建物の固有周期とは?計算式、共振、長周期地震動、低減方法など

  • 固有周期ってそもそも何の時間なの?
  • 計算式T=2π√(m/k)の意味が分からない
  • なんでルート(√)がつくの?
  • 高い建物・重い建物ほど周期が長いって本当?
  • 10階建てだとざっくり何秒くらい?
  • 0.02h・0.03hの略算式の使い分けは?
  • 共振や長周期地震動と何が関係あるの?
  • 揺れを抑えるにはどうすればいい?

上記の様な悩みを解決します。

固有周期は、建物の揺れ方を決めるいちばん基本の指標です。式だけ見ると難しそうですが、「重さ」と「硬さ」の関係というシンプルな話に落とし込めます。そして固有周期が分かると、共振がなぜ怖いのか、超高層がなぜ長く揺れるのか、免震や制震がなぜ効くのかまで一本の線でつながります。この記事では、固有周期の意味と式の中身をかみ砕いたうえで、秒数のざっくりした目安、建築基準法の略算式、共振と長周期地震動のこわさ、そして免震・制震による揺れの抑え方までを、一本の線でつないで解説します。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

建物の固有周期とは?

建物の固有周期とは、結論「その建物が揺れたときに、一往復して元に戻るまでにかかる時間」のことです。読み方は「こゆうしゅうき」です。

建物を横にグッと押して手を離すと、元の位置に戻り、勢い余って反対側に振れ、また戻ってくる、という揺れを繰り返します。この「右→元→左→元→右」の一往復にかかる秒数が固有周期です。建物は1棟ごとに重さも硬さも違うので、揺れの速さ=周期も1棟ごとに違います。だから「固有(その建物だけの)」周期と呼びます。

固有周期が重要なのは、これが分かると「その建物に地震力がどれくらい働くか」「どんな揺れ方をするか」が見通せるからです。超高層ビルでも平屋でも、固有周期が同じなら基本的な揺れの傾向は似てきます。建物の揺れを比べるときの共通のものさし、と捉えると役割が分かりやすいです。

建物にかかる力の全体像はこちらも参考になります。

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僕の感覚だと、固有周期は「建物がどれくらいゆっくり揺れるか」を表す数字、とざっくり覚えておくと十分です。数字が大きいほどゆったり長く揺れ、小さいほど小刻みに揺れる、という方向感だけ最初に押さえておきましょう。

固有周期の計算式とその意味

固有周期Tは「T=2π√(m/k)」という式で表され、重さ(質量m)が大きいほど長く、硬さ(剛性k)が大きいほど短くなります。

式の形は難しく見えますが、言いたいことは単純です。mは質量(建物の重さ)、kは剛性(建物の硬さ)です。分子に重さ、分母に硬さがあるので、重い建物ほど周期は長く(ゆっくり揺れる)、硬い建物ほど周期は短く(小刻みに揺れる)なります。重い荷物を持つと人は素早く動けず、力が強い人は同じ重さでも速く動ける、というイメージがそのまま建物に当てはまります。

気になるのは「なぜルート(√)なのか」だと思います。直感的には重さが2倍なら揺れも2倍ゆっくりになりそうですが、実際は√2倍(約1.4倍)にしかなりません。周期を半分にするには揺れる速さを2倍にする必要があり、しかも使える時間も半分なので、加速度は4倍必要になります。力(硬さ)を4倍にして初めて周期が半分になる、という関係なので、周期は硬さの平方根に反比例する、という形になるわけです。

整理すると、固有周期と重さ・硬さの関係は次の通りです。

  • 重さ(質量m)が大きい → 周期は長い(ゆっくり揺れる)
  • 硬さ(剛性k)が大きい → 周期は短い(小刻みに揺れる)
  • 周期は硬さの平方根に反比例する(4倍硬くして周期は半分)

僕としては、式を丸暗記するより「重い=のんびり、硬い=せかせか」という方向感を体に入れるのが先決です。方向感さえあれば、後述の略算式や低減方法の話がすっと入ってきます。

