実施設計とは?基本設計との違いと現場監督が見落とす落とし穴

  • 実施設計って要は詳細図のこと?
  • 基本設計と実施設計の線引きがあいまいなまま打合せに出てる
  • 実施設計図と施工図、どっちを誰が描くのか毎回もめる
  • 見積り出せと言われたけど、この図面じゃ数量が拾えない
  • 実施設計が終わってないのに着工する現場、あれ何なの
  • 設計料って基本設計と実施設計でどう分かれてるの

上記の様な悩みを解決します。

実施設計は、基本設計で固まった建物の方向性を、工事費の見積りと実際の施工が成立するところまで詳細に落とし込む設計段階です。基本設計との境目があいまいなまま打合せに出て、この図面がどこまで確定しているものなのか分からず困っている方は多いはず。今回は基本設計との違い・実施設計図に書かれている内容・設計と実施設計等の業務量の配分といった基本を押さえた上で、業務報酬基準(令和6年国土交通省告示第8号)別添一が実施設計の業務概要を「工事施工者が設計図書の内容を正確に読み取り、設計意図に合致した建築物の工事を的確に行うことができ、また、工事費の適正な見積りができるように」という、施工者を主語にした一文から書き起こしている事実まで、施工管理の目線で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、実施設計図と施工図の違いに戸惑っている方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

実施設計とは?工事する人が読んで積算と施工ができる状態にする段階

実施設計とは、結論「基本設計で決まった方針を、工事費が拾えて工事が実施できるところまで具体化し、実施設計図書を作る段階」のことです。設計の中身を詰める作業というより、読み手である施工者と積算担当が困らない状態まで持っていく作業だと捉えると、現場から見た位置づけがはっきりします。

この捉え方は僕の感想ではなく、公式の業務概要がそう書いています。国土交通省「改正業務報酬基準説明会 説明資料(新しい業務報酬基準(令和6年国土交通省告示第8号)について)」P65の5-2 標準業務(別添一)②は、実施設計の業務概要を「工事施工者が設計図書の内容を正確に読み取り、設計意図に合致した建築物の工事を的確に行うことができ、また、工事費の適正な見積りができるように、基本設計に基づいて設計意図をより詳細に具体化し、実施設計図書を作成するために必要な業務」と定めています。主語が発注者でも設計者でもなく、工事施工者から書き始められているところがこの定義の特徴です。

実施設計図書は「設計図書」の一種

では実施設計で作る実施設計図書とは何かというと、その上位にある「設計図書」という語の中身は建築士法に定義があります。建築士法第2条第6項は、設計図書を「建築物の建築工事の実施のために必要な図面(現寸図その他これに類するものを除く。)及び仕様書」と規定し、設計を「その者の責任において設計図書を作成すること」と規定しています(e-Gov法令検索・建築士法)。図面と仕様書がセットで設計図書であり、そこから現寸図の類は外れている、という線引きです。

その設計図書を作る業務が、業務報酬基準の中でどう位置づけられているかも押さえておくと話が早いです。同説明資料P49の「3 業務報酬基準の構成」では、別添一の標準業務を「設計又は工事監理に必要な情報が提示されている場合に、一般的な設計受託契約又は工事監理受託契約に基づいて、その債務を履行するために行う業務」とし、設計については「①基本設計 ②実施設計 ③工事施工段階で設計者が行うことに合理性がある実施設計」という並びで整理しています。実施設計は設計の3つの区分のうちの真ん中、という構図です。

現場の実感に引き直すと、実施設計という言葉の周辺で迷ったときは、この3点に戻れば大体片付きます。

  • 誰のための図面か:工事施工者が読み取って施工と見積りができる状態にするための図面
  • 何でできているか:図面と仕様書(現寸図その他これに類するものは除く)
  • どの区分の話か:基本設計・実施設計・工事施工段階の実施設計のうち、どれを指しているか

