中堅ゼネコンは、建設業法などを確かめた範囲では定義のない呼び名で、指す会社は使う人によって変わります。国土交通省の資料にある一般土木の図では「地域(都道府県)を地盤とする中堅ゼネコン」が約5,900社とされる一方、就職・転職の記事では奥村組や鉄建建設などの社名が例に挙がります。例に挙がる7社を有価証券報告書の売上高と平均年間給与で並べ、確かめ方を示します。
- 中堅ゼネコンって、売上でいうとどのくらいの会社のこと?
- 地元で「中堅」と呼ばれるうちの会社は、本当に中堅なの?
- 準大手と中堅の境目は、誰がどこで決めてるの?
- 中堅として名前が挙がるのは、具体的にどの会社?
- 準大手と比べて、年収はどのくらい違うの?
- ネットの年収ランキングの数字って、何年の何の数字なの?
- 持株会社になった会社は、どの欄の数字を見ればいいの?
- 「中堅ゼネコンはやばい」って書き込み、気にしたほうがいい?
- 求人票に「中堅ゼネコン」とあったら、どこを見て判断すればいい?
上記の様な悩みを解決します。
中堅ゼネコンは、就職・転職の解説で使われる言葉ですが、国の資料と就職・転職の記事とでは、同じ言葉で指している会社の範囲が違います。当サイトが確認した上位の解説記事(2026年10月9日確認)の見出しの範囲では、国の資料に出てくる「中堅ゼネコン」が都道府県を地盤とする会社の段を指していることに触れたものは見当たりませんでした。今回は定義・会社の例・売上高・年収といった基本を押さえた上で、「国交省の図の中堅と、就職記事で例に挙がる中堅は別の物差し」「有価証券報告書の平均年間給与は注記の中身が会社で違う」という数字の読み方まで、施工管理の目線で整理しました。
数字にはすべて出典と時点を添えて並べていくので、地場や専門工事の会社から移ることを考えている方にも、自分の会社と見比べやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
中堅ゼネコンに決まった定義は無く、「中堅」が指す範囲は資料ごとに違う
中堅ゼネコンは業界で使われる呼び名で、決まった定義は確認できませんでした。当サイトが建設業法・建設業法施行令の条文と、国土交通省の建設業許可業者数調査(令和8年3月末現在)を確かめた範囲では、「中堅」という区分はどこにも出てきません。スーパー・準大手を含めた呼び名の総論はゼネコンとは何かを整理した記事に任せ、ここでは「中堅」の中身だけを掘り下げます。
厄介なのは、定義が無いことよりも、「中堅」という言葉が場面ごとに別の会社を指していることです。同じ国交省の資料の中でさえ、軸が1つではありません。
- 国交省資料の一般土木の図:都道府県を地盤とする会社の段に「中堅ゼネコン」約5,900社(次の章)
- 同じ資料の同じページ:資本金10億円未満で区切った「中堅・中小企業」
- 就職・転職の解説記事:奥村組・鉄建建設などの社名を挙げて中堅として紹介(3つ目の章)
2つ目の軸は、図の上に置かれた文章に出てきます。「建設業全体のうち、資本金10億円未満の中堅・中小企業が従業員数の約9割を占め、付加価値額の約8割を産出」(国土交通省 i-Construction推進コンソーシアム 第7回企画委員会 資料-1・2021年6月7日 p.4)。ここでの「中堅」は中小とひとまとめにした資本金の区切りとして使われていて、資本金10億円未満が中堅ゼネコンの定義だという意味ではありません。
同じ資料の同じページでも、図では地盤の広さ、文章では資本金で「中堅」が使われているわけです。僕は、求人票で「中堅」という言葉を見たら、まず「どの物差しでの中堅か」を確かめてから読むのがいいと考えています。
国交省資料の一般土木の図では、中堅ゼネコンは「都道府県を地盤とする」約5,900社
国土交通省の資料の図では、中堅ゼネコンは「地域(都道府県)を地盤とする中堅ゼネコン」として、上から3段目のCランクに約5,900社が置かれています。この図は一般土木を対象にしたもので、建設業全体の区分を示したものではありません。
図が載っているのは、国土交通省の会議資料(i-Construction推進コンソーシアム 第7回企画委員会 資料-1)の「i-Constructionが今後注力すべき取組について」で、2021年6月7日付けの資料のp.4です。スライドの題は「建設業者の多くは地域を地盤とする企業」で、A〜Dの4段をまとめる左側の括弧に「一般土木」と記されています。5年前の資料なので、社数は2021年時点の図の値として読んでください。
Cランクの中堅と、その上下の段
中堅の段を真ん中に置いて上下を見ると、地盤の広さで4段が並んでいるのが分かります。図の文言は次のとおりです(同資料p.4)。
