- トンネル工法って結局何種類あるの?
- NATMとシールドって何が違うの?
- 開削はどういう時に使うの?
- TBMとシールドの違いは?
- 結局どの工法をどう選ぶの?基準が知りたい
- 都市部と山岳でどう変わる?
- 軟弱地盤や水が多い場所はどうなる?
- 沈埋・推進・ケーソンってマイナーなやつは何?
- 各工法のメリット・デメリットを比較したい
- 施工管理として現場で気をつけることは?
- 工法ごとに起きやすいトラブルは?
上記の様な悩みを解決します。
トンネル工法は種類が多く、NATM・シールド・開削・TBMと名前だけ聞いても違いが掴みづらいですよね。ただ、施工管理にとって本当に大事なのは「工法の暗記」ではなく、「この現場の条件なら、どの工法が最適か」を判断できることです。今回は定義・種類・各工法の特徴・違いといった基本を押さえた上で、選定の判断基準(地質・延長・土被り・周辺環境・コスト・工期)と、工法ごとに起きやすい現場トラブルまで、現場で使える形で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
トンネル工法とは?
トンネル工法とは、結論「地下に所定の断面を持つ空間(トンネル)を構築する施工方法の総称」です。
日本トンネル技術協会などで一般に使われる定義では、トンネルは「計画された位置に所定の断面寸法をもって設けられた地下構造物で、施工法は問わず、仕上がり断面積が2m²以上のもの」とされています。つまり「地下にある、ある程度の大きさの構造物」がトンネルで、それをどう作るかの方法がトンネル工法です。
工法は大きく3系統に分けて捉えると整理しやすいです。
- 山岳工法(NATM・矢板):山岳部など地山が自立する条件で、横から掘り進む
- 開削工法:地表から掘り下げてトンネルを作り、埋め戻す
- シールド工法:シールドマシンで掘削とトンネル構築を地下で同時に行う
さらにここへTBM工法や、沈埋・推進・ケーソンといった工法が加わります。トンネル標準示方書でも基本は「山岳・開削・シールド」の3区分が骨格になっています。
僕の整理では、トンネル工法は「どこを(地山か都市か)」「どう掘るか(横からか上からか機械でか)」の組み合わせで捉えると、種類の多さに惑わされません。まずこの3系統を軸に置いて、そこへ枝葉の工法をぶら下げていくと、全体像が一気に見通せます。
トンネル工法の種類一覧
種類は、結論「3大工法(山岳・開削・シールド)+TBM+その他(沈埋・推進・ケーソン)」で全体を押さえられます。
まず全体を一覧で俯瞰します。各工法の使いどころをざっくり掴んでおくと、後の詳細が頭に入りやすくなります。
| 工法 | 主な適用場所 | 掘り方の特徴 |
|---|---|---|
| 山岳工法(NATM) | 山岳部・硬い地山 | 横から掘削、地山の保持力を活かす |
| 開削工法 | 浅い地下・市街地 | 地表から掘り下げ、埋め戻す |
| シールド工法 | 都市部・軟弱地盤 | マシンで掘削+セグメント構築 |
| TBM工法 | 硬岩・長距離 | 掘進機で岩盤を効率掘削 |
| 沈埋工法 | 海底・河床 | 函体を沈めて接続 |
| 推進工法 | 小口径・横断 | 管をジャッキで押し込む |
この一覧の中で、実務でも試験でも中心になるのは山岳(NATM)・開削・シールドの3つです。沈埋・推進・ケーソンは適用場面が限られるぶん、「そういう工法もある」と押さえておけば十分です。
正直なところ、この表の「主な適用場所」が選定の出発点になります。山岳か都市か、地山が硬いか軟弱か——立地と地質が決まれば、候補となる工法は自然と2〜3個に絞られます。
NATM工法(山岳トンネル)
NATM工法は、結論「地山そのものの保持力を活かして、吹付けコンクリートとロックボルトで安定させる山岳トンネルの標準工法」です。
NATMは「New Austrian Tunneling Method(新オーストリアトンネル工法)」の略で「ナトム」と読みます。山岳部を発破やブーム掘削機で横向きに掘削し、地山が自立する条件で採用されます。
施工の流れと支保の考え方は次の通りです。
- 掘削:発破・機械掘削で切羽を掘り進む
- 吹付けコンクリート:掘削直後の地山表面に吹き付け、緩みを抑える
- ロックボルト:地山の奥まで打ち込み、周囲の地山を一体化させる
- 覆工:必要に応じて鉄筋コンクリートでトンネル本体を構築
NATMの核心は「地山を支保材で固めるのではなく、地山自身に支える力を発揮させる」という発想にあります。だからこそ地山が自立しない軟弱地盤では、補助工法を併用しないと成立しにくくなります。NATMの原理や手順の詳細は、こちらが詳しいです。

