労働安全衛生規則の条番号|518条・563条は何の条かを一覧で整理

  • 安衛則518条って何の条?
  • 安衛法と安衛則の違いは?
  • 518・519・563条の違いは?

上記の様な悩みを解決します。

パトロールの指摘に「安衛則第518条」とあっても、何が書かれた条なのか分からず、検索しても人事向けの記事ばかり出てくる。労働安全衛生規則(安衛則)は、労働安全衛生法第27条が「厚生労働省令で定める」とした事業者の措置を、数値と手順で定めた省令です。この記事では、518条・519条・563条など現場で指摘されやすい条を、原文の文言に当てて整理します。

安衛則を条番号で調べると、上に出てくる解説の多くは人事や産業保健の立場から書かれていて、足場や作業床の条にはほとんど触れていません。条文そのものを載せていない、罰則がどの条から来るのかを示していない、改正の話が数年前のまま止まっている、という点も気になるところです。今回は規則の位置づけ・4つの編・罰則・改正の扱いといった基本を押さえた上で、検索されやすい条番号の逆引き、518条・519条・563条の場所による読み分け、36条の号と特別教育の対応、e-Govで現行版と未施行の改正を見分ける読み方まで、施工管理の目線で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、安全書類やKYに条番号を書く立場の方にも使いやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

労働安全衛生規則とは|法第27条が中身を委ねた省令

労働安全衛生規則とは、労働安全衛生法が事業者に課した危険防止の義務について、何をどこまでやるのかを数値と手順で書き下ろした厚生労働省令です。法令番号は昭和四十七年労働省令第三十二号、公布日は1972年9月30日です(e-Gov法令検索 労働安全衛生規則・確認日2026年11月2日)。

「安衛法と安衛則のどっちを守ればいいのか」という疑問は、法の側の1文を読むとほどけます。法第27条第1項は、法が並べた事業者の措置の中身を、省令に委ねると書いています。

第二十条から第二十五条まで及び第二十五条の二第一項の規定により事業者が講ずべき措置及び前条の規定により労働者及び労働者と同一の場所において仕事の作業に従事する労働者以外の作業従事者が守らなければならない事項は、厚生労働省令で定める。

出典:労働安全衛生法 第27条第1項(e-Gov法令検索・確認日2026年11月2日)

たとえば法第21条第2項は「事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない」と定めていますが、高さが何メートルからで、何を設ければよいのかまでは書いていません(労働安全衛生法 第21条第2項・e-Gov法令検索・確認日2026年11月2日)。その数字と手順が出てくるのが規則の側で、後で扱う518条には「高さが二メートル以上の箇所」「作業床を設けなければならない」という言葉が入っています。

  • 法(労働安全衛生法):事業者が危険を防ぐために必要な措置を講じなければならない、という義務の枠を書く
  • 規則(労働安全衛生規則):法第27条第1項の委任を受けて、その措置の中身を高さ・幅・回数などの数値と手順で書く
  • 名前の違う省令:クレーン等安全規則のように、安衛則とは別の名前の省令もあるので、条番号を見るときは省令名から確かめる

つまり安衛法と安衛則は、どちらか一方を選んで守る関係ではなく、法が枠を決めて規則が中身を埋める一続きの決まりです。施行令・告示・クレーン則などとの細かな切り分けはこの記事では扱いませんが、現場目線で言えば、パトロールの指摘に「安衛則第◯条」と書かれていたら、それは法の義務を具体化した省令の条を指している、と読めば足ります。

4つの編と、建設現場で開く第二編の章

安衛則は、第一編 通則、第二編 安全基準、第三編 衛生基準、第四編 特別規制の4つの編でできています(e-Gov法令検索 労働安全衛生規則 目次・2026年10月1日施行の現行版で確認)。

「600条以上あって、どこが建設に関係するのか分からない」という声が多いのですが、条を1つずつ追うより、先に章の名前で当たりをつけた方が早く着きます。第二編 安全基準の章名を、現場の作業に対応づけて並べました。章名は2026年10月1日施行の現行版の目次どおりで、右の列は筆者が現場の作業に当てはめたものです。

