座屈は圧縮力を受ける部材で起きる現象なので、圧縮力の基礎も合わせて押さえておくと理解が進みます。

僕の感覚だと、オイラー座屈でつまずく一番の原因は「強度(潰れる)」と「座屈(飛び出す)」を同じ壊れ方だと思ってしまうことです。座屈は材料が強いか弱いかの話ではなく、細長い形のせいで不安定になる話、とまず割り切ると、後の公式の理解がぐっと楽になります。
オイラー座屈荷重の公式と記号の意味
オイラー座屈荷重の公式は、結論として次の式で表されます。
Pcr = π²EI / Lk²
各記号の意味は次のとおりです。
- Pcr:座屈荷重(座屈耐力)。単位はNまたはkN
- E:ヤング係数(材料の硬さ。鋼は大きく、木は小さい)
- I:断面二次モーメント(断面の曲げにくさ)
- Lk:座屈長さ(端末条件で決まる実質的な長さ)
この公式は、丸暗記する前に「何が座屈荷重を大きくするか」を読み取れると一気に腹落ちします。分子にE(材料の硬さ)とI(断面の曲げにくさ)があるので、硬い材料・太い断面ほど座屈に強い。分母にLk²があるので、長い柱ほど急激に弱くなる、と読めます。曲げにくさを表すEIは曲げ剛性そのもので、座屈が「曲げ変形に対する抵抗」の勝負であることを示しています。
ヤング係数や断面二次モーメントは座屈荷重を左右する主役なので、それぞれこちらで確認しておくと公式の意味がより深く理解できます。


ここで重要なのが、公式に圧縮強度(材料が潰れる強さ)が一切出てこないことです。座屈荷重は材質E・断面性能I・長さLk・端末条件だけで決まり、圧縮強度とは無関係です。だから「強い鋼を使えば座屈しない」わけではなく、細長ければ高強度の鋼でも座屈します。逆に座屈を防ぐには、太くする(Iを大きく)か、短くする(Lkを小さく)か、横から拘束する、という発想になります。
僕の整理では、この公式は「座屈は曲げ剛性EIと長さLkの綱引き」と捉えるのが一番わかりやすいです。EIで踏ん張り、Lk²で不利になる、という構図さえ掴めば、記号の意味は自然と頭に残ります。
端末条件(境界条件)と座屈長さ
座屈長さLkは、柱の支え方(端末条件・境界条件)によって変わり、Lk=α×L(Lは実際の柱の長さ)で求めます。同じ長さの柱でも、両端の支え方が違えば座屈のしやすさがまったく変わる、というのがこの単元の肝です。
代表的な4つの端末条件と座屈長さ係数αをまとめると次のようになります。
| 端末条件 | 座屈長さ係数α | 座屈長さLk | 相対的な強さ |
|---|---|---|---|
| 両端固定 | 0.5 | 0.5L | 最も座屈しにくい |
| 両端ピン | 1.0 | 1.0L | 基準 |
| 片端固定・片端ピン | 0.7 | 0.7L | やや強い |
| 片端固定・片端自由(片持ち) | 2.0 | 2.0L | 最も座屈しやすい |
座屈長さ係数αが小さいほどLkが短くなり、公式の分母Lk²が小さくなるので座屈荷重Pcrは大きく(座屈しにくく)なります。両端をがっちり固定した柱は、同じ長さでも片持ち柱の16倍(αが0.5と2.0で、(2.0/0.5)²=16倍)座屈荷重が大きくなる計算です。支え方ひとつでこれだけ差が出るのが面白いところですね。
覚え方としては、自由端があるほど弱い(片持ちが最弱)、固定が増えるほど強い(両端固定が最強)と、拘束の強さと座屈の強さを対応させて覚えると取り違えにくくなります。柱頭・柱脚の固定度は座屈長さに直結するので、こちらも参考になります。