実務だと、NATMは経済性に優れる一方で「地山の緩みを許容する工法」という側面も押さえておきたいところです。掘削に伴う湧水でトンネル上部の地表が渇水したり、トンネルを2本並べて掘る際に先行トンネルが後続の施工で変状したりと、地山と付き合う工法ならではの難しさがあります。
シールド工法(都市部・軟弱地盤)
シールド工法は、結論「シールドマシンで掘削しながら、セグメントを組み立ててトンネルを構築する、都市部・軟弱地盤向けの工法」です。
円筒形のシールドマシンを使い、掘削・土砂の排出・トンネル構築をすべて地下で行います。まず発進用の立坑を作り、そこからマシンを横向きに発進させて掘り進みます。
特徴を整理すると次の通りです。
- セグメント:コンクリートや鉄製の部材を円形に組み立ててトンネル壁を作る
- 切羽の安定:密閉型では泥土や泥水に圧力をかけ、土圧・水圧に対抗する
- 軟弱地盤に強い:水を多く含む地盤や軟弱地盤でも掘進できる
- 地表への影響が小さい:地上を掘らないので、直上に建物があっても施工可能
都市部の地下鉄や下水道などで多用されるのは、地上の交通や建物への影響を抑えられるからです。一方で、マシン自体が高価なため、コストは大きくなりがちです。シールド工法の詳細はこちら、推進工法との違いも合わせてどうぞ。

僕の感覚だと、シールドは「都市部で地上をいじれない」という制約から逆算して選ばれる工法です。掘削土量から地表沈下を管理したり、地中の障害物(古い鋼矢板など)でマシンが損傷するリスクに備えたりと、管理の重心が「周辺環境への影響制御」に寄るのが特徴です。
開削工法
開削工法は、結論「地表から掘り下げてトンネルを作り、埋め戻す、浅い地下に適した工法」です。
地上部から下へ掘削(開削)し、トンネルを構築してから埋め戻します。掘削深さがそれほど大きくない場合に、大規模な地下空間を比較的安く作れるのが強みです。
施工で重要になる要素は次の通りです。
- 土留め壁:掘削した穴の側面が崩れないよう、あらかじめ壁を構築する
- 切梁・支保工:土留め壁を内側から支え、土圧に抵抗する
- 埋め戻し:トンネル構築後に上部を埋め戻して地表を復旧する
注意点として、掘削中は地上部が使えないため、既設の地下構造物の直下などには基本的に使えません。市街地で行うと道路を長期間規制することになるのも難点です。開削工法の手順や、土留めを支える切梁の役割は、こちらが参考になります。

現場目線で言えば、開削は「浅くて、上を一時的に占有できる」現場で最も合理的です。土留めと切梁の管理がそのまま安全管理の中心になるので、山留め工法の選定とセットで理解しておくと、開削現場の段取りが立てやすくなります。

TBM工法
TBM工法は、結論「TBM(トンネルボーリングマシン)で硬い岩盤を効率的に掘り進む、長距離・硬岩向けの工法」です。
TBMは円形の掘進機で、回転するカッターヘッドで岩盤を削りながら前進します。山岳工法とシールド工法の長所を併せ持つ位置づけで、硬岩の長距離トンネルで威力を発揮します。
押さえておきたいポイントは次の通りです。
- 硬岩に強い:硬い岩盤を機械で連続的に掘削できる
- 長距離で有利:延長が長いほど機械掘削の効率が活きる
- 弱点は破砕帯:地山が砕けた破砕帯ではカッターのグリップが効かず、機械が動けなくなることがある
延長が10kmを超えるような長大トンネルではTBMが有利になりやすい一方、日本のように地質が複雑で破砕帯が多い山岳地盤では、適用に慎重な判断が要ります。
個人的には、TBMは「条件が合えば圧倒的に速いが、条件を外すと一気に苦しくなる」工法だと捉えています。事前の地質調査でどれだけ破砕帯や湧水を把握できるかが成否を分けるので、ボーリング調査などの事前調査の比重が特に大きくなります。

その他のトンネル工法(沈埋・推進・ケーソン)
3大工法とTBM以外にも、結論「沈埋・推進・ケーソンといった、特定条件で活きる工法」があります。
適用場面は限られますが、「こういう条件ならこの工法」という引き出しを持っておくと、工法比較のときに抜けがなくなります。
代表的なものを整理します。
- 沈埋工法:あらかじめ製作したトンネル函体を、海底や河床の溝に沈めて連結する。海底トンネルなどで採用
- 推進工法:発進立坑から管をジャッキで押し込んで構築する。小口径や道路・鉄道の横断などで使われる
- ケーソン工法:箱状の構造物(ケーソン)を地中に沈設していく。立坑や基礎構造とも関わる
推進工法はシールドと混同されやすいですが、「管を押し込む」点が大きな違いです。詳しくはこちらをどうぞ。