章 章名(目次の文言) 現場で開く場面(筆者の対応づけ)
第一章 機械による危険の防止 機械全般を使う作業
第一章の二 荷役運搬機械等 場内で荷を運ぶ機械を使う作業
第一章の三 木材伐出機械等 木材の伐出の作業
第二章 建設機械等 掘削・整地などで重機を使う作業
第三章 型わく支保工 型枠支保工の組立て
第四章 爆発、火災等の防止 溶接・溶断などの火気、可燃物の扱い
第五章 電気による危険の防止 仮設電気、充電部の近くでの作業
第六章 掘削作業等における危険の防止 根切り・床掘り
第七章 荷役作業等における危険の防止 資材の積み卸し
第八章 伐木作業等における危険の防止 伐木
第八章の二 建築物等の鉄骨の組立て等の作業における危険の防止 鉄骨建方
第八章の三 鋼橋架設等の作業における危険の防止 鋼橋の架設
第八章の四 木造建築物の組立て等の作業における危険の防止 木造の建方
第八章の五 コンクリート造の工作物の解体等の作業における危険の防止 解体工事
第八章の六 コンクリート橋架設等の作業における危険の防止 コンクリート橋の架設
第九章 墜落、飛来崩壊等による危険の防止 高所での作業、開口部まわり
第十章 通路、足場等 足場・通路
第十一章 作業構台 作業構台の上での作業
第十二章 土石流による危険の防止 土石流のおそれがある場所での工事

章名を眺めると、鉄骨・鋼橋・木造・解体・コンクリート橋と、作業の名前がそのまま章になっている部分が目に付きます。自分の工種がどの章名に近いかを先に決めておけば、条番号を言われたときに「どのあたりの話か」の見当がつきます。章名から見当をつけるなら、2mの墜落防止は第九章、足場の作業床は第十章の名前に近い話で、後で扱う518条・519条・563条の中身も、この2つの章名が指す作業の話です。

検索されやすい条番号の早見|15条・151条の3・351条は何の条か

パトロールの指摘や安全書類で出てくる条番号には、建設の安全基準の条と、そうでない条が混ざっています。検索されやすい8つの条を、e-Govの条見出しと条文の中身で並べたのが下の早見です(労働安全衛生規則 各条・e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版・確認日2026年11月2日)。

条 条見出し(e-Gov) 何が書かれているか(条文の要約)
第15条 産業医の定期巡視 産業医が少なくとも毎月1回(条件を満たせば2月に1回)作業場等を巡視する
第35条 雇入れ時等の教育 雇い入れたとき・作業内容を変更したときに、事業者が安全衛生の教育を行う
第36条 特別教育を必要とする業務 法第59条第3項の特別教育が要る業務を号ごとに並べる
第151条の3 作業計画 車両系荷役運搬機械等を使う作業で、あらかじめ作業計画を定める
第351条 絶縁用保護具等の定期自主検査 絶縁用保護具等の絶縁性能を六月以内ごとに1回、定期に自主検査する
第518条 作業床の設置等 高さ2m以上の箇所で作業床を設ける(困難なら防網・要求性能墜落制止用器具等)
第519条 見出しなし (内容の要約)高さ2m以上の作業床の端・開口部等に囲い・手すり・覆い等を設ける
第563条 作業床 足場(一側足場を除く)の高さ2m以上の作業場所に作業床を設ける

519条にはe-Gov上の条見出しがありません。安全書類で「第519条(開口部の囲い等)」のように括弧を付けて書く場合、その括弧は書いた人の要約で、条文の見出しではないことは知っておきたいところです。518条・519条・563条は次の見出しで、35条・36条はその次の見出しで掘り下げるので、ここでは残りの3つを見ます。

