- 深層混合処理工法ってなに?
- どんな種類があるの?
- 機械撹拌とスラリー噴射って何が違うの?
- どうやって施工するの?
- 改良強度ってどれくらい出るの?
- 施工管理として何を見ればいい?
上記の様な悩みを解決します。
「深層混合処理工法」は軟弱地盤を深い層まで固化させる地盤改良工法の代表選手で、セメント系固化材と原地盤土を強制的に撹拌混合してソイルセメント柱を作るのが特徴です。「CDM」「DJM」「JSG」「JET」といった代表的な工法名は、すべてこの深層混合処理に分類されます。戸建ての柱状改良からビル基礎・橋脚下の改良、さらにはSMW工法の山留壁まで、地盤改良の主力工法を網羅する大きな分類なので、施工管理として一度は整理しておきたいテーマです。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
深層混合処理工法とは?
深層混合処理工法とは、結論「セメント系固化材を原地盤の土と現位置で強制的に撹拌混合し、深さ方向に連続した固化体(柱状またはブロック状)を造成して地盤の強度を高める地盤改良工法」のことです。
「Deep Mixing Method(DMM)」と英語で呼ばれることもあり、国土交通省の地盤改良工法の分類では「深層混合処理工法」として位置づけられています。地盤改良工法の中でも改良深さが大きい部類で、表層改良では届かない地表から2m〜40m程度の深さを対象にします。
→ ざっくり、「地中にセメントと土を混ぜた柱を作って軟弱地盤を強くする」のが深層混合処理、というイメージです。
構成要素と地盤改良の中での位置づけ
深層混合処理工法の構成要素は、撹拌翼(オーガ・地盤を切削しながら撹拌する機械)、セメント系固化材(普通ポルトランドセメント、高炉セメント、専用固化材)、スラリー(または粉体)(固化材を水と混ぜたミルク、または乾粉のまま)、ソイルセメント柱(撹拌混合により造成された改良体)、というラインアップ。
地盤改良は深さで3区分されます。表層改良工法(地表から2m程度まで・バックホウ撹拌など)、中層改良工法(2〜10m程度)、深層混合処理工法(2〜40m程度・柱状改良の主力)、という分類で、深層混合処理は最も深い領域を対象とします。
主な用途と「地盤改良工法」との関係
主な用途は、戸建て住宅の柱状改良(小規模深層混合処理)、マンションの基礎下地盤改良、盛土の沈下対策(圧密促進)、液状化対策(既設構造物周辺の地盤強化)、山留工法のSMW工法(柱列式)、と多岐に渡ります。
「地盤改良工法」は表層・中層・深層・締固め・圧密などを含む大きな分類で、「深層混合処理工法」はその中の一つの方式という位置づけ。戸建ての柱状改良からビル基礎・橋脚下の改良まで、最も使用頻度が高い工法群です。
地盤改良工法の全体像と、表層改良・柱状改良・鋼管杭工法などとの違いについては別記事も合わせて押さえておきましょう。

深層混合処理工法の種類
深層混合処理工法は「固化材の混ぜ方」と「機械の方式」で複数のタイプに分かれます。実務で覚えておきたいのは機械撹拌方式とスラリー噴射方式の2大区分です。
機械撹拌方式とスラリー噴射方式
機械撹拌方式は、オーガに付いた撹拌翼が回転しながら地盤を切削し、固化材スラリーを注入しつつ混合する方式。深層混合処理の主力で、戸建てから大規模工事まで広く使われます。代表工法は、CDM工法(Cement Deep Mixing・海上陸上の大規模工事)、DJM工法(Dry Jet Mixing・固化材を粉体のまま噴射する乾式)、CMC工法(Civil Mixing Column・戸建て柱状改良で多用)、HSP工法・CIM工法など。
