- 層間変形角ってなに?
- 計算方法が知りたい
- 基準値ってどれくらい?
- 一次設計と二次設計で違うの?
- 基準値を超えたら何が問題?
- 現場で気にすべきポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
層間変形角は建築物の耐震設計で欠かせない指標のひとつで、建築基準法にも具体的な数値が明記されています。施工管理として構造図面を読む際にも出てくる用語ですので、基礎知識を抑えておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
層間変形角とは?
層間変形角とは、結論「地震時に建物の各階がどれくらい歪むかを示す指標のこと」です。
具体的には、ある階に生じた「層間変位」を、その階の「階高」で割った値のことで、建物の耐震性を評価するときに使う基本の指標です。
計算式
層間変形角 = 層間変位 ÷ 階高
単位はラジアン(無次元)ですが、実務上は「1/200」「1/120」のような分数の形で表記されるのがほとんどです。建築基準法にも分数表記で書かれています。
ざっくり言えば「地震でその階がどれくらい傾くか」を分数で表しただけの指標ですね。
層間変形角と層間変位の違い
名前が似ているので混同しやすいのが「層間変位」と「層間変形角」の違いです。この2つはセットで覚えておきましょう。
- 層間変位: 上下階の水平方向のズレの絶対値(単位 mm)
- 層間変形角: 層間変位を階高で割った比率(無次元)
例えば階高3,500mmの建物で、地震時の層間変位が17.5mmだったとすると、
- 層間変位 = 17.5mm
- 層間変形角 = 17.5 ÷ 3,500 = 1/200
となります。「変位の絶対値そのもの」が層間変位、「階の傾き具合(比率)」が層間変形角という訳です。
変位は絶対値、変形角は相対値(割合)って感じで覚えると分かりやすいですね。
層間変形角の計算方法
実務上の計算手順は、ざっくり以下の流れになります。
- 想定する地震力を設定する(一次設計なら稀に発生する地震 = 標準せん断力係数 Co=0.2)
- その地震力を建物に作用させて各階の水平変位を算出する
- 上下階の変位差を取って層間変位を求める
- 層間変位を階高で割って層間変形角を出す
構造設計者はこの計算を手でやることはほぼなく、一貫構造計算プログラム(SS7、Super Build/SS3、BUS、HOUSE-ST1など)で自動出力させるのが通常です。
施工管理としても計算そのものをやる訳ではないので、「意味」と「基準値」さえ抑えておけば構造図は読めるようになります。
計算は構造設計者の仕事なので、僕らは用語の意味と数値感覚をしっかり抑えておけばOKですね。
層間変形角の基準値(建築基準法の規定)
層間変形角の基準値は建築基準法施行令第82条の2で、以下のように規定されています。
| 条件 | 基準値 |
| 原則 | 1/200 以下 |
| 非構造部材が変形に追従できる場合 | 1/120 以下まで緩和可 |
非構造部材(内外装、間仕切り、サッシなど)が1/120の変形に追従できることを確認できれば、基準値を1/120まで緩和できます。逆に言うと、特殊な設計でない限り、基本は「1/200以下」でまとめるのが現実的です。
なお、一貫構造計算プログラムの出力では、各階の層間変形角の一覧が出てくるので、構造図や構造計算書を開いたときは「1/200を超えている階がないか」を眺める癖をつけておくと、建物の特性を把握しやすくなります。
層間変形角と一次設計・二次設計
建築基準法の耐震設計は大きく「一次設計」と「二次設計」に分かれていて、層間変形角もステージによって意味合いが少し変わってきます。
一次設計(許容応力度計算)
- 稀に発生する地震(震度5弱程度)で建物が「損傷しないこと」を確認する
- 層間変形角の基準: 1/200以下(または1/120以下)
二次設計(保有水平耐力計算など)
- 極めて稀に発生する地震(震度6強〜7)で建物が「倒壊しないこと」を確認する
- ここでも層間変形角を使うが、塑性率や靭性との組合せで耐震性能を評価する
つまり同じ「層間変形角」という用語でも、一次設計では「使用上の安全」、二次設計では「倒壊回避の安全」という目的の違いがある訳です。
要するに、小さい地震で壊れない+大きい地震で潰れない、両方を保証するための指標ってことですね。
層間変形角が基準値を超えたらどうなる?
層間変形角が基準値を超えると、実務上は以下の問題が発生します。
- 構造計算書が適合判定で引っかかる(確認申請が下りない)
- 地震時に非構造部材(外壁、間仕切り、ガラス)が損傷しやすくなる
- 設備配管や電気配線、ダクト類の破損リスクが高まる
- 建物の使用限界が下がり、災害後の継続使用が難しくなる
そのため構造設計者は、基準値ギリギリで攻めず、ある程度の余裕を持たせて設計するのが普通です。
ギリギリで設計すると、ちょっとした荷重変更や仕様追加ですぐ基準オーバーになっちゃいますからね。
層間変形角を抑える方法
基準値をクリアするために、構造設計では以下の工夫をします。
剛性を高める方法
- 柱・梁の断面を大きくする
- 耐震壁を配置する
- ブレース(筋交い)を入れる(S造の場合)
- 制振装置を設置する
- 免震装置を設置する
施工管理として意識すべきポイント
- 耐震壁のコンクリート打設は品質に特に注意
- 柱・梁の配筋ミスは構造性能に直結するので配筋検査は念入りに
- ブレースの取付角度・ボルトの締付けトルクは図面通りに
- 設計変更が入ったら構造計算への影響を必ず確認する
やたら柱が太い建物、壁が多い建物、ブレースだらけの鉄骨造、このあたりの設計理由にだいたい層間変形角が絡んでます。
ちなみにブレースについては別記事で詳しく解説しています。

層間変形角に関する情報まとめ
- 層間変形角とは: 地震時に建物の各階がどれくらい歪むかを示す指標
- 計算式: 層間変位 ÷ 階高
- 基準値: 原則1/200以下(非構造部材が追従可能なら1/120以下)
- 一次設計と二次設計では、同じ指標でも目的(損傷防止/倒壊防止)が違う
- 基準値超過は確認申請が下りない・非構造部材が壊れる・設備配管が損傷するリスク
- 抑える方法: 柱梁断面UP、耐震壁、ブレース、制振、免震
以上が層間変形角に関する情報のまとめです。
耐震設計の基礎用語ですが、施工管理としても「なぜこの柱がこんなに太いのか」「なぜここに壁が必要なのか」を理解する上で欠かせない概念です。構造図を読む精度が一段上がりますので、抑えておきましょう。
下に分かりやすい関連記事のリンクを貼っておくので、よかったら読んでみて下さい。それでは!