第15条は産業医の巡視の条

「15条」で調べて産業医の話が出てきた人は、それで合っています。第15条第1項は、主語が産業医の条です。

産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

出典:労働安全衛生規則 第15条第1項(e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版・確認日2026年11月2日)

条見出しは「産業医の定期巡視」で、見ているのは作業方法や衛生状態です。足場の作業床のように高さや幅の数字で設備を縛る条や、車両系荷役運搬機械等の作業計画のように作業の段取りを縛る条とは系統が違います。パトロールの指摘で条番号を見たとき、15条が出てきたら衛生側の話だと切り分けておくと、調べる方向を間違えません。

第151条の3は車両系荷役運搬機械等の作業計画

151条の3は、車両系荷役運搬機械等を使う作業で、作業を始める前に作業計画を作ることを求める条です(労働安全衛生規則 第151条の3・e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版)。第1項は「当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない」と定めています。ただし、不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業は、括弧書きで除かれています。

第1項から第3項までを、事業者がやることに分けると次の3つです。

  • 第1項:「あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない」
  • 第2項:「前項の作業計画は、当該車両系荷役運搬機械等の運行経路及び当該車両系荷役運搬機械等による作業の方法が示されているものでなければならない」
  • 第3項:「事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項の規定により示される事項について関係労働者に周知させなければならない」

「フォークリフトの話?うちの現場に関係ある?」という疑問については、どの機械が「車両系荷役運搬機械等」に入るのかは、151条の3の中には書かれていません。この条に当たるかどうかは、使う機械がこの言葉の範囲に入るかで決まるので、書類に条番号を書く前に、機械の種類を条文の言葉で確かめる順番になります。

第351条は絶縁用保護具等の定期自主検査

「351条の絶縁用保護具の検査、6か月ごとって本当?」という声には、条文の言い方は「六月以内ごとに一回」です、と答えるのが正確です。

事業者は、第三百四十八条第一項各号に掲げる絶縁用保護具等(同項第五号に掲げるものにあつては、交流で三百ボルトを超える低圧の充電電路に対して用いられるものに限る。以下この条において同じ。)については、六月以内ごとに一回、定期に、その絶縁性能について自主検査を行わなければならない。ただし、六月を超える期間使用しない絶縁用保護具等の当該使用しない期間においては、この限りでない。

出典:労働安全衛生規則 第351条第1項(e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版・確認日2026年11月2日)

検査の対象は「第三百四十八条第一項各号に掲げる絶縁用保護具等」で、品目そのものは第348条の側に書かれているため、この記事では並べません。読むときの要点は、検査するのは絶縁性能であること、第5号のものは交流で300ボルトを超える低圧の充電電路に用いるものに限られること、6月を超えて使わない期間はその間の定期の検査がかからないことの3つです。ただし、使用を再び始めるときは、その際に絶縁性能の自主検査が要ります(労働安全衛生規則 第351条第2項)。低圧の電気を扱う作業員の教育の側は、低圧電気取扱特別教育の対象業務で条文から整理しています。

高さ2mの墜落防止は518条・519条・563条で場所ごとに分かれる

「2m以上で作業床、ってどの条の話?」という疑問の答えは、作業している場所によって変わります。518条・519条・563条は、どれも「高さ二メートル以上」を線にしていますが、作業床の無い箇所なのか、作業床の端や開口部なのか、足場の上なのかで、当たる条と求められる措置が切り替わります。3つを場所で並べると次のようになります(労働安全衛生規則 第518条・第519条・第563条・e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版・確認日2026年11月2日)。

場所 条 まず求められる措置 それができないとき
高さ2m以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く) 第518条 足場を組み立てる等の方法により作業床を設ける 作業床を設けることが困難なとき:防網を張り、要求性能墜落制止用器具を使用させる等
高さ2m以上の作業床の端、開口部等 第519条 囲い、手すり、覆い等(囲い等)を設ける 著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に取りはずすとき:防網を張り、要求性能墜落制止用器具を使用させる等
足場(一側足場を除く)の高さ2m以上の作業場所 第563条 第1項各号に定めるところにより作業床を設ける(幅・隙間の数値と足場用墜落防止設備) 本記事では第1項第二号・第三号の数値だけを扱う

