- 割裂(かっせつ)ってなに?
- 割裂試験ってどんな試験?
- なぜ圧縮して引張強度を測れる?
- 現場で起きる割裂破壊って?
- 鉄筋まわりに割裂が発生する原因は?
- 対策はどうすればいい?
上記の様な悩みを解決します。
「割裂」(かっせつ)はコンクリート工学の独特な言葉で、①コンクリート供試体を側面から圧縮して引張破壊させる試験(割裂試験)、②現場で鉄筋に沿って縦方向にひび割れが入る破壊現象(割裂破壊)、の2つの意味で使われます。一見すると関係なさそうな2つですが、根っこにあるのは「コンクリートは圧縮に強くて引張に弱い」という性質。本記事では、割裂試験で「なぜ円柱を横向きに圧縮するだけで引張強度が測れるのか」という不思議な原理から、現場の鉄筋まわりで起きる割裂破壊の予防策まで、施工管理として知っておくべき内容を整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
割裂とは?
割裂とは、結論「材料が引張力で軸方向に裂ける現象、またはそれを利用した試験方法」のことです。
「かっせつ」と読みます。英語では splitting(スプリッティング)。コンクリート工学では2つの意味で使われます。
①割裂試験(間接引張試験)
コンクリートの円柱供試体を側面から圧縮して、円柱の中心に水平方向の引張応力を発生させ、その引張応力で供試体が縦に裂けるように破壊させる試験。「直接引張試験」が難しいから、圧縮によって間接的に引張を測る」手法。
→ JIS A 1113「コンクリートの割裂引張強度試験方法」に規定された標準的な引張試験の一つ。
②割裂破壊
現場のコンクリート構造物で、鉄筋やアンカーボルトの周囲に沿って、表面に縦方向のひび割れが伸びる破壊現象。鉄筋とコンクリートの付着力が引張側を作り、それがコンクリートの引張強度を超えると割裂ひび割れが発生。
→ 「鉄筋に沿った縦のひび割れ」がトレードマーク。配筋検査・打設後検査で必ずチェックする現象。
ざっくりイメージ
割裂を直感的に理解すると、
- 試験の割裂:鉛筆を縦置きにして上から押すと、横に割れる(=同じ原理)
- 現場の割裂:鉄筋を植えたコンクリートが、引っ張られたとき鉄筋に沿って縦に割れる
→ 「横から押されて縦に裂ける」「引かれた鉄筋に沿って縦に裂ける」、いずれも「縦方向のひび割れ」が共通点。
コンクリートの引張強度はなぜ重要か
コンクリートは圧縮強度の1/10程度しか引張強度がない(Fc24なら圧縮24 N/mm²、引張は約2.4 N/mm²)。だから建築では、
- 引張側は鉄筋でカバー(=鉄筋コンクリート)
- 鉄筋とコンクリートの付着で力を伝える
- 付着部分の引張がコンクリート引張強度を超えると割裂破壊
→ 「コンクリートの引張強度=割裂強度」と思って差し支えなく、これが配筋設計のかぶり厚規定につながります。
スターラップ筋(あばら筋)の話はこちらの記事も参考にしてください。

割裂試験(間接引張試験)の原理
割裂試験はコンクリート供試体の圧縮で引張強度を測る独特な試験。原理を整理します。
①試験の進め方
- 円柱供試体(φ100×200mm or φ150×300mm)を準備
- 圧縮試験機の上下に載せ、側面から圧縮(円柱の側面に板を当てて荷重)
- 荷重を増やしていくと、ある時点で供試体が縦に2つに割れる
- 破壊荷重 P を記録
→ 試験そのものはシンプル。「横向きの円柱に縦に圧縮するだけ」。
②なぜ圧縮で引張強度が測れるか
弾性論によると、円柱に直径方向の圧縮を加えると、円柱内部に水平方向の引張応力が発生します。
水平方向の引張応力 σ_t = 2P / (π × D × L)
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| σ_t | 割裂引張強度(N/mm²) |
| P | 破壊荷重(N) |
| D | 円柱直径(mm) |
| L | 円柱長さ(mm) |
→ つまり「破壊荷重から計算式で引張強度を直接算出できる」。これが割裂試験のキモ。
③割裂引張強度の数値感
代表的なコンクリート強度クラスでの割裂引張強度の目安:
| 圧縮強度 Fc | 割裂引張強度 σ_t | 比率 |
|---|---|---|
| 18 N/mm² | 1.8 N/mm² | 約10% |
| 21 N/mm² | 2.1 N/mm² | 約10% |
| 24 N/mm² | 2.4 N/mm² | 約10% |
| 30 N/mm² | 2.8 N/mm² | 約9% |
| 36 N/mm² | 3.2 N/mm² | 約9% |
→ 「圧縮強度の10%」程度が引張強度。コンクリートが引張に弱い事実が試験で確認できます。
④割裂試験のメリット
なぜ「直接引張試験」をしないのか?
- 直接引張試験では、供試体のつかみ部での応力集中で正しく破壊させにくい
- 引張試験機で滑りが発生して荷重が正確に測れない
- 円柱形状の供試体は圧縮試験のついでで作れるので合理的
→ 割裂試験は「圧縮機で実施できる引張試験」として、現場の試験として最も合理的。
⑤試験条件の注意点
- 載荷板の幅:供試体の太さの1/8〜1/10程度(板を当てて荷重を分散)
- 載荷速度:JIS規定で0.06〜0.15 N/mm²/秒
- 供試体の養生:湿潤養生(水中養生または恒温恒湿)で28日以上
→ 試験条件が違うと結果がブレるので、JIS A 1113に則った標準条件で実施。
スランプ試験等のコンクリート試験についてはこちらの記事を参考にしてください。

