NATM工法とは?意味、原理、施工手順、シールドとの違いなど

  • NATMって結局どういう工法?名前が覚えにくい
  • ナトムって読むの?正式名称は?
  • 「地山の力を使う」原理がピンとこない
  • 吹付けコンクリートとロックボルトの役割の違いは?
  • シールド工法と何が違うの?
  • 矢板工法(従来工法)との違いは?
  • 施工手順を順番に整理したい
  • 都市部や軟弱地盤でもNATM使えるの?
  • 試験で問われるポイントはどこ?

上記の様な悩みを解決します。

NATM(ナトム)は、日本の山岳トンネルのほとんどで使われている代表的な工法です。「吹付けコンクリートとロックボルトで掘る」とよく説明されますが、その本質は「地山(じやま)が本来持っている強さを利用して支える」という発想の転換にあります。ここを押さえないと、矢板工法やシールド工法との違いも曖昧なままになります。今回は定義・原理・支保部材・施工手順といった基本を整理した上で、シールド工法との違い、都市部での補助工法、計測管理まで、現役の施工管理目線で網羅的に解説します。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

NATM工法とは?

NATM工法とは、結論「吹付けコンクリートとロックボルトで地山と一体化した支保構造をつくり、地山自体の保持力を利用してトンネルを支える山岳トンネル工法」のことです。読み方は「ナトム」で、正式名称はNew Austrian Tunneling Method(新オーストリアトンネル工法)の頭文字を取ったものです。

NATMは、長大な山岳トンネルが多いオーストリアで1960年代に提唱されました。提唱者はラブセビッツ・ミュラー・パッヒャーという3人の技術者です。日本では熊谷組の施工で、上越新幹線の中山トンネル(1977年貫通)にNATMが初めて本格的に採用され、これを契機に1980年代以降、山岳トンネルの標準工法として急速に普及しました。当初は固い岩盤の山岳トンネル向けでしたが、現在は補助工法と組み合わせて軟弱地盤や都市部のトンネルにも広く使われています。

トンネル工法全体の中でのNATMの位置づけは、こちらが参考になります。

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僕の感覚だと、NATMは「山岳トンネル=ほぼNATM」と覚えておいて差し支えない、それくらい現在の山岳トンネルの標準工法です。ただし「山岳工法=NATM」と完全にイコールではなく、NATMは山岳工法の一種という整理が正確です。まずは「現在の山岳トンネルの主役」という位置づけを押さえておくと、後の話が入りやすくなります。

NATM工法の原理

NATMの一番大事なポイントが、この原理です。NATMは「地山自体が持っている支保能力(自分を支える力)を積極的に使う」という考え方に立っています。

トンネルを掘ると、周りの地山には穴を塞ごうとする地圧がかかります。NATMでは、掘削直後に吹付けコンクリートで掘削面を覆い、ロックボルトを地山の奥深くまで打ち込むことで、トンネル周辺の地山を一体化させます。すると地山自体がアーチのように働いて(アーチアクション)、地圧を地山自身で受け持つようになります。覆工コンクリートはそれを補助する位置づけなので、覆工を薄くできるわけです。

従来工法(矢板工法)との決定的な違い

この原理は、NATM以前の従来工法=矢板工法と比べると一気に腹落ちします。

項目 NATM 矢板工法(従来工法)
考え方 地山の力を活かして一体化 支保工と覆工で地圧を抑え込む
覆工の厚さ 薄くできる 厚くなりがち
地山との隙間 密着(吹付け) 隙間ができやすい
止水性 確保しやすい 問題が出やすい

矢板工法は、掘削面に矢板をあてがい、支保工で支えてコンクリートで巻き立てる工法で、1980年頃まで主流でした。地圧を「人工物(覆工)で抑え込む」発想です。これに対しNATMは、地山を敵ではなく味方にして「地山に自分を支えさせる」発想で、ここが180度の違いです。

正直なところ、NATMの説明で「吹付けとロックボルトで掘る工法」とだけ覚えると、矢板工法との違いが見えなくなります。「地圧を抑え込む(矢板)」のか「地山の力を活かす(NATM)」のか、という思想の違いで捉えると、試験でも現場でも応用が効きます。

