- せん断応力度ってどう求めるの?
- τ=Q/Aでいいの?それとも別の公式?
- 平均と最大でなんで値が違うの?
- 形状係数の3/2とか4/3って何?
- せん断応力とせん断応力度って違うもの?
- 許容せん断応力度はどう出す?
- 例題で計算の流れを確認したい
上記の様な悩みを解決します。
せん断応力度は建築士試験の構造でも実務の梁の検討でも必ず出てくる基本量ですが、「τ=Q/Aで一発」と覚えている人と「τ=QS/(Ib)で分布を考える」人がいて、どっちが正しいのか混乱しがちです。結論を先に言うと、両方とも正解で、平均を見るか断面内の最大を見るかの違いです。今回はせん断応力度の定義から、平均・最大それぞれの求め方と公式、形状係数、混同しやすいせん断応力との違い、許容せん断応力度までを例題つきで整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
せん断応力度とは?
せん断応力度とは、結論「断面をずらそうとするせん断力を、断面積で割った単位面積あたりの力」のことです。記号はτ(タウ)、単位はN/mm²です。
材を断面でスパッと切ったときに、その面をすべらせよう(ずらそう)とする内力がせん断力Qで、それを断面積で受け止めたときの1mm²あたりの負担がせん断応力度τになります。垂直応力度σ(引っ張り・圧縮)が「面に垂直に働く」のに対して、せん断応力度τは「面に平行に働く」のが決定的な違いです。断面に働く力の全体像(軸力・せん断力・曲げモーメント)はこちらが参考になります。

僕の感覚だと、せん断応力度は「面をずらす力の混み具合」とイメージすると分かりやすいです。同じせん断力でも断面が小さいほど混み合う=τが大きくなる、という当たり前の関係を押さえておけば、公式を丸暗記しなくても大小関係で判断できます。
せん断応力とせん断応力度の違い
ここは多くの人がつまずくのですが、結論「せん断応力=せん断応力度と同じ意味で使われることが多いが、応力(内力そのもの)と応力度(面積あたり)は本来別物」です。
建築の構造分野では、力そのものを表す「応力」と、面積あたりに直した「応力度」を区別します。せん断力Q(単位N・kN)は断面に働く内力そのもので、それを断面積で割ったτ(単位N/mm²)がせん断応力度です。ところが実務や一般的な解説では「せん断応力」という言葉がτの意味で使われることも多く、文脈で読み分ける必要があります。せん断応力の全体像や引張・曲げとの違いはこちらでも解説しています。

正直なところ、言葉の厳密さより「N(力)なのか、N/mm²(面積あたり)なのか、単位で見分ける」のが実務では一番確実です。試験でも「応力度を求めよ」と言われたら必ず断面積で割る、と機械的に反応できれば取りこぼしません。
平均せん断応力度の求め方(τ=Q/A)
一番シンプルな求め方が、平均せん断応力度です。結論、公式は τ = Q / A(Q:せん断力、A:断面積)です。
断面全体に一様にせん断応力度が働くと仮定して、せん断力Qを断面積Aで割るだけです。ざっくりした検討や、断面が一定の部材の目安を掴むときに使います。
例題で流れを確認します。幅b=300mm、せいh=500mmの長方形断面の梁に、せん断力Q=150kN(=150000N)が働くとき、断面積A=300×500=150000mm²なので、平均せん断応力度τ=150000 ÷ 150000=1.0N/mm²となります。数字がきれいに出るように選びましたが、実際も「単位をNとmmに揃えて割るだけ」という手順は同じです。
最大せん断応力度の求め方(τ=QS/Ib)
より正確な求め方が、断面内の分布を考えた最大せん断応力度です。結論、公式は τ = QS / (I・b) で、最大値は中立軸で生じます。
実際のせん断応力度は断面内で一様ではなく、中立軸(断面の中央)で最大、上下の縁でゼロになる放物線状に分布します。ここでSは中立軸から外側の断面一次モーメント、Iは断面二次モーメント、bはその位置の幅です。断面二次モーメントの意味はこちらが参考になります。

代表的な断面では、最大せん断応力度は「平均 × 形状係数k」で簡単に出せます。
- 長方形断面:k=3/2(=1.5)、τ_max=1.5 ×(Q/A)
- 円形断面:k=4/3(≒1.33)、τ_max=(4/3)×(Q/A)
- 薄肉円管:k=2、τ_max=2 ×(Q/A)
先ほどの例題(長方形、τ_avg=1.0N/mm²)なら、最大せん断応力度はτ_max=1.5×1.0=1.5N/mm²です。中央部が平均の1.5倍まで上がる、という事実を知らずに平均値だけで検討すると危険側になるので、断面の照査では最大側で見るのが基本です。
許容せん断応力度の求め方
求めたせん断応力度は、材料の許容せん断応力度と比べて安全かを判定します。結論、鋼材の許容せん断応力度は基準強度Fから「長期=F/(1.5√3)、短期=F/√3」で出します。
せん断に対する降伏強度がF/√3(ミーゼスの考え方)で、長期はそこに安全率1.5を見込むためF/(1.5√3)になります。短期(地震・暴風時)は長期の1.5倍なのでF/√3です。
- SS400(F=235N/mm²):長期 fs≒90N/mm²、短期 fs≒135N/mm²
- 判定:計算したτ_max ≦ 許容せん断応力度fs なら安全
- RC造の梁:コンクリートだけでなく、あばら筋(スターラップ)でせん断を負担させる
許容応力度設計の全体像や長期・短期の考え方はこちらでまとめています。

実務でせん断応力度をどう見るか
試験の計算だけでなく、現場でもせん断応力度の感覚は効いてきます。結論、施工管理は「せん断が効く場所」を知っておくと配筋や納まりの意味が読めます。
せん断応力度が大きくなるのは、支点付近(せん断力Qが最大になる位置)です。RC梁でこの位置のあばら筋ピッチが密になっているのは、せん断力に抵抗させるためで、図面で端部のスターラップが細かいのはこの理屈です。曲げが効く中央部と、せん断が効く端部で配筋の意図が違う、と分かると配筋検査の見方が変わります。曲げ応力側の考え方はこちらもどうぞ。

現場目線で言えば、数式そのものより「端部はせん断、中央は曲げ」という力の担当分けを体で覚えておくと、図面の配筋がなぜそうなっているかを自分の言葉で説明できるようになります。
せん断応力度に関する情報まとめ
- せん断応力度とは:せん断力を断面積で割った単位面積あたりの力(記号τ、単位N/mm²)
- 応力との違い:Q(N・kN)は内力、τ(N/mm²)は面積あたり。単位で見分ける
- 平均:τ=Q/A(断面一様と仮定した目安)
- 最大:τ=QS/(Ib)、中立軸で最大。長方形はk=3/2、円形はk=4/3
- 許容値:鋼材は長期F/(1.5√3)、短期F/√3(SS400で約90/135N/mm²)
- 実務:せん断は支点付近で最大、RC梁の端部あばら筋が密なのはこのため
以上がせん断応力度に関する情報のまとめです。
平均と最大の使い分けから許容値の判定まで、実務で必要な範囲はカバーできたかなと思います。せん断力そのものの分布を図で追いたい人は、こちらもあわせてどうぞ。

