- 一級建築士になるには結局なにが必要なの?
- 二級建築士と何が違うの?
- 自分でも受験できる?高卒・文系でも取れる?
- 受験に実務経験は要るの?要らないの?
- 免許登録のときに実務経験が要るって本当?
- 現場監督の経験は実務にカウントされるの?
- どういう順番で何年かかるの?
- 取ったら年収はどれくらい?
- 施工管理技士と一級建築士はどう違うの?
- 現場側の自分が取る意味あるの?
上記の様な悩みを解決します。
一級建築士は建設業の資格の中でも最難関クラスで、設計だけでなく施工管理のキャリアにも大きく効いてくる国家資格です。2020年(令和2年)と2026年(令和8年度)にかけて受験資格のルールが変わっており、ネット上には古い情報も混ざっているので、ここでは最新の制度を前提に「なるには何が必要か」を整理します。定義・受験資格・合格までの流れといった基本に加えて、施工管理者がとりわけ気になる「現場の実務経験は登録要件にカウントされるのか」「施工管理技士とどう違うのか」まで、現場で働く人の目線でまとめました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
一級建築士とは?二級建築士との違い
一級建築士とは、結論「すべての規模・用途の建築物を設計・工事監理できる国家資格」のことです。
建築士法に基づく資格で、建築物の設計(図面=設計図書をつくる業務)と工事監理(図面どおりに工事が進んでいるかをチェックする業務)を担います。二級建築士は高さ・面積・構造で扱える建物が制限されますが、一級建築士にはその制限がありません。学校・病院・庁舎・大規模マンションといった公共性の高い大きな建物は、一級建築士でなければ設計できないわけです。
二級建築士との違いを表にすると次の通りです。
| 項目 | 一級建築士 | 二級建築士 |
|---|---|---|
| 認可 | 国土交通大臣 | 都道府県知事 |
| 扱える建物 | 制限なし(すべての規模・用途) | 高さ・面積・構造に制限あり |
| 代表的な対象 | 公共施設・大規模ビル・大規模集合住宅 | 戸建て住宅・小規模建築 |
| 受験資格 | 大学等の指定科目卒業 or 二級建築士 等 | 高校の建築課程卒業でも可(実務経験等) |
ちなみに、一級建築士の上にはさらに「構造設計一級建築士」「設備設計一級建築士」という資格があります。高さ20m超の建物や13m超の木造などは構造設計一級建築士の関与が、3階以上かつ5,000㎡超の建物は設備設計一級建築士の関与が必要です。これらは一級建築士になってから一定の実務経験を積んで取る上位資格という位置づけです。
構造設計まわりはこちらが詳しいです。

現場目線で言えば、一級建築士は「設計の世界の最上位免許」であり、施工管理側にいる人間にとっても、図面を読む力や法規の知識が一段深まる資格だと捉えると価値が見えやすいです。
一級建築士になるまでの全体の流れ
一級建築士になるまでは、大きく4つのステップを踏みます。順番を勘違いしている人が多いので、まず全体像を押さえておきましょう。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 受験資格を得る | 大学等で指定科目を修めて卒業 等 | 2026年度は受験時の実務経験は不要 |
| ② 学科試験に合格 | 5科目の四肢択一式 | 合格すると製図を複数回受けられる |
| ③ 製図試験に合格 | 事前公表の課題で設計図書を作成 | 学科合格と同年に挑むのが王道 |
| ④ 免許登録・交付 | 建築士会に申請 → 審査 → 登録 | ここで実務経験が必要になる |
重要なのは、実務経験が必要になるのは「④の免許登録のタイミング」だという点です。2020年(令和2年)の建築士法改正で、実務経験は受験要件から免許登録要件へと切り替わりました。つまり、大学などで指定科目を修めていれば、実務経験ゼロでも卒業後すぐに受験できます。試験に受かってから現場で実務を積み、要件を満たした時点で登録すればよい、という制度に変わったわけです。
