- 全熱と顕熱、結局どっち選べばいいの?
- 全熱交換器って普通の換気扇と何が違うの?
- ロスナイって全熱交換器のこと?別物?
- なぜ温度だけじゃなく湿度まで交換できるの?
- 省エネ効果って実際どれくらい?
- 浴室やトイレの排気は通していいの?
- 臭い空気が給気に戻ってこない?
- 静止型と回転型、現場でどう使い分ける?
- 選定って何から決めればいいの?
- 交換効率の数字、温度と全熱でどう読む?
- 寒冷地で凍結しないの?メンテは?
- 工事費・電気代・メンテ、トータルでいくら?
上記の様な悩みを解決します。
全熱交換器は、換気をしながら冷暖房のエネルギーを回収する、省エネ設計の要になる換気設備です。「入れれば省エネで快適」という説明は多いですが、設備施工管理の立場だと、それだけでは現場が回りません。系統をどう分けるか、浴室やトイレの排気をどう外すか、据付・ダクト・ドレンをどう納めるか、臭気が給気に戻らないようにどうするか——こうした実務判断ができて初めて、図面通りの省エネ効果が出ます。今回は仕組み・顕熱との違い・選定といった基本を正確に押さえた上で、現役の設備施工管理目線で「系統分け」「据付の納まり」「臭気戻り・凍結対策」「保守計画」まで踏み込んで整理しました。
なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、機器選定で迷っている方にも、施工図の納まりで悩んでいる方にも役立つ内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
全熱交換器とは?
全熱交換器とは、結論「換気で排出する空気から、温度(顕熱)と湿度(潜熱)の両方を回収し、取り入れる外気に移し替える換気設備」のことです。「全熱」とは顕熱(温度)+潜熱(湿度)を合わせた熱のことで、これを丸ごと交換するから「全熱交換器」と呼ばれます。
普通の換気は、室内の汚れた空気(CO2・熱気・臭い・埃)を屋外に捨て、新鮮な外気を取り込みます。ただ、このとき冷暖房で快適にした空気の「熱」まで一緒に捨ててしまうのが弱点でした。全熱交換器は、「汚染空気は捨てる・新鮮な外気は取り込む」という換気の目的はそのままに、捨てる空気の熱エネルギーだけを回収して再利用します。
たとえば夏(外気33℃/室内26℃)なら、捨てる26℃の空気から熱を回収し、取り込む33℃の外気を33℃より低い温度にして給気します。エアコンが外気を冷やす負担が減るので、その分が省エネになります。冬は逆に、暖かい室内空気の熱で冷たい外気を温めてから給気します。
設備施工管理の立場で言うと、全熱交換器は「換気扇に省エネ機能を足したもの」と捉えると入口は分かりやすいです。ただし実務では「換気量・系統・据付・保守」まで考えて初めて性能が出るので、単なる換気扇とは別物として設計・施工する必要があります。
換気の種類全体(第一種・第二種・第三種)の整理はこちらが詳しいです。

全熱交換器の仕組み(熱交換素子)
全熱交換器の心臓部は「熱交換素子(エレメント)」です。本体には給気ファンと排気ファンが入っていて、排気(室内→屋外)と給気(屋外→室内)がこのエレメントの中ですれ違う構造になっています。
ポイントは、2つの空気の流れが混ざらずにすれ違うことです。エレメントは特殊加工紙などの薄い板を重ねた構造で、給気と排気の通路が仕切られています。空気そのものは混ざらないまま、仕切りの板を通して熱(温度)と湿度だけが移動します。
| 要素 | 役割 |
|---|---|
| 給気ファン | 屋外の新鮮な空気を室内へ送る |
| 排気ファン | 室内の汚れた空気を屋外へ出す |
| 熱交換素子(エレメント) | 給気と排気の間で温度・湿度を移し替える |
