- 土圧ってなに?
- 主働土圧、受働土圧、静止土圧の違いは?
- 計算ってどうやるの?
- 擁壁の設計で土圧をどう使うの?
- 山留め工事で土圧の何を見ればいい?
- ランキンとクーロンってどっちを使えばいいの?
上記の様な悩みを解決します。
土圧は、地盤の土が壁・構造物を押す力で、擁壁・山留め・地下構造物・橋台などの設計で必ず登場する基礎概念。「圧力」と聞くと水圧と似たイメージを持ちますが、土圧は壁の動き方によって値がガラッと変わるという独特の性質があり、初学者が一番つまずきやすい部分です。本記事ではこの「壁の動き=土圧の種類」の関係から整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
土圧とは?
土圧とは、結論「地盤の土が、壁や構造物を押す力」のことです。
英語では Earth Pressure。土が積み重なっていれば、その重さで横方向に押す力が発生します。これは静水圧(水が壁を押す力)と同じイメージですが、土は粒子間の摩擦と粘着力を持っているため、水ほど単純には計算できません。
土圧が発生するシーン
- 擁壁:道路の段差、宅地造成の段差、河川堤防など
- 山留め壁:地下工事の掘削壁
- 橋台:橋の桁を支える左右の壁
- 地下構造物:地下室、地下トンネルの壁
- 耐震壁・浮力対策の地下外壁
これらの壁面にはある程度大きな水平力が常時かかっているわけで、その力を見積もるのが土圧計算です。
水圧との違い
| 比較項目 | 水圧 | 土圧 |
|---|---|---|
| 計算式 | γ_w × h(単純) | 土の状態・壁の動きで変わる |
| 値 | 一意に決まる | 主働・受働・静止で異なる |
| 影響因子 | 深さ・密度のみ | 内部摩擦角・粘着力・壁の動き等 |
土圧の3種類(主働・受働・静止)
土圧は、壁面の動き方によって3種類に分かれます。これが土圧の最大の特徴。
| 種類 | 壁の動き | 値の大小 | 主な使用シーン |
|---|---|---|---|
| 静止土圧 P0 | 動かない | 中 | 地下外壁、地中構造物 |
| 主働土圧 Pa | 土側へ向かって動く | 小 | 擁壁、山留めの主働側 |
| 受働土圧 Pp | 土を押し返す | 大 | 山留めの根入れ部、転倒防止 |
数式で表すと、Pa < P0 < Pp という不等式で覚えればOK。
1. 静止土圧(せいしどあつ)P0
壁が全く動かない状態でかかる土圧。地中の構造物や、剛性の高い地下外壁に作用する土圧で、主働と受働の中間値になります。
静止土圧係数 K0 はざっくり以下。
- 砂質土:K0 = 0.4〜0.5
- 粘性土:K0 = 0.5〜0.7
2. 主働土圧(しゅどうどあつ)Pa
壁が土側から離れる方向に少し動いたときの土圧。土自身が自分から壁を押そうとする状態で、土圧は最も小さくなります。擁壁設計の基本前提はこの主働土圧。
なぜ小さくなるかというと、壁が動いて土塊にすべり面ができ、土の自重を摩擦と粘着で支え合うから。土が「自分で立つ」イメージ。
3. 受働土圧(じゅどうどあつ)Pp
壁が土を押し返す方向に動いたときの土圧。土の中に押し込まれた壁を、土が押し返す力なので、土圧は最も大きくなります。
山留め工事の根入れ部で、矢板や親杭が下端で受け止める力がこの受働土圧。値は主働の何倍にもなります(内部摩擦角30度の砂で約9倍)。
3種類の関係を実例で見る
例:深さ5mの掘削で、内部摩擦角φ=30度の砂を考える
- 主働土圧係数 Ka ≈ 0.33
- 静止土圧係数 K0 ≈ 0.5
- 受働土圧係数 Kp ≈ 3.0
Pp / Pa ≈ 9倍という大差があるわけで、設計で土圧の種類を間違えると、まったく違う規模の構造物になってしまいます。
土圧の計算式(ランキン土圧とクーロン土圧)
土圧の計算式には、ランキン式とクーロン式の2大流派があります。
ランキン土圧の特徴
英国の物理学者ランキン(W.J.M. Rankine)が1857年に提案。土塊全体の応力状態から導く理論で、壁面摩擦δ=0、壁背面が鉛直、地表面が水平という前提条件を置いています。
ランキン主働土圧係数 Ka
Ka = tan²(45° - φ/2)
たとえば φ=30度なら Ka = tan²30° = 1/3 ≈ 0.333。
ランキン土圧の長所・短所
- ◎ 数式がシンプル、計算しやすい
- ◎ 教科書に必ず登場
- × 壁面摩擦を考慮しないので過大設計気味
- × 壁面が傾斜していると使えない
クーロン土圧の特徴
フランスの物理学者クーロン(C.A. Coulomb)が1773年に提案。土塊のすべり面を直線と仮定し、力のつり合いから土圧を求める方式。壁面摩擦δ、壁面の傾斜α、地表の傾斜βを反映できる。
クーロン主働土圧係数 Ka(簡略式)
Ka = cos²(φ-α) / [cos²α × cos(α+δ) × {1 + √(...)}²]
…と複雑なので、実務では設計係数表や構造ソフトの内蔵関数で計算します。
クーロン土圧の長所・短所
- ◎ 壁面摩擦・壁面傾斜・地表傾斜を反映できる
- ◎ 実際に近い値が出る
- × 数式が複雑
- × 受働土圧では誤差が大きいケースあり
ランキン vs クーロンの使い分け
| 場面 | 推奨 |
|---|---|
| 土圧の概念学習・教科書問題 | ランキン |
| 壁面摩擦のない剛壁・概略計算 | ランキン |
| 一般的な擁壁設計 | クーロン |
| 山留め工事の主働側 | クーロン |
| 受働土圧(精度が必要) | クーロン or 数値解析 |
ランキン土圧の詳細はこちら。