スラリー噴射方式は、スラリーを超高圧(20〜40MPa)で噴射し、地盤を切削しながら混合する方式。機械撹拌が困難な硬質地盤や狭隘空間で使われます。代表工法は、JSG工法(Jumbo Special Grout・二重管式高圧噴射)、CJG工法(Column Jet Grout・三重管式)、JET工法(高圧噴射の総称的呼び方)、というラインアップです。
乾式・湿式と方式比較
乾式と湿式の違いは次の通り。
| 区分 | 内容 | 代表工法 |
|---|---|---|
| 湿式(スラリー方式) | セメント+水を混ぜたスラリーを注入 | CDM、CMC |
| 乾式(粉体方式) | 固化材を粉のまま空気で噴射 | DJM |
| 湿式高圧噴射 | スラリーを高圧で噴射 | JSG、CJG |
機械撹拌とスラリー噴射の比較を表で整理しておきます。
| 項目 | 機械撹拌方式 | スラリー噴射方式 |
|---|---|---|
| 改良径 | φ500〜1,500mm(撹拌翼サイズ) | φ500〜3,000mm(噴射圧で変動) |
| 適用地盤 | 軟弱土〜中硬土 | 硬質土・砂礫層も対応 |
| 排出土 | 少ない | 多い(スライム) |
| 騒音・振動 | 中 | 小 |
| コスト | 中 | 高 |
| 施工速度 | 速い | 遅い |
| 機械の搬入性 | 大型 | 中型〜大型 |
→ ざっくり、「ふつうの地盤は機械撹拌、硬い地盤や近接工事は高圧噴射」と覚えると選択がしやすくなります。
戸建て・ビルでの使い分けと機械選定基準
戸建ての地盤改良では「小口径の機械撹拌方式」が主力。柱状改良工法(CMC・SMC・GA)として知られ、φ400〜600mmのオーガで深さ2〜8m程度の改良。住宅会社・地盤改良会社で独自の名称(HySPEED、ピュアパイル、エコジオなど)が付いていますが、技術的には深層混合処理に分類されます。
ビル・マンションの基礎下地盤改良や山留壁では「大口径の機械撹拌方式」が主流。CDM工法・SMW工法が代表で、φ1,000mm前後の撹拌翼で深さ20〜40mの改良を行います。
機械の選定基準は、改良深さ(浅い→小型、深い→大型)、改良径(要求される支持力で決定)、地盤の硬さ(硬質→高トルク機、軟弱→標準機)、施工スペース(狭小地→小型機、広大地→効率重視で大型機)、近接構造物(振動・騒音規制→ジェット系を検討)、というあたり。
セメントの種類や水セメント比の知識も合わせて押さえておくと、配合の理解が深まります。

深層混合処理工法の施工方法
施工は「機械据付→撹拌翼貫入→固化材注入+混合→引き上げ撹拌→柱完成」の流れで進みます。1本の改良柱を作るのに10〜30分程度が目安。
フローと配合設計
標準的な施工フローは、事前調査・配合設計(N値、土質、固化材の選定、配合試験)→ 施工計画書の作成 → ベンチマーク設置(改良位置の墨出し)→ 機械据付 → 垂直精度確認 → 撹拌翼の貫入(地盤を切削しながら下降)→ 固化材スラリーの注入(所定深度から)→ 引き上げ撹拌(撹拌翼を回転させながら引き上げ)→ 頭部処理 → 養生期間、というステップ。
配合設計の流れは、土質試験(含水比、液性限界、塑性指数、単位体積重量)→ 目標強度の設定(基礎の負担荷重から逆算)→ 配合試験(固化材添加量を変えて室内配合試験)→ 添加量の決定 → 現場試験施工(本施工前に試験柱を造成)→ 本施工、という流れです。
固化材添加量と改良強度の目安
固化材添加量の目安を整理しておきます。
| 改良対象 | 添加量目安 |
|---|---|
| 砂質土 | 50〜150 kg/m³ |
| 粘性土(普通) | 100〜300 kg/m³ |
| 有機質土 | 200〜500 kg/m³ |
| 高有機質土・腐植土 | 300〜600 kg/m³ |