3つの条はどれも、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときに(563条第三号はそのおそれのある箇所に)かかる条です。518条は括弧書きで「作業床の端、開口部等を除く」としていて、その端や開口部を受け持つのが519条です。518条と519条は、言葉の上で役割を分け合っている2つの条だと読むと、取り違えが起きにくくなります。

518条は作業床の無いところに作業床を設ける条

第1項:事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。

第2項:事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

出典:労働安全衛生規則 第518条(e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版・確認日2026年11月2日)

順番は、作業床を設けるのが先で、防網や要求性能墜落制止用器具は「作業床を設けることが困難なとき」の手です。パトロールで518条を指摘されたなら、作業床を設けられる場所で器具だけに頼っていないか、という読み方になります。「要求性能墜落制止用器具」という言葉と、安全帯・フルハーネスの呼び方の関係は、安全帯とフルハーネスの違いで用語から確かめられます。

519条は作業床の端と開口部の条(見出しなし)

519条には条見出しがありません。第1項と第2項は次のとおりです。

事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆い等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなければならない。

事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

出典:労働安全衛生規則 第519条第1項・第2項(e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版・確認日2026年11月2日)

518条との違いは、518条の第2項が「困難なとき」なのに対して、519条の第2項は「著しく困難なとき」と「作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすとき」の2つを挙げている点です。資材の搬入で開口部の手すりを一時的に外す場面は、言葉の上では後者に当たり、そのときに防網や要求性能墜落制止用器具などの措置が要る、という組み立てです。

563条は足場の作業床と墜落防止設備の条

563条第1項の柱書は「事業者は、足場(一側足場を除く。第三号において同じ。)における高さ二メートル以上の作業場所には、次に定めるところにより、作業床を設けなければならない」です(労働安全衛生規則 第563条第1項・e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版)。括弧書きで一側足場が除かれているので、一側足場の上の作業にこの条の数値をそのまま当てることはできません。一側足場と本足場の線引きそのものは、本足場と一側足場の違いで条文と通達から整理しています。

「幅40cm・隙間3cmってどこに書いてある?」「手すりや中桟は何条?」という2つの声は、どちらも563条第1項の中で答えが出ます。第二号と第三号の数値と設備を、条文の言葉のまま並べました。

号 対象 条文が求めるもの
第二号イ つり足場の場合を除く 幅は、40センチメートル以上
第二号ロ つり足場の場合を除く 床材間の隙間は、3センチメートル以下
第二号ハ つり足場の場合を除く 床材と建地との隙間は、12センチメートル未満
第三号イ わく組足場(妻面に係る部分を除く) 次のいずれか:(1)交さ筋かい及び高さ15センチメートル以上40センチメートル以下の桟若しくは高さ15センチメートル以上の幅木又はこれらと同等以上の機能を有する設備/(2)手すりわく
第三号ロ わく組足場以外の足場 手すり等及び中桟等

第三号の設備は、条文の中で「丈夫な構造の設備であつて、たわみが生ずるおそれがなく、かつ、著しい損傷、変形又は腐食がないものに限る」とされ、まとめて「足場用墜落防止設備」と呼ばれています(労働安全衛生規則 第563条第1項第三号)。わく組足場では交さ筋かいに桟か幅木を組み合わせるか、手すりわくを付けるかの選択で、わく組以外の足場では手すり等と中桟等の両方、という違いになります。手すりの高さなどの数値は、この記事では取り上げていません。

3つの条を現場で選ぶときは、次の順で場所を確かめると迷いが減ります。

  • 足場の上か:一側足場を除く足場の高さ2m以上の作業場所なら563条(一側足場は563条第1項の対象外)
  • 作業床の端や開口部か:高さ2m以上の作業床の端・開口部等なら519条
  • それ以外の高さ2m以上の箇所か:作業床そのものが無いなら518条で、まず作業床を設ける