最短ルートは、4年制大学で指定科目を60単位以上修めて卒業 → 卒業後すぐ受験して合格 → 実務2年を積んで登録、という流れで、学校に入ってから通算6年が最短です。試験合格と実務経験の前後関係は問われないので、「合格してから実務」でも「実務を積みながら受験」でも構いません。
個人的には、施工管理として現場に出ながら受験する人にとっては、この改正はかなり追い風だと感じます。先に試験に集中して受かってしまい、現場の実務で登録要件を満たす、という戦い方ができるからです。
一級建築士の受験資格【2026年度の最新版】
受験資格は、大きく「学歴ルート」と「資格ルート」の2つに分かれます。2026年度(令和8年度)時点では、受験の段階で実務経験は問われません。
学歴ルートと資格ルートを整理すると次の通りです。
- 大学・短大・高専・専修学校等で指定科目を修めて卒業した人(指定科目40単位以上が目安)
- 二級建築士の資格を持っている人
- 建築設備士の資格を持っている人
- 国土交通大臣が同等以上と認める人(外国の大学卒業者など)
ここでつまずきやすいのが「高卒」と「文系出身」のケースです。高卒の人は一級をいきなり受けられないので、まず二級建築士か建築設備士を取り、そこから一級に進むルートになります。建築の指定科目を学んでいない文系出身の人も同じで、二級建築士を経由するか、夜間・通信制の学校で指定科目の単位を取り直すのが現実的です。
注意したいのは、入学年度(平成21年より前か以降か)で必要な単位の扱いが変わる点です。自分がどの要件に当てはまるかは、建築技術教育普及センターの受験要領で必ず確認しておきましょう。建築士法の条文そのものは法令で確認できます。
建築まわりの法律の全体像はこちらが参考になります。

実務だと、社会人になってから「自分の卒業学科は指定科目を満たしているのか分からない」という相談が一番多い印象です。卒業証明書と成績証明書を取り寄せて単位を確認するのが、遠回りのようで一番確実です。
免許登録に必要な実務経験|施工管理の現場経験はカウントされる
ここが、施工管理の人に一番読んでほしいところです。一級建築士は試験に受かっただけでは名乗れず、所定の実務経験を積んで免許登録をして初めて「一級建築士」になれます。そして、その実務経験には施工管理(工事施工者の立場での現場管理)が明確に含まれています。
学歴別に必要な実務経験年数は次の通りです。
| 受験資格(卒業区分) | 免許登録に必要な実務経験 |
|---|---|
| 4年制大学(建築系) | 卒業後2年以上 |
| 3年制短大 | 卒業後3年以上 |
| 2年制短大・高専 | 卒業後4年以上 |
| 二級建築士から | 二級登録後4年以上 |
そして、登録要件としてカウントされる実務には、2020年改正後の基準で次のようなものが含まれます。
- 建築物の設計に関する実務
- 工事監理に関する実務
- 建築工事の指導監督に関する実務
- 工事の施工の技術上の管理に関する実務(=工事施工者の立場での施工管理)
- 確認審査・建築行政・住宅行政などに関する実務
4つ目の「工事の施工の技術上の管理に関する実務」が、まさに施工管理の仕事です。ゼネコンやサブコンで現場の施工管理をしている期間は、原則として一級建築士の登録実務経験に算入できるわけです。ここを知らずに「設計をやってないから自分は登録できない」と思い込んでいる現場の人が意外と多いです。
ただし、庶務・会計・単なる作図補助などは実務経験に含まれません。実務経験は勤務先が業務内容と期間を証明する書類が必要で、プロジェクトでの役割を詳しく問われることもあります。施工管理として「建築物全体を取りまとめる」立場で関わった実績を、後から証明できる形で残しておくのが大事です。
施工管理が日々向き合う施工図も、設計と現場をつなぐ実務の一つです。

正直なところ、この「施工管理の経験が登録要件になる」という一点が、現場の人が一級建築士を狙う上での最大の追い風だと思っています。
一級建築士試験の内容と難易度
試験は「学科試験」と「設計製図試験」の2段階です。まず学科に受かり、その上で製図に挑みます。
学科試験は四肢択一式の5科目で、試験時間は合計6時間半におよびます。