改良強度の目安は、戸建て柱状改良で一軸圧縮強度0.5〜2.0 N/mm²、ビル基礎下改良で1.0〜3.0 N/mm²、山留壁(SMW)で0.5〜2.0 N/mm²、重要構造物で3.0 N/mm²以上、というレンジ。ソイルセメント柱の本数は、改良範囲の面積、必要な改良率、改良柱の径から計算(改良率=改良柱断面積×本数÷改良面積)。戸建て柱状改良の改良率は3〜10%、液状化対策では30〜70%の高い改良率が必要です。
スラリー製造・施工時間・順序
スラリー製造プラントは、計量装置(セメント、水、添加剤の自動計量)、ミキサー(強制撹拌で均一なスラリーを製造)、アジテータ(撹拌しながら待機・沈降防止)、ポンプ(スラリーを所定圧力で注入)、という構成。
1本あたりの施工時間は、戸建て柱状改良(深さ4〜6m)で10〜20分/本、ビル基礎下(深さ15〜20m)で30〜60分/本、SMW工法(多軸)で1エレメント30〜90分、という目安。施工順序は、山留壁の場合はエレメント方式(1本おきに先行施工)、基礎下改良は機械の移動効率を考慮した動線、既設構造物の周辺は影響の少ない位置から、湧水箇所は先行的に止水を確保、と決めていきます。
捨てコンクリートや基礎コンクリートとの兼ね合いも、地盤改良の打設タイミングで重要になります。

深層混合処理工法のメリット・デメリット
メリットとデメリットを整理します。
メリット
深層混合処理のメリットは、深い層まで改良できる(表層改良より圧倒的に深い)、支持力の確保(軟弱地盤でも建物を支えられる)、沈下抑制(圧密沈下のリスクを大幅に減らせる)、液状化対策(地震時の液状化を抑制)、既設構造物への影響が小さい(高圧噴射方式は特に振動が少ない)、狭小地でも施工可能(小型機械を使った戸建て改良が可能)、多様な工法から選べる(地盤・スペース・予算で選択肢が広い)、というあたり。
デメリット
一方でデメリットは、コストが高い(表層改良より割高)、養生期間が必要(所定強度の発現まで7〜28日)、排出残土の処理(余剰のソイルセメントが廃棄物扱いになる場合)、六価クロム溶出のリスク(セメント系固化材で生じる場合)、均一性の確保が難しい(地盤の不均質さが改良体に反映される)、撤去が困難(原則として地中に残置)、配合・施工に専門技術が必要(施工会社の技術力が品質に直結)、というあたりです。
他工法との比較とコスト感
他の地盤改良工法との比較を表で整理しておきます。
| 項目 | 表層改良 | 深層混合処理 | 鋼管杭 |
|---|---|---|---|
| 改良深さ | 〜2m | 2〜40m | 〜30m |
| 支持力 | 中 | 中〜高 | 高 |
| コスト | 安 | 中〜高 | 高 |
| 戸建て向き | △ | ◎ | ○ |
| 大規模建物向き | × | ◎ | ◎ |
| 工期 | 短 | 中 | 中 |
| 撤去性 | 撤去可 | 残置 | 引抜可 |
戸建て住宅のコスト感の目安は、表層改良で30〜50万円、柱状改良(深層混合処理)で50〜100万円、鋼管杭で100〜200万円(建物規模・地盤・本数で大きく変動)。
選ぶべきケースと避けるべきケース
深層混合処理を選ぶべきケースは、支持層が深い軟弱地盤、沈下抑制が必要、液状化対策が必要、既設構造物近接工事(振動・騒音規制が厳しい)、というあたり。避けるべきケースは、支持層が浅い地盤(表層改良で十分)、支持層が極めて深い(場所打ち杭の方が経済的)、岩盤・極硬質地盤(機械撹拌では切削困難)、狭すぎる作業空間(機械が入らない)、というケース。
杭基礎との比較を理解すると、地盤改良と杭の使い分けがクリアになります。

深層混合処理工法の施工管理ポイント
施工管理として深層混合処理で見るべきポイントを整理します。配合・撹拌・垂直度・強度試験が4本柱です。
事前段階と機械据付
事前段階の管理は、地盤調査結果の確認(N値、土質、地下水位、有機物の有無)、配合試験の確認(固化材添加量、目標強度、養生材齢)、施工計画書の確認、試験施工の実施(本施工前のテスト柱で配合と機械を検証)、というステップ。