| フィルター | 花粉・埃、機種によりPM2.5を除去 |
エレメントの素材で交換できるものが変わります。樹脂(プラスチック)製のエレメントは熱(温度)のみを交換し、特殊加工紙製のエレメントは熱と湿度の両方を交換できます。全熱交換器が湿度まで交換できるのは、この紙製エレメントが吸湿・放湿する性質を使っているからです。
回収率は100%ではありません。製品によりますが、温度(顕熱)で9割前後、湿度(潜熱)で6〜7割程度を戻す、というのが一つの目安です。たとえば外気0℃・室温20℃で温度交換効率90%なら、20℃×90%で約18℃の空気を室内に戻す計算になります。
全熱交換器と顕熱交換器の違い
全熱交換器と最も比較されるのが「顕熱交換器(けんねつこうかんき)」です。違いは一点、湿度(潜熱)を交換するかどうかです。
| 項目 | 全熱交換器 | 顕熱交換器 |
|---|---|---|
| 交換するもの | 温度+湿度 | 温度のみ |
| エレメント素材 | 特殊加工紙など | 樹脂・金属など |
| 省エネ性 | 高い(潜熱も回収) | 全熱よりやや劣る |
| 向く空間 | 居室・事務所・学校など一般空間 | 屋内プール・湿度を持ち込みたくない室 |
| 湿気の扱い | 室内の湿度を保ちやすい | 湿度はそのまま排出 |
多湿な日本では、湿度まで回収できる全熱交換器の方が省エネ効果が高くなりやすく、冬の過乾燥・夏の過多湿をやわらげる効果も期待できます。一方で「室内の湿気を屋外に出したい・外の湿気を入れたくない」空間、たとえば屋内プールや一部の工場・実験室などでは、あえて湿度を交換しない顕熱交換器を選びます。
選定の考え方としては、「湿度をコントロールして快適・省エネにしたい一般の居室は全熱」「湿度を持ち込み・持ち出ししたくない特殊用途は顕熱」が基本軸になります。個人的には、まず用途で全熱か顕熱かを切り分けてから機器選定に入ると、後戻りが減ると考えています。
換気扇・ロスナイ・空調機との違い
用語が紛らわしいので、ここで関連設備との違いを整理します。
| 設備 | 主な役割 | 全熱交換器との関係 |
|---|---|---|
| 換気扇 | 空気を出す/入れる動力のみ | 全熱交換器は換気扇+熱回収機能 |
| 全熱交換器 | 換気+温度・湿度の回収 | 本記事の主役 |
| ロスナイ | 三菱電機の全熱交換器の商品名 | 全熱交換器の一種(製品名) |
| 空調機(外調機・エアコン) | 空気の温度・湿度を作る | 全熱交換器は熱を「回収」するだけで、温湿度を「作る」のは空調機 |
特に混乱しやすいのが「ロスナイ」です。ロスナイは三菱電機製の全熱交換器の商品名で、全熱交換器をロスナイと呼ぶ人もいます(静止型全熱交換器の代表格)。一般名詞と商品名が混ざっているだけなので、「ロスナイ=(三菱の)全熱交換器」と理解すれば大丈夫です。
そして大事なのが、全熱交換器は熱を「作らない」ことです。あくまで捨てる空気の熱を回収して給気に移すだけで、室温・室内湿度を目標値まで持っていくのはエアコンや外調機(空調機)の仕事です。全熱交換器は空調の負荷を軽くする省エネ装置であって、空調機の代わりにはなりません。ここを取り違えると「全熱を入れたのに暑い/寒い」というクレームの元になります。
空調設備の種類全体は、こちらが参考になります。

全熱交換器の種類(静止型・回転型)
全熱交換器は、エレメントの方式で大きく2種類に分かれます。
| 種類 | 構造 | 特徴 | 主な適用 |
|---|---|---|---|
| 静止型 | 特殊加工紙のフィンと仕切り板を積層(固定) | 給排気が完全に分かれた直交流。透過式で全熱交換 | 小〜中型。住宅・事務所・学校など |