現場での割裂破壊(鉄筋まわりのひび割れ)
試験室を離れて、現場のコンクリート構造物で発生する割裂破壊を見ます。
①割裂破壊の発生メカニズム
鉄筋コンクリートでは、鉄筋に引張力がかかると、鉄筋とコンクリートの付着力でコンクリート側に荷重が伝達されます。このとき、
- 鉄筋表面のリブ(凸部)がコンクリートを横方向に押し出す
- 押し出されたコンクリートは周囲のかぶりコンクリートを引き裂こうとする
- 引き裂く力(リング状の引張力)がコンクリート引張強度を超えると、鉄筋に沿って縦のひび割れが発生
→ これが割裂破壊。鉄筋まわりに「ヒビが鉄筋方向に走る」のがトレードマーク。
②割裂破壊の見た目
現場で割裂破壊が起きると、
- 鉄筋に沿って真っ直ぐ縦のひび割れ(または水平のひび割れ)
- ひび割れ幅は0.2〜2mm程度
- 表面のかぶりコンクリートが剥がれ落ちる(かぶり剥落)
- 鉄筋が露出する場合あり
→ 「鉄筋方向の真っ直ぐなひび割れ」を見たら、まず割裂を疑う。
③割裂破壊が起きる原因
割裂破壊の主な原因は、
- かぶり厚不足:コンクリートが薄いと引張耐力が出ない
- 付着すべり:鉄筋表面が滑らかすぎて応力が集中
- 過大な引張力:設計を超える地震力・荷重が作用
- コンクリート品質不良:Fc不足、ジャンカ
- 鉄筋径過大:細いかぶりに対して太い鉄筋
- 腐食膨張:鉄筋が錆びて体積膨張、コンクリートを内側から押し広げる
→ 設計と施工の両面で原因がある。かぶり厚と鉄筋径の関係が特に施工管理で重要。
④鉄筋径とかぶり厚の関係
割裂破壊を防ぐため、鉄筋径(d)に対してかぶり厚は十分必要。
| 鉄筋径 | 推奨かぶり厚(屋内/屋外) |
|---|---|
| D13 | 30mm / 40mm |
| D16 | 30mm / 40mm |
| D19 | 35mm / 45mm |
| D22 | 40mm / 50mm |
| D25 | 45mm / 55mm |
| D29 | 50mm / 60mm |
→ 一般則として「かぶり厚 ≥ 鉄筋径×1.5〜2倍」が割裂対策の目安。建築基準法施行令ではさらに厳しい規定。
⑤腐食膨張による割裂
経年後の問題として、鉄筋の錆が割裂を引き起こすケースが頻発。
- 鉄筋が錆びると体積が約2.5倍に膨張
- 鉄筋から半径方向に押し広げる力が発生
- かぶりコンクリートが割裂ひび割れ → 剥落
→ 海岸近くの建物・橋梁・古い駐車場で頻繁に見られる。塩害・中性化対策が割裂予防につながる。
最小かぶり厚の話はこちらの記事も参考にしてください。

