安全帯とフルハーネスの違い|墜落制止用器具と6.75m超の線引き

  • 安全帯とフルハーネスって、結局何が違うの?
  • 「安全帯」って言葉は、もう現場で使っちゃダメ?
  • 胴ベルト型はもう使えない?U字つりはどうなった?
  • 何mからフルハーネスにしないといけない?
  • ショックアブソーバの第一種・第二種って、どう選ぶ?
  • 足元にフックを掛ける鉄骨の作業はどうする?
  • 2m以上で器具を使わせる根拠の条文はどれ?
  • 古い規格の安全帯は、いつまで使えた?

上記の様な悩みを解決します。

「安全帯」は平成31年2月1日より前の法令での呼び名で、いまは施行令・告示で「墜落制止用器具」、安衛則の使用義務の条文では「要求性能墜落制止用器具」といいます。フルハーネス型はその型の1つで、ガイドラインはフルハーネス型を原則とし、告示第2条は6.75mを超える高さでフルハーネス型を使うよう定めています。地面に届くおそれのある低い場所では胴ベルト型(一本つり)も使えます。

安全帯とフルハーネスは、法令の上では「器具全体の以前の名前」と「身体に着ける部分の名前」という、層の違う言葉です。ところが検索の上位は通販サイトやメーカー、講習機関の記事が中心で、6.75mの数字の出どころや、5mに置かれた前提まで触れているものは多くありません。今回は名称の変わり方・墜落制止用器具に入る型・使える高さ・ショックアブソーバの種別・旧規格の期限といった基本を押さえた上で、U字つり胴ベルトの扱い、6.75m・5m・2mの3つの数字の出どころと文言の強さ、作業床→囲い→器具という条文の順番まで、法令・告示・通達・厚労省資料だけを根拠に整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、朝礼や新規入場者教育で協力会社から「何mからハーネス?」と聞かれ、条文で答えられるようにしておきたい方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

安全帯とフルハーネスの違い:器具全体の旧称と、身体に着ける部分の名前

結論から言うと、「安全帯」は器具全体の以前の法令の名前、「フルハーネス」は身体に着ける部分の名前です。フルハーネスは、荷重を肩・腰部・腿等で支持する構造の器具として告示に定義された部分で、器具の型を言うときは「フルハーネス型」です(墜落制止用器具の規格〈平成31年厚生労働省告示第11号〉第1条第1号)。

名前の変わり目は条文の版で確かめられます。2018年6月1日施行版の労働安全衛生法施行令第13条第3項第28号は「安全帯(墜落による危険を防止するためのものに限る。)」でしたが、平成30年政令第184号(2018年6月8日公布)でこれが「墜落制止用器具」に改められ、同政令の附則で平成31年2月1日から施行されています(労働安全衛生法施行令 第13条第3項第28号/平成30年政令第184号 附則)。安衛則も平成30年厚生労働省令第75号(2019年2月1日施行)で言葉が置き換わりました(労働安全衛生規則 2018年8月9日施行版と現行版の比較)。

条文 改正前の文言 現行の文言
施行令 第13条第3項第28号 安全帯(墜落による危険を防止するためのものに限る。) 墜落制止用器具
安衛則 第518条第2項 労働者に安全帯を使用させる等 労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等

安衛則の「要求性能墜落制止用器具」は、第130条の5第1項で「墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具(以下「要求性能墜落制止用器具」という。)」と定義されたのが最初です。この条自体は食品加工用粉砕機・混合機の開口部の規定です(労働安全衛生規則 第130条の5第1項)。

2026年10月1日施行版の施行令と安衛則の条文本体を検索した範囲では、「安全帯」の語は経過措置の附則にしか残っていません。それでも厚労省のリーフレットは「法令用語としては「墜落制止用器具」となりますが、建設現場等において従来からの呼称である「安全帯」「胴ベルト」「ハーネス型安全帯」といった用語を使用することは差し支えありません」と注記しています(厚労省リーフレット「安全帯が『墜落制止用器具』に変わります!」p.1)。個人的には、朝礼は「安全帯」のままで、書類で条文を引くときだけ法令の用語に合わせる使い分けがいちばん揉めないと思います。