NATM工法の支保部材

NATMで地山を支える主役は、吹付けコンクリート・ロックボルト・鋼製支保工の3つです。それぞれの役割を分けて理解しましょう。

支保部材 役割
吹付けコンクリート 掘削面に密着させ、地山の緩みと風化を防ぐ一次支保
ロックボルト 地山の奥に打ち込み、地山を縫い合わせて一体化させる
鋼製支保工 アーチ状の鋼材で、地山が緩い区間を早期に支える

吹付けコンクリートは、掘削直後の地山にスプレーのように吹き付けて、表面を覆い緩みを止める役割です。ロックボルトは、鉄の棒を地山の奥深くまで差し込み、ばらけようとする地山を縫い合わせて一体化させ、地山の保持力を引き出します。鋼製支保工(H形鋼などのアーチ)は、地山が特に緩い区間で、吹付けが効くまでの間を早期に支える骨組みです。

この3点セットで「一次覆工(一次支保)」を構成し、地山の変位が収まったことを確認してから、仕上げの「二次覆工(覆工コンクリート)」を打設します。覆工に使うコンクリートの基礎はこちらも参考になります。

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僕の整理では、3部材は「吹付け=面で覆う/ロックボルト=点で縫う/鋼製支保工=骨組みで支える」と役割を分けて覚えると混乱しません。どれか1つではなく、面・点・骨組みの組み合わせで地山を一体化させているのがNATMの支保の考え方です。

NATM工法の施工手順

NATMの施工は、掘削から覆工まで一定のサイクルを繰り返して進みます。基本の流れは次のとおりです。

  1. 掘削(発破または機械掘削で地山を掘る)
  2. ずり出し(掘削した土砂=「ずり」をダンプ・トロッコで運び出す)
  3. 吹付けコンクリート(掘削面に一次支保として吹き付ける)
  4. 鋼製支保工の建込み(緩い区間でアーチ状の鋼材を設置)
  5. ロックボルトの打込み(地山を一体化させる)
  6. 計測・変位確認(地山の変位が収束したかを測る)
  7. 覆工コンクリート打設(防水シートを貼り、二次覆工で仕上げる)

「ずり出し」は掘削土砂の運搬のことで、設計上は地味ですが、施工中はこのずり出しの効率がサイクルタイム=工期を大きく左右します。吹付け・ロックボルトで一次支保を組んだ後、すぐに覆工へ進むのではなく、計測で地山の変位が落ち着いたことを確認してから二次覆工に入るのがポイントです。変位が続いているうちに覆工を打つと、不要なひび割れの原因になります。

防水シートは、トンネル内に染み込む水を底部の排水溝へ導く「排水型トンネル」が一般的ですが、地下水位への影響が大きい場合は底部にも防水シートを巻く「防水型トンネル」とすることもあります。

実務だと、NATMは「掘る→支える→測る→また掘る」のサイクルの繰り返しです。1サイクルごとに地山の状態を見ながら支保のパターンを調整していくので、地質に応じて柔軟に対応できるのがこの工法の強みになります。手順を丸暗記するより、「掘ったら即支保、こまめに計測」というリズムで捉えると現場でも応用できます。

NATM工法のメリット・デメリット

NATMが山岳トンネルの標準になった理由は、メリットがはっきりしているからです。一方で苦手な場面もあります。

区分 内容
メリット 地山の力を活かすので覆工を薄くでき、経済的
メリット 機械化された部分が多く、少人数で施工できる
メリット 大断面や任意形状の断面にも対応しやすい
メリット 補助工法と組み合わせれば多様な地質に対応できる
デメリット 穿孔機・吹付け機など大掛かりな設備が必要
デメリット 極端な軟弱地盤・含水地山では工法選定に慎重さが要る
デメリット 地山の変状が出たら早期の対応が不可欠

