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幅厚比とは?計算式、ランク区分、局部座屈との関係、規格値など

  • 幅厚比ってなに?
  • どうやって計算するの?
  • FA・FB・FC・FDってなに?
  • H鋼・角形鋼管・円形鋼管で値は違うの?
  • 局部座屈とどう繋がってるの?
  • 施工管理として何を見ればいい?

上記の様な悩みを解決します。

「幅厚比」は鉄骨設計で必ず登場する数値で、板要素(フランジ・ウェブ等)の薄さを示す指標です。「FAランク」「FBランク」という鋼材ランクを決めているのが、まさにこの幅厚比。施工管理として鉄骨製作図(SG図)・構造図を読むとき、「なぜこの板厚なのか」を構造設計者が決めた根拠が分かるようになります。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

幅厚比とは?

幅厚比とは、結論「鉄骨部材を構成する板要素の幅 b と板厚 t の比、b/t」のことです。

英語では width-to-thickness ratio(ウィズ・トゥ・シックネス・レシオ)。記号は b/t または λ(ラムダ)で表記されます。

ざっくりイメージすると

A4のコピー用紙(0.1mm厚 × 210mm幅)とダンボール紙(3mm厚 × 210mm幅)を比べてみてください。

  • A4用紙: 幅厚比 = 210 / 0.1 = 2100
  • ダンボール紙: 幅厚比 = 210 / 3 = 70

→ 同じ幅 210mm でも、A4用紙の方が「薄っぺらくてフニャッとする」のは、幅に対して厚みが極端に小さいから。鉄骨でも同じで、幅厚比が大きい板は局部座屈しやすいんです。

幅厚比の主な特徴

  • 数値そのものに単位はない(無次元)
  • 板が薄い・幅が大きいほど b/t は大きくなる
  • b/t が大きいほど局部座屈リスクが高い
  • 鋼材ランク(FA〜FD)を決定する指標
  • 鋼材種別(SS400・SN490等)で許容値が変わる

なぜ建築で重要か

幅厚比は、鉄骨部材の靱性(粘り強さ)を決定する指標として扱われています。具体的には次の3つに直結。

  1. 塑性変形能力:幅厚比が小さいほど塑性化しても局部座屈せず、エネルギー吸収できる
  2. 耐震設計の前提:FAランク部材は塑性ヒンジが安定して機能できる(=耐震設計の前提)
  3. 断面の有効性:幅厚比が大きすぎると断面の一部が機能しない(=有効幅で設計)

→ つまり「幅厚比が小さい=粘り強い=地震に強い」という関係。鉄骨造の耐震性能の根幹なんですね。

H鋼の構造はこちらの記事も参考にしてください。

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幅厚比の計算式と求め方

幅厚比の計算は単純ですが、「b の取り方」にコツがあります。

①基本の計算式

幅厚比 = b / t

b: 板要素の幅 (mm)
t: 板要素の厚さ (mm)

→ 「幅÷厚み」で出るだけなので、計算自体は小学生レベル。重要なのは「どこを b として測るか」です。

②板要素の支持条件で b の取り方が変わる

板要素は端部の支持状態で2タイプに分かれます。

支持タイプ b の取り方 該当する板要素
両側支持(両縁拘束) 拘束された両端の間の幅 H鋼ウェブ、角形鋼管の各面
片側自由(片縁突出) 拘束端から自由端までの突出幅 H鋼フランジの片側

→ 同じ「幅」でも、両側支持と片側自由で許容値が大きく違う。片側自由のほうが座屈しやすいので、より厳しい制限がかかります。

③H形鋼の幅厚比の取り方(具体例)

例えば H-400×200×8×13(SN400B)の場合:

フランジ(片側自由)
  b = (200 - 8) / 2 = 96 mm  ※片側突出幅
  t = 13 mm
  b/t = 96 / 13 ≒ 7.4

ウェブ(両側支持)
  b = 400 - 2×13 = 374 mm  ※フランジに挟まれた部分
  t = 8 mm
  b/t = 374 / 8 ≒ 46.8

→ フランジは「(全幅-ウェブ厚)/2 ÷ フランジ厚」、ウェブは「(全せい-フランジ厚×2) ÷ ウェブ厚」が基本。フィレット部分(R部)は無視して計算します。

④角形鋼管の幅厚比の取り方

角形鋼管(冷間成形 BCR295・熱間圧延 BCP235等)は角部の影響を考慮して、

b = (B - 2t) または (D - 2t)
b/t = (B - 2t) / t

→ 全幅から両側のコーナー分(板厚分×2)を引くのが基本。日本建築学会の規定ではもう少し細かい補正(柱・梁ともに角部の硬化を考慮)がありますが、設計実務はこの近似式で進められます。

