- 構内PHSってなに?普通のPHSと何が違うの?
- 病院でPHS使ってるけど、PHSってサービス終了したんじゃないの?
- どんな施設で構内PHSが使われてる?
- 構内PHSの代替手段ってある?
- IP-PBXやsXGPと何が違う?
- 更新工事で気をつけることは?
上記の様な悩みを解決します。
構内PHSとは、結論「敷地内(構内)専用に設置された自前のPHS無線通信システム」のことです。「自営PHS」とも呼ばれ、病院・工場・物流倉庫などで内線電話+PHS端末で運用されてきました。2023年3月末で公衆PHSサービス(ワイモバイルのテレメトリプラン除く)は終了しましたが、構内PHS(自営PHS)は対象外で今も使い続けられている設備があります。とはいえ端末・基地局のメーカー製造打ち切りが進んでいて、ここ数年でsXGP・DECT・LTE-Xなどの後継技術への更新案件が一気に増えている状況。施工管理として更新工事の段取りを担当する場面が増える設備分野です。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
構内PHSとは?
構内PHSとは、結論「事業所や病院などの敷地内で、自前の基地局と端末を使って運用する内線用のPHSシステム」のことです。
正式には「自営構内PHS」と呼ばれ、用途は主に内線電話+業務連絡用のハンディ端末。一般的なPHSサービス(NTTパーソナル→ウィルコム→ワイモバイル)が使う公衆PHS網とは別系統で、自社の敷地内にだけ電波を飛ばす無線設備です。
仕組みのざっくりした流れは、
- 構内PBX(電話交換機)を設置
- PBXにPHS基地局(CS:Cell Station)を有線で接続
- 各フロア・部屋に基地局を配置して敷地全体に電波をカバー
- 利用者はPHS端末(PS:Personal Station)を持ち歩いて内線通話
という構成。「Wi-Fiみたいな無線で内線電話を運ぶ仕組み」と思ってもらえれば近いです。
公衆PHSとの違い
混同しやすい「公衆PHS」と「自営構内PHS」の違いを整理しておきます。
| 項目 | 公衆PHS | 自営構内PHS |
|---|---|---|
| 運営 | 通信事業者(旧ウィルコム、ワイモバイル) | 利用企業・病院が自前で運用 |
| 利用範囲 | 全国(公衆網) | 自社敷地内のみ |
| 基地局 | 通信事業者が設置 | 自社で設置 |
| 2023年3月終了 | 終了(個人・法人音声サービス) | 対象外(継続可) |
| 用途 | 一般通話・データ通信 | 内線電話・業務連絡 |
「PHSサービス終了=構内PHSも使えない」と思われがちですが、構内PHSは自営の閉じたシステムなので影響を受けない、というのが大事なポイント。
構内PHSが使われてきた施設
なぜ多くの施設でPHSが採用されたのか、用途別に整理します。
①病院
最も有名な構内PHSの導入先。理由は、
- 微弱電波で医療機器への電磁干渉が小さい
- 小型・軽量で持ち歩きやすい(ナースが胸ポケットに入れて運用)
- 多くの内線端末を収容できる(PBX一台で数百〜数千端末)
- 内線通話+ナースコール連動で医療現場に最適化
「医療機器への影響を考えると携帯電話は使いたくない、でも内線で常時連絡を取りたい」という病院ニーズにバッチリだったわけです。
②工場
製造現場では、
- 広い敷地の作業者間連絡
- クリーンルーム内の通信
- 危険区域での防爆型端末
など、有線では難しい場面でPHSが活躍。Wi-Fi電波が嫌われる工程(電子部品製造、半導体)でもPHSは比較的相性が良く、長く使われてきました。
③物流倉庫・配送センター
- 広い倉庫内のフォークリフト運転手とのやりとり
- 複数フロアでの作業指示
- ハンディターミナル(バーコードスキャナー)と組み合わせ
など、業務連絡の主役として導入されてきました。
④ホテル・旅館
- 客室係(ハウスキーパー)との連絡
- フロント・ベルマン・コンシェルジュ間の業務連絡
- 緊急対応時の即時連絡
ホテル業界でもスタッフ用内線として広く採用。
⑤大学・学校
- 教職員間の連絡
- 広いキャンパス内の業務連絡
教育機関でも導入例多数。
公衆PHS終了と構内PHSの今
ここが一番混乱しやすいので整理します。
公衆PHSサービス終了の経緯
ワイモバイル(旧ウィルコム)が運営していた公衆PHSサービスは、
- 2020年7月:個人向け新規受付終了
- 2021年1月:法人向け新規受付終了
- 2023年3月末:音声通話サービス終了
- 2025年3月末:テレメトリプラン(M2M用途)も終了予定
という段階で順次終了。これにより、「PHS全体が終わる」という誤解が広がりました。
構内PHSは対象外(でも更新は必要)
公衆PHS終了の影響を直接は受けないのが構内PHS。周波数の使用許可も、自営PHS用は別枠で確保されているので、システムとしては動き続けます。
ただし、
- PHS端末・基地局のメーカー製造打ち切り:主要メーカーが新規生産を打ち切り、保守部品も枯渇
- 故障時の代替機確保が困難
- 修理対応の終了予告
という形で、実質的には更新が必要な状況。「動くけど直せない」という時限爆弾を抱えている、というのが現実です。
このため、ここ数年は構内PHSから後継技術への更新工事が建築・設備業界の大きなテーマになっています。
代替・後継技術の選択肢
構内PHSからの移行先として検討される技術を整理します。
①sXGP(Shared Extended Global Platform)