設計という業務全体がどう組み立てられているかは、こちらで整理しています。

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基本設計と実施設計の違いは「決める」と「描き切る」

基本設計と実施設計の線引きがあいまいなまま打合せに出てしまう、というのは現場監督の側からするとかなり気まずい状態です。ただこれは感覚で覚えるものではなく、公式に業務概要と主な業務内容が別々に定義されているので、そこを並べてしまえば済みます。

以下の対比は、いずれも国土交通省「改正業務報酬基準説明会 説明資料」P65の5-2 標準業務(別添一)②に書かれている業務概要と主な業務内容をそのまま並べたものです。基本設計側も実施設計側も、同じ資料の同じページが出どころになります。

区分 業務概要 主な業務内容
基本設計 建築主等から提示された条件を設計条件として整理したうえで、建築物の基本設計図書を作成するために必要な業務 設計条件等の整理、法令上の諸条件の調査及び関係機関との打合せ、上水道等のインフラ供給状況の調査及び関係機関との打合せ、基本設計方針の策定、基本設計図書の作成、概算工事費の検討、基本設計内容の建築主等への説明等
実施設計 工事施工者が設計図書の内容を正確に読み取り、設計意図に合致した建築物の工事を的確に行うことができ、また、工事費の適正な見積りができるように、基本設計に基づいて設計意図をより詳細に具体化し、実施設計図書を作成するために必要な業務 要求等の確認、法令上の諸条件の調査及び関係機関との打合せ、実施設計方針の策定、実施設計図書の作成、概算工事費の検討、実施設計内容の建築主等への説明等

並べると違いがくっきりします。基本設計は「建築主等から提示された条件を設計条件として整理したうえで」から始まり、インフラ供給状況の調査が業務内容に入っています。つまり与件を整理して建物の方向性を決める段階です。一方の実施設計は「要求等の確認」から始まり、基本設計に基づいて「設計意図をより詳細に具体化し」と書かれています。すでに決まった方向性を、読み手が使える密度まで描き切る段階だということです。決めるのが基本設計、描き切るのが実施設計、と覚えておくと打合せで取り違えません。

時期の前後も、この定義から読み取れます。実施設計の業務概要には「基本設計に基づいて」と書かれている(同説明資料P65)ので、基本設計が先、実施設計が後という順序は動きません。設計事務所がまだ実施設計中ですと言っているときは、建物の方向性はすでに固まっていて、それを図面と仕様書に落とす作業が続いている状態だと読めます。逆に言えば、この段階で方向性そのものを動かす話を持ち込むと、描き切る作業がやり直しになります。図面がいつもらえるのかを聞くときは、実施設計図書の作成がどこまで進んでいるのかを聞くほうが、答えが返ってきやすいはずです。

「詳細設計」という呼び方との関係

実務では実施設計のことを詳細設計と呼ぶ人がいて、これがまた混乱のもとになります。ここは呼び方の問題として割り切るのが早いです。同説明資料P49の標準業務の並びに置かれているのは「①基本設計 ②実施設計 ③工事施工段階で設計者が行うことに合理性がある実施設計」の3つで、詳細設計という区分は置かれていません。契約書や報酬の話をしているときは実施設計という語に読み替えて確認したほうが安全で、特に設計料の内訳を確認する場面では呼び方の揺れが金額の揺れに直結します。

僕の整理では、基本設計と実施設計の違いを説明できるかどうかは、図面を受け取る側にとって「この図面はもう動かないのか、まだ動くのか」を自分で判定できるかどうかとイコールです。方向性の話をしている段階の図面に施工の精度を求めても、設計側は答えようがありません。

実施設計で何が決まるのか|公式に並んでいる6つの業務

実施設計図って、どこまで描いてあるのが普通なの。この疑問に対しては、成果物の図面名を数えるより、業務内容のほうから見たほうが外しません。図面の名前は案件ごとに違いますが、やっている業務の並びは公式に決まっているからです。