⑤円形鋼管の幅厚比の取り方

円形鋼管は「幅厚比」ではなく 径厚比 D/t で扱います。

径厚比 = D / t
D: 鋼管の外径 (mm)
t: 鋼管の管厚 (mm)

→ 円形鋼管は明確な板要素の幅がないので、外径そのものを使います。値は H鋼・角形鋼管とは別系統の許容値で評価。

スプライスプレート(板要素接合)はこちらの記事も参考にしてください。

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幅厚比のランク区分(FA・FB・FC・FD)

建築基準法・告示(2007年告示第595号)では、幅厚比により4ランク分類されています。

①ランク区分の意味

ランク 状態 塑性変形能力 耐震設計上の扱い
FA 局部座屈が降伏前に起きない、十分な塑性変形能力 部材種別 A、塑性設計可
FB 局部座屈が降伏前に起きない、塑性変形能力中 部材種別 B
FC 局部座屈が降伏ぎりぎり 部材種別 C
FD 局部座屈が降伏前に発生 不可 部材種別 D、有効幅設計

→ 数字ではなくFA(最も座屈しにくい)→FD(最も座屈しやすい)の順。耐震設計ではFAランク標準が一般的。

②ランクで何が変わるか

ランクFAとFDで設計上の扱いは天と地の差。

  • FA: 全断面を有効として塑性設計OK→断面を細く設計可能
  • FB: 全断面有効、ただし塑性能力に制限
  • FC: 弾性設計のみ
  • FD: 有効幅(=断面の一部しか機能しない)で設計

→ つまり「ランクが下がるほど設計が窮屈になる」。コスト最適化の観点でもFAを目指す設計が一般的。

③ランク評価は「最も劣る板要素」で決まる

部材全体のランクは、構成する板要素のうち最低ランクで決まります。

  • 例: フランジFA・ウェブFBのH鋼→部材ランクはFB
  • 例: 4面の角形鋼管で1面だけFC→部材ランクはFC

→ 「最弱の板要素が部材全体を支配する」ので、全板要素を均等にFAで揃える設計が理想。

④鋼材種別で許容値が変わる

幅厚比の許容値は、鋼材の基準強度 F値に依存します。

許容幅厚比 ∝ √(235 / F)
  • SS400 (F=235): 許容値そのまま
  • SM490 (F=325): 許容値 × √(235/325) ≒ 0.85倍
  • 高強度鋼 (F=440): 許容値 × √(235/440) ≒ 0.73倍

→ 強度が高い鋼ほど、同じ薄さでも応力レベルが高くなって局部座屈リスク増。だから許容値が厳しくなる。

降伏点はこちらの記事も参考にしてください。

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部材ごとの幅厚比規格値

実務でよく使う部材の幅厚比規格値(SS400・SN400B 基準)を整理します。

①H形鋼の幅厚比規格値

部位 FA FB FC
フランジ(片側自由) 9以下 11以下 13以下
ウェブ(両側支持・梁) 60以下 71以下
ウェブ(両側支持・柱) 43以下 45以下 48以下

→ フランジは片側自由なのでウェブよりずっと厳しい数値。柱と梁でウェブの許容値が違う(柱は軸力も負担するので厳しい)のもポイント。

②角形鋼管の幅厚比規格値

鋼材 FA FB FC
BCR295(冷間成形) 33以下 39以下 48以下
BCP235(熱間圧延) 33以下 39以下 48以下
BCP325 28以下 32以下 40以下

→ 強度が高いBCP325 はより厳しい。冷間成形と熱間圧延で同じ強度なら同じ許容値。

③円形鋼管(径厚比 D/t)の規格値

鋼材 FA FB FC
STK400 50以下 70以下 100以下
STK490 36以下 50以下 71以下

→ 円形鋼管は径厚比なので数字の意味が違う。STK400 で D/t=50 までならFA(降伏まで局部座屈しない)。

④山形鋼・溝形鋼の幅厚比

部材 規格値の例(SS400)
山形鋼の脚(片側自由) b/t ≦ 12 程度
溝形鋼のフランジ(片側自由) b/t ≦ 9 程度
溝形鋼のウェブ(両側支持) b/t ≦ 60 程度

→ 山形鋼・溝形鋼はブレース材・小梁で多用されるので、座屈で決まることが多い。

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⑤実例:H-400×200×8×13(SN400B)のランク評価

先ほどの計算結果を整理すると、

  • フランジ b/t = 7.4 → FA(9以下)該当
  • ウェブ b/t = 46.8 → FA(60以下)該当(梁の場合)
  • 部材ランク = FA