実務だと、α=0.5(両端固定)や2.0(片持ち)といった代表値をまず押さえ、片端ピンの0.7を追加で覚えるのが効率的です。試験でも頻出なので、この4パターンは表ごと暗記しておく価値があります。
細長比と座屈応力度
細長比λは、柱がどれだけ「細長いか」を数値化した指標で、λ=Lk/i(iは断面二次半径)で求めます。座屈のしやすさは、突き詰めるとこの細長比λひとつでほぼ決まります。
断面二次半径iは、i=√(I/A)(Iは断面二次モーメント、Aは断面積)で計算する、断面の曲げにくさを長さの単位で表した値です。細長比λが大きいほど細長く座屈しやすい柱、小さいほど太く短く座屈しにくい柱、という関係になります。断面二次半径の詳しい使い方はこちらが参考になります。

オイラー座屈荷重を断面積Aで割った「座屈応力度σcr」は、細長比λだけのきれいな式になります。
σcr = Pcr / A = π²E / λ²
この式の重要なポイントは、変数が細長比λだけになっていることです。座屈応力度はλの2乗に反比例するので、細長比が大きい(細長い)ほど座屈応力度は小さく、わずかな圧縮応力で座屈してしまいます。圧縮応力そのものの基礎はこちらで確認できます。

個人的には、細長比λは「座屈の通信簿」のような指標だと捉えています。Eは材料で決まり、あとはλさえ分かれば座屈応力度が一発で出る。だから実務でも試験でも、まず細長比を出すクセをつけると、座屈まわりの計算が驚くほどシンプルになります。
限界細長比とオイラー座屈の適用範囲
オイラー座屈の式には適用範囲があり、限界細長比を境にして「使える範囲」と「使えない範囲」が分かれます。ここを知らずにオイラー式を短い柱に当てはめると、座屈荷重を大きく見積もりすぎる危険があるので、適用範囲の理解は実務上とても重要です。
限界細長比(鋼材でおおむね100前後。鋼種で変わり、SS400相当では120程度)を境に、柱は長さで次の3つに分かれます。
- 長柱(限界細長比より細長い):材料が弾性範囲のまま座屈する弾性座屈。オイラーの式が有効
- 中間柱(限界細長比より短い):座屈前に材料が一部降伏する非弾性座屈。オイラー式は使えない
- 短柱(きわめて短い):座屈せず、圧縮で降伏・破壊する
つまりオイラーの公式は「細長い長柱(弾性座屈の領域)」でのみ正しく、限界細長比より短い柱には適用できません。中間柱の非弾性座屈は、建築・土木では鋼構造設計規準の許容圧縮応力度式(ランキン式系の評価)で、機械分野ではジョンソン式などで扱うのが一般的です。
| 区分 | 細長比 | 壊れ方 | 使う式 |
|---|---|---|---|
| 長柱(弾性座屈) | 限界細長比より大 | 弾性のまま座屈 | オイラーの式 |
| 中間柱(非弾性座屈) | 限界細長比より小 | 一部降伏してから座屈 | 許容圧縮応力度式(建築)/ジョンソン式(機械) |
| 短柱 | きわめて小さい | 圧縮で降伏・破壊 | 圧縮強度で評価 |
実務では、わざわざオイラーの式を手計算することはあまりなく、部材の細長比を求めて、それに見合った許容圧縮応力度を早見表から選ぶ流れが一般的です。許容応力度計算の全体像はこちらが参考になります。

現場目線で言えば、この「適用範囲」を押さえているかどうかが、座屈をきちんと理解している人とただ公式を覚えた人の分かれ目です。オイラー式は万能ではなく細長い柱専用、という前提を忘れないようにしましょう。
オイラー座屈荷重の導出
オイラー座屈荷重の公式は、座屈してたわんだ柱の弾性曲線式(微分方程式)を解くことで導けます。数式が苦手な人向けに、流れだけでも追えるよう要点を整理します。
導出の大まかな流れは次のとおりです。
- 圧縮荷重Pでたわんだ柱を考え、ある位置のたわみyによる曲げモーメントM=Pyを立てる
- 弾性曲線式 EI×(d²y/dx²)=−M=−Py に代入し、微分方程式をつくる
- この微分方程式の一般解を三角関数の形で求める
- 両端の境界条件(支点でたわみ=0)を代入して定数を決める
- 意味のある解の条件から、Pcr=π²EI/L²(両端ピンの場合)が導かれる
ポイントは、微分方程式の解が成り立つ条件から自然に「π²EI/L²」という形が出てくることです。πが式に登場するのは、たわみの形が正弦波(sinカーブ)になるためで、座屈した柱が滑らかな弧を描くことと対応しています。両端ピン以外(両端固定・片持ちなど)では境界条件が変わるため、前章の座屈長さLkを使ってPcr=π²EI/Lk²と一般化します。
試験対策として導出や計算問題を練習したい場合は、問題集の選び方をこちらでまとめています。