| 回転型 | 吸湿材を含むハニカム状エレメントをモーターで回転 | 蓄熱・蓄湿方式。大容量に対応 | 大規模建築・大風量 |
静止型は、給気と排気の通路が物理的に分かれているので空気が混ざりにくく、小型〜中型で広く使われます。住宅やビル・学校で見る天井埋込型の多くは静止型です。
回転型は、ハニカム状のエレメントが回転し、排気側で吸った熱・湿気を給気側で放出する方式です。大容量を高効率で処理できる一方、給気と排気が同じ通路を交互に通る構造上、わずかな空気のリーク(混合)が起こりうるので、清浄度が重視される用途では注意が必要です。大規模空調で大風量を扱う場面で選ばれます。
現場目線で言えば、扱う風量と建物規模で選ぶのが基本です。小〜中規模で清浄度も欲しいなら静止型、大風量で効率を稼ぎたいなら回転型、という整理になります。
全熱交換器のメリット(省エネ・快適)
全熱交換器のメリットは、大きく「省エネ」と「快適性」の2つです。
- 省エネ:捨てる空気の熱を回収して空調負荷を下げる。条件次第では空調機の消費電力量を約30%削減できたという試算・検証例もある
- 冷暖房ロスの低減:換気で「せっかく冷やした/温めた空気」を丸ごと捨てずに済む
- 快適性:給気が外気温そのままではなく室温に近づくので、換気による寒さ・暑さの不快感が減る
- 湿度の安定:梅雨時の除湿効果、冬場の過乾燥の緩和(全熱の場合)
- 結露・カビの抑制:湿度をコントロールするため、単純換気よりカビ・結露リスクを減らせる
- フィルターによる空気質:花粉・埃、機種によりPM2.5を除去して給気できる
省エネ効果の「約30%」はあくまで条件付きの目安で、地域・建物・運用で変わります。それでも、換気が義務化されている建物で「捨てるだけだった熱」を回収できる意味は大きく、省エネ基準への対応という観点でも採用が増えています。
省エネ設備全体の考え方はこちらも参考になります。

全熱交換器のデメリット・注意点
メリットの裏で、導入前に必ず押さえたいデメリット・注意点もあります。
- メンテナンスが必要:フィルター清掃・エレメント清掃・点検が定期的に要る。放置すると風量低下・効率低下を招く
- エレメントの寿命:長年の使用でエレメント交換が必要になる場合がある
- 初期費用が高い:換気扇より機器が高価で、ダクト・据付・電源・保温の工事費もかかる
- 湿気・臭気の強い室はNG:浴室・トイレ・厨房など、湿気や臭いの強い排気はエレメントを傷め、臭気戻りの原因にもなるため、全熱交換の経路から外すのが原則
- 設置スペース:本体+ダクト+メンテスペースが必要。後付けは特に納まりが厳しい
- 効果は条件次第:交換効率・運用・地域で省エネ効果が変わる。過大な期待は禁物
特に「湿気・臭気の強い室を経路から外す」は、設計・施工で最も大事な注意点です。これを誤ると、後述の臭気戻りや、エレメントの劣化につながります。正直なところ、全熱交換器は「入れれば終わり」ではなく、保守と系統設計まで含めて初めて性能が出る設備だと捉えておくべきです。
第一種換気・24時間換気との関係
全熱交換器は、換気方式でいうと第一種換気に分類されます。第一種換気は給気・排気の両方を機械(ファン)で行う方式で、全熱交換器は給気ファンと排気ファンの両方を持つので第一種に当たります。
| 換気方式 | 給気 | 排気 | 全熱交換器との関係 |
|---|---|---|---|
| 第一種 | 機械 | 機械 | 全熱交換器はここ。熱回収できる |
| 第二種 | 機械 | 自然 | クリーンルーム等 |
| 第三種 | 自然 | 機械 | トイレ・浴室など局所排気 |
住宅では、建築基準法のシックハウス対策で24時間換気(常時換気)が義務付けられています。全熱交換器を使った第一種換気は、この24時間換気の手段の一つとして使われ、給排気を機械で確実に行いながら熱を回収できるのが強みです。