国土交通省「改正業務報酬基準説明会 説明資料」P65が挙げる実施設計の主な業務内容は、次の6つです。現場から見ると、それぞれが何が起きている時間なのかを対応させておくと、設計定例で今どこをやっているのかが読めるようになります。

  • 要求等の確認:基本設計で決めた方針に対して、建築主側の要求がずれていないかを確かめ直している時間
  • 法令上の諸条件の調査及び関係機関との打合せ:確認申請や各種協議に向けて、条件を詰めている時間
  • 実施設計方針の策定:どこまでをどの精度で描くか、設計側の方針を固めている時間
  • 実施設計図書の作成:図面と仕様書を実際に描き起こしている、最も長い時間
  • 概算工事費の検討:描いた内容で工事費が収まるかを確かめている時間
  • 実施設計内容の建築主等への説明等:詰めた内容を建築主に説明し、了解を取っている時間

なお、実施設計図書として何が出てくるかは案件ごとに違いますが、建築士法第2条第6項が設計図書を「建築物の建築工事の実施のために必要な図面(現寸図その他これに類するものを除く。)及び仕様書」と定めている(e-Gov法令検索・建築士法)とおり、構成は図面と仕様書の2本立てです。配置図・平面図・断面図・各種詳細図といった図面と、仕様書が揃っているか、という見方をするとリストの不足に気づきやすくなります。

分野の分かれ方も法律の側に定義があります。建築士法第2条第7項は、構造設計を「基礎伏図、構造計算書その他の建築物の構造に関する設計図書で国土交通省令で定めるもの」の設計、設備設計を建築設備の「各階平面図及び構造詳細図その他の建築設備に関する設計図書で国土交通省令で定めるもの」の設計と規定しています(e-Gov法令検索・建築士法)。意匠だけでなく構造と設備がそれぞれ設計図書を持つ、という構図です。

建築主への説明が業務内容として明記されている点は覚えておく価値があります。設計側が説明と了解取りの時間を持っているということは、そこで内容が動く可能性があるということでもあるからです。建築主という立場が何を決める人なのかは、こちらに整理しています。

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意図伝達は「工事施工段階で設計者が通常行う業務」

設計意図の伝達というと書類上の話に聞こえますが、公式の位置づけはもっと現場寄りです。同説明資料P65は意図伝達を「工事施工段階において、設計者が設計意図を正確に伝えるために、実施設計図書に基づき、質疑応答、説明、工事材料・設備機器等の選定に関する検討・助言等を行う業務であり、工事施工段階で設計者が通常行う業務とされているもの」と説明しています。質疑応答も、材料や設備機器の選定に関する助言も、標準的な業務の中に入っているということです。

同資料P65の解説では、別添一の標準業務について「設計業務(基本設計、実施設計)について、それぞれ業務内容及び成果図書を規定するとともに、工事施工段階で設計者が行う事に合理性のある実施設計に関する業務及び工事監理業務の業務内容について規定。」としています。工事に入ってからも実施設計に関する業務が続く前提で組まれている、という構造です。

現場目線で言えば、この位置づけを知っているかどうかで質疑の出し方が変わります。納まりの質疑を出すのは設計の仕事を増やす行為ではなく、もともと想定されている業務の範囲に投げているだけです。逆に、投げずに現場で判断してしまうと、あとで設計意図と違うと言われたときに拠り所がなくなります。構造側の設計がどう進むのかを押さえておくと、質疑の宛先を間違えにくくなります。

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実施設計図と施工図はどこで切り替わるのか

ここがこの記事の核心で、現場で一番もめるところでもあります。実施設計図と施工図、どっちを誰が描くのか。結論から言うと、実施設計図は法に定義のある「設計図書」の側の話で、施工図はその定義の外にある言葉です。同じ土俵に並べて比べるものではない、という前提を持つだけで議論がだいぶ整理されます。