| 科目 | 出題数 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 学科Ⅰ(計画) | 20問 | 建築計画・建築史・積算・建築士の職責など |
| 学科Ⅱ(環境・設備) | 20問 | 光・熱・空気環境、空調・電気・給排水設備など |
| 学科Ⅲ(法規) | 30問 | 建築基準法・関係法令(法令集の持込み可) |
| 学科Ⅳ(構造) | 30問 | 構造力学・各種構造・建築材料・耐震設計など |
| 学科Ⅴ(施工) | 25問 | 施工計画・各部工事のディテールなど実務的内容 |
学科の関門は、総得点だけでなく科目ごとにも基準点があり、1科目でも下回ると不合格になる点です。苦手科目を捨てる戦法が通用しません。法規は唯一法令集を持ち込めるので、引き慣れておくと得点源になります。法規対策では近年の改正点も狙われます。
直近の建築基準法改正はこちらにまとめています。

設計製図試験は、試験の約3ヶ月前に課題(庁舎・図書館・集合住宅・介護施設など)が公表され、当日は6時間半でその課題に沿った平面図・断面図・面積表・計画の要点などを仕上げます。時間内に高い精度で描き切るスピードと、設計条件を読み解く判断力の両方が問われます。
難易度の目安は、学科でおおむね15〜20%前後、製図で30%台、総合(最終)でおおむね10%前後の合格率です。合格率の推移や製図で落ちる原因、働きながらの勉強時間配分といった「数字の中身」は深掘りすると長くなるので、ここでは要点にとどめます。正直なところ、法規と施工は実務の知識がそのまま効くので、施工管理経験者はこの2科目で先行しやすいのが強みです。
一級建築士の年収とキャリア
一級建築士の年収は、調査によって幅がありますが、おおむね550万〜700万円前後がボリュームゾーンです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査などをもとにすると、平均年収はおおよそ600〜700万円台で、経験を積むほど上がっていく傾向があります。
二級建築士との比較では、平均値の差は40〜50万円程度に見えても、任される仕事の規模やボリュームゾーンの違いから、実質100万円前後の差がつくケースもあります。資格手当が付く会社も多く、設計・施工管理を問わず転職市場での評価が上がるのが一級の強みです。
キャリアの広がりとしては、次のような選択肢が出てきます。
- 設計事務所・組織設計での意匠・構造・設備設計
- ゼネコン・サブコンでの設計部門や、設計を理解した施工管理
- 公務員(建築職)として確認申請・営繕・公共施設管理
- 不動産・建築コンサル、将来的な独立
設計の道に進むなら、設計事務所がどんな場所かを知っておくと選択肢が具体化します。

僕の感覚だと、一級建築士は「年収がいくら上がるか」以上に「キャリアの選択肢が一気に増える」ところに本当の価値があります。現場一本だった人が、設計・行政・コンサル・独立まで道がつながるイメージです。
施工管理者が一級建築士を取る意味|施工管理技士との違い
最後に、このサイトを読んでいる施工管理の人向けに「施工管理技士と一級建築士は何が違って、両方持つ意味があるのか」を整理します。
建築士と施工管理技士は、立ち位置がそもそも違います。
| 項目 | 一級建築士 | 1級建築施工管理技士 |
|---|---|---|
| 立場 | 建築主(施主)側の代理人 | 施工者(建設会社)側の管理者 |
| 主な役割 | 設計・工事監理(図面どおりか確認) | 施工計画・品質/工程/安全の管理 |
| 主な所属 | 設計事務所・組織設計 | ゼネコン・サブコン・工務店 |
| 独占業務 | 一定規模以上の設計・工事監理 | 営業所の専任技術者・主任/監理技術者 |
ざっくり言うと、建築士は「図面をつくり、その通りに建っているかをチェックする人」、施工管理技士は「その図面どおりに、安全かつ予定通り現場を回す人」です。上下関係ではなく役割分担なので、「どっちが上か」という問いはあまり意味がありません。
その上で、施工管理者が一級建築士を取る意味は大きいです。理由は次の3つに集約されます。
- 図面・法規・構造の理解が深まり、施工管理の精度と発言力が上がる
- 設計と施工の両方が分かる人材として、転職・昇進で評価される
