- 積雪荷重ってどう計算するの?
- 単位は何?1m²あたりで考えるの?
- 多雪区域と一般区域って何が違うの?
- 屋根の勾配で値が変わるって本当?
- 雪止め・雪下ろしと荷重の関係は?
- 施工管理として現場で気をつけることは?
上記の様な悩みを解決します。
「積雪荷重」は、構造設計をやっていない施工管理にとっては触る機会が少ない数値ですが、雪国の物件を担当した瞬間、いきなり最重要パラメータになります。「屋根の梁を太くしないと冬持たないよ」と構造屋さんに言われた時、根拠が分からないと話についていけません。本記事では計算式・地域区分・屋根形状の補正・現場での注意点までまとめておきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
積雪荷重とは?
積雪荷重とは、結論「屋根に積もった雪の重さによって建物が受ける鉛直方向の荷重」のことです。
建築基準法施行令第86条で規定されている建物に作用する固定荷重・積載荷重・風荷重・地震荷重と並ぶ「主要荷重の1つ」で、構造計算では当然のように登場します。
積雪荷重の特徴
- 鉛直下向きにのみ作用する(基本的に水平成分はない)
- 単位積雪荷重(積雪1cmあたりの重さ)に積雪深を掛けて算出
- 屋根の形状・勾配で値が変わる
- 多雪区域では「長期荷重」として常時作用扱いになる場合がある
雪は1m³あたり50〜300kgとも言われ、地域・湿り気・降雪状況で大きく振れます。乾雪と湿雪で重さが3倍以上違うので、地域ごとに別の係数を使う必要があるわけです。
建築基準法上の主要荷重の話はこちらでも整理しています。
積雪荷重の単位と公式
施工管理として最低限押さえておきたい計算式です。
基本式
建築基準法施行令第86条の積雪荷重の式は、以下の3要素の積で表されます。
S = P × Z × μb
- S:積雪荷重(N/㎡)
- P:積雪の単位荷重(N/㎡・cm)
- Z:その地域の垂直積雪量(cm)
- μb:屋根の形状係数(勾配補正)
このうち P・Z は地域条件で決まり、μb は建物固有の値という構造です。
単位積雪荷重 P の値
積雪 1cm あたりの重量がどれくらいか、という値。建築基準法では区域ごとに以下のように定められています。
| 区域 | 単位積雪荷重 P |
|---|---|
| 一般区域 | 20 N/㎡・cm 以上 |
| 多雪区域 | 30 N/㎡・cm 以上 |
多雪区域の方が重く設定されているのは、降る雪が湿って重い地域が多いから(北陸・東北の日本海側など)。一方、北海道のような乾雪地域でも積雪量自体が大きいので、結局 P × Z でかなりの荷重になります。
垂直積雪量 Z
「その地域で平年通常見られる屋根に積もる雪の深さ(cm)」を指します。各都道府県・市町村が告示や条例で定めており、たとえば以下のような値が一例です(建築主事に必ず確認すること)。
- 東京区部・神奈川県の多くの市:30cm
- 新潟市:100cm前後
- 富山・福井市内:150〜200cm前後
- 札幌市内:100〜150cm前後
- 旭川市・新潟県山間部:200〜300cm
同じ県内でも市町村単位で値が変わるので、必ず自治体の建築指導課か地区告示を確認するのが鉄則。設計者まかせにせず、施工管理側でも一度値の根拠を共有しておくとトラブルが減ります。
計算例
新潟市内、屋根の形状係数 μb = 0.7(後述)で計算すると:
S = 30 × 100 × 0.7 = 2,100 N/㎡ ≒ 214 kgf/㎡
つまり1㎡あたり約214kgの雪が屋根に乗ることを前提に構造を組む、ということになります。畳1帖あたり大人が2〜3人乗るのと同じ重さ、と言われれば施主にも分かりやすい数字です。
一般区域と多雪区域の違い
積雪荷重を理解する上で最大の分岐点が「一般区域」か「多雪区域」かの判定。これだけで使う係数も計算方法も変わります。