もう一度、建築士法第2条第6項を見ます。設計図書とは「建築物の建築工事の実施のために必要な図面(現寸図その他これに類するものを除く。)及び仕様書」であり、設計とは「その者の責任において設計図書を作成すること」です(e-Gov法令検索・建築士法)。注目したいのは、現寸図その他これに類するものがわざわざ除かれている点です。工事を実施するために実際に必要な図でも、現寸図は設計図書に含めない。つまり法の側も、工事に必要な図面のすべてを設計図書として抱え込んではいません。

施工図の範囲を法令が定めているわけではないので、ここから先は契約と慣行の領域になります。そのうえで両者を分けて考えると、こう整理できます。

観点 実施設計図(設計図書) 施工図
描く主体 設計者(その者の責任において設計図書を作成する) 施工者側
目的 工事施工者が読み取って施工と見積りができるようにする 実際に施工できる手順・寸法に翻訳する
法律上の位置づけ 建築士法第2条第6項の設計図書にあたる 建築士法に定義はない
照合の基準になるか 工事監理の照合対象 照合の基準そのものではない

照合の基準になるかどうか、という最後の行が実務では一番効きます。建築士法第2条第8項は、工事監理を「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」と定義しています(e-Gov法令検索・建築士法)。照合の相手はあくまで設計図書です。監理者が図面どおりじゃないと言うときの図面も、原則としてここを指しています。

もう一点、実施設計図と施工図では、そもそも完成させたい状態が違います。実施設計図が目指すのは、業務概要にあるとおり工事施工者が内容を正確に読み取れて、工事費の適正な見積りができる状態です(国土交通省「改正業務報酬基準説明会 説明資料」P65)。読めること、拾えることが到達点になっている、と言い換えられます。対して施工図は、実際にその形をつくるための手順と寸法に落ちているかどうかが到達点です。どちらも工事のために必要な図ですが、完成の判定基準が別なので、片方の基準でもう片方を評価すると話がかみ合いません。設計図書の定義から現寸図その他これに類するものが外されているのも、この違いの延長線上にあると読むと腑に落ちます。

描く主体でもめるときは、たいてい対象が境界の上にある図です。躯体の割付、納まりの詳細、製作図に近い部分がそれにあたります。このとき手がかりになるのが、その図が無いと工事費の見積りが成立しないのか、それとも施工の段取りが組めないだけなのか、という問いです。前者なら設計図書の側で確定していてほしい情報、後者なら施工者側で組み立てる情報、と仕分けられます。

質疑を自分で決めていいのか迷ったとき

判断の軸は、設計意図に関わるかどうかです。設計図書に書かれている内容の解釈が割れているなら、それは設計側に戻す質疑になります。質疑応答は意図伝達の業務内容に入っています(国土交通省「改正業務報酬基準説明会 説明資料」P65)。一方、書かれている内容を実現する手順や割付の話であれば、施工図の領域として施工者側で組み立てることになります。

そして是正が必要になった場合の流れも法律に書かれています。e-Gov法令検索で確認できる建築士法第18条第3項は「建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に対して、その旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、当該工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。」と定めています(e-Gov法令検索・建築士法)。指摘、是正の求め、建築主への報告という順序です。

図面の種類ごとに何を表しているのかは、こちらが詳しいです。

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個人的には、実施設計図と施工図の境目を人に説明できるようになると、現場での言い方が変わると思っています。誰が描くかでもめるのではなく、その図が設計意図を示すものなのか、施工手順を示すものなのかで切り分ければ、話は自然と落ち着くところに落ちます。

実施設計が固まらないまま着工すると現場で何が起きるか

実施設計が終わっていないのに着工する現場がある、見積りを出せと言われたけれど数量が拾えない。この2つは別々の不満に見えて、根は同じです。実施設計の業務概要には「工事費の適正な見積りができるように」という目的が最初から入っています(国土交通省「改正業務報酬基準説明会 説明資料」P65)。見積りが成立しない図面は、その目的に対してまだ途中だということになります。