墜落制止用器具に入る型・入らない型:U字つり胴ベルトはどう扱われるか

墜落制止用器具として認められるのは「胴ベルト型(一本つり)」と「ハーネス型(一本つり)」の2つで、「胴ベルト型(U字つり)」は入りません。リーフレットは改正前の安全帯を3つに分けたうえで、「②には墜落を制止する機能がないことから、改正後は①と③のみが「墜落制止用器具」として認められることになります」と書いています(厚労省リーフレット p.1)。

  • ①胴ベルト型(一本つり):墜落制止用器具に入る
  • ②胴ベルト型(U字つり):墜落制止用器具に入らない
  • ③ハーネス型(一本つり):墜落制止用器具に入る

U字つりについては、リーフレットの書き方を2つに分けて読むと誤解がありません。1つ目は器具の分類の話で、p.2に「本改正後「墜落制止用器具」として認められるのは、「胴ベルト型(一本つり)」と「ハーネス型(一本つり)」のみとなり、「胴ベルト型(U字つり)」の使用は認められません」とあります(厚労省リーフレット p.2)。p.1の注でも、U字つり用胴ベルトは「従来の安全帯に含まれていたワークポジショニング用器具」として、墜落制止用器具には含まれないと整理されています(同 p.1)。

2つ目は使い方の話で、p.5は「柱上作業等で使用されるU字つり胴ベルトは、墜落制止用器具としては使用できません。U字つり胴ベルトを使用する場合は、フルハーネス型と併用することが必要となります」としています(厚労省リーフレット p.5)。つまり、U字つり胴ベルトを墜落制止用器具の代わりにすることはできず、身体を保持する道具として使うのであればフルハーネス型を一緒に着けることが前提になる、という2段構えです。

この「身体を保持する作業」は、ガイドラインで「ワークポジショニング作業」と呼ばれています。定義は「ロープ等の張力により、U字つり状態などで作業者の身体を保持して行う作業をいう」です(墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン 基発0622第2号 別添1 第3 2(1))。そのうえでガイドラインは、ワークポジショニング用器具は「実質的に墜落を防止する効果があるが、墜落した場合にそれを制止するためのバックアップとして墜落制止用器具を併用する必要があること」と書いています(同 第4 3)。

ワークポジショニング作業を伴う場合の型の選び方も、ガイドラインに条件つきで書かれています。「通常、頭上に構造物が常に存在し、フック等を頭上に取り付けることが可能であるので、地面に到達しないようにフルハーネス型を使用することが可能であることから、フルハーネス型を選定すること」とし、ただし書きで「頭上にフック等を掛けられる構造物がないことによりフルハーネス型の着用者が地面に到達するおそれがある場合は、胴ベルト型の使用も認められること」としています(同 第4 3(4))。

新規入場時の器具確認に置き換えると、見るところは2つです。1つは、持ち込まれた器具が胴ベルト型(一本つり)かハーネス型(一本つり)か、つまり墜落制止用器具に入る型かどうか。もう1つは、U字つり胴ベルトを使う作業なら、それとは別にフルハーネス型を着けているかどうかです。U字つり胴ベルトだけで高所に上がる状態は、リーフレット p.5の「フルハーネス型と併用することが必要」に合いません(厚労省リーフレット p.5)。

現場目線で言えば、「U字つりは禁止」と短く覚えるより、「U字つりは墜落制止用器具の代わりにならない。体を預ける道具として使うなら、フルハーネス型と併用する」と2段で覚えたほうが、リーフレットとガイドラインの書き方とずれません。

告示第1条の定義で部品の名前をそろえる

協力会社と話がかみ合わない原因の1つが、部品の呼び名のばらつきです。告示第1条は部品と距離の言葉を次のように定めています(墜落制止用器具の規格 第1条第1号・第2号・第3号・第5号・第7号・第8号)。