クーロン土圧の詳細はこちら。
土圧が効く場面(擁壁・山留め)
実務での土圧の活躍シーンを整理します。
1. 擁壁設計
道路や宅地の段差を支える擁壁では、主働土圧で水平力を見積もり、擁壁の安定計算を行います。
擁壁の安定計算で確認する3項目:
- 滑動:土圧で擁壁が滑り出さないか(安全率1.5以上)
- 転倒:擁壁が前方に倒れないか(安全率1.5以上)
- 支持力:擁壁の足元の地盤が降伏しないか(安全率3.0以上)
L型擁壁の話はこちら。

重力式擁壁の話はこちら。

2. 山留め工事
地下掘削の山留めでは、主働側(掘削側に向かう土圧)と受働側(埋戻し側からの抵抗)の両方を計算。
- 主働土圧:山留め壁の主働側(土砂が押す力)
- 受働土圧:山留め壁の根入れ部下端(壁が土を押す抵抗)
山留め壁の安定は「主働<受働」の不等式で評価され、根入れ深さ・支保工の段数・腹起し・切梁の配置で決まります。
親杭横矢板の話はこちら。

シートパイルの話はこちら。

3. 地下外壁・地下室の壁
剛性の高い地下外壁には静止土圧を使うのが原則。RC造の地下外壁を主働土圧で設計すると過小評価になるので注意が必要です。
4. 橋台・カルバート
橋台(橋の支点を載せる構造物)には常時の土圧+活荷重(車両の重さ)が作用。ランキン主働土圧+活荷重影響線の組み合わせで設計するのが土木の定石。
土圧計算で施工管理が押さえるべき注意点
設計図を読み解くとき、現場で起きるトラブルを未然に防ぐために、以下のポイントを押さえておきましょう。
1. 土質定数の信頼性
土圧計算は内部摩擦角φ・粘着力c・単位体積重量γの3つの土質定数で決まります。設計時の地盤調査結果と、施工時に出てきた土が著しく違う場合、再計算が必要なケースがあります。
2. 過剰水位による水圧加算
土圧計算は通常地下水位以下を考慮しますが、豪雨や排水不良で地下水位が想定より上がると、水圧分が追加で壁に作用します。これは設計の安全率を食い潰すレベルなので、現場での水位観測が重要。
3. 偏土圧(へんどあつ)の発生
地表面が斜面・隣接建物がある・盛土があるなどの非対称条件では、左右で土圧が違う偏土圧が発生します。これを設計で見落とすと、構造物が水平方向にズレる事故につながります。
4. 山留め工事中の土圧計測
中規模以上の山留め工事では、土圧計・地中変位計を埋設して計測しながら施工するのが標準。設計値と実測値が乖離した場合、支保工の追加・施工方法の変更が必要になります。
5. 施工順序による土圧の変化
山留め工事の段階掘削(1次掘削→1段切梁→2次掘削…)では、段階ごとに作用する土圧が変化します。設計図書の施工順序と施工サイクルを必ず確認し、順序を勝手に変えないこと。
6. 隣地への影響評価
土圧と引きずられて隣地地盤の沈下・側方流動が起きるケースがあります。事前家屋調査・施工中の計測・事後調査で証拠を残すのが施工管理の基本。
社内検査・計測管理の話はこちら。

土圧に関する情報まとめ
- 土圧とは:地盤の土が壁・構造物を押す力
- 3種類:主働土圧Pa(壁が土から離れる、最小)、静止土圧P0(壁不動、中間)、受働土圧Pp(壁が土を押す、最大)
- 大小関係:Pa < P0 < Pp
- 計算式:ランキン式(簡単・教科書)、クーロン式(実務・壁面摩擦反映)
- 使用場面:擁壁設計(主働)、山留め(主働+受働)、地下外壁(静止)、橋台
- 設計確認項目:滑動・転倒・支持力の3つの安定検討
- 施工管理の注意:土質定数の確認、地下水位の監視、偏土圧、土圧計測、施工順序の遵守
以上が土圧に関する情報のまとめです。
土圧は「壁の動き方で値が変わる」という独特の性質を理解できれば、後の計算式・設計法則は自然と頭に入ります。実務では計算は構造ソフト・専門家に任せることが多いですが、施工管理として現場に出ると、「設計が想定した土圧条件と現場の状況が一致しているか」を判断する場面が必ず来ます。地下水位、隣地の盛土、施工順序、これらを意識的に観察するクセをつけましょう。
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