- コンクリートのせん断強度って結局どれくらい?
- 圧縮強度と比べてどのくらい弱いの?
- 引張強度やせん断とは何が違うの?
- なんでコンクリートはせん断で割れるの?
- あばら筋・帯筋はせん断とどう関係してる?
- 設計ではせん断強度をどう扱ってるの?
- スラブや基礎のパンチングって何?
上記の様な悩みを解決します。
コンクリートは「圧縮に強い材料」として知られますが、せん断(ずらす力)に対しては驚くほど弱いです。ここを理解していないと、なぜ梁にあばら筋がびっしり入るのか、なぜスラブや基礎で急に破壊が起きるのかがピンときません。今回は定義・圧縮との強度差・破壊のしくみという基本を押さえた上で、施工管理目線で「せん断補強筋がなぜ主役なのか」「設計ではどう扱うのか」まで整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
コンクリートのせん断強度とは?
コンクリートのせん断強度とは、結論「コンクリートがずれる力(せん断)に耐えられる限界の強さで、圧縮強度に比べて極端に低い」ものです。目安として圧縮強度のおおむね1/10前後しかなく、単独では当てにできない、というのが実務上の捉え方です。
コンクリートは押しつぶす力(圧縮)にはめっぽう強い一方、引っ張る力(引張)やずらす力(せん断)にはとても弱い、方向によって性格が大きく変わる材料です。せん断で壊れるときも、実際にはコンクリート内部に生じた引張の力(斜張力)で割れることが多く、後述するように引張の弱さとせん断の弱さは根っこでつながっています。
せん断という力そのものの考え方はこちらが詳しいです。

僕としては、施工管理が押さえるべき本質は「コンクリートはせん断に弱いから、鉄筋で補ってやる必要がある」という一点だと思っています。せん断強度の正確な数値そのものより、この弱点を知っているかどうかが、配筋検査でせん断補強筋を見るときの目線を決めます。数字を覚えるより、まず性格を掴むのが先です。
圧縮・引張・せん断の強度の関係
コンクリートの強度は、力の向きによって大きく差があります。同じコンクリートでも、圧縮・引張・せん断で耐えられる強さがまるで違う、というのが最大の特徴です。
| 力の種類 | 強さの目安 | 性格 |
|---|---|---|
| 圧縮強度(Fc) | 基準(例 21〜30N/mm²) | コンクリートが最も得意 |
| 引張強度 | 圧縮の約1/10 | 非常に弱い(割裂試験で測る) |
| せん断強度 | 圧縮の1/10前後 | 弱い(実質は引張で割れる) |
設計の基準になるのは圧縮強度(設計基準強度Fc)で、コンクリートの強さはまずここで語られます。引張強度はそのおよそ1/10しかなく、割裂試験(供試体を横から押しつぶして割る試験)で測定します。せん断強度も同じく低い水準で、コンクリート単独ではほとんど当てにしない、という前提で設計が組まれています。
設計基準強度Fcの考え方はこちらで補えます。

引張と割裂の関係を深掘りしたい場合はこちらが参考になります。

僕の感覚だと、「コンクリートは圧縮の1割しか引張・せん断に耐えない」という比率感を持っておくと、構造の考え方がすっと入ってきます。だからこそ引張は鉄筋に任せ、せん断もせん断補強筋で受ける。材料強度全体の位置づけはこちらでも整理しています。