- 現場の実務経験が、そのまま一級建築士の登録要件にカウントできる
設計の意図をつかむ力は、意匠図の読み込み精度に直結します。

現場目線で言えば、設計を理解した施工管理は本当に強いです。図面の意図が分かるので、設計者との協議が早く、納まりの判断もブレません。一級建築士はそのための一番太い武器になる資格だと思います。
一級建築士になるための情報まとめ
- 一級建築士とは:すべての規模・用途の建築物を設計・工事監理できる国家資格
- 二級との違い:扱える建物に制限がなく、公共施設や大規模建築も設計できる
- なるまでの流れ:受験資格 → 学科合格 → 製図合格 → 免許登録の4ステップ
- 受験資格(2026年度):受験時の実務経験は不要。指定科目卒業 or 二級建築士 等
- 実務経験:免許登録時に必要。施工管理(工事施工の技術上の管理)も登録要件に算入できる
- 試験内容:学科5科目(計画・環境設備・法規・構造・施工)+設計製図
- 難易度:総合合格率はおおむね10%前後。学科は科目別基準点に注意
- 年収:ボリュームゾーンは550〜700万円前後、二級との差は実質100万円規模も
- 施工管理技士との違い:建築士は施主側で設計・監理、施工管理技士は施工者側で現場管理
- 最短ルート:4年制大学卒 → 卒業後すぐ受験合格 → 実務2年で登録(通算6年)
以上が一級建築士になるための情報のまとめです。
一級建築士は最難関の国家資格ですが、2020年・2026年の制度変更で「先に試験、後から実務」という戦い方ができるようになり、現場で働く施工管理者にとっては以前よりずっと狙いやすくなっています。しかも現場の実務経験は登録要件にそのまま使えます。設計を理解した施工管理は現場で本当に強いので、キャリアの幅を一段広げたい人は、早めに学科対策から動き出すのがおすすめです。
一級建築士になるにはに関するよくある質問
Q1:2026年度は実務経験なしでも受験できますか?
はい、できます。2020年(令和2年)の建築士法改正で実務経験は受験要件から免許登録要件に変わり、2026年度(令和8年度)も受験時点での実務経験は不要です。大学などで指定科目を修めて卒業していれば、卒業後すぐに学科試験を受けられます。ただし試験に合格しても、所定の実務経験を積んで免許登録をするまでは「一級建築士」を名乗って業務はできません。
Q2:施工管理の現場経験は免許登録の実務経験に入りますか?
入ります。免許登録の実務経験には「工事の施工の技術上の管理に関する実務(工事施工者の立場)」が含まれており、これはまさに施工管理の仕事です。ゼネコンやサブコンで建築物全体を取りまとめる立場で施工管理をしている期間は、原則として登録実務経験に算入できます。ただし庶務・会計・単なる作図補助は対象外で、勤務先による業務内容と期間の証明書類が必要です。
Q3:高卒や文系出身でも一級建築士になれますか?
なれますが、遠回りになります。高卒や建築の指定科目を学んでいない文系出身の人は一級を直接受験できないため、まず二級建築士(または建築設備士)を取得し、そこから一級に進みます。実務経験だけで進む場合は二級登録までに長い年数がかかるので、夜間・通信制の学校で指定科目の単位を取りながら二級を経由するのが現実的です。
Q4:施工管理技士と一級建築士はどちらを先に取るべきですか?
今すでに施工管理として現場に出ているなら、まず1級建築施工管理技士を取り、その実務経験を活かしながら一級建築士に進む順番が王道です。施工管理技士は現場のキャリアに直結し、受験のハードルも一級建築士より低めです。一級建築士は設計図書・法規・構造の理解を一段深めてくれるので、施工管理技士で足場を固めてから挑むと、学科の法規・施工で実務知識が効いてきます。
Q5:働きながらでも合格できますか?
可能です。実際に働きながら合格している人は多数います。ただし学科で500〜1,000時間、製図で300〜500時間という勉強量が必要なので、1〜2年がかりの計画と職場の理解が現実的には欠かせません。施工管理経験者は法規と施工の科目で実務知識が活きるため、その2科目を先行させて学習負荷を分散させるのが現場の人に合った戦い方です。
合わせて読みたい記事はこちら。




