- I形鋼ってどんな鋼材?
- H形鋼とどう違うの?
- 「Iビーム」と同じ意味?
- JIS規格や寸法はどう決まってる?
- 現代でも使われているの?
- 現場での見分け方は?
上記の様な悩みを解決します。
I形鋼とは、結論「断面がI字型の熱間圧延鋼材」のことです。JIS G 3192で規格化されている 断面形状の一種で、フランジの内側がテーパー状(斜め)になっているのが、フランジ内側が平行なH形鋼との決定的な違い。「Iビーム」とは厳密にはほぼ同義ですが、業界の現場では呼び分けが微妙にあります。鉄骨建築初期の主力鋼材だったI形鋼は、断面性能の弱さ(弱軸方向)と 加工性の悪さから現代ではH形鋼に主役を譲り、流通量は大幅に減りました。本記事では、I形鋼の規格・寸法・H形鋼/Iビームとの違い・なぜ現代で廃れたのか・現場での判別法まで、施工管理の視点で初心者向けに整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
I形鋼とは?
I形鋼とは、結論「断面がI字型の熱間圧延鋼材」のことです。
英語では I-beam または I-section steel。JIS規格上の正式名称は I形鋼(カタカナで「アイけいこう」と読む)。
I形鋼の断面の特徴
I形鋼の断面を真横から見ると、まさにアルファベットの 「I」 の形。
─── ←上フランジ(テーパー:内側が斜め)
│
│ ←ウェブ
│
─── ←下フランジ(テーパー:内側が斜め)
最大の特徴は、フランジの内側が斜面(テーパー)になっていること。これがH形鋼と区別される最大のポイント。
規格:JIS G 3192
I形鋼は、JIS G 3192(熱間圧延形鋼の形状、寸法、質量及びその許容差)で寸法が決まっています。H形鋼・山形鋼(Lアングル)・溝形鋼(Cチャンネル)と同じJIS規格の中に位置づけられています。
主な材質
JIS G 3101の SS400 が標準。圧延形鋼として一般構造用に使われる場面では、
- SS400:一般構造用炭素鋼
- SM400:溶接構造用圧延鋼材
- SN400B:建築構造用圧延鋼材
→ どれも降伏点235N/mm²の標準鋼種。設計次第ではSM490・SN490など高強度仕様も。
現代での扱い
正直に言うと、I形鋼は 現代では流通量が大幅に減少しています。建築鉄骨は ほぼH形鋼に置き換わっているのが現実。
→ 古い建物のリニューアルや、特殊な用途(クレーンレール、レール部品等)で見かける程度。新築建築での採用は稀。
形鋼全体の種類はこちらに整理しています。


I形鋼の規格と寸法
JIS G 3192で規定されている I形鋼の代表寸法です。
①I形鋼の表記方法
I形鋼は 「I-高さ×フランジ幅×ウェブ厚×フランジ厚」で表記されます。例:
I-200×100×7×10
↓
高さH=200mm、フランジ幅B=100mm、ウェブ厚t1=7mm、平均フランジ厚t2=10mm
ただし、I形鋼のフランジはテーパー状なので、フランジ厚は平均値で表されることに注意。
②代表寸法表(一部抜粋)
| 呼称 | H | B | t1 | 平均t2 | 単位重量 |
|---|---|---|---|---|---|
| I-100×75 | 100 | 75 | 5.0 | 8.0 | 11.7 kg/m |
| I-125×75 | 125 | 75 | 5.5 | 9.5 | 14.2 kg/m |
| I-150×75 | 150 | 75 | 5.5 | 9.5 | 17.1 kg/m |
| I-180×100 | 180 | 100 | 6.0 | 10.0 | 21.3 kg/m |
| I-200×100 | 200 | 100 | 7.0 | 10.0 | 26.0 kg/m |
| I-250×125 | 250 | 125 | 7.5 | 12.5 | 38.3 kg/m |
| I-300×150 | 300 | 150 | 8.0 | 13.0 | 54.2 kg/m |
| I-380×100 | 380 | 100 | 11.5 | 16.0 | 67.6 kg/m |
| I-450×125 | 450 | 125 | 12.5 | 16.5 | 88.1 kg/m |
| I-600×190 | 600 | 190 | 16.0 | 25.0 | 174 kg/m |
→ サイズ展開は 高さH=100〜600mm程度。フランジ幅は高さに対して狭めの B = H/2 〜 H/3。
③H形鋼との寸法体系の違い
H形鋼は 「H-高さ×幅×ウェブ厚×フランジ厚」で、高さ・幅ともに 多彩なバリエーションがあります。
| 項目 | I形鋼 | H形鋼 |
|---|---|---|
| 高さ | 100〜600mm | 100〜900mm |
| 幅 | 高さの1/2〜1/3 | 高さに対して同等以上もあり |
| フランジ | テーパー | 平行 |
| バリエーション | 限定的 | 豊富 |
→ H形鋼が 「現場のニーズに合わせて選べる」多様な規格なのに対し、I形鋼は 限定的な寸法しか存在しない。
H形鋼の規格詳細はこちら。