コンクリートがせん断で壊れるしくみ
コンクリートのせん断破壊は、直感と少しずれます。ずらす力で「ずるっと」壊れるイメージを持ちがちですが、実際にはせん断力が引き起こす斜め方向の引張(斜張力)でひび割れが入り、そこから壊れることが多いです。
梁にせん断力が働くと、部材の中には45度方向の斜張力が発生します。コンクリートは引張に弱いので、この斜張力に耐えきれず斜めのひび割れ(斜めクラック)が生じ、進展すると一気に破壊に至ります。これがせん断破壊が「もろく・急に起こる」と言われる理由で、じわじわ変形して粘る曲げ破壊とは性格が大きく異なります。
- 斜張力破壊:斜め45度方向の引張で斜めクラックが入り破壊する
- せん断圧縮破壊:斜めクラックの先端側のコンクリートが圧壊する
- 付着割裂:鉄筋まわりのコンクリートが割れて力が伝わらなくなる
- パンチングせん断:スラブや基礎が柱まわりで押し抜かれる
このうち、梁で問題になる代表が斜張力破壊です。せん断力と曲げの関係を図で追うと理解が進みます。

正直なところ、せん断破壊が怖いのは「予兆が少なく、急に壊れる」点です。曲げ破壊なら大きくたわんで危険が見えますが、せん断破壊は変形が小さいまま脆く壊れる。だから設計では「曲げで先に壊れ、せん断では壊れさせない」考え方を取ることが多く、せん断に対しては余裕を大きく見ます。せん断スパン比によって壊れ方が変わる話はこちらが詳しいです。

許容せん断応力度と設計での扱い
設計で使うのは「せん断強度そのもの」ではなく、そこに安全率を見込んだ「許容せん断応力度」です。コンクリートの許容せん断応力度は、設計基準強度Fcから決まります。
日本建築学会の鉄筋コンクリート構造計算規準では、コンクリートの長期許容せん断応力度fsを、おおむねFc/30程度(かつ規準で定める上限以下)とし、短期はその1.5〜2倍程度として扱います。例えばFc21なら長期の許容せん断応力度は1N/mm²にも満たない小さな値で、いかにコンクリートがせん断を当てにされていないかが数字からも分かります。正確な式・上限値は最新の規準で必ず確認してください。
| 区分 | コンクリートの許容せん断応力度fs | 補足 |
|---|---|---|
| 長期 | おおむねFc/30程度(規準の上限以下) | 常時荷重に対する値 |
| 短期 | 長期の1.5〜2倍程度 | 地震・風などに対する値 |
断面に働くせん断力そのものの考え方は、断面力として整理すると分かりやすいです。

実務だと、この許容せん断応力度がここまで小さいことを知っておくと、「コンクリートだけでせん断に耐える」という発想が最初から成り立たないことが腹落ちします。設計者はコンクリートの負担分をわずかしか見込まず、足りない分はせん断補強筋に受け持たせる。この役割分担が、次のあばら筋・帯筋の話につながります。
せん断補強筋が主役になる
コンクリートのせん断強度が低いぶん、実際にせん断を受け持つ主役はせん断補強筋です。梁のあばら筋(スターラップ)や柱の帯筋(フープ)が、これにあたります。
あばら筋・帯筋は、部材の主筋を取り囲むように一定間隔で配置される鉄筋で、斜めクラックが開こうとするのを縫い止める役割を持ちます。コンクリートが負担できるわずかなせん断に、この補強筋が受け持つ分を足し合わせて、必要なせん断耐力を確保する、というのが設計の基本的な組み立てです。だから配筋検査では、あばら筋・帯筋のピッチ(間隔)と径が厳しくチェックされます。
- あばら筋(スターラップ):梁のせん断補強筋、斜めクラックを止める
- 帯筋(フープ):柱のせん断補強筋、地震時のせん断とじん性を確保
- ピッチ管理:間隔が広いとせん断耐力が不足しやすい要注意箇所
- 端部の密配:せん断力が大きい部材端部でピッチを詰める
かぶり厚さや定着とあわせて配筋の意味を理解すると、検査の目線が変わります。