覆工を薄くできるのは、地山自身に地圧を受け持たせているからで、これがコスト面の大きな利点になります。シールド工法のように高価な専用マシンを必要としないため、山岳トンネルではNATMの方が一般的に安価です。

一方で、地山の力を当てにする工法なので、その地山が極端に弱い・水を大量に含むといった条件では、補助工法なしでは成立しません。また、地山に頼る分、点検時に外力由来の変状(ひび割れなど)が見つかったら、素早く原因を突き止めて対応する必要があります。

僕の考えでは、NATMは「地山が味方になってくれる条件では最強だが、地山が敵に回る条件では一気に難しくなる」工法です。だからこそ、後述する補助工法や、次に紹介するシールド工法との使い分けが重要になってきます。

NATM工法とシールド工法の違い

NATMとシールド工法は、トンネル工法の二大巨頭として必ず比較されます。最大の違いは「地山に対する考え方」です。

項目 NATM シールド工法
考え方 地山の支保能力を活かす 地山を変形させず機械で抑える
主な対象 山岳部・硬い地山 都市部・軟弱地盤・含水地盤
支保 吹付け・ロックボルト・覆工 シールドマシン・セグメント
掘削 発破・機械掘削 シールドマシンで連続掘進
コスト 比較的安価 マシンが高価
地表への影響 土被りが浅いと沈下リスク 沈下を抑えやすい

NATMが「地山の力を活かす」のに対し、シールド工法は「地山をできるだけ変形させず、シールドマシンとセグメント(覆工ブロック)で囲って支える」工法です。シールドは先端の刃で土を掘りながらジャッキで前進し、後ろでセグメントを組み立てて壁面を覆っていきます。

つまり、硬い地山が多い山岳部はNATM、軟弱で水を含む都市部の地下はシールド、というのが基本的な棲み分けです。シールド工法の詳細はこちらが参考になります。

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推進工法との違いも整理しておくと、トンネル工法の全体像がつかめます。

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現場目線で言えば、「地山に支えさせる(NATM)」か「地山を信用せず機械で囲う(シールド)」か、という一文で対比すると両者は混同しなくなります。近年は都市部でも補助工法を駆使してNATMが使われる場面が増え、両者の境界領域も広がっていますが、考え方の出発点はこの対比で押さえておけば十分です。

都市部・軟弱地盤でのNATMと補助工法

ここからは競合記事ではあまり踏み込まれない、都市部や軟弱地盤でNATMを成立させるための補助工法と計測管理の話です。NATMが山岳から都市部へ適用範囲を広げられたのは、この補助工法の発達が大きい要因です。

代表的な補助工法は次のとおりです。

  • アンブレラ工法(長尺鋼管先受け):土被りが浅くロックボルトが使えない都市部で、アーチ天端の外周に長い鋼管を傘状に打ち込み、掘削に先行して天端を支える
  • CD工法・CRD工法:トンネル断面に縦の隔壁を入れ、半断面ずつ掘って上部の沈下を抑える都市部向けの掘削手法
  • 注入式補助工法:薬液やウレタンを地山に注入し、緩い地山を固めてから掘る

土被りが浅い都市部では、地山の上に建物やライフラインがあるため、地表面の沈下を抑えることが最優先になります。そこでアンブレラ工法で先に地山を補強したり、CD・CRD工法で断面を分割して沈下を最小化したりするわけです。

計測管理(情報化施工)がNATMの肝

NATMでもう1つ欠かせないのが、計測管理です。トンネル内空の変位や地表面の沈下を継続的に測り、そのデータをもとに支保パターンや補助工法を調整していきます。これを情報化施工と呼びます。地山の力を当てにする工法だからこそ、「地山が想定通りに働いているか」を計測で確認しながら進めるのが、NATMの安全と品質を支える要になります。掘る前の地質調査も同じく重要です。

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僕としては、NATMの本当の難しさは手順そのものより「地山を読みながら支保を調整する」判断にあると感じます。同じ図面でも、地質が変われば支保パターンも補助工法も変わる。だからこそ計測でこまめに地山の声を聞き、想定とズレたら早めに手を打つ。この「測って・考えて・調整する」姿勢が、NATMを安全に掘り進めるうえで一番大事な部分だと考えています。

NATM工法に関するよくある質問

Q1:NATMの読み方と正式名称は何ですか?