僕の考えでは、これらは「主役にはならないが、特定条件では唯一解になる」工法です。海を渡るなら沈埋、道路下を小口径で横断するなら推進、というように、立地の制約が工法を一意に決める場面で出番が来ます。網羅的に押さえておくと、選定の引き出しが広がります。
トンネル工法の選定基準
工法の選定は、結論「地質×延長×土被り×周辺環境×コスト×工期の6要素で、候補を絞り込んで決める」のが基本です。ここがこの記事の核です。
競合記事の多くは工法の説明で終わりますが、実務で問われるのは「で、この現場ならどれを選ぶのか」です。判断の軸を整理します。
- 地質:硬い地山ならNATM・TBM、軟弱・含水地盤ならシールド
- 延長:長大トンネルはTBMが有利、数km級はシールド、数百mなら開削が安い場合が多い
- 土被り(深さ):浅ければ開削、深ければシールドや山岳
- 周辺環境:市街地で地上を使えないならシールド・推進、地表に建物がない山岳なら開削・NATM
- コスト:開削が比較的安い、シールド・TBMはマシンが高価
- 工期:交通規制の可否、機械掘削の連続性で変わる
選定の流れを大まかに言えば、まず立地(山岳か都市か)と地質で系統を決め、次に延長・土被りで具体工法を絞り、最後に周辺環境・コスト・工期で最終判断する、という順序になります。地盤が悪ければ地盤改良の併用も選択肢に入ります。

現場目線で言えば、選定で一番効くのは「周辺環境の制約」です。技術的には複数の工法が可能でも、「地上を止められない」「直上に構造物がある」といった制約が入ると、選べる工法は一気に絞られます。地質とコストだけで決めず、周辺への影響を早い段階で評価することが、現実的な工法選定の肝になります。
工法別の施工管理の勘所とトラブル
施工管理として押さえたいのは、結論「工法ごとに起きやすいトラブルが違い、管理の重心もそれに応じて変わる」点です。
工法を選んだ後、現場で何に神経を使うかは工法ごとに異なります。代表的な注意点を整理します。
- NATM:湧水と地山の緩み。トンネル上部の地表渇水、並設トンネル(二期線)施工時の先行トンネルの変状に注意
- シールド:地表沈下の管理、地中障害物によるマシン損傷、セグメントの精度・止水
- 開削:土留め・切梁の挙動管理、周辺地盤の沈下、地上の交通・近接構造物への影響
- TBM:破砕帯・湧水での掘進停止、カッタービットの摩耗・交換
これらに共通するのは「地中は掘ってみないと分からない部分が残る」という現実です。だからこそ、事前の地質調査と、施工中の計測管理(変位・地下水位など)の両輪が、どの工法でも欠かせません。
トンネルは土木施工管理の花形分野のひとつでもあります。キャリアとしてどんな仕事になるかは、こちらが参考になります。

自分としては、工法の知識が本当に活きるのはこの「トラブルの予見」だと思っています。工法名と特徴を覚えるだけでなく、「この工法ならここでつまずきやすい」まで紐づけて理解しておくと、施工計画の段階でリスクを先回りでき、現場での判断が一段速くなります。
よくある質問(FAQ)
Q. NATMとシールドの一番の違いは何ですか?
A. NATMは地山自身の保持力を活かして掘る山岳向けの工法、シールドはマシンでセグメントを組みながら掘る都市部・軟弱地盤向けの工法です。NATMは硬い地山、シールドは軟弱・含水地盤に向くという住み分けが基本です。
Q. TBMとシールドはどう違いますか?
A. どちらも掘進機を使いますが、TBMは硬い岩盤を効率掘削する山岳系、シールドは軟弱地盤でセグメントを組み立てる都市系という違いがあります。TBMは破砕帯に弱く、シールドは地表沈下管理が重要です。
Q. 都市部のトンネルはどの工法が多いですか?
A. シールド工法が中心です。地上を掘らずに施工でき、直上に建物があっても影響を抑えられるためです。浅い地下で地上を一時占有できる場合は開削工法も使われます。
Q. 工法はどうやって選ぶのですか?
A. 地質・延長・土被り・周辺環境・コスト・工期の6要素で絞り込みます。まず立地と地質で系統を決め、延長・土被りで具体工法を選び、周辺環境・コスト・工期で最終判断するのが一般的な流れです。
Q. 沈埋工法はどんな時に使いますか?
A. 海底や河床にトンネルを作るときです。あらかじめ製作したトンネル函体を水中の溝に沈めて連結する工法で、海底トンネルなどで採用されます。
まとめ
トンネル工法は、山岳(NATM)・開削・シールドの3大工法を軸に、TBM、さらに沈埋・推進・ケーソンといった工法で構成されます。NATMは地山の力を活かす山岳向け、シールドはマシンとセグメントで掘る都市・軟弱地盤向け、開削は浅い地下向け、TBMは硬岩の長距離向け、と適材適所があります。
ただ、施工管理にとって本当に重要なのは、工法の暗記ではなく「地質・延長・土被り・周辺環境・コスト・工期」で最適な工法を選び、その工法で起きやすいトラブルを先回りすることです。地中は掘ってみないと分からない部分が残るからこそ、事前の地質調査と施工中の計測管理が、どの工法でも成否を分けます。各工法の詳細は個別記事も用意しているので、比較検討の際に合わせて読むと、選定の精度がさらに上がるはずです。