- Aランク:「全国大手ゼネコン」約30社。そのうち「完工高9000億円超」と書かれた帯は「4社」で、脚注は「大成、鹿島、清水、大林の4社」
- Bランク:「地域ブロックを地盤とする」「準大手ゼネコン」約100社
- Cランク:「地域(都道府県)を地盤とする中堅ゼネコン」約5,900社
- Dランク:「地域(複数の市町村)を地盤とする中小ゼネコン」約1.1万社
9000億円超の帯がかかっているのはAランクの中の4社だけで、約30社がAランクに入る条件として書かれた数字ではありません。また図の中には、どの段に入るかを決める基準の説明文が書かれていません。会社数の目安を段に並べた図であって、国が中堅ゼネコンを定義した文章ではない、という読み方になります。この資料には「スーパーゼネコン」という語も出てきません。
県内中心の会社は、この図のどこに当たるか
この図の見方では、一般土木の工事で都道府県を地盤とする会社が、Cランクの「中堅ゼネコン」の段に置かれています。県内を中心に一般土木の工事を請けている会社なら、この図の上では中堅の段に当たりうる、というところまでは言えます。
ただし図の対象は一般土木です。建築を中心にした会社がこの図で中堅に入る、とは読めません。同じページの文章には「建設業を構成する企業数の99%は、地域を地盤とする企業」ともあります。
僕は、この図の「中堅」と、就職記事で社名つきで語られる「中堅」は、同じ名前の別の物差しとして分けて持っておくのがいいと考えています。4段の図を年収の話と合わせて見たい場合はゼネコンの年収を有報と統計で比べた記事で触れています。
就職・転職の記事で「中堅」の例に挙がる7社を、有価証券報告書で並べる
就職・転職の記事で中堅ゼネコンの例として名前が出る会社を有価証券報告書で並べると、連結売上高は約1,254億〜約3,072億円、平均年間給与は819.9万〜1,006.2万円でした(福田組は2025年12月期、ほかの6社は2026年3月期の算出値)。
選んだのは、就職・転職向けの解説記事2本(2026年10月9日に当サイトが確認)のうち少なくとも1本の見出しで、中堅ゼネコンの例として社名が挙がっていた会社のうち、有価証券報告書の数字を確認した7社です。ある区分に属する会社の一覧ではなく、例として名前が出ていた会社の並びとして読んでください。
| 会社(有報の提出者) | 決算期 | 連結売上高 | 従業員数(提出会社。飛島のみ飛島建設) | 平均年間給与(提出会社。飛島のみ飛島建設) |
|---|---|---|---|---|
| 奥村組 | 2026年3月期 | 約3,072億円 | 2,492人 | 1,006.2万円 |
| 鉄建建設 | 2026年3月期 | 約1,798億円 | 1,693人 | 947.7万円 |
| 淺沼組 | 2026年3月期 | 約1,752億円 | 1,264人 | 935.0万円 |
| 福田組 | 2025年12月期 | 約1,679億円 | 840人 | 830.8万円 |
| 大豊建設 | 2026年3月期 | 約1,398億円 | 1,072人 | 819.9万円 |
| 飛島ホールディングス | 2026年3月期 | 約1,392億円 | 988人 | 862.1万円 |
| 錢高組 | 2026年3月期 | 約1,254億円 | 880人 | 945.3万円 |
※出典:各社の有価証券報告書(福田組は2026年3月25日提出、ほかは2026年6月提出)。連結売上高は「主要な経営指標等の推移」の連結の売上高、従業員数と平均年間給与は「従業員の状況」の提出会社の状況(飛島ホールディングスのみ同じ有報の「③ 最大人員会社の状況」=飛島建設の値)。百万円・円の記載を億円・万円に換算し、億円は1億円未満、万円は小数第2位以下を切り捨てた算出値です(例:奥村組 307,202百万円→約3,072億円、10,062,259円→1,006.2万円)。従業員数は有報の表の〔 〕・[ ]内の数字を除いた値で、奥村組の注記では「臨時従業員数は〔 〕内に年間の平均人員を外数で記載しています。」とされています。並びは連結売上高の大きい順です。
連結の売上高と、単体の人数・給与が同じ行にある
この表は、売上高が連結(グループ全体)、従業員数と給与が提出会社単体という、範囲の違う数字を1行に並べています。たとえば大豊建設は連結の売上高139,818百万円に対して提出会社の売上高は102,938百万円、福田組は連結167,960百万円に対して提出会社95,767百万円です(各社の有報「提出会社の経営指標等」)。従業員数も、連結会社の合計では大豊建設1,700人、福田組2,226人で、表の単体の人数より多くなります。
飛島だけは持株会社の有報から読む