用語 告示第1条の定義
フルハーネス(第1号) 墜落を制止する際に墜落制止用器具を着用した者(以下「着用者」という。)の身体にかかる荷重を肩、腰部及び腿(もも)等において支持する構造の器具
胴ベルト(第2号) 身体の腰部に着用する帯状の器具
ランヤード(第3号) フルハーネス又は胴ベルトと親綱その他の取付設備等(墜落制止用器具を安全に取り付けるための設備等をいう。以下この条及び次条第三項において同じ。)とを接続するためのロープ又はストラップ(以下「ランヤードのロープ等」という。)、コネクタ等(ショックアブソーバ又は巻取り器を接続する場合は、当該ショックアブソーバ又は巻取り器を含む。)からなる器具
ショックアブソーバ(第5号) 墜落を制止するときに生ずる衝撃を緩和するための器具
自由落下距離(第7号) 労働者がフルハーネス又は胴ベルトを着用する場合における当該フルハーネス又は胴ベルトにランヤードを接続する部分の高さからコネクタの取付設備等の高さを減じたものにランヤードの長さを加えたもの
落下距離(第8号) 墜落制止用器具が着用者の墜落を制止するときに生ずるランヤード及びフルハーネス又は胴ベルトの伸び等に自由落下距離を加えたもの

胴ベルト型にも墜落制止用器具としての性能の基準があり、告示第8条第5項は、トルソー又は砂のうを使った試験で「コネクタにかかる衝撃荷重が四・〇キロニュートン以下のものでなければならない」と定めています(墜落制止用器具の規格 第8条第5項)。通達も、地面に到達するおそれのある場合等の対応として「本規格に適合する胴ベルト型の使用を認める」趣旨だと書いています(基発0125第2号 第2 3(2))。

押さえておきたいのは、自由落下距離と落下距離が別の言葉だという点です。自由落下距離はランヤードが張るまでに落ちる距離、落下距離はそこにランヤードやフルハーネスの伸び等を足した距離で、次の「何mから」の話はこの2つの距離から組み立てられています。ランヤードの定義に「親綱その他の取付設備等」と出てくるとおり、器具はつなぐ先とセットで考えるものなので、つなぐ先の代表である親綱は親綱の解説で用語から整理しています。

何mからフルハーネス型か:6.75m・5m・2mの出どころと文言の強さ

「何mからフルハーネス?」への答えは、どの文書の数字を言うかで変わります。告示が定める線は6.75mで、それを超える高さではフルハーネス型でなければなりません(墜落制止用器具の規格 第2条第1項)。5mは建設作業等を想定したガイドラインの目安、2mは柱上作業等についてのリーフレットの推奨です。数字と文言の強さを並べると次のとおりです。

高さ 根拠 文言(原文) 強さ
6.75mを超える箇所 墜落制止用器具の規格 第2条第1項 フルハーネス型のものでなければならない 告示の基準
6.75mを超える箇所 ガイドライン 第4 1(3) いかなる場合にも守らなければならない最低基準として…フルハーネス型を使用しなければならないこと 最低基準
高さを問わず ガイドライン 第4 1(1) フルハーネス型を原則とすること 原則(地面に到達するおそれがあれば胴ベルト型も可)
5m ガイドライン 第4 2(4) 目安高さは5メートル以下とすべき/これよりも高い箇所で作業を行う場合は、フルハーネス型を使用すること 前提条件つきの目安
一般的な建設作業は5mを超える箇所/柱上作業等は2m以上 厚労省リーフレット p.5 フルハーネス型の使用が推奨されます 推奨

表のとおり、法令の側で「でなければならない」と書かれているのは6.75mを超える高さだけで、5mは告示の数字ではなく、ガイドライン第4 2(4)とリーフレット p.5に出てくる数字です。ガイドラインの本文で5mについて書かれているのは「推奨」ではなく「とすべき」で、「推奨されます」という言い方はリーフレット p.5の文言です(基発0622第2号 別添1 第4 2(4)/厚労省リーフレット p.5)。