若手に「なぜ2mなのか」を条文で説明したいという声もありますが、3つの条文には、2mを線にした理由までは書かれていません。僕の感覚だと、理由を自分の言葉で補うより、3つの条がそろって「二メートル以上」を線にしている原文を見せる方が、説明としてぶれません。足場の組立てを指揮する側の役割は、足場の組立て等作業主任者の記事で別にまとめています。

教育の条|35条の雇入れ時教育と36条の特別教育

教育の条は、35条と36条の2つを分けて読むのが出発点です。35条は雇い入れたときと作業内容を変えたときの教育、36条は法第59条第3項の特別教育が要る業務の一覧で、条見出しからして別の制度です(労働安全衛生規則 第35条・第36条・e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版・確認日2026年11月2日)。

35条は雇入れ時と作業内容変更時の教育

第35条第1項は「事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない」と定め、教える事項を8つの号で挙げています(労働安全衛生規則 第35条第1項)。

号 教育の事項(条文の言葉)
一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
三 作業手順に関すること
四 作業開始時の点検に関すること
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
六 整理、整頓及び清潔の保持に関すること
七 事故時等における応急措置及び退避に関すること
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

「新規入場者教育は法律上どの条?」という疑問に対して、35条第1項の文言に「新規入場者」という言葉は出てきません。35条が定めているのは、あくまで雇い入れたとき・作業内容を変更したときの教育です。現場ごとに行う入場時の教育を35条と同じものとして書類に書くかどうかは、この条文の言葉と照らして判断する、というのが正直なところです。

36条は特別教育が要る業務の一覧

第36条第1項の柱書は「法第五十九条第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする」です。法が「厚生労働省令で定める」とした業務を、規則が号ごとに並べている構造で、特別教育の根拠を書類に書くときは「法第59条第3項・安衛則第36条第◯号」の組で書くことになります。建設に関係する号を、条文の言葉のまま並べました(労働安全衛生規則 第36条第1項・e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の現行版)。

号 業務(条文の言葉・要点) 関連記事
第三号 アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等(アーク溶接等)の業務 アーク溶接の特別教育
第十号の五 作業床の高さが十メートル未満の高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務 高所作業車の特別教育
第十五号 次に掲げるクレーン(移動式クレーンを除く。)の運転の業務 イ つり上げ荷重が五トン未満のクレーン ロ つり上げ荷重が五トン以上の跨線テルハ —
第十六号 つり上げ荷重が一トン未満の移動式クレーンの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務 —
第十九号 つり上げ荷重が一トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛けの業務 玉掛けの資格の整理
第二十六号 令別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所における作業に係る業務 酸欠の特別教育
第三十号 ずい道等の掘削の作業又はこれに伴うずり、資材等の運搬、覆工のコンクリートの打設等の作業(当該ずい道等の内部において行われるものに限る。)に係る業務 —
第三十九号 足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務(地上又は堅固な床上における補助作業の業務を除く。) —
第四十一号 高さが二メートル以上の箇所であつて作業床を設けることが困難なところにおいて、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務(前号に掲げる業務を除く。) フルハーネス特別教育

「フルハーネス・足場・玉掛け・酸欠の特別教育は全部36条?」という疑問には、この表のとおり、4つとも36条第1項の号に入っています。号の言葉を読むときは、次の3点で取り違えが起きやすいです。

  • 数字の線:第十号の五は作業床の高さ10メートル未満、第十五号はつり上げ荷重5トン未満のクレーン(跨線テルハは5トン以上も含む)、第十六号と第十九号は1トン未満と、号ごとに線が違う
  • 除かれるもの:第十号の五と第十六号は道路上を走行させる運転を、第三十九号は地上又は堅固な床上における補助作業の業務を除いている
  • 518条との言葉の重なり:第四十一号の「作業床を設けることが困難なところ」は、518条第2項の「作業床を設けることが困難なとき」と言葉が重なる