割裂引張強度の計算と設計での扱い
割裂引張強度は構造設計でも直接的に使う場面が限定的ですが、知っておくと役立ちます。
①式の確認
σ_t = 2P / (π × D × L)
- 円柱供試体(D×L=φ100×200 or φ150×300)で測定
- 単位はN/mm²(MPa)
→ 試験結果から直接計算で出せる。
②設計式での使い方
割裂引張強度は、以下の場面で式に登場します。
- せん断ひび割れ発生荷重の計算
- 鉄筋付着強度の算定
- アンカーボルトの引抜耐力(コーン破壊)
- ひび割れ幅の計算
③許容引張応力度との関係
設計コードでは、引張応力度を許容値として安全率込みで規定されます。
- 短期許容引張応力度 σ_t,short ≈ Fc / 30 (Fcの約3.3%)
- 長期許容引張応力度 σ_t,long ≈ Fc / 60(Fcの1.7%)
→ 「割裂引張強度の数十%」が許容値。引張側の設計は鉄筋に頼るのが基本で、コンクリートの引張は補助的。
④コンクリート強度との比例関係
割裂引張強度は圧縮強度の関数として近似式があります。
σ_t ≈ 0.56 × √Fc(N/mm²) ※ACI規準
σ_t ≈ 0.23 × Fc^(2/3)(N/mm²) ※日本建築学会規準
→ 「圧縮強度の平方根に比例」が大まかな関係。圧縮を大きくすれば引張も伸びるが、伸び率は逓減。
⑤鉄筋付着強度との関係
鉄筋とコンクリートの付着強度は、
τ_b = α × √Fc(N/mm²)
αは鉄筋形状で決まる係数(異形鉄筋ならα=0.7程度)。付着強度も圧縮強度の平方根に比例で、割裂引張と似た傾向。
→ つまり「Fcを上げれば付着も引張も上がる」が、両者は密接に関係。
水セメント比とコンクリート強度の関係はこちらの記事も参考にしてください。

割裂破壊の対策と施工管理視点
施工管理として割裂破壊を防ぐための具体的な対策を整理します。
①設計段階での対策
- 十分なかぶり厚を確保(最小かぶり厚の規定遵守)
- 鉄筋径と間隔のバランスを取る(密集配筋を避ける)
- 横補強筋(あばら筋・帯筋)で割裂を抑える
- 異形鉄筋を使う(リブで付着・割裂耐力を確保)
②配筋検査での確認
配筋検査で割裂予防のチェックポイント:
- かぶり厚スペーサーが所定の厚みで設置されているか
- 鉄筋同士の最小あき寸法(主筋径×1.5、または25mm以上)
- 帯筋・あばら筋のピッチ・本数が設計通りか
- 結束線が確実に締められているか
→ かぶり厚を確保するスペーサーの仕様(プラスチック・モルタル製・鉄製)にも注意。プラスチックは耐震性で評価が分かれます。
③コンクリート打設時の対策
- 適切なスランプ・空気量で打設(分離防止)
- バイブレーター掛けでジャンカ防止
- 打ち継ぎ目の処理(レイタンス除去)
- 養生期間中の水分供給(乾燥収縮ひび割れ防止)
→ 打設品質が悪いと、設計上の引張強度が現場で発現しない。
④防水・耐久性対策
割裂破壊は経年で腐食膨張が引き金になるケースが多いので、
- 屋外コンクリートの塗装・防水処理
- 海岸近くは塩害対策(エポキシ塗装鉄筋など)
- 中性化が進む環境ではコンクリート被り厚の増加
→ 鉄筋を錆びさせない=長期的に割裂を防ぐ最良の対策。
⑤現場で見つけたら
施工管理として現場で割裂ひび割れを見つけたら、
- 写真撮影と寸法記録(クラックスケールで幅・長さ)
- 設計者・構造担当に報告
- 原因究明(かぶり不足・打設不良・経年劣化のいずれか)
- 補修方針決定:
- 軽微 → エポキシ樹脂注入
- 重大 → かぶり斫りからやり直し、鉄筋補修
→ 「割裂は早期発見で軽微補修可能」だが、放置すると鉄筋腐食が進行して構造耐力低下につながる。
最小かぶり厚の話はこちらの記事を参考にしてください。

割裂に関する情報まとめ
最後に、割裂の重要ポイントを整理します。
- 2つの意味:①割裂試験(供試体を圧縮して引張強度測定)、②割裂破壊(鉄筋に沿った縦ひび割れ)
- 試験の式:σ_t = 2P / (π × D × L)
- 引張強度:圧縮強度の約10%
- 割裂破壊の原因:かぶり不足、付着すべり、鉄筋径過大、腐食膨張
- 見た目の特徴:鉄筋方向の真っ直ぐな縦ひび割れ
- 設計対策:十分なかぶり厚、横補強筋、異形鉄筋使用
- 施工対策:スペーサー設置、ジャンカ防止、養生期間確保
- 経年対策:塗装・防水・塩害対策で鉄筋腐食を防ぐ
- 発見時の対応:写真記録、原因究明、補修方針(軽微=樹脂注入、重大=斫り再施工)
以上が割裂に関する情報のまとめです。
割裂は「コンクリートが引張で縦に裂ける現象」で、試験では引張強度を測る手段として、現場では破壊現象の予兆として現れます。「圧縮で引張を測る」割裂試験の不思議さ、「鉄筋に沿った縦ひび割れ」という見た目の特徴、「かぶり厚と鉄筋径のバランス」が予防の核心、を押さえておけばコンクリート構造物の健全性管理が一段深く見えるようになりますよ。一通り割裂の基礎知識は理解できたと思います。
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