つまり全熱交換器は「換気の義務を満たす手段」であると同時に「その換気で熱を捨てない省エネ手段」でもある、という二重の位置づけになります。24時間換気の義務と省エネ基準の両方に効くので、近年の住宅・非住宅で採用が伸びています。
第三種換気との比較はこちらが参考になります。

全熱交換器の選定手順
全熱交換器の選定は、いきなり機器カタログを見るのではなく、換気の前提から順に決めていきます。順番が大事です。
- 必要換気量を求める:室の用途・人数・容積から、法令(建基法・ビル管法)と用途別基準で必要換気量を算定する
- 系統・設置場所を決める:どの室をまとめて1系統にするか、本体をどこに置くか(天井裏・機械室)を決める。湿気・臭気の強い室は外す
- ダクトルートを引く:給気・排気・外気(OA)・排気(EA)の4系統のルートを計画する
- 圧力損失を計算する:ダクト長さ・曲がり・フィルターの抵抗から圧損を出し、ファンが必要風量を確保できるか確認する
- 交換効率と機器を選定する:必要風量・圧損に合う機種を選び、交換効率(後述)と給気温湿度を確認する
選定で見落としがちなのが圧力損失です。ダクトが長い・曲がりが多いと圧損が増え、カタログ風量が出ません。風量が落ちると換気不足にも省エネ不足にもなるので、圧損計算は省略しないのが鉄則です。
必要換気量の算定はこちらが詳しいです。

交換効率(温度交換効率とエンタルピー交換効率)の読み方
カタログには複数の「交換効率」が載っています。ここを読み違えると性能を誤解します。
- 温度交換効率(顕熱):温度をどれだけ戻せるか。例90%
- エンタルピー交換効率(全熱):温度+湿度(全熱)をどれだけ戻せるか。温度交換効率より低い値になるのが普通
- 給気/排気で値が違う場合があるので、どの条件の数値かを確認する
「温度交換効率が高い=全熱の効率も高い」とは限りません。省エネ効果を見るときは全熱(エンタルピー)交換効率を、室内温度の戻り具合を見るときは温度交換効率を見る、と使い分けます。
【施工】系統分け(浴室・トイレ・厨房を外す)
ここからは設備施工管理目線の実務です。全熱交換器の設計で最重要なのが「系統分け」、つまりどの室を全熱交換の経路に入れ、どの室を外すかです。
原則として、次の室は全熱交換の排気経路から外します。
- 浴室・洗面:湿気が多く、エレメントを傷める/結露の原因
- トイレ:臭気が給気に戻るリスク(臭気戻り)
- 厨房・給湯室:油煙・臭気・高温でエレメントを汚損・劣化させる
これらの室は、全熱交換器とは別に第三種換気(局所排気のための換気扇)で個別に排気するのが基本です。居室・事務室・会議室など「きれいな空気の室」を全熱交換器の系統にまとめ、汚れ・湿気・臭気の出る室は別系統で直接屋外へ出す、という分け方です。
実務だと、設計図で系統がきれいに分かれていても、現場でダクトを引くと「トイレ排気が全熱の排気チャンバーに近すぎる」といった干渉が出ることがあります。系統分けは図面の線だけでなく、実際のダクトルートと排気口の位置まで見て成立させる必要があります。
トイレについては、メーカーが換気経路に含める設計をするケースもありますが、見解が分かれる部分です。臭気戻りのリスクを避けるなら外す方が無難で、含める場合はリーク対策を前提にする、という判断になります。
【施工】据付・ダクト・ドレン・メンテスペースの納まり
機器選定が終わっても、現場で納まらなければ意味がありません。据付まわりで施工管理が押さえるべき点を整理します。
- 据付:天井吊り(天井埋込型)か床置きか。振動対策(防振吊り)と確実な固定が必要。大型機は搬入経路(扉幅・重量)も事前確認