飛島の行は、提出者が持株会社の飛島ホールディングスです。同社の有報には「第1期(2024年4月から2025年3月まで)の連結財務諸表は、単独株式移転により完全子会社となった飛島建設㈱の連結財務諸表を引き継いで作成している。」とあります。提出会社である飛島ホールディングス自体の従業員数は73人なので、表には同じ有報の「最大人員会社の状況」にある飛島建設の988人と、その平均年間給与を載せました。連結売上高139,255百万円のうち、飛島建設の売上高は112,913百万円(約1,129億円・算出値)と同じ有報の「関係会社の状況」に書かれています。
平均年間給与の注記は会社で違う。準大手と比べるときの注意
7社の平均年間給与は、注記の書き方が会社ごとに違い、錢高組と飛島は数えている人の範囲も他社と違います。そのため表の数字だけで順位を付けて比べるのは避けたほうが安全です。準大手として紹介される会社と並べても、売上高・給与とも近い会社や範囲の重なる会社があります。
注記で確かめておきたい4社
注記を読むと、表の数字の前提が会社ごとに少しずつ違うことが分かります。
- 錢高組:「平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与は、総合職における数値であります。」とあり、表の880人と945.3万円は数えている人が違う
- 大豊建設:注記の用語が「年間平均給与」で、注記は「諸手当及び賞与を含んでおります。」。ほかの6社の注記は「賞与及び基準外賃金」を含むという書き方
- 飛島:持株会社の有報で、給与は事業会社の飛島建設の値。注記は「2026年3月に在籍している者を対象として、その年収を算定根拠としている。」
- 福田組:決算期が2025年1月〜12月で、ほかの6社(2025年4月〜2026年3月)より終わりが3か月早い
注記の書き方が違うことまでは分かりますが、それで実際に含まれる手当がどれだけ違うのかまでは、注記からは読み取れません。僕は、注記の言葉を「残業代込み」などに言い換えず、書かれたとおりに読むのが安全だと考えています。
売上高で並べると、準大手の一覧に入る会社と近い
当サイトの準大手ゼネコンの解説で一覧に挙げている東急建設の連結売上高は、2026年3月期で約3,411億円です。奥村組の約3,072億円との差は、341,181百万円−307,202百万円=33,979百万円から計算すると約339億円(1億円未満切り捨て)でした。少なくともこの2社の連結売上高を見る限り、中堅の例に挙がる会社と準大手の一覧に入る会社の間に、はっきりした段差は見えません。
給与も同じです。同じ一覧に名前のある会社の2026年3月期の平均年間給与は、熊谷組917.9万円、五洋建設935.8万円、東急建設1,027.7万円などでした(有報の円の記載を万円に換算した算出値)。西松建設1,061.8万円のように7社の範囲を上回る会社もありますが、7社の819.9万〜1,006.2万円と範囲が重なる会社もあり、この数字の並びからは「準大手のほうが給与が高い」とは言えません。ただし錢高組は総合職の値、福田組は決算期が違うので、1社ずつの差を細かく比べる材料にはしないでください。準大手を含む11社の給与の並びはゼネコンの年収の記事にまとめています。
規模の物差しは2つ。日建連の入会資格と、従業員数で分けた公的統計
「中堅」とは別に、会社の規模を確かめる物差しとして使えるのは、日本建設業連合会(日建連)の法人会員の入会資格と、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の企業規模の区分です。どちらも「中堅」の線を引いたものではありません。
日建連の法人会員の入会資格
日建連は法人会員を「一定規模以上の総合建設業者」としています(日本建設業連合会「【概要】会員」)。入会資格として示されているのは次の2つです(日建連「法人会員の入会資格」)。
- 「建設業法に定める特定建設業者として国土交通大臣の許可(土木工事業または建築工事業)を受けた内国法人であること」
- 「最近 2 年間の年平均元請完成工事高(土木一式工事(プレストレストコンクリート工事を除く)および建築一式工事に係るものに限る)が 100 億円以上であること」
なお、入会手続きの際には「本会の理事が属する法人会員2社の推薦書」の提出も求められています。これは入会するときの資格で、会員の会社が今どれだけの完工高を持っているかを示すものではありません。会員の総数は、会員ページの本文には書かれていませんでした(2026年10月9日確認)。
同じ日に法人会員の一覧を見ると、前の章の7社のうち6社は有報の提出者と同じ社名で、飛島は事業会社の「飛島建設(株)」の表記で載っていました。入会資格は一定の規模を求めるものですが、「中堅」という区分を示すものではないので、会員かどうかで中堅かどうかは決まりません。