図面が固まりきらないまま工事に入ると、しわ寄せは次のような形で現場に出てきます。

  • 拾えない部分を想定で見込むことになり、確定後に差額の話が発生する
  • 納まりが決まらないまま施工図を起こすため、決定を待つ工程と手戻りが積み上がる
  • 質疑の件数が増え、回答待ちが工程のクリティカルパスに乗ってくる
  • 設計図書との照合を求められたとき、何と照合すべきかが関係者の間で揃わない

「どこまで描くか」は契約書面に書く義務がある

ここで押さえておきたいのが、作成する設計図書の種類は契約の段階で書面に記載する決まりになっている、という点です。建築士法第22条の3の3第1項は、延べ面積が三百平方メートルを超える建築物の新築に係る設計受託契約又は工事監理受託契約の当事者について「契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。」と定め、その第1号に「設計受託契約にあつては、作成する設計図書の種類」を挙げています(e-Gov法令検索・建築士法第22条の3の3第1項第1号)。延べ面積300平方メートル超の新築という条件つきの規定です。

つまり、この図面には何が描いてあるべきなのかという問いには、誰が悪いかを詰める前に戻れる場所があります。契約書面に何を作ると書いてあるか、です。現場で不足を感じたとき、感覚で足りないと言うより、契約で交わされた設計図書の種類に対して不足しているのかどうかを確認するほうが、話が前に進みやすくなります。

是正の求めについては建築士法第18条第3項(e-Gov法令検索・建築士法)の流れになります。工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときに、監理者が指摘し、是正を求め、従わないときは建築主に報告する。この順序が法律に書かれている以上、現場としては設計図書の側の確定度を早い段階で確認しておく意味が大きいです。

基本設計より実施設計等のほうが業務量は多い|出典のある業務比率

設計の中身が基本設計と実施設計でどう分かれているのか、という話には、出典のある数字があります。国土交通省「改正業務報酬基準説明会 説明資料」P94の5-4-3 一部の業務のみを行う場合①は「一部の業務のみを行う場合でも略算方法を用いて業務報酬を算定する際の参考として、ガイドラインにおいて、実態調査に基づく業務比率表を提示。」としており、そこに掲げられている業務比率表が次の数字です。

業務分野 区分 基本設計 実施設計等
総合 第1類 28% 72%
構造 第1類 24% 76%
設備 第1類 23% 77%
総合 第2類 29% 71%
構造 第2類 22% 78%
設備 第2類 25% 75%

(出典:国土交通省「改正業務報酬基準説明会 説明資料」5-4-3 一部の業務のみを行う場合① P94)

第1類と第2類の区分については、同資料P79の注2が「第1類は、標準的な設計等の建築物が通常想定される用途を、第2類は、複雑な設計等が必要とされる建築物が通常想定される用途を記載しているものであり、略算方法による算定にあたっては、設計等の内容に応じて適切な区分を適用すること。」としています。建物の用途と設計の複雑さで、どちらの区分を当てるかが変わるということです。

読み違えやすいのは、この数字が何の比率なのかという点です。同資料P94は「業務量 = 設計に係る標準業務量×業務比率(下表)+ 一部の業務のみを行うことに伴い発生等する業務量(個別算定)」という式を示しており、比率がかかっているのは業務量です。金額の内訳を直接示した表ではありません。また同ページの解説は、実施設計等にはいわゆる意図伝達の業務を含むとしたうえで、その理由を「実施設計業務と不可分であると判断」と記しています。実施設計等の側には、工事施工段階の意図伝達の分も入っているということです。

実施設計だけ別の事務所が引き継ぐ場合

この業務比率表は、そもそも一部の業務のみを行う場合の算定の参考として提示されているものです(同資料P94)。基本設計と実施設計を別の主体が担うケースがあることを前提にした仕組みだ、と読めます。現場としては、途中で担い手が変わること自体より、どこまでを誰が作る契約になっているかを確認できているかのほうが重要になります。設計を担う側の業務範囲については、こちらも押さえておくと理解が早いです。