PHSに代わる本命とされている、1.9GHz帯を使った自営無線通信システム。
- PHSと同じ周波数帯(1.9GHz)を使う
- 既存PHS設備の電波設計をそのまま流用しやすい
- LTEベースの技術で、データ通信もスムーズ
- PHS事業者が継続した周波数を活用する形
PHSからの最も自然な移行先として注目されています。
②DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)
ヨーロッパで広く使われているコードレス電話の規格。
- 1.9GHz帯(日本ではDECT準拠の独自仕様)
- 小規模オフィス向けが多い
- 国際的な実績あり
③LTE-X(自営LTE)
- 携帯電話と同じLTE技術を自営網で構築
- 大規模工場・大学などの広域カバーに向く
- 音声+データ統合が容易
- コストはやや高め
④Wi-Fi通話(IPトランシーバー)
- 既存のWi-Fi網を流用して内線通話
- 比較的低コスト
- ただし通話品質はWi-Fi品質に依存
- 病院など電磁干渉に配慮が必要な場所では慎重検討
⑤キャリアスマホ+クラウドPBX
- NTTドコモ・au・ソフトバンクの公衆網を使う
- クラウドPBXで内線機能を実現
- 設備投資が小さい
- ただし通信費が継続発生
更新計画を立てる時は、①既存基地局の流用しやすさ、②セキュリティ要件、③通話品質、④コストの4軸で比較するのが基本です。
構内PHSの設備構成
施工管理として把握しておくべき設備構成を整理します。
主要機器
| 機器 | 役割 |
|---|---|
| PBX(構内交換機) | 内線通話の制御本体 |
| PHS基地局(CS) | 各エリアに電波を供給 |
| PHS端末(PS) | 利用者が持ち歩く |
| ハンディターミナル | 業務システム連動用(物流向け) |
| ナースコール連動装置 | 病院向けオプション |
| 充電ラック | 端末の集中充電 |
配線
- PBX-基地局間:CAT5e/CAT6のLANケーブル(PoE給電が一般的)
- 基地局-端末間:無線(1.9GHz帯)
ケーブルラックの解説でケーブル布設の基本が確認できます。

基地局の配置
- 病院:各病棟・各フロアに3〜5局程度(病室カバー優先)
- 工場:オープンフロアに広めに配置(5〜20局)
- 物流倉庫:階高が高いので天井付近に配置、エリアカバー重視
電波カバーは事前のサーベイ(電波測定)で配置を決めるのが基本。「ここは電波が届かない」というクレームの大半は、サーベイ不足が原因です。
更新工事のポイント
施工管理として構内PHS更新工事を担当する際の注意点。
①既存PHSの撤去計画
- 基地局・端末の撤去スケジュール
- 撤去中の代替通信手段(一時的に内線が使えない時間帯の手当て)
- 病院・24時間稼働工場では断時間ゼロ運用が要件になることが多い
特に病院案件では「1分も内線が止まらない」が条件になるので、新旧並行運用の段取りが命です。
②新システムの選定根拠
- 後継技術の比較資料を発注者に提示
- 電波サーベイで新システムの基地局配置を確定
- 既存配線(PBXとの接続CAT6など)が流用できるか確認
③配線の追加・更新
- PoE給電容量の確認:新基地局は消費電力が大きいことがある
- CAT6/CAT6Aへの更新:高速通信化に対応
- 配線ルートの確保:天井・PSスペースを事前確認
④電波サーベイ
- 新基地局を仮設して電波測定
- デッドスポット(電波の届かない場所)の特定
- 基地局増設の必要性判断
電波サーベイは専門業者に依頼するのが普通。施工管理は測定結果を発注者と共有して、配置を確定する立場。
⑤切替リハーサル
- 新システムでの内線通話テスト
- ナースコール連動など外部システムとの連携テスト
- 切替手順書の準備と関係者周知
切替日当日のトラブルを最小化するには、事前のリハーサルが命。特に医療・物流など24時間稼働の現場では、切替時間帯(夜間)に備えた段取りが重要です。
構内PHSに関する情報まとめ
- 構内PHSとは:敷地内専用の自前PHSシステム(自営PHS)
- 公衆PHSとの違い:自前の閉じたシステム、2023年3月の公衆PHS終了の影響を直接受けない
- 主な用途:病院、工場、物流倉庫、ホテル、大学
- 採用理由:微弱電波で電磁干渉が小さい、小型軽量、多端末収容
- 現状の課題:基地局・端末の製造打ち切り、保守部品枯渇
- 代替技術:sXGP(本命)、DECT、LTE-X、Wi-Fi通話、キャリアスマホ+クラウドPBX
- 設備構成:PBX、基地局(CS)、端末(PS)、充電ラック、ナースコール連動など
- 更新工事:撤去計画、後継技術選定、配線確認、電波サーベイ、切替リハーサル
以上が構内PHSに関する情報のまとめです。
「PHSサービス終了」のニュースで「構内PHSも使えない」と誤解されがちですが、自営構内PHSは2023年以降も運用可能。ただし機器の供給打ち切りで、実質的にはここ数年が更新ピークになっています。更新工事の発注者は「動いているから後回し」と判断しがちですが、保守部品が枯渇した状態で故障した時に何ヶ月も内線が止まるリスクのほうが大きい。施工管理として現場に入った時に、設備担当者と「あと何年もつか/sXGPに移行するなら基地局配線の流用可否」を最初に擦り合わせておくと、その後の段取りがラクになります。一通り基礎知識は理解できたと思います。
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