6.75mは第二種ショックアブソーバの数値に1mを加えた高さ

6.75mの出どころは、告示の施行通達に書かれています。「第8条第3項に定める第二種ショックアブソーバの自由落下距離(4.0メートル)及びショックアブソーバの伸び(1.75メートル)の合計値に1メートルを加えた高さである6.75メートルを超える高さの箇所で使用する墜落制止用器具は、フルハーネス型でなければならないことを規定したこと」(安全帯の規格の全部を改正する告示の施行について 基発0125第2号 第2 3(2))。ガイドライン第4 1(3)も同じ組み立てで、「ショックアブソーバの自由落下距離の最大値(4メートル)及びショックアブソーバの伸びの最大値(1.75 メートル)の合計値に1メートルを加えた高さ(6.75 メートル)」と書いています(基発0622第2号 別添1 第4 1(3))。

加えられている1mが何を表すのかは、通達にもガイドラインにも「1メートルを加えた」と書かれているだけで、内訳の説明はありません。この記事でも内訳の推測はせず、第二種の自由落下距離4.0mと伸び1.75mの合計に1mを加えた高さ、という原文の組み立てのまま押さえておきます。

同じ通達は、この条の趣旨を「墜落制止用器具はフルハーネス型を原則とすべきであるが、墜落時にフルハーネス型墜落制止用器具の着用者が地面に到達するおそれのある場合等の対応として、本規格に適合する胴ベルト型の使用を認めるという趣旨であること」と説明しています(基発0125第2号 第2 3(2))。6.75mは「ここから上はフルハーネス型」という線で、それ以下でもフルハーネス型が原則、胴ベルト型は認められる例外、という位置づけです。

5mはガイドラインが前提条件を置いて示した目安

5mが出てくるガイドライン第4 2(4)は、見出しが「胴ベルト型が使用可能な高さの目安」で、ワークポジショニング作業を伴わない場合の節に置かれています。本文は「建設作業等におけるフルハーネス型の一般的な使用条件」として、次の数値を括弧書きで並べています(基発0622第2号 別添1 第4 2(4))。

ランヤードのフック等の取付高さが0.85メートル、ランヤードとフルハーネスを結合する環の高さが1.45メートル、ランヤード長さが1.7メートル(この場合、自由落下距離は2.3メートル)、ショックアブソーバ(第一種)の伸びの最大値が1.2メートル、フルハーネス等の伸びが1メートル程度。これらを想定すると「目安高さは5メートル以下とすべきであること。これよりも高い箇所で作業を行う場合は、フルハーネス型を使用すること」とされています(同 第4 2(4))。

この0.85メートルと1.45メートルは、告示の施行通達が示す「標準的な使用条件」の目安とも重なります。通達は、製造者が表示の標準条件を決める際の目安として、フルハーネスにランヤードを接続する部分の高さを1.45メートル、胴ベルトにランヤードを接続する部分の高さを0.95メートル、コネクタの取付設備の高さを第一種ショックアブソーバで0.85メートル、第二種ショックアブソーバで0メートルとしています(基発0125第2号 第2 10)。

ここで大事なのは、ガイドラインが条件を並べて目安を示しているだけで、5mを出す計算式までは書いていないことです。フックを掛ける高さやランヤードの長さといった前提が違えば、同じ目安がそのまま当てはまるとは限りません。5mは建設作業等の一般的な使用条件を置いたときの目安であって、法令で5mを超えたら義務になる、という数字ではない点を押さえておきましょう。

2mは柱上作業等の推奨と、作業床がとれない箇所での原則

2mが出てくるのはリーフレット p.5の注で、「一般的な建設作業の場合は5mを超える箇所、柱上作業等の場合は2m以上の箇所では、フルハーネス型の使用が推奨されます」とあります(厚労省リーフレット p.5)。2mの推奨は柱上作業等についての記載で、一般的な建設作業の推奨は5mを超える箇所です。

同じページの要件①には、「2m以上の作業床がない箇所又は作業床の端、開口部等で囲い・手すり等の設置が困難な箇所の作業での墜落制止用器具は、フルハーネス型を使用することが原則となります」という記載もあります(厚労省リーフレット p.5)。2mは「器具を使う場面が出てくる高さ」で、その場面ではフルハーネス型が原則、地面に届くおそれがあれば胴ベルト型(一本つり)も使える、という順で読むと、6.75m・5mの話とつながります。「2m以上は全部フルハーネス型でなければならない」とは、告示・通達・ガイドライン・リーフレットのいずれにも書かれていません。