- ダクト:給気(SA)・還気/排気(RA・EA)・外気(OA)の系統を取り違えない。OAとEAの屋外フードは離して設ける(後述の臭気戻り対策)
- 保温:結露防止のため、外気・給気ダクトには保温が要る場合がある。寒冷地は特に注意
- ドレン:全熱交換器でも、結露水が出る機種・条件ではドレン配管が必要。ドレンパン・排水経路を計画しておく
- メンテスペース:フィルター・エレメントを抜き差しする点検口とスペースを必ず確保する。ここを詰めて納めると、後で清掃・交換ができない
特にメンテスペースは、施工図段階で軽視されがちですが、確保しないと「設置できたが点検できない」設備になります。天井埋込型は点検口の位置・大きさ、エレメントの引き出し方向まで決めておくべきです。
ダクトの種類・納まりはこちらが参考になります。

臭気戻り・ショートサーキット対策
全熱交換器のトラブルで多いのが「排気した臭い空気が、給気側に戻ってくる」臭気戻りです。原因は主に2つあります。
- 屋外でのショートサーキット:屋外に出した排気(EA)を、すぐ隣の外気取入口(OA)が吸い込んでしまう
- 機器内・ダクトのリーク:エレメントや本体内で給排気が混ざる、ダクト接続部の漏れ
対策は次の通りです。
- 屋外フードの離隔:OA(外気取入)とEA(排気)のフードを十分に離す。近接させると排気を吸い直す
- 風向・位置への配慮:常時風下にOAが来ない配置にする。EAは上向き・OAは別面に振るなど
- 系統分けの徹底:そもそも臭気の強い室(トイレ等)を全熱の経路に入れない
- 機器の方式選定:清浄度が重要な用途では、リークの少ない静止型を選ぶ
現場目線で言えば、臭気戻りは「屋外フードの位置」で決まることが多いです。図面でOAとEAが近接していたら、施工前に位置を見直すよう設計と協議するのが、後の苦情を防ぐ近道です。
寒冷地の凍結・結露対策
寒冷地で全熱交換器を使うとき、見落とせないのが結露・凍結です。冬は室内の暖かく湿った排気が、冷たいエレメントや外気側で冷やされ、結露・凍結を起こすことがあります。凍結するとエレメントが目詰まりし、風量低下や故障につながります。
対策としては次のようなものがあります。
- デフロスト(凍結防止)運転:一時的に給気を絞る・止めるなどして霜取りする機能を持つ機種を選ぶ
- プレヒーター:外気をあらかじめ温めて、エレメントでの結露・凍結を防ぐ
- 適切な保温:外気・給気ダクトの保温で結露を抑える
- ドレン処理:結露水が出る前提でドレン経路を確保する
寒冷地・準寒冷地の物件では、機種選定の段階で「デフロスト機能の有無」「凍結に対する仕様」を確認しておくのが安全です。暖かい地域の感覚でそのまま選ぶと、冬に風量が落ちるトラブルになりかねません。
結露対策全般はこちらで詳しく解説しています。

メンテナンス・エレメント交換の保守計画
全熱交換器は設備機器なので、入れたら終わりではなく保守計画とセットで考えます。
- フィルター清掃:埃・花粉が溜まると圧損が上がり風量が落ちる。定期清掃が基本(汚れやすい環境ほど頻度を上げる)
- エレメント清掃:機種により清掃可能。紙製エレメントは水洗い不可のものが多いので取扱説明書に従う
- エレメント交換:長年使用すると交換が必要になる場合がある。交換時期・費用を導入時に把握しておく
- 点検:冷媒を使わない全熱交換器はフロン排出抑制法の点検義務の対象外だが、不具合の早期発見のため定期点検を推奨
- 専門業者依頼:内部部材の清掃・交換は専門業者に依頼するのが無難
引き渡し時には、施主・管理者に「フィルター清掃の頻度」「エレメントの清掃可否と交換目安」「メンテ依頼先」を伝えておくと、性能が長く保たれます。保守を前提にした点検口・スペースが確保されているかも、引き渡し前に確認しておきたいポイントです。