読み方は「ナトム」です。正式名称はNew Austrian Tunneling Method(新オーストリアトンネル工法)で、その頭文字を取ってNATMと呼ばれます。1960年代にオーストリアで提唱され、日本では1970年代から本格的に使われるようになりました。山岳トンネルの代表的な工法です。

Q2:NATMはどんな地山に向いていますか?

本来は固い岩盤を持つ山岳部のトンネルに向いた工法です。地山自体の保持力を利用するため、ある程度の強度を持つ地山ほど効果を発揮します。ただし現在は、アンブレラ工法やCD・CRD工法といった補助工法と組み合わせることで、軟弱地盤や土被りの浅い都市部のトンネルにも適用されています。極端に弱い地山や大量の湧水がある地山では、工法選定に慎重さが求められます。

Q3:一次覆工と二次覆工は何が違うのですか?

一次覆工(一次支保)は、掘削直後に施工する吹付けコンクリート・ロックボルト・鋼製支保工のことで、地山と一体化して地圧を受け持つ役割です。二次覆工は、地山の変位が収まったことを計測で確認した後に打設する仕上げの覆工コンクリートで、防水や長期的な耐久性を担います。一次でしっかり地山を安定させ、二次で仕上げる、という二段構えになっています。

Q4:シールド工法とNATM、どちらが優れているのですか?

優劣ではなく適材適所です。硬い地山の多い山岳部では、地山の力を活かせて比較的安価なNATMが有利です。軟弱で水を含む都市部の地下では、地山を変形させず機械で囲うシールド工法が有利です。地表への沈下リスクが大きい都市部ではシールドが選ばれることが多いですが、補助工法を駆使して都市部でNATMが使われる場面も増えています。地山の条件と土被り、コストで使い分けます。

Q5:NATMで計測管理が重視されるのはなぜですか?

NATMは地山自体の支保能力を当てにする工法なので、「地山が想定通りに働いているか」を確認しながら進める必要があるからです。トンネル内空の変位や地表面の沈下を継続的に測り、そのデータをもとに支保パターンや補助工法を調整します。これを情報化施工と呼びます。計測を怠ると、地山の変状を見逃して事故につながるリスクがあるため、NATMの安全管理の根幹になっています。

NATM工法に関する情報まとめ

  • NATM工法とは:吹付けコンクリートとロックボルトで地山と一体化し、地山自体の保持力で支える山岳トンネル工法(読み:ナトム)
  • 原理:地山の支保能力を活かして地圧を地山自身に受け持たせる。地圧を抑え込む矢板工法(従来工法)とは思想が真逆
  • 支保部材:吹付けコンクリート(面で覆う)/ロックボルト(点で縫う)/鋼製支保工(骨組みで支える)
  • 施工手順:掘削→ずり出し→吹付け→鋼製支保工→ロックボルト→計測→覆工コンクリートのサイクル
  • メリット・デメリット:覆工が薄く経済的・少人数施工・大断面対応が利点。大掛かりな設備が必要で軟弱地盤は慎重
  • シールド工法との違い:地山の力を活かす(NATM・山岳)か、地山を変形させず機械で囲う(シールド・都市部軟弱地盤)か
  • 都市部の適用:アンブレラ工法・CD/CRD工法などの補助工法と計測管理(情報化施工)で適用範囲が拡大

以上がNATM工法に関する情報のまとめです。

NATMは「地山を味方にして、地山に自分を支えさせる」という発想の工法です。吹付けとロックボルトという手段だけでなく、この原理を押さえると、矢板工法との違いもシールド工法との使い分けも一本の筋で理解できます。試験対策としても「地圧を抑え込むのか、地山の力を活かすのか」という対比で覚えるのが効率的です。さらに補助工法と計測管理まで押さえておけば、都市部のトンネルまで含めて全体像がつかめるはずです。

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