低い場所でフルハーネス型を使うと地面に届くおそれ

低い場所での胴ベルト型の扱いは、ガイドライン第4 1(1)が「墜落制止用器具は、フルハーネス型を原則とすること。ただし、墜落時にフルハーネス型の墜落制止用器具を着用する者が地面に到達するおそれのある場合は、胴ベルト型の使用が認められること」と定めています(基発0622第2号 別添1 第4 1(1))。リーフレットも「フルハーネス型の着用者が墜落時に地面に到達するおそれのある場合(高さが6.75m以下)は「胴ベルト型(一本つり)」を使用できます」と書いています(厚労省リーフレット p.1)。

ガイドライン第4 1(3)の前半は、胴ベルト型を使える高さの目安を「フルハーネス型を使用すると仮定した場合の自由落下距離とショックアブソーバの伸びの合計値に1メートルを加えた値以下とする必要がある」としています(基発0622第2号 別添1 第4 1(3))。前の章で見た自由落下距離と落下距離の考え方がここで効いてきて、低い場所かどうかは「何mか」だけでなく、使う器具の自由落下距離とショックアブソーバの伸びで決まる、という作りになっています。

3つの数字を組み合わせると、読み方は次の順になります。6.75mを超える箇所は告示の線なので、胴ベルト型を選ぶ余地はありません。6.75m以下でも、建設作業等の一般的な使用条件ではガイドラインが5mを目安に置き、それより高い箇所はフルハーネス型を使用することとしています。5m以下で胴ベルト型(一本つり)を選べる例として、ガイドライン第4 1(1)とリーフレット p.1が挙げているのは、フルハーネス型の着用者が地面に到達するおそれのある場合で、柱上作業等ではリーフレットが2m以上でフルハーネス型を推奨しています(墜落制止用器具の規格 第2条第1項/基発0622第2号 別添1 第4 1(1)・2(4)/厚労省リーフレット p.5)。

正直なところ、「何mから?」に1つの数字だけで答えると、どれかの文書と食い違います。数字には出どころを添えて答えるのがいちばん確実です。

ショックアブソーバの第一種・第二種と、フックを掛ける位置

ショックアブソーバの種別は、フックを掛ける位置で選びます。基準は告示第8条第3項の表です(墜落制止用器具の規格 第8条第3項)。

種別 自由落下距離 衝撃荷重 ショックアブソーバの伸び
第一種 1.8メートル 4.0キロニュートン以下 1.2メートル以下
第二種 4.0メートル 6.0キロニュートン以下 1.75メートル以下

選び方はガイドラインに書かれています(基発0622第2号 別添1 第4 2(1)・第4 3(1))。

  • 腰の高さ以上にフック等を掛けられる:第一種(第4 2(1)ア)
  • 鉄骨組み立て作業等で足下にフック等を掛ける必要がある:フルハーネス型+第二種(第4 2(1)イ)
  • 両方の作業が混在する:フルハーネス型+第二種(第4 2(1)ウ)
  • ワークポジショニング作業:通常は第一種。足下にフック等を掛ける作業が含まれる場合は第二種(第4 3(1))

第一種の条件は原文で「腰の高さ以上」で、「腰より高い位置」ではありません。

体重と装備品の合計:85kgと100kg

ガイドライン第4 2(3)は、器具には「使用可能な最大質量(85kg 又は 100kg。特注品を除く。)」が定められているとし、体重と装備品の合計の質量がそれを超えないように選ぶよう求めています(基発0622第2号 別添1 第4 2(3))。

手元の器具の種別や使用可能な質量の最大値は、告示第9条第2項がショックアブソーバに表示するよう定めているので、表示で確かめられます(墜落制止用器具の規格 第9条第2項)。

ランヤードの長さの決まり

長さの数値の上限があるのは胴ベルト型のランヤードだけで、1,700ミリメートル以下です(墜落制止用器具の規格 第6条)。フルハーネス型のランヤードは長さの数値ではなく、標準的な自由落下距離が、組み合わせるショックアブソーバの基準を満たす自由落下距離のうち最大のものを上回らないこと、という書き方です(同 第6条)。