固有周期の目安と建築基準法の略算式

実務で建物全体の固有周期を厳密に解くのは大変なので、実務では「建築基準法の略算式 T=h(0.02+0.01α)」を使って当たりをつけるのが基本です。

ここでhは建物の高さ(m)、αは木造または鉄骨造である階の高さの合計が、全体高さhに占める割合です。これを構造種別ごとに当てはめると、次のように整理できます。鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)はα=0なのでT=0.02h、鉄骨造(S造)・木造はα=1なのでT=0.03hとなります。同じ高さなら、軽くてしなやかな鉄骨造のほうがRC造より周期が長くなる、という関係です。

構造種別 略算式 高さ100mのときの目安
RC造・SRC造 T=0.02h 約2.0秒
S造・木造 T=0.03h 約3.0秒

さらにざっくり当たりをつけるなら、「階数の約1/10秒」という覚え方も便利です。10階建てなら約1秒、30階建てなら約3秒、という感覚です。あくまで概算ですが、現場や試験で桁感を間違えないための目安になります。

なお、この略算式はあくまで簡易式で、低層やブレース構造・壁式構造では実際の周期が略算値より短めに出るなど、ばらつきが大きい点には注意してください。正確な値が必要なら振動解析で部材剛性から求めます。

構造種別ごとの強度・特徴はこちらも合わせてどうぞ。

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ぶっちゃけ、施工管理として最低限押さえたいのは「RCは0.02h、S造は0.03h」「階数÷10で秒の桁感」の2つです。ここまで分かっていれば、構造計算書に出てくる固有周期の値を見て「だいたい妥当か」を肌感覚で判断できます。

共振と長周期地震動

固有周期がいちばん怖い顔を見せるのが「共振」です。建物の固有周期と地震動の周期が一致すると、揺れがどんどん増幅されていきます。

通常の地震では、建物が右に揺れている最中に地面が左へ揺らす力をかけることもあり、力が相殺されて揺れは抑えられます。ところが共振が起きると、いつも揺れを後押しするタイミングで地面と建物が動いてしまい、時間とともに揺れが大きく育ってしまいます。固有周期が近い建物同士は同じ地震で似た被害を受けるのも、この共振が理由です。

ここで問題になるのが長周期地震動です。これは周期が長くゆっくりした地震動で、遠くの巨大地震(南海トラフ地震など)で発生し、減衰しにくく遠方まで届くのが特徴です。固有周期が長い超高層ビルやタワーマンションは、この長周期地震動と共振して、ゆっくり大きく長時間揺れ続けることがあります。一方で、周期1〜2秒程度の成分(キラーパルスと呼ばれる)は低層の木造住宅に大きな被害を与えることが知られています。建物の周期帯によって「効く地震」が違う、というのが重要なポイントです。

超高層建築の特徴はこちらで詳しく解説しています。

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現場目線で言えば、共振は「建物と地震のリズムが合ってしまう事故」とイメージすると本質がつかめます。だからこそ設計では、建物の周期を地震のよく持つ周期帯からずらす、という発想が出てきます。これが次の低減方法の話につながります。

固有周期を使った揺れの低減方法

揺れを抑える考え方は、大きく「固有周期をずらす」か「減衰を足す」かのどちらかに整理できます。耐震・制震・免震は、この観点で見ると役割の違いがはっきりします。

耐震は、建物を硬く・強くして地震に耐える考え方です。剛性kを上げるので固有周期は短くなる方向に働きます。制震(制振)は、建物にダンパー(おもりやオイル機構など)を組み込んで揺れのエネルギーを吸収する方法で、周期そのものより「減衰」を増やして揺れの増幅を抑えます。免震は、建物と地盤の間に積層ゴムなどを入れて、あえて固有周期を長くする方法です。地震の主要な周期帯(おおむね数秒以下)から建物の周期を引き離し、共振を避けるのが狙いで、免震建物は固有周期を4秒以上にとることが多いです。