機械据付・施工準備の管理は、機械の据付精度(水平度、位置精度)、オーガロッドの垂直度(1/100〜1/200の精度)、計測機器の校正(流量計、深度計、トルク計)、プラントの計量精度(セメント・水の計量誤差±2%以内)、を確認します。
施工中の管理項目と品質試験
施工中の管理項目は、貫入速度(地盤に応じた適正速度・0.5〜2.0m/min)、引き上げ速度(混合品質を左右・0.5〜1.5m/min)、回転数(撹拌翼の回転数・10〜40rpm)、吐出量(所定の固化材量が注入されているか)、撹拌回数(上下動を繰り返して十分混合)、施工深度(所定深度まで貫入しているか)、というあたり。
品質試験は、コア採取(完成後の改良体からコアを抜き取り)、一軸圧縮試験(強度が目標値に達しているか)、湿潤密度・含水比、針貫入試験(簡易強度確認)、という項目。試験頻度の目安は、戸建て柱状改良で施工日ごとに1本以上の確認、ビル基礎下で50〜100本に1本のコア採取、山留壁でエレメントごとに供試体採取、という頻度です。
書類・トラブル・六価クロム
施工管理書類は、施工計画書、配合設計書、試験施工結果報告書、作業日報(本数、深度、配合、機械稼働)、計量記録、コア試験結果、改良体配置図(実施工位置の記録)、というラインアップ。
現場で起きがちなトラブルは、改良強度不足(固化材添加量不足、撹拌不良)、垂直度不良(機械の据付ミス、地盤の偏在)、改良深度不足(オーガが硬質層で停止)、均一性不足(撹拌回数不足、引き上げ速度過大)、隣接施工での悪影響(硬化前の改良体への振動)、というパターン。
六価クロム溶出への配慮として、事前の溶出試験(セメント+現地土で六価クロム溶出量を確認)、環境基準値以下の確認(0.05mg/L以下)、問題があれば固化材を変更(高炉セメント・専用固化材を使用)、建設汚泥の処理(環境基準を満たさない場合は管理型処分場へ)、というステップを踏みます。
→ SMW工法のような山留兼用の場合は、上記に加えて遮水性・芯材建込み・連続性の管理も必要です。
設計書照合チェックリスト
設計書との照合チェックリストとして、改良範囲は設計通りか、改良深度は設計通りか、改良径は設計通りか、改良率は設計通りか、配合(添加量)は設計通りか、改良強度は設計値以上か、を確認します。
地盤の支持力やN値の関係も合わせて理解しておくと、改良強度の目標値設定が腹落ちします。


深層混合処理工法に関する情報まとめ
- 深層混合処理工法とは:軟弱地盤の深い層までセメント系固化材と原地盤土を撹拌混合して固化体を造成する地盤改良工法
- 改良深さ:2〜40m程度
- 2大方式:機械撹拌方式(CDM・DJM・CMC)/スラリー噴射方式(JSG・CJG・JET)
- 戸建てでの呼び名:柱状改良工法
- ビル・SMWでの呼び名:CDM、DCM
- 改良強度:0.5〜3.0 N/mm²が目安
- 固化材添加量:粘性土で100〜300 kg/m³が標準
- メリット:深い改良、支持力確保、液状化対策、沈下抑制
- デメリット:高コスト、養生期間、六価クロム溶出リスク
- 管理ポイント:配合・垂直度1/100以上・撹拌品質・コア試験
以上が深層混合処理工法に関する情報のまとめです。
深層混合処理工法は「軟弱地盤を深く強くする」地盤改良の主力工法で、戸建ての柱状改良からビルの基礎下、さらにSMW工法の山留壁まで、建設業界で最も汎用的に使われている工法のひとつです。「機械撹拌か高圧噴射か」「湿式か乾式か」の方式選択と、配合設計・撹拌品質・コア試験の3つの管理ポイントを押さえておけば、現場で工法選定の議論にも参加できるようになります。地盤改良は基礎工事と建物寿命の根幹に関わる重要工種なので、施工管理者として丁寧に向き合いたい領域ですね。
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