フック等を掛ける取付設備の位置

フックを掛ける先は、ガイドラインが場面で書き分けています。ワークポジショニング作業を伴わない場合は「取付設備は、できるだけ高い位置のものを選ぶこと」(基発0622第2号 別添1 第5 1(3)ア)、ワークポジショニング作業を伴う場合は「取付設備は、原則として、頭上の位置のものを選ぶこと」です(同 第5 1(4)ア)。「頭上」は伴う場合の記載です。

取付設備の側は別の記事に分けています。親綱を張るための支柱はスタンションの記事、安全ブロックは安全ブロックの記事で扱っています。

2m以上で器具を使わせる根拠:作業床→囲い→器具の順に並ぶ条文

安衛則の条文は、作業床→端や開口部の囲い等→それが困難なときの防網や器具等、という順に並んでいます。ガイドラインも冒頭で、作業床と囲い等で「墜落自体を防止することが原則であるが、こうした措置が困難なときは、労働者に安全帯を使用させる等の措置を講ずることが事業者に義務付けられている」と整理しています(基発0622第2号 別添1 第1。旧法の用語のまま)。

条文 主語 場面 求めていること
第518条第1項 事業者 高さが2m以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行う場合で、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき 足場を組み立てる等の方法により作業床を設ける
第518条第2項 事業者 作業床を設けることが困難なとき 防網を張り、要求性能墜落制止用器具を使用させる等の措置
第519条第1項 事業者 高さが2m以上の作業床の端、開口部等で、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所 囲い、手すり、覆い等を設ける
第519条第2項 事業者 囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすとき 防網を張り、要求性能墜落制止用器具を使用させる等の措置
第520条 労働者 第518条第2項・第519条第2項の場合 使用を命じられたときは使用しなければならない
第521条 事業者 高さが2m以上の箇所で作業を行う場合において使用させるとき(第1項)/使用させるとき(第2項) 取り付けるための設備等を設ける(第1項)/異常の有無を随時点検(第2項)

囲いのほうは「著しく困難」とされ、臨時に外す場面が別に書かれています。措置はどちらも「防網を張り、…使用させる等」で、器具に限っていません(労働安全衛生規則 第518条第2項・第519条第2項)。

この表の条文のうち、労働者の義務を定めているのは第520条だけで、第521条は取付け設備等と随時点検まで事業者に求めています(労働安全衛生規則 第520条・第521条)。高所作業全般の段取りは高所作業の基本にまとめています。

高所作業車は第194条の22

高所作業車(作業床が接地面に対し垂直にのみ上昇し、又は下降する構造のものを除く。)では、第194条の22第1項で事業者が作業床上の労働者に要求性能墜落制止用器具等を使用させ、第2項で労働者がそれを使用しなければなりません(労働安全衛生規則 第194条の22)。高所作業車の運転側の資格は高所作業車の特別教育で扱っています。

通行・昇降は「作業」と別の概念

ガイドライン第4 4(1)は「墜落制止用器具は、作業時に義務付けられ、作業と通行・昇降(昇降用の設備の健全性等を確認しながら、昇降する場合を含む。)は基本的に異なる概念であること」と書いています(基発0622第2号 別添1 第4 4(1))。

旧規格の安全帯は2022年1月1日までで、猶予はすでに終わっている

旧規格の安全帯を使える期間は、2022年1月1日までで終わっています(条文の表記は「平成三十四年一月一日」)。根拠は使う側の省令と、規格を定める告示の附則に分かれています。

使う側は平成30年厚生労働省令第75号の附則第2項で、2019年8月1日前に製造された安全帯又は同日に現に製造している安全帯(要求性能墜落制止用器具に該当するものを除く)を、2022年1月1日までの間、要求性能墜落制止用器具と「みなす」としていました(平成30年厚生労働省令第75号 附則第2項)。