第四十一号の「作業床を設けることが困難なところ」は、518条第2項の「作業床を設けることが困難なとき」と言葉が重なります。ただし第四十一号は518条を引いているわけではなく、対象もフルハーネス型を用いて行う作業に限られ、前号の業務は除かれています。現場目線で言えば、518条第2項でフルハーネス型の墜落制止用器具を使わせる場面では、第四十一号の特別教育も要るかを確かめる、という使い方がいちばん素直です。教育の時間や科目は告示の側の話なので、この記事では扱わず、表の各記事に任せます。

違反したときの罰則は法第119条にある

「安衛則に違反したら罰則はあるのか」を規則の中で探しても、518条や563条の条文に刑罰の言葉は出てきません。罰則は法の側、労働安全衛生法第119条にあります。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

出典:労働安全衛生法 第119条 柱書(e-Gov法令検索・確認日2026年11月2日)

第119条第1号は「第十四条、第二十条から第二十五条まで、第二十五条の二第一項、……、第五十九条第三項、……の規定に違反したとき」と、違反の対象になる条を列挙しています(労働安全衛生法 第119条第1号・e-Gov法令検索・確認日2026年11月2日。「……」は途中の条の省略)。刑の名称は、現行の条文では「拘禁刑」です。

規則の条がここにつながる道筋は、最初の見出しで見た法第27条第1項です。518条・519条・563条のような安全基準の措置は、法第20条から第25条まで等の規定により事業者が講ずべき措置として、省令に定めを委ねられたものです。法第20条は「事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない」として機械等・爆発性の物等・電気や熱その他のエネルギーによる危険を挙げ、法第21条第1項は「事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない」と定めています(労働安全衛生法 第20条・第21条・e-Gov法令検索・確認日2026年11月2日)。こうした安全基準の措置に違反するという話は、法第20条から第25条までの措置義務に違反するという形で第119条第1号に当たる、という組み立てで読みます。法第20条〜第25条の措置として定められた条とは限らない条(15条・35条など)の罰則は、この記事では扱いません。

特別教育の36条は、もっと道筋がはっきりしています。36条の柱書が「法第五十九条第三項」を受けていて、第119条第1号がその「第五十九条第三項」を挙げているからです。罰則の上限を書類や教育資料に書くなら「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(労働安全衛生法第119条)」と、根拠の条を添えるのが確実です。なお、条文が対象としているのは「当該違反行為をした者」で、違反があれば必ず刑が科されると書いているわけではありません。

条文の調べ方|e-Govで現行版と未施行の改正を見分ける

「安衛則って最近改正された?どれが最新版?」という疑問に対しては、2026年11月2日時点のe-Gov法令検索で、施行済みの現行版と、施行日がまだ来ていない改正とが分けて確認できます(e-Gov法令検索 労働安全衛生規則 改正履歴・確認日2026年11月2日)。

区分 省令 公布日 施行日
現行版(施行済み) 令和八年厚生労働省令第百十六号(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令) 2026年7月29日 2026年10月1日
直前の施行済み版 令和八年厚生労働省令第八十六号(労働安全衛生規則の一部を改正する省令) 2026年4月28日 2026年8月1日
未施行 令和七年厚生労働省令第百二十号 2025年12月9日 2027年1月1日
未施行 令和七年厚生労働省令第十二号、令和八年厚生労働省令第二十九号・第八十九号・第九十号・第百十二号 第九十号は2026年4月30日、第百十二号は2026年6月30日 2027年4月1日
未施行 令和八年厚生労働省令第六十八号 2026年3月31日 2028年4月1日

e-Govの改正履歴を開くと施行日が何行も並ぶので、どれを見ればいいか迷う、という声が出るのはこのためです。2026年11月2日時点で現場に効いているのは、2026年10月1日施行の現行版で、この記事の条文もすべてその版から引いています。e-Govの区分の上でも、現行版は施行済み(CurrentEnforced)、2027年以降の3つの日付の改正は未施行(UnEnforced)として扱われています。未施行の改正で条文がどう変わるのかは今回確認していないため、中身には触れません。