賃金構造基本統計調査の企業規模
厚生労働省の統計では、建設業を従業員数で区切った年収の目安を出せます。令和7年の調査の年齢計を、統計の2つの項目から計算した値(所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額)で見ると、1,000人以上が約787万円(786.54万円)、100〜999人が約604万円(604.05万円)、10〜99人が約470万円(470.24万円)でした(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者・産業「D 建設業」・企業規模別・男女計・学歴計・民営事業所)。
この区切りは建設業の会社を従業員数で分けたもので、ゼネコンや中堅の区分ではありません。ゼネコン以外の建設業の会社も同じ欄に入りうる値です。また計算に超過労働給与を含めていないので、「賞与及び基準外賃金」を含むとする有報の平均年間給与と同じ物差しではありません。前の章の7社の値と並べて、高い・低いを言う材料にはしないでください。年代ごとの値はゼネコンの年収の記事の表で確かめられます。
「中堅」の求人に移る前に、自分で確かめる数字
求人の「中堅」という言葉で判断するより、気になる会社の有価証券報告書を開いて、決算期・連結売上高・提出会社の給与と注記の3つを自分で確かめるのが確実です。この記事で7社を並べたのと同じ手順で、今の会社とも見比べられます。
有報で見る場所は、次の3か所です。
- 表紙の【事業年度】:何年何月期の数字か。福田組のように12月決算の会社もあり、比べる相手と期をそろえる
- 「主要な経営指標等の推移」の連結の売上高:グループ全体の規模。提出会社の売上高とは別の行
- 「従業員の状況」の提出会社の状況:従業員数・平均年間給与と、その下の注記(誰の数値か、何を含むか)
持株会社の場合は注意が要ります。飛島ホールディングスの有報では、提出会社の欄は持株会社自体の73人で、事業会社の飛島建設の数字は「最大人員会社の状況」という別の表に載っていました。会社名で検索して有報が持株会社の名前で出てきたら、事業会社の数字がどの表にあるかを探してください。項目の名前も会社でわずかに違い、福田組は「(2) 提出会社の状況」という表題でした。有報が見つからない会社では、この確かめ方そのものが使えません。
「中堅ゼネコンはやばい」という言い方については、僕は良し悪しを言葉で判定するより、上の数字を同じ決算期・同じ欄でそろえて見る手順に置き換えるのがいいと考えています。この記事でも、7社それぞれの良し悪しは評価していません。
施工管理の仕事そのものの中身は施工管理の仕事内容、地域に根を張る会社との違いは地場ゼネコンの解説、専門工事側から元請に移る場合の立ち位置の違いはゼネコンとサブコンの違いで確かめられます。数字を確かめたうえで実際に求人を探すなら、施工管理向けの転職サービスを比べた記事で、サービスごとの探し方の違いを見てから動くと迷いにくいはずです。
中堅ゼネコンに関する情報まとめ
- 定義:建設業法・施行令・許可業者数調査を確かめた範囲では「中堅」の区分は無く、同じ国交省資料でも地盤と資本金の2つの軸で使われている
- 国交省の図:2021年6月7日の資料p.4の一般土木の図で、Cランク「地域(都道府県)を地盤とする中堅ゼネコン」約5,900社。基準の説明文は無く、定義文ではない
- 例に挙がる7社:有報で連結売上高 約1,254億〜約3,072億円、平均年間給与 819.9万〜1,006.2万円(福田組は2025年12月期、ほかは2026年3月期の算出値)
- 準大手との比較:注記の書き方が会社で違い、錢高組は総合職・飛島は事業会社の値。準大手の一覧に入る会社と売上高・給与の範囲が重なる
- 規模の物差し:日建連の入会資格は元請完成工事高100億円以上など、賃金構造基本統計調査は従業員数の区分で、どちらも「中堅」の線ではない
- 確かめ方:有報の事業年度・連結の売上高・提出会社の状況と注記の3か所を見る。持株会社は事業会社の表を探す
以上が中堅ゼネコンに関する情報のまとめです。
「中堅ゼネコン」は、国の図では都道府県を地盤とする一般土木の会社の段を指し、就職記事では奥村組のような会社の名前とともに語られる、幅の広い言葉です。だからこそ、言葉の上の格付けで会社を選ぶより、同じ決算期の有報を開いて、売上高は連結、給与は注記まで読む。その一手間をかけておけば、求人票の「中堅」という表現に引っ張られずに、自分の会社と行きたい会社を同じ物差しで比べられるはずです。
規模の上の段を確かめるならスーパーゼネコンの記事、地元で中堅と呼ばれる会社の立ち位置を考えるなら地場ゼネコンの解説から読み進めてみてください。