全熱交換器の費用の目安
費用は建物・条件で大きく変わるため一概には言えませんが、確認すべき項目は次の3つです。
- 工事費:機器の据付(固定・搬入)、ダクト工事、電気・電源工事、保温工事。ダクトの長さ・ルート・建物条件で大きく変動し、現地を見ないと正確には出ない
- 電気代(ランニング):給排気ファンの運転で電気代は発生する。ただし熱回収でエアコンの電気代が下がるため、トータルで判断する
- メンテ費:フィルター・エレメントの清掃、エレメント交換、定期点検の費用
費用を見るときのコツは、「初期費用だけでなく、回収できるエアコンの電気代と、メンテのランニングまで含めて比較する」ことです。換気扇に比べて初期費用は高くなりますが、省エネで空調費が下がる分と相殺してトータルで評価します。近年は工事不要・後付けしやすい製品も増えており、導入費用の見込みを立てやすくなっています。
全熱交換器に関する情報まとめ
- 定義:換気で捨てる空気から温度(顕熱)と湿度(潜熱)を回収し、取り込む外気に移す換気設備
- 仕組み:給気ファン・排気ファン・熱交換素子(エレメント)。空気は混ぜず温度・湿度だけ移動。紙製エレメントは熱+湿度、樹脂製は熱のみ
- 顕熱との違い:湿度を交換するかどうか。多湿な日本は全熱が省エネ有利、湿度を持ち込みたくない室は顕熱
- 関連設備:換気扇=動力のみ/ロスナイ=三菱の全熱交換器の商品名/空調機=温湿度を作る(全熱は回収のみ)
- 種類:静止型(小〜中型・混ざりにくい)/回転型(大風量・高効率)
- メリット:条件次第で空調消費電力を約30%削減できる試算例も、快適性・湿度安定・結露抑制
- デメリット:メンテ要・初期費用高・湿気/臭気の強い室はNG・効果は条件次第
- 位置づけ:第一種換気。24時間換気の義務と省エネ基準の両方に効く
- 選定:必要換気量→系統・設置→ダクト→圧損→交換効率と機器、の順。圧損計算を省略しない
- 交換効率:温度交換効率(顕熱)とエンタルピー交換効率(全熱)を使い分けて読む
- 施工:浴室・トイレ・厨房は系統から外す/据付・ドレン・メンテスペースの納まり/OAとEAは離す
- トラブル:臭気戻り(ショートサーキット)は屋外フード位置で対策/寒冷地はデフロスト・保温
- 保守:フィルター・エレメント清掃と交換、定期点検を計画。引き渡し時に管理者へ説明
- 費用:工事費・電気代・メンテ費を、回収できる空調費とトータルで比較
以上が全熱交換器に関する情報のまとめです。
全熱交換器は、換気の義務を満たしながら冷暖房の熱を捨てない、省エネ設計の主力設備です。ただ「省エネで快適」という効果は、正しい系統分け・選定・据付・保守があって初めて出ます。湿気と臭気の強い室を外し、圧損を見て機器を選び、OAとEAを離し、メンテスペースを残す——この実務を押さえれば、図面通りの省エネと快適性を現場で実現できます。順位の高い検索KWですが、設備施工管理が現場で動くための情報まで揃えると、単なる製品紹介とは違う実用性のある一本になります。
全熱交換器に関するよくある質問
Q1:全熱交換器と顕熱交換器、どちらを選べばいいですか?
交換するものが「温度+湿度」か「温度だけ」かで選びます。一般の居室・事務所・学校など、湿度もコントロールして快適・省エネにしたい空間は全熱交換器が有利です。多湿な日本では潜熱(湿度)も回収できる全熱の方が省エネ効果が高くなりやすいからです。一方、屋内プールや、室内の湿気を持ち込み・持ち出ししたくない特殊用途は、あえて湿度を交換しない顕熱交換器を選びます。まず用途で全熱か顕熱かを切り分けてから機器選定に入ると後戻りが減ります。
Q2:全熱交換器と普通の換気扇は何が違うのですか?
