- 水平剛性って結局なに?
- K=12EI/h³ と 3EI/h³、どっちを使えばいいの?
- なんで両端固定は一端ピンの4倍も剛いの?
- 公式の導出(片持ち梁のh/2)が分からない
- 層の剛性って各柱の足し算でいいの?
- 層間変位はせん断力÷剛性?
- 剛性マトリクスって何をするもの?
- 層間変形角や剛性率とどうつながるの?
上記の様な悩みを解決します。
水平剛性は、一級建築士の構造でほぼ毎年問われる超頻出テーマです。公式(12EI/h³と3EI/h³)を暗記すれば過去問は解けますが、「なぜその式になるのか」「12と3はどう見分けるのか」を理解しないと、少しひねられた問題や実務の耐震設計でつまずきます。
この記事では、水平剛性の意味と公式から、両端固定柱の公式の導出となぜ片持ちの4倍剛いのか、さらに層の剛性の合成・層間変位の求め方、剛性マトリクス、そして層間変形角や剛性率といった実務とのつながりまで、暗記で終わらせない形で整理しました。
なるべく図式的に分かりやすくまとめていくので、構造が苦手な方や受験勉強中の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
水平剛性とは?
水平剛性とは、結論「柱に水平力を加えたとき、その柱がどれだけ変位しにくいかを表す指標」のことです。
式で書くと、水平力P と水平変位δ の関係は P=K・δ、つまり K=P/δ で表されます。同じ力をかけても変位δが小さいほど、剛性Kは大きい(=硬い・変形しにくい)という意味です。これはばねを押す感覚とまったく同じで、ばね定数が大きいばねほど縮みにくいのと同じ理屈です。水平剛性は構造物の「水平方向のばね定数」だと捉えると一気にイメージしやすくなります。ばね定数の考え方はこちらが参考になります。

水平剛性の単位は「力÷長さ」なので、N/mm や kN/m で表します。剛性そのものの全体像(曲げ・せん断・ねじりなど剛性の種類)を整理したい場合は、剛性の記事も合わせて読むと位置づけが掴めます。

水平剛性の計算方法と公式
水平剛性の公式は、結論「柱の上下端の支持条件(境界条件)で2パターンある」と覚えるのが核心です。条件で式が変わるので、まずこの2つを押さえます。
代表的な2つの公式は次の通りです。
| 境界条件 | 水平剛性K | 変位δ |
|---|---|---|
| 両端固定 | K = 12EI/h³ | δ = Ph³/12EI |
| 一端固定・他端ピン | K = 3EI/h³ | δ = Ph³/3EI |
ここでE はヤング率(材料の硬さ)、I は断面二次モーメント(断面の形の効きやすさ)、EI を掛けたものが曲げ剛性、h は柱の高さです。共通して言えるのは「水平剛性K は曲げ剛性EI に比例し、柱の高さh の3乗に反比例する」ことです。つまり、太く硬い柱ほど剛く、背の高い柱ほど一気に柔らかくなります(h³で効くので高さの影響が非常に大きい)。
E とI の中身は別記事で深掘りできます。材料の硬さを表すヤング率はこちら、断面形状の効きを表す断面二次モーメントはこちらです。


両端固定柱の公式の導出と、なぜ4倍剛いのか
両端固定のK=12EI/h³ は、結論「片持ち梁のたわみ公式を、柱の上下半分ずつに当てはめて導く」と理解できます。丸暗記せずに導けるので、ここを押さえておくと忘れません。
導出の流れはこうです。両端が固定された柱に水平力P が加わると、柱は上下対称にS字型に変形します。このとき、柱の中央(高さh/2の位置)が変曲点(曲げモーメントがゼロになる点)になり、上半分・下半分はそれぞれ「長さh/2 の片持ち梁」とみなせます。
片持ち梁の先端集中荷重によるたわみ公式は δ=PL³/3EI です。ここに L=h/2 を代入すると、片側の変形は P(h/2)³/3EI = Ph³/24EI。柱全体は上下2つ分なので、これを2倍して δ=Ph³/12EI。よって K=P/δ=12EI/h³ が出てきます。たわみの公式が出発点なので、各支持条件のたわみに不安があればこちらで復習できます。

ここで多くの人がつまずく「なぜ両端固定は一端ピンの4倍剛いのか」も、式を並べれば一目です。両端固定が12EI/h³、一端固定・他端ピンが3EI/h³ なので、比は12対3=4対1。理由は境界条件の拘束の強さで、両端を固定すると柱の上端も回転しないように押さえ込まれるため、同じ力でも変形しにくくなります。逆に上端がピン(回転自由)だと上が首を振るように動けてしまい、変形が大きくなる=剛性が小さくなります。僕の感覚だと、「固定が増えるほど拘束が強くなり剛くなる」という方向感さえ持っておけば、本番で式を取り違えても踏みとどまれます。
境界条件の見分け方は、柱の上下が梁や床にしっかり剛接合されていれば両端固定、上端の拘束が弱い(ピン的)なら一端ピン、と判断します。実際の柱梁接合部の固定度はこちらの記事が参考になります。