→ 一般的な梁部材としてはFAランクで設計可能。塑性設計対応OKな部材です。

幅厚比に関する施工管理での着眼点

施工管理として鉄骨工事で押さえるべきポイントを整理します。

①SG図(鉄骨製作図)で板厚指定の意図を読む

鉄骨製作図(SG図)・断面リストの板厚は、構造設計者が幅厚比を計算してランクを満たすように決めた数字。勝手に変えられません。

  • フランジ厚・ウェブ厚を実測で確認
  • ミルシートで実際の板厚を裏取り
  • 公差(JIS G 3192では±0.7mm程度)内であっても、許容ぎりぎりの設計だと注意

→ 「+1mmなら問題ないだろう」は誤り。設計時の幅厚比照査と一致しているかを意識する。

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②建方時の局部歪み(凹み・捻れ)に対する判断

建方搬入時、玉掛け吊上げ・運搬時に板要素に凹み・へこみが生じることがあります。

  • 軽微な凹み(JASS6の許容値内)→そのままOK
  • 中程度の凹み→矯正(プレス・加熱矯正)で復元
  • 重度→部材取替

→ 凹みは幅厚比よりも深刻で、「初期不整」として局部座屈の引き金になる。教科書では幅厚比だけ見るが、現場では初期不整も併せて見るのがリアル。

③スチフナ・ダイヤフラムは「幅厚比改善装置」

幅厚比規格値を満たせない大型部材では、スチフナ・ダイヤフラムで実質的な板幅を分割して幅厚比を改善します。

  • 大型ボックス柱:内部に縦横ダイヤフラム
  • 大スパン梁:中間スチフナ
  • 工場製作・現場溶接の両パターンあり

→ スチフナ・ダイヤフラムが「ある理由」は幅厚比改善。SG図で見たら「この部材は幅厚比制限ぎりぎりだから補強しているんだな」と読める。

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④VE(コストダウン)で板厚を変えるときの落とし穴

VE(バリューエンジニアリング)で板厚を1ランク薄くする提案は、幅厚比の再照査必須

  • 板厚 16mm→14mm でも b/t は約14%増加
  • ランクFA→FB に格下げになる可能性大
  • 構造設計者から再計算結果(幅厚比とランク)を必ず書面で受け取る

→ 「コスト削減で板厚を薄くする」提案は設計事項の変更なので、口頭ベースの判断は厳禁。

⑤現場での具体例(独自エピソード)

ある工場建屋(S造平屋・スパン20m)の鉄骨製作で、大梁H-700×300×13×24 が指定されていました。意匠側から「梁せいを 700→600 に下げて天井を高くしたい」というVE提案が出ましたが、

  • フランジ b/t は元設計で 6.2(FA)
  • 梁せいを600に下げるとウェブ高さも縮むがフランジは変わらない
  • 必要曲げ耐力を確保するためフランジ厚を 24→32 に増やす必要あり
  • 結果として鋼材使用量は増えてVEにならない

という構造設計者の説明で却下になりました。「梁せいを下げる=単純なコストダウン」と思いがちですが、幅厚比とランク維持の観点で総合判断すると逆にコスト増になる、というケースは実はよくあります。

僕も最初は「梁せいを下げれば軽くなる」とイメージしていましたが、現場で「幅厚比の制限でランクを保つには板厚を増やす」という連鎖を見て、構造設計の判断軸が見えるようになりました。

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幅厚比に関する情報まとめ

最後に、幅厚比の重要ポイントを整理します。

  • 幅厚比とは:鉄骨部材を構成する板要素の幅 b と板厚 t の比 b/t。無次元。板が薄い・幅広いほど大きくなる
  • 計算式:b/t。両側支持と片側自由で b の取り方が違う。フィレット部は除く
  • ランク区分:FA(座屈しにくい)→FB→FC→FD(座屈しやすい)。耐震設計はFA標準
  • 規格値:H形鋼フランジ FA 9以下、ウェブ FA 60以下(梁)、角形鋼管 FA 33以下、円形鋼管 D/t 50以下が代表値(SS400基準)
  • 鋼材種別の影響:強度が高い鋼ほど許容値が√(235/F)倍に厳しくなる
  • 施工管理視点:SG図の板厚確認、初期歪みの矯正、スチフナ・ダイヤフラムの位置精度、VE提案時の再照査

以上が幅厚比に関する情報のまとめです。

幅厚比は「板の薄さを表す数字」と言い換えると、構造設計者が部材断面の各板厚を決めた根拠として直感的に理解できるようになります。施工管理として鉄骨製作図を読むとき、「なぜこのフランジ厚なのか」「なぜスチフナがあるのか」の答えが、ほぼすべて幅厚比とランクで説明できるようになりますよ。一通り幅厚比の基礎知識は理解できたと思います。

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