多雪区域の指定
国土交通省告示第594号により、垂直積雪量1m以上の区域または降雪期の最深積雪量が30日以上1m以上残る区域は、原則として多雪区域として指定されます。
具体的には、以下のような地域が多雪区域に含まれることが多いです(市町村単位で異なるため、必ず最新の告示・条例を確認)。
- 北海道(道央〜道北を中心に広範囲)
- 東北日本海側(青森・秋田・山形の沿岸〜内陸)
- 北陸(新潟・富山・石川・福井)
- 中部山間部(長野・岐阜・滋賀の一部)
- 中国山地(鳥取・島根・広島県北部)
- 四国山地(高知の山間部)
多雪区域での「長期積雪荷重」
多雪区域で特に注意すべきなのは、「長期荷重」としての積雪荷重が登場する点です。
多雪区域の長期積雪荷重の扱い
- 短期荷重(地震・暴風と組み合わせ)として通常 S を使う
- それに加えて長期積雪荷重 = 0.7 × Sを「常時作用する重み」として扱う
- これは「冬の数か月、屋根の上に雪が乗りっぱなし」という現実を反映した規定
つまり多雪区域では雪が床荷重と同じレベルで構造に乗ってくるということ。一般区域なら積雪はあくまで短期荷重ですが、多雪区域では梁・柱・基礎にも長期で効いてくるので、構造設計の前提が大きく変わります。
施主との打ち合わせで「ここ多雪区域なんで、屋根の構造材は通常より太くなりますね」と一言入れておくと、後から「なんでこんなに材積が…」となるのを防げます。
構造計算ルートとの関係はこちらで整理しています。
屋根形状係数 μb の補正
積雪荷重の計算で「屋根が傾いていれば雪は滑り落ちる」という当たり前の現象を取り入れたのが屋根形状係数 μb です。
計算式
屋根勾配 β(角度)を使って、以下の式で求めます。
μb = √cos(1.5β)
- β:屋根勾配(度)
- β = 60° 以上:μb = 0(雪は留まらない)
実用的な値の目安は以下の通り。
| 屋根勾配(度) | μb |
|---|---|
| 0°(陸屋根) | 1.0 |
| 15° | 0.95 |
| 30° | 0.81 |
| 45° | 0.59 |
| 60° 以上 | 0 |
ざっくり言うと「勾配 45° まではけっこう雪を持つ」という感覚です。屋根を急にすれば雪が落ちるとはいえ、60°以上の屋根を住宅で採用するケースはほぼないので、現実的には μb = 0.6〜1.0 の範囲で動きます。
雪止めを設ける場合
軒先からの落雪事故防止で雪止め金物を取り付ける建物は多いですが、雪止めを設けると「屋根上に雪を留まらせる」前提になるので、勾配があっても雪が滑り落ちません。この場合、構造計算上は μb = 1.0(雪は屋根に全量留まる)として扱うのが安全側の設計です。
設計図書に「雪止め金物 設置」と記載されている場合、形状係数を勾配補正しないことを構造担当に確認しておきましょう。
屋根の形状による加算(吹きだまり)
緩勾配屋根が並んだ構成(フラットルーフが連なる工場・倉庫など)では、風で雪が偏って積もる「吹きだまり」が発生し、特定箇所に通常の数倍の積雪荷重がかかります。
不均等積雪の代表例
吹きだまりが起きやすいのは以下のような場面。
- 高低差がある屋根の境界(高い屋根の風下側に雪が落ちて溜まる)
- パラペット(屋上立ち上がり壁)の風下側
- 工場の鋸屋根の凹部
- 太陽光パネル架台の周辺
偏積雪荷重の考え方
平均積雪深 Z に対し、局所的に 2〜3倍の積雪が想定されることがあり、構造設計では部分的に偏積雪荷重を割り増した検討を行います。
施工管理として知っておくと役立つのは「屋上機器・太陽光パネルの追加発注で偏積雪荷重を見直す必要が出る**ケースがある、ということ。後施工で重い機器を載せると、当初の積雪荷重設定では足りなくなる可能性があり、構造再検討が必要になります。