層の水平剛性と層間変位
複数の柱がある層では、結論「層の水平剛性は各柱の剛性の足し算(並列)」で、層間変位は「層せん断力÷層の剛性」で求めます。ここが計算問題の本丸です。
考え方を整理すると次の通りです。
- 各柱は同じ床(剛床)で上端がつながっているため、同じ水平変位δ を生じる=ばねの並列接続
- 並列のばねは剛性を足し算できるので、層の剛性 ΣK = K1+K2+K3+…
- 層間変位δ = その層に働くせん断力Q ÷ 層の剛性ΣK
例えば、ある層に12EI/h³ の柱が3本あれば層の剛性は36EI/h³、そこに層せん断力Q が働けば層間変位は δ=Q÷(36EI/h³) と一発で出ます。剛床(床が面内で変形しない)という前提があるからこそ、全柱が同じδ で動き、剛性を単純に足せるわけです。
注意したいのは、足し算できるのは「並列(同じ変位)」のときだけという点です。直列(バネを縦に繋いだ状態)なら、合成は剛性の逆数の和になります。層内の柱は並列なので足し算、と覚えておけば実務でも試験でも迷いません。
剛性マトリクスとは
剛性マトリクスとは、結論「複数の自由度(節点の変位)と力の関係を、行列でまとめて解くための道具」です。柱1本のK=P/δ を、骨組み全体に拡張したものと考えると分かりやすいです。
1本の柱なら P=Kδ というスカラーの式で済みますが、ラーメン構造のように節点が複数あり、各節点が水平・鉛直・回転の自由度を持つと、力と変位は1対1では決まりません。そこで {P}=[K]{δ} という行列の式にして、まとめて連立で解きます。[K] が剛性マトリクスで、各要素(部材)の剛性を組み立てて全体剛性をつくります。
手計算ではなく、現在の構造解析ソフトはこの剛性マトリクス法(マトリクス変位法)で骨組みを解いています。受験段階では「剛性マトリクスは多自由度版のK=P/δ」という理解で十分で、要素剛性の組み立て方まで踏み込みたい場合はこちらが詳しいです。

水平剛性が実務で効く場面
水平剛性は試験のためだけの概念ではなく、結論「耐震設計の層間変形・剛性バランスの評価に直結する」実務の基礎量です。どこで効くのかを押さえると、学ぶ意味が見えてきます。
実務での主な使われ方は次の通りです。
- 層間変形角の算定:層間変位δ を階高h で割った δ/h が層間変形角。一次設計では原則1/200以内に収める
- 剛性率の評価:各層の剛性が上下でバランスしているか。特定階だけ柔らかいと地震時にそこへ変形が集中する
- 偏心率の評価:平面内で剛性の中心(剛心)が偏っていないか。偏るとねじれる
- ピロティ構造の弱点把握:1階を柱だけにすると1階の剛性が急減し、層崩壊のリスクが上がる
層間変形角は水平剛性から直接出てくる量で、建物の変形性能を測る基本指標です。基準値の根拠まで知りたい場合はこちらが参考になります。

剛性率・偏心率は「剛性のバランス」を見る指標で、水平剛性の理解があって初めて腹落ちします。ピロティ建築の危うさも、結局は「その層だけ水平剛性が極端に小さい」という剛性率の問題です。剛性率と偏心率、ピロティの話はこちらでまとめています。

水平剛性に関するよくある質問
水平剛性について、受験勉強や実務でよく出る質問をまとめます。
12EI/h³ と 3EI/h³ はどう使い分けますか?という質問では、柱の上下端がともに剛接合(回転拘束)なら両端固定の12EI/h³、上端がピン(回転自由)なら一端固定・他端ピンの3EI/h³ を使います。固定が強いほど剛性が大きくなります。
なぜ両端固定は4倍剛いのですか?については、公式の係数が12と3で比が4対1だからです。両端を固定すると上端の回転も拘束され、同じ力でも変形しにくくなるため、剛性が大きくなります。
層の水平剛性はどう求めますか?については、各柱が同じ床でつながり同じ変位を生じる並列接続なので、各柱の剛性を足し算します。層間変位は層せん断力をこの層剛性で割って求めます。
剛性と強度は何が違いますか?については、剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で別物です。剛い材料が必ずしも強いとは限りません。違いはこちらの記事で詳しく整理しています。

水平剛性に関する情報まとめ
- 水平剛性とは:柱に水平力を加えたときの変位しにくさ。K=P/δ、水平方向のばね定数
- 公式:両端固定はK=12EI/h³、一端固定・他端ピンはK=3EI/h³。EIに比例しh³に反比例
- 導出:片持ち梁δ=PL³/3EIにL=h/2を入れ2倍するとδ=Ph³/12EI
- 4倍の理由:係数12対3=4対1。固定が強いほど剛い
- 層の剛性:並列なので各柱の足し算。層間変位=層せん断力÷層剛性
- 実務:層間変形角・剛性率・偏心率・ピロティ評価の基礎量
以上が水平剛性に関する情報のまとめです。
水平剛性は、公式を暗記するだけなら数分ですが、「ばね定数として捉える」「片持ち梁から導く」「層では足し算」「耐震の層間変形・剛性バランスにつながる」という4点を押さえると、応用問題にも実務にも効く本物の理解になります。関連して以下も読んでおくと、構造の剛性まわりが体系的につながります。