現場目線で言えば、あばら筋・帯筋のピッチは「せん断強度の低さを鉄筋で埋めている現場の証拠」です。特に部材端部でピッチを詰めるのは、そこにせん断力が集中するからで、意味を知らずに「なんで端だけ細かいの」と思っていたのが、せん断の理屈を掴むと一本につながります。配筋検査でピッチと本数を丁寧に見るのは、そのまません断安全性を担保する行為だと捉えておくと効きます。
現場・設計での注意点
最後に、コンクリートのせん断強度まわりで押さえておきたい注意点を整理します。
- コンクリート単独のせん断強度を過信しない(主役は補強筋という前提を崩さない)
- せん断破壊は脆性的で予兆が少ない(曲げ破壊より危険という認識を持つ)
- 開口まわり・段差・柱際は応力が集中しやすくせん断の弱点になりやすい
- スラブ・基礎はパンチングせん断(押し抜き)に注意、柱まわりの補強を確認
- あばら筋・帯筋のピッチと定着は配筋検査の最重要ポイント
せん断だけでなく曲げとの関係で見ると、部材の壊れ方の全体像がつかめます。

現場目線で言えば、せん断の弱点は「集中する場所」に出ます。開口の隅、梁の端部、基礎スラブの柱際など、応力が集まるところにせん断のリスクが偏るので、配筋検査ではこうした部位を重点的に見ると効率がいいです。コンクリートは圧縮に強くてもせん断には脆い、この非対称な性格を頭に入れておくだけで、どこを警戒すべきかの勘所が変わってきます。
コンクリートのせん断強度に関する情報まとめ
- せん断強度とは:コンクリートがずれる力に耐える限界で、圧縮の1/10前後と極端に低い
- 圧縮・引張・せん断の関係:圧縮が基準、引張とせん断はその約1割で非常に弱い
- 壊れるしくみ:せん断力が生む斜張力で斜めに割れる(引張の弱さと同根)、脆性的で急に壊れる
- 許容せん断応力度:長期はおおむねFc/30程度、短期は1.5〜2倍程度(正確な値は規準で確認)
- せん断補強筋:あばら筋・帯筋が主役、ピッチと径でせん断耐力を確保
- 注意点:単独強度を過信しない、脆性破壊、応力集中部、パンチング、配筋検査
以上がコンクリートのせん断強度に関する情報のまとめです。
コンクリートのせん断強度は、突き詰めると「圧縮に強い材料の、意外な弱点」です。圧縮の1割ほどしかせん断に耐えられず、しかも脆く急に壊れる。だからこそ設計はせん断補強筋にその役割を託し、現場は配筋検査でピッチと定着を厳しく見ます。数値を丸暗記するより、「コンクリートはせん断に弱い、だから鉄筋で補う」という骨格を掴んでおくことが、現場で一番効くはずです。
コンクリートのせん断強度に関するよくある質問
Q1:コンクリートのせん断強度は圧縮強度のどれくらいですか?
明確な一律の比率があるわけではありませんが、実務上の目安として圧縮強度のおおむね1/10前後と捉えられています。引張強度も同じく約1/10で、せん断破壊が実際には引張(斜張力)で起きることを考えると、両者が近い水準なのは自然です。いずれにせよコンクリート単独のせん断負担は小さく、設計では大きく当てにしない前提で組まれます。
Q2:せん断強度と許容せん断応力度は同じものですか?
違います。せん断強度は材料が壊れる限界の強さ、許容せん断応力度はそこに安全率を見込んで下げた「設計で使ってよい上限値」です。コンクリートの長期許容せん断応力度はおおむねFc/30程度と非常に小さく、材料の壊れる強さよりかなり内側に線を引いています。設計計算に使うのは後者の許容せん断応力度のほうです。
Q3:なぜ梁の端部だけあばら筋が密になっているのですか?
部材の端部(支点近く)はせん断力が最も大きくなるためです。せん断力が大きい場所ほど斜めクラックが入りやすいので、あばら筋のピッチを詰めてせん断耐力を上げています。逆に曲げが支配的な中央部ではピッチを広げることもあります。端部の密配はせん断の集中に対応した配筋なので、配筋検査ではこの部位のピッチと本数を特に丁寧に確認します。
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