換気扇は空気を出し入れする動力だけを担う設備です。全熱交換器は、その換気扇の役割(汚れた空気を捨て新鮮な外気を取り込む)を果たしつつ、捨てる空気の熱(温度・湿度)を回収して取り込む外気に移し替えます。つまり「換気扇+熱回収機能」が全熱交換器です。換気で冷暖房の熱を丸ごと捨てずに済むため、空調の負荷が下がり省エネになります。
Q3:ロスナイは全熱交換器とは別物ですか?
別物ではありません。ロスナイは三菱電機製の全熱交換器の商品名で、静止型全熱交換器の代表格です。全熱交換器を「ロスナイ」と呼ぶ人もいるため混乱しやすいですが、「ロスナイ=(三菱の)全熱交換器」と理解すれば大丈夫です。一般名詞と商品名が混ざっているだけです。
Q4:浴室やトイレの排気も全熱交換器に通していいですか?
原則として外します。浴室は湿気が多くエレメントを傷め、トイレは臭気が給気に戻る臭気戻りの原因になり、厨房は油煙・臭気・高温でエレメントを汚損します。これらの室は全熱交換器とは別に、第三種換気(局所排気の換気扇)で個別に屋外へ排気するのが基本です。居室・事務室など「きれいな空気の室」を全熱の系統にまとめ、汚れ・湿気・臭気の出る室は別系統で直接排気します。
Q5:省エネ効果はどれくらいありますか?
条件次第では、空調機の消費電力量を約30%削減できたという試算・検証例もあります。ただしこれは条件付きの目安で、地域・建物・運用・交換効率によって大きく変わります。換気が義務化されている建物で、これまで捨てるだけだった熱を回収できる意味は大きく、省エネ基準への対応という観点でも採用が増えています。過大な期待は禁物ですが、適切に設計・運用すれば確実に空調負荷を下げられます。
Q6:交換効率の数字はどう読めばいいですか?
カタログには「温度交換効率(顕熱)」と「エンタルピー交換効率(全熱)」が載っています。温度交換効率は温度をどれだけ戻せるか(例90%)、エンタルピー交換効率は温度+湿度を合わせた全熱をどれだけ戻せるかで、こちらは温度交換効率より低い値になるのが普通です。省エネ効果を見るときは全熱(エンタルピー)交換効率、室温の戻り具合を見るときは温度交換効率、と使い分けます。給気側・排気側で値が違う場合があるので、どの条件の数値かも確認してください。
Q7:寒冷地で使うとき注意することはありますか?
結露・凍結に注意します。冬は暖かく湿った室内排気が冷たいエレメントや外気側で冷やされ、結露・凍結してエレメントが目詰まりすることがあります。対策として、凍結防止(デフロスト)運転機能のある機種を選ぶ、外気をあらかじめ温めるプレヒーターを使う、外気・給気ダクトを保温する、結露水のドレン経路を確保する、といった方法があります。機種選定の段階でデフロスト機能の有無と凍結への仕様を確認しておくのが安全です。
Q8:メンテナンスは何を、どのくらいの頻度でやりますか?
フィルター清掃が基本で、埃・花粉が溜まると圧損が上がり風量が落ちるため定期的に行います(汚れやすい環境ほど頻度を上げる)。エレメントは機種により清掃可否が異なり、紙製は水洗い不可のものが多いので取扱説明書に従います。長年使用するとエレメント交換が必要になる場合があるため、交換時期と費用を導入時に把握しておきます。冷媒を使わない全熱交換器はフロン排出抑制法の点検義務の対象外ですが、不具合の早期発見のため定期点検を推奨します。内部部材の清掃・交換は専門業者に依頼するのが無難です。
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