I形鋼とH形鋼の違い
I形鋼とH形鋼は 見た目が似ているので混同しがちですが、構造的には大きく違います。
①フランジ形状の違い
これが 決定的な違いです。
| 形状 | フランジ内側 |
|---|---|
| I形鋼 | テーパー(斜め) |
| H形鋼 | 平行 |
→ I形鋼の起源は 「圧延しやすさ」にあり、テーパー状のフランジは19世紀の圧延技術の限界から来ています。H形鋼は20世紀以降の 平行フランジ圧延技術で誕生した、より新しい鋼材。
②断面性能の違い
同じ高さでもH形鋼の方が 断面性能が高いです。
| 比較項目 | I形鋼 | H形鋼 |
|---|---|---|
| 断面二次モーメント Ix | やや小 | 大 |
| 弱軸 Iy | 非常に小さい | 標準 |
| 断面係数 Z | 中 | 大 |
| 形状係数(塑性係数 ÷ 弾性係数) | 1.15程度 | 1.10〜1.15 |
| 局部座屈強度 | 低 | 高 |
→ 特に 弱軸方向の性能差が大きく、I形鋼は 横倒し荷重に弱い。これが現代建築で敬遠される最大の理由。
③加工性の違い
| 加工 | I形鋼 | H形鋼 |
|---|---|---|
| ボルト接合 | テーパーのため テーパーワッシャ必要 | 平面接合可能 |
| 溶接接合 | 開先加工難 | 開先加工容易 |
| 切断 | 標準 | 標準 |
→ I形鋼のテーパーフランジは、ボルト接合のとき特殊なテーパー付きワッシャが必要。これが加工コスト・施工コストを押し上げます。
④用途の違い(現代)
| 鋼材 | 主な用途 |
|---|---|
| I形鋼 | クレーンレール、特殊機械、古い建築物のリニューアル |
| H形鋼 | 鉄骨建築全般、橋梁、土木構造物 |
→ I形鋼が 「特殊用途」、H形鋼が 「汎用構造材」という棲み分け。
I形鋼とIビームの違い
「I形鋼」と「Iビーム」は ほぼ同義ですが、業界では微妙な使い分けがあります。
①言葉の整理
| 用語 | 主な意味 |
|---|---|
| I形鋼 | JIS規格上の正式名称(I-shaped steel) |
| Iビーム | 一般的な俗称(I-beam) |
| アイビーム | カタカナでIビーム |
→ 正式書類・設計図では「I形鋼」、現場の会話では「Iビーム」、と使い分けるのが一般的。意味は同じ。
②英語圏での扱い
英語圏では 「I-beam」が一般用語で、断面形状がI字型の梁を広く指します。狭義のI形鋼(テーパーフランジ)は 「American Standard Beam(S形鋼)」と呼ばれることも。
→ アメリカ規格(ASTM A6)の S形鋼は、日本のJIS I形鋼にほぼ相当。
③現場での呼び方の混乱
実は現場では H形鋼を「Iビーム」と呼ぶ人もいて、これが混乱の源。
- 正しい呼び分け:テーパーフランジ → I形鋼、平行フランジ → H形鋼
- 現場の俗語:両方を「Iビーム」と呼ぶ職人もいる
→ 設計図や仕入れ伝票では 必ず「I形鋼」or「H形鋼」と明記して、誤発注を防ぐのが大事。
Iビームの詳細はこちらに整理しています。

なぜI形鋼は廃れたのか
I形鋼が現代建築でほぼ使われなくなった理由を、技術的に整理します。
①弱軸性能の弱さ
Ix(強軸方向) ← I形鋼もH形鋼も同等
Iy(弱軸方向) ← H形鋼の方が圧倒的に強い
I形鋼は フランジ幅が狭いため、横倒し方向の剛性・強度が低い。耐震設計では 二軸方向の応力を考慮する必要があり、I形鋼の弱軸の弱さは致命的。
②横座屈リスク
長スパン梁で 横座屈が起きやすい。
- I形鋼:フランジ幅が小さく、横倒れ方向の安定性が低い
- H形鋼:フランジ幅が広く、横座屈に強い
→ 結果、I形鋼の梁は 横補剛を頻繁に入れる必要があり、施工効率が悪い。
横座屈の詳細はこちらに整理しています。