正直なところ、導出の微分方程式を完全に解けるようになる必要は、実務ではそれほど高くありません。ただ「弾性曲線式から境界条件を入れて解くとπ²EI/Lk²が出る」という大筋を一度追っておくと、公式が天下りでなく腹落ちするので、最低でも流れは目で追っておくのがおすすめです。
現場での座屈と防ぎ方・よくある質問
オイラー座屈は試験のためだけの理論ではなく、現場の安全に直結する話です。最後に、現場での座屈と防ぎ方を踏まえつつ、よくある疑問をQ&Aで整理します。
現場で座屈が問題になるのは、細長い圧縮材です。鉄骨のブレース(筋かい)、仮設の支保工やサポート、建方途中で自立している細長い柱・梁などが代表例で、いずれも「細長い+圧縮」という座屈の条件にぴたりと当てはまります。座屈を防ぐ基本は、太くする・短くする・横から拘束する(横補剛)の3つです。圧縮材として使うブレースの考え方はこちらが参考になります。

Q. 座屈は圧縮強度を上げれば防げますか?
防げません。オイラー座屈荷重は材質E・断面性能I・長さLk・端末条件で決まり、圧縮強度とは無関係です。座屈を防ぐには、断面を太く(Iを大きく)する、長さLkを短くする、横補剛で拘束する、といった対策が有効です。
Q. 座屈長さと実際の柱の長さは違うのですか?
違います。座屈長さLkは端末条件で決まる実質的な長さで、Lk=α×Lで求めます。両端固定ならα=0.5、両端ピンならα=1.0、片持ちならα=2.0です。同じ長さでも支え方で座屈長さが変わります。
Q. 実務でオイラーの式を手計算しますか?
ほとんどしません。実務では部材の細長比を求め、それに見合った許容圧縮応力度を早見表から選ぶのが一般的です。ただし「細長比が大きいほど座屈しやすい」という公式の意味は理解しておく必要があります。
Q. 局部座屈とオイラー座屈は違うものですか?
別物です。オイラー座屈は柱全体が横に飛び出す全体座屈、局部座屈は板要素が部分的に波打つ座屈で、幅厚比で評価します。詳しくはこちらで整理しています。

オイラー座屈に関する情報まとめ
- オイラー座屈とは:細長い柱が圧縮で横に飛び出し急激に耐力を失う現象。圧縮強度に達する前に起きる
- 座屈荷重の公式:Pcr=π²EI/Lk²。E(材料の硬さ)・I(断面の曲げにくさ)が大きいほど強く、Lk²が大きいほど弱い
- 端末条件と座屈長さ:Lk=α×L。両端固定0.5/両端ピン1.0/片端ピン0.7/片持ち2.0
- 細長比と座屈応力度:λ=Lk/i、σcr=π²E/λ²。座屈のしやすさは細長比でほぼ決まる
- 適用範囲:限界細長比(鋼で約100前後、SS400相当で約120)より細長い長柱の弾性座屈でのみオイラー式が有効。中間柱は許容圧縮応力度式(機械分野はジョンソン式)、短柱は圧縮で評価
- 導出:弾性曲線式に境界条件を入れて解くとπ²EI/Lk²が出る
- 防ぎ方:太く・短く・横補剛。圧縮強度を上げても座屈は防げない
以上がオイラー座屈に関する情報のまとめです。
オイラー座屈は、公式の記号を「曲げ剛性EIと長さLkの綱引き」と捉え、細長比λで座屈のしやすさが決まり、限界細長比より長い柱でのみ式が有効、という3点を押さえれば、試験でも実務でも迷わなくなります。座屈・細長比・断面二次半径・許容応力度といった隣接論点も合わせて確認しておくと、柱の設計まわりの理解が一段深まりますよ。