規格の側は告示の附則第2条と第3条の2本です。第2条は2019年2月1日に現に製造している安全帯又は現に存する安全帯について「なお従前の例による」、第3条はそれ以外で2019年8月1日前に製造された安全帯又は同日に現に製造している安全帯について「なお従前の例によることができる」とし、どちらも期限は2022年1月1日までの間です(墜落制止用器具の規格 附則第2条・第3条)。

リーフレット p.2の工程表には「使用可能(2022(平成34)年1月1日まで)」と「完全施行日(1月2日~)」の記載があります(厚労省リーフレット p.2)。「1月2日から」は工程表の言い方で、条文は「一月一日までの間」です。

落下の衝撃がかかったものは使わない

期限とは別に、ガイドラインには廃棄基準があります。「1 一度でも落下時の衝撃がかかったものは使用しないこと。2 点検の結果、異常があったもの、摩耗・傷等の劣化が激しいものは使用しないこと」です(基発0622第2号 別添1 第7)。リーフレット p.6にも1の同じ文があります(厚労省リーフレット p.6)。

点検は「定期点検の間隔は半年を超えないこと」とされ、ガイドライン第6・第7で確認できる範囲では耐用年数の年数は書かれていません(基発0622第2号 別添1 第6 1・第7)。

フルハーネス型を使う作業には特別教育が要る

フルハーネス型を使う作業のうち一定のものは、特別教育の対象です。安衛則第36条第41号は「高さが二メートル以上の箇所であつて作業床を設けることが困難なところにおいて、墜落制止用器具(令第十三条第三項第二十八号の墜落制止用器具をいう。第百三十条の五第一項において同じ。)のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務(前号に掲げる業務を除く。)」を挙げていて(労働安全衛生規則 第36条第41号)、リーフレットは時間を「学科4.5時間、実技1.5時間」としています(厚労省リーフレット p.1)。対象は「作業床を設けることが困難なところ」に限られ、前号のロープ高所作業に係る業務は除かれています。科目の中身や受講を省略できる人、元請としての受講管理はフルハーネス特別教育の記事で詳しく扱っています。

安全帯とフルハーネスに関する情報まとめ

  • 名称:安全帯は平成31年2月1日より前の法令の名前。いまは墜落制止用器具(安衛則は要求性能墜落制止用器具)で、現場の呼称は差し支えない
  • 入る型:胴ベルト型(一本つり)とハーネス型(一本つり)。U字つりは墜落制止用器具に入らず、使うならフルハーネス型と併用
  • 高さ:6.75mを超える箇所は告示でフルハーネス型。5mはガイドラインの前提条件つきの目安、2mは柱上作業等でのリーフレットの推奨
  • ショックアブソーバ:腰の高さ以上に掛けられるなら第一種、足下に掛けるならフルハーネス型+第二種。使用可能な最大質量は85kg又は100kg
  • 条文と期限:作業床→囲い等→防網・器具等の順。旧規格品は2022年1月1日までで猶予は終了
  • 特別教育:作業床を設けることが困難な2m以上の箇所でフルハーネス型を使う作業は学科4.5時間・実技1.5時間

以上が安全帯とフルハーネスに関する情報のまとめです。

「何mからハーネスか」と聞かれたら、作業床と囲いがとれない場面かを確かめてから、数字に出どころを添えて答える。この順なら条文と食い違わないと、僕は考えています。

Q. 現場で「安全帯」と呼んでもいいですか?

呼んでかまいません。リーフレットは、建設現場等で従来からの呼称を使うことは差し支えないと注記しています(厚労省リーフレット p.1)。

Q. 胴ベルト型を選べる場面は残っていますか?

胴ベルト型(一本つり)は墜落制止用器具に入ります。フルハーネス型の着用者が地面に到達するおそれのある場合に使え、6.75mを超える箇所では使えません(基発0622第2号 別添1 第4 1(1)/墜落制止用器具の規格 第2条第1項)。入らないのはU字つりの胴ベルトです。

Q. 5mを超えたらフルハーネス型が法令上の義務ですか?

5mはガイドライン第4 2(4)の前提条件つきの目安と、リーフレット p.5の推奨に出てくる数字で、法令の義務の線ではありません。告示が「でなければならない」としているのは6.75mを超える高さです(墜落制止用器具の規格 第2条第1項)。

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