③接合部の施工性の悪さ
- テーパーフランジ → 専用ワッシャ・テーパー加工が必要
- ボルト接合の 施工効率が低い
→ 現代の鉄骨工事では 高力ボルト摩擦接合が主流ですが、I形鋼はこれに不向き。H形鋼への置換が進みました。
高力ボルト摩擦接合の詳細はこちら。


④製造コスト・流通の問題
- 日本国内で I形鋼の圧延設備が縮小
- ロットがまとまらず、納期・価格が不利
- 「特注扱い」になり 価格が高め
→ H形鋼は大量生産で安く、I形鋼は希少で高い、という構図。コスト面でもH形鋼が圧勝。
⑤現代でI形鋼が残っている用途
それでも消滅していない用途:
- クレーンレール:レールに似た断面が好まれる
- モノレール梁:軽量で吊り設備向き
- 古い建物のリニューアル:既存I形鋼との接合のため
- 特殊機械の架構:歴史的経緯による継続採用
→ ニッチですが、完全に消えたわけではありません。
I形鋼に関する施工管理の注意点
I形鋼を扱う現場(主にリニューアル)での 注意点を整理します。
①既存図面の確認
古い建物の改修・補強でI形鋼を扱うとき:
- 設計年代:1970年以前はI形鋼が主流、以降H形鋼へ移行
- 規格の確認:旧JIS規格(廃止)が使われている可能性
- 材料試験:ミルシートが残っていない場合は 材料試験が必要
→ I形鋼の改修では 「現代のH形鋼との接合」が技術的課題になります。
②現場での見分け方
I形鋼かH形鋼かを判別するには:
- フランジ内側に手を当てる:斜面なら I形鋼、平面なら H形鋼
- フランジ幅:高さの1/2以下なら I形鋼の可能性大
- 加工痕:テーパーワッシャがあれば I形鋼確定
- 製造年代:1980年以降の建物はほぼH形鋼
→ 改修現場では、メジャーと差し金を持って実測するのが確実。
③接合方法の選定
既存I形鋼に新規鋼材を接合する場合:
- 溶接接合:開先加工をしっかり、テーパー対応の溶接姿勢が必要
- ボルト接合:テーパーワッシャ or 補強プレート(フランジ平面化)
- 当て板補強:両側からプレートを溶接して断面性能を補う
→ I形鋼への新規ボルト接合は 専門業者・専門経験が必要。安易な施工は危険。
④補強・補修の判断
老朽I形鋼の補強案:
- H形鋼への置換:構造を残してI形鋼だけ撤去・新設
- 当て板補強:フランジ・ウェブに鋼板を溶接
- コンクリート被覆:耐火・防錆も兼ねる被覆
- CFRP接着:軽量で施工性に優れた最新工法
→ どの工法も 構造設計者の判断が必須。施工管理者は 既存材の状態確認を丁寧に。
ミルシートの確認方法はこちらに整理しています。

⑤発注時の注意
新規でI形鋼が必要な場合:
- 特注扱いになることが多い
- 納期は2〜3ヶ月を見込む
- 代替(H形鋼)で可能かを設計者に再確認
→ 「設計図にI形鋼と書いてあるから発注」と単純に動かず、「本当にI形鋼でなければダメか」を構造設計者に確認するのが、コスト・納期両面で大事です。
鉄骨の種類全体はこちらに整理しています。

I形鋼に関する情報まとめ
- I形鋼とは:断面がI字型の熱間圧延鋼材(JIS G 3192)
- 特徴:フランジ内側がテーパー(斜め)。H形鋼との決定的な違い
- 代表寸法:高さ100〜600mm、フランジ幅は高さの1/2〜1/3
- H形鋼との違い:フランジ形状、断面性能(弱軸)、加工性すべてH形鋼が有利
- Iビームとの違い:ほぼ同義(俗称と正式名)。現場ではH形鋼を含めて呼ぶ人もいて要注意
- 現代の用途:クレーンレール、特殊機械、既存建物のリニューアル
- 施工管理の要点:既存図面確認、見分け方、接合方法選定、発注時の納期・代替確認
以上がI形鋼に関する情報のまとめです。
I形鋼は 「歴史的役割を終えつつある鋼材」ですが、改修・補強の現場では今でも遭遇します。施工管理として、H形鋼とI形鋼の 構造的な違い(フランジ形状・断面性能・加工性)を理解しておくと、改修工事での判断・発注のミスが防げます。「Iビーム = I形鋼 = H形鋼ではない」という言葉の使い分けも、現場の意思疎通で意外と大事ですね。
合わせて、鉄骨・鋼材関連のテーマをまとめてあるので、形鋼の理解を深める参考にしてください。