設備機器の屋上設置や追加施工に関する話はこちら。

積雪荷重の現場での注意点
施工管理として現場で意識すべきポイントを整理します。
工事中の仮設屋根・養生シートにも積雪は乗る
工事中の屋根(防水工事完了前など)は、本設計の構造係数で守られていません。シートで覆っただけの状態に大量の雪が乗ると、垂木・小屋組の段階で破損するリスクがあります。
冬期工事の備え
- シート屋根は雪が積もる前に張り替えるか、雪下ろし計画を立てる
- 仮設足場のメッシュシートも積雪で大きな荷重を受ける
- 大屋根が完成していても、養生中は早めに雪下ろしを実施
- 朝礼で「降雪予報○cm以上で屋根上立入禁止」のルールを共有
仮設足場の積雪・強風時の対応については、こちらの記事も参考になります。
雪下ろしの安全管理
積雪荷重が大きくなると、施主や管理組合から「屋根の雪下ろしをしたい」と相談されることがあります。施工管理として、屋根上作業の安全配慮義務を念頭に、以下を必ず確認。
- 親綱・墜落制止用器具(フルハーネス)の準備
- 屋根勾配が30°以上なら屋根上作業を原則禁止にし、屋根からではなく足場や高所作業車から
- 雪庇(屋根からせり出した雪のひさし)の崩落注意
- 落雪での通行人事故を避けるため、敷地周辺の立入禁止措置
屋根上作業や高所作業の安全は施工管理の責任範囲。「雪下ろしくらい簡単でしょ」と思った瞬間に大事故が起きます。
高所作業の安全対策はこちらに整理しています。

積雪+地震の組み合わせ荷重
多雪区域では、設計時の荷重組み合わせで「積雪 + 地震」のケースが必ず出てきます。雪が屋根に乗っている冬期に地震が起きると、屋根重量が増えた状態で水平力を受けるため、通常の地震時より建物が揺れやすくなるわけです。
組み合わせ荷重の内訳まで施工管理が把握する必要はありませんが、「多雪区域では雪+地震が支配的なケースが多い」と覚えておけば、構造担当との会話の解像度が上がります。
地震時に建物がどう揺れるかの基本はこちらでも。
雪荷重の地域条例は変わる
東日本大震災後、各地で防災基準が見直され、多雪区域の指定や垂直積雪量 Z が変更されている地域があります。古い設計書のまま増築すると、現行基準と整合しないリスクがあり、増改築・大規模改修で構造再検討が求められるケースも。
着工前に必ず最新の告示・条例を確認するのがベストです。設計事務所が確認しているはずですが、施工管理としても根拠資料の写しを保管しておくと安心。
積雪荷重に関する情報まとめ
- 積雪荷重とは:屋根に積もった雪の重さによる鉛直荷重。建築基準法施行令86条で規定
- 基本式:S = P × Z × μb(単位荷重 × 垂直積雪量 × 屋根形状係数)
- 単位積雪荷重 P:一般区域 20 N/㎡・cm 以上/多雪区域 30 N/㎡・cm 以上
- 垂直積雪量 Z:地域告示で定まる(東京 30cm、新潟 100cm、富山 150〜200cm 等)
- 屋根形状係数 μb:μb = √cos(1.5β)。勾配 60°以上で 0、雪止めありなら 1.0
- 多雪区域:垂直積雪量 1m 以上の区域。長期荷重 0.7S を考慮
- 吹きだまり:屋根段差・パラペット周辺で偏積雪荷重 2〜3倍を想定
- 現場の注意点:仮設屋根の雪下ろし、屋根上作業の安全、地域条例の更新
以上が積雪荷重に関する情報のまとめです。
施工管理としては「積雪荷重 = 雪の重さによる屋根荷重」という大枠さえ押さえておけば、構造担当との会話で困ることはまずないはず。プラスして「多雪区域では長期荷重も効く」「雪止めがあれば μb = 1.0」「吹きだまりは偏積雪で 2〜3倍」の3つを覚えておくと、雪国の現場で打ち合わせ初回から話がスムーズに進みます。
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