安全書類やKYに条番号を書く前には、次の順で版を確かめておくと、古い条文や施行前の条文を写してしまう事故を防げます。

  • 省令名を確かめる:「安衛則」か、クレーン等安全規則など別の名前の省令か
  • 版の施行日を確かめる:見ている条文が、書類を出す日に施行済みの版か
  • 未施行の改正の日付を控える:2027年1月1日・2027年4月1日・2028年4月1日のように、工期中に施行日が来る改正があるか
  • 条と項と号まで写す:「第563条第1項第二号イ」のように号まで書き、519条のように見出しの無い条に見出しを付けない

工期が長い現場ほど、着工時に確かめた条文が工期の途中で変わることがあり得ます。個人的には、書類の欄外に「2026年10月1日施行版で確認」のように確かめた版を書き添えておくと、後から読む人も同じ条文にたどり着けて安心だと思います。

労働安全衛生規則の条番号に関する情報まとめ

  • 規則の位置づけ:労働安全衛生法第27条第1項の委任を受け、事業者の措置の中身を数値と手順で定めた厚生労働省令(昭和四十七年労働省令第三十二号)
  • 4つの編と第二編の章:通則・安全基準・衛生基準・特別規制の4編で、第二編の章名から自分の工種の見当をつける
  • 条番号の早見:15条は産業医の巡視、151条の3は車両系荷役運搬機械等の作業計画、351条は絶縁用保護具等の六月以内ごとの定期自主検査
  • 518条・519条・563条:作業床の無い箇所は518条、作業床の端・開口部等は519条、一側足場を除く足場の作業床は563条
  • 教育の条:35条は雇入れ時・作業内容変更時の8事項、36条は法第59条第3項の特別教育が要る業務を号で並べる
  • 罰則:法第119条で6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金。第1号が第20条から第25条までと第59条第3項を挙げる
  • 条文の調べ方:2026年10月1日施行の現行版を見て、2027年1月1日以降の未施行の改正は施行日を控えておく

以上が労働安全衛生規則の条番号に関する情報のまとめです。

パトロールの指摘で条番号を受け取ったら、最初にやるのは条番号で検索することではなく、e-Govで現行版のその条を開き、作業していた場所が条文の括弧書きに当たるかを読むことです。518条か519条か563条かは場所で決まり、特別教育なら36条の号の数字の線で決まるので、その場所と号を書き添えて是正の報告をすれば、元請の安全担当とも同じ条文の言葉で話ができるはずです。足場まわりの条は本足場と一側足場の違い、特別教育の個別の手配はフルハーネス特別教育や酸欠の特別教育から進めてください。

よくある質問

安衛法と安衛則は、どちらを守ればいいですか?

どちらか一方ではありません。法第27条第1項が、法第20条から第25条まで等で事業者が講ずべき措置の中身を「厚生労働省令で定める」としていて、その省令が安衛則です(労働安全衛生法 第27条第1項)。法が義務の枠、規則がその中身という関係なので、現場で守る対象は一続きです。

足場の作業床の幅40cmは、何条に書いてありますか?

労働安全衛生規則第563条第1項第二号イです。同じ号のロに床材間の隙間3センチメートル以下、ハに床材と建地との隙間12センチメートル未満が並び、いずれもつり足場の場合は除かれます。また563条は一側足場を除く足場の条です(労働安全衛生規則 第563条第1項・2026年10月1日施行の現行版)。

安衛則の違反に罰金はありますか?

518条・519条・563条のような安全基準の条の罰則は、規則ではなく労働安全衛生法第119条で見ます。第119条は、当該違反行為をした者は6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処するとされています。第1号が対象の条として第20条から第25条までと第59条第3項などを挙げています(労働安全衛生法 第119条)。

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