対策 固有周期への働き 揺れを抑える仕組み
耐震 短くする(硬くする) 建物を強くして耐える
制震(制振) 大きくは変えない ダンパーで減衰を足し揺れを吸収
免震 長くする 地震の周期帯から外して共振回避

免震構造の仕組みはこちらが詳しいです。

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僕の理解では、3つを別々の暗記項目として覚えるより「耐震=周期を短く、免震=周期を長く、制震=減衰を足す」と固有周期の軸で並べると、違いが一発で頭に入ります。タイトルにある低減方法は、結局この周期と減衰の操作に集約される、という捉え方です。

固有周期は一定ではない|固有振動数との違い

最後に誤解しやすい点を2つ整理します。ひとつは「固有周期は不変ではない」こと、もうひとつは「固有振動数は固有周期の逆数」であることです。

「固有」という言葉から一定不変のイメージを持ちがちですが、実際は変わります。地震で建物が変形するとひび割れが入ったり接合部が緩んだりして、硬さ(剛性)が下がります。重さは変わらないまま硬さが下がるので、固有周期は長くなる方向に動きます。損傷後のこうした状態での周期を等価周期と呼びます。コンクリート造では地震後に固有周期が伸びた事例が知られており、建物の傷み具合の指標にもなります。

もう一つ、固有振動数は固有周期の逆数で、「1秒間に何回揺れるか」を表します。固有周期が「一往復にかかる時間」なのに対し、固有振動数は「回数」です。自分で振動するものは固有振動数、誰かに揺すられるものは固有周期、と使い分けると整理しやすいです。

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個人的な感覚では、ここでつまずく人は「固有=固定」と読んでしまうのが原因です。固有周期は「その瞬間の重さと硬さで決まる値」であって、建物が傷めば変わる、と捉え直すと混乱しなくなります。

建物の固有周期に関するよくある質問

固有周期について、現場や試験勉強で迷いやすい質問をまとめました。

自分が関わる建物の固有周期はどう調べればいいですか?
設計段階では構造計算書に固有周期(設計用一次固有周期)が記載されています。ざっくり確認したいだけなら、RC造はT=0.02h、S造はT=0.03h、または階数÷10秒で当たりをつけられます。竣工後の実際の周期は常時微動測定などで計測することもあります。

地盤の周期も建物の揺れに関係しますか?
関係します。やわらかい地盤は長い周期の揺れを増幅しやすく、建物の固有周期と地盤の卓越周期が近いと共振的に揺れが大きくなります。建物単体の周期だけでなく、地盤との組み合わせで揺れが決まる、と捉えておくとよいです。

施工管理技士や建築士試験ではどこが問われますか?
「重さが大きいほど周期は長い・硬いほど短い」という関係、略算式T=h(0.02+0.01α)とRC・S造の係数の違い、共振と長周期地震動の関係、免震が周期を長くして共振を避ける点が頻出です。式の暗記より関係の理解を問う出題が多いです。

建物の固有周期に関する情報まとめ

  • 固有周期とは:建物が一往復して戻るまでの時間(こゆうしゅうき)
  • 計算式:T=2π√(m/k)。重いほど長く、硬いほど短い。周期は硬さの平方根に反比例
  • 略算式:T=h(0.02+0.01α)。RC造=0.02h、S造・木造=0.03h。階数÷10で秒の目安
  • 共振:建物と地震動の周期が一致して揺れが増幅される現象
  • 長周期地震動:超高層が長くゆっくり揺れる原因。1〜2秒のキラーパルスは木造に被害
  • 低減方法:耐震=周期を短く、免震=周期を長く、制震=減衰を足す
  • 固有周期は不変ではない(損傷で長くなる=等価周期)。固有振動数は周期の逆数

以上が建物の固有周期に関する情報のまとめです。

固有周期は「重さと硬さ」という1点を軸にすると、計算式から共振、免震・制震の効き方まで一本でつながります。あわせて免震・制震・超高層の記事も読んでおくと、揺れの全体像がさらに立体的に見えてきます。

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