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2025年4月以降、実施設計の業務は増えている

確認申請に出す図書がどう増えたのか、それに省エネの計算まで実施設計に含まれるようになったのか。この2つは、2025年4月の制度改正でまとめて動いた部分です。

国土交通省のチラシ「設計者・工務店の皆様へ」(別紙1・発行:国土交通省 住宅局 参事官(建築企画担当)付)は表面で「もうすぐ始まります!/2025年4月から/ルールを改正します!/3つの改正するルール <1つめ> 全ての新築で省エネ基準適合を義務化!」と告知しています。適用の基準は裏面に書かれており、「2025年4月以降に工事に着手するものが対象です。」とされています。着工の時点が基準だということです。

同じチラシの裏面には、確認申請まわりの変更も整理されています。「<2つめ>木造2階の戸建住宅等の建築確認手続きを見直し!」として、建築確認が必要な対象範囲の拡大、審査省略の対象範囲の限定、そして「構造・省エネ関連の図書等の提出が必要になります。」の3点が挙げられており、新2号建築物について「確認申請書・図書+構造関係規定等の図書(追加)+省エネ関連の図書(追加)」と示されています(国土交通省チラシ「設計者・工務店の皆様へ」裏面)。新2号建築物では、確認申請の図書に構造関係規定等の図書と省エネ関連の図書が加わる、ということです。

業務報酬基準の側も、これに合わせて動いています。国土交通省「改正業務報酬基準説明会 説明資料」P45の2 改正の経緯とポイント②は、旧基準の課題として「令和7年4月(予定)に省エネ基準への適合の全面義務化が施行」を挙げ、新基準での対応として「省エネ基準への適合の全面義務化に対応した業務量を設定(標準業務内容には省エネ基準への適合の全面義務化に対応した業務を含む)」としています。制度で増えた手間が、業務量として基準に織り込まれたという流れです。

現場の感覚に翻訳すると、押さえておく点は3つに絞れます。

  • 適用の判定は工事に着手する時点で見る(2025年4月以降に工事に着手するものが対象)
  • 新2号建築物では構造関係規定等の図書と省エネ関連の図書が追加される
  • 増えた業務は標準業務内容の側に含めて業務量が設定されている

設計が確認申請までを見据えてどう組み立てられているかは、企画段階から見ると流れが掴みやすいです。

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実施設計に関する情報まとめ

  • 実施設計とは:工事施工者が読み取って施工と見積りができる状態まで具体化し、実施設計図書を作る段階
  • 基本設計との違い:与件を整理して方向性を決めるのが基本設計、それを描き切るのが実施設計
  • 何が決まるか:要求等の確認から建築主等への説明までの6つの業務。意図伝達は工事施工段階の業務として位置づけられている
  • 施工図との境目:設計図書は建築士法第2条第6項に定義があり、施工図は法の定義の外。描く主体と目的で切り分ける
  • 固まらないまま着工すると:見積りの前提が揺れ、手戻りと待ちが積み上がる。どこまで描くかは契約書面の記載事項
  • 業務量の配分:業務比率表では実施設計等が総合第1類で72%。ただし業務量の比率であって金額の比率ではない
  • 2025年4月以降:省エネ基準適合の全面義務化と新2号建築物の提出図書追加で、実施設計側の業務が増えている

以上が実施設計に関する情報のまとめです。

実施設計を「詳細図を描く段階」と覚えてしまうと、自分の手元の図面がどこまで確定しているのかを判定できません。読み手である施工者が積算と施工をできる状態にするための段階だと捉え直すと、足りないと感じたときに何を確認すればいいかが見えてきます。まずは自分の現場で、契約上どの設計図書を作ることになっているのかを一度確認してみてください。そのうえで図面の役割ごとの違いや、海外の設計段階の区分との対応も押さえておくと、会議で段階の話が出たときに迷わなくなるはずです。

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