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建物の固有周期とは?意味、計算式、長周期地震動、共振、低減方法など

  • そもそも固有周期ってなに?
  • 固有振動数とどう違うの?
  • うちのビルは何秒くらいなの?
  • 長周期地震動って固有周期と関係あるの?
  • 共振が起きるとどうなるの?
  • 制震・免震で固有周期は変えられるの?

上記の様な悩みを解決します。

固有周期」は、耐震設計の打ち合わせや制震・免震の説明で必ず出てくる用語です。「この建物の固有周期は0.8秒です」と言われても、それが長いのか短いのか、なぜそれを気にするのかピンと来ない方も多いはず。本記事では、固有周期の意味から、建物別の目安・長周期地震動との関係・低減方法まで、施工管理として施主や職人さんに説明できるレベルで整理しておきます。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

固有周期とは?

固有周期とは、結論「建物を一度揺らしたときに、1往復するのにかかる時間」のことです。

記号はT、単位は秒(s)。建物を地震や風で揺らすと、建物は自分の好きな速さで揺れ続けます。その「好きな速さ」を時間で表したのが固有周期です。

身近なイメージ

  • 短い振り子:素早くカチカチ揺れる → 固有周期が短い
  • 長い振り子:ゆったり揺れる → 固有周期が長い

建物も同じで、低層の硬い建物は周期が短く、高層の柔らかい建物は周期が長くなります。

固有振動数との違い

固有周期と並んで出てくる用語が「固有振動数 f」(単位:Hz)。両者は逆数の関係です。

  • $f = \dfrac{1}{T}$
  • 固有周期 T = 1秒 → 固有振動数 f = 1 Hz
  • 固有周期 T = 2秒 → 固有振動数 f = 0.5 Hz

機械系では振動数(Hz)、建築の地震系では周期(秒)で語るのが慣例。地震応答スペクトルが横軸を周期で描くのも、この慣例に乗っているからです。固有振動数の側からのアプローチはこちらで整理しています。

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なぜ周期を気にするのか

地震の揺れにも「周期」があり、建物の固有周期と地震動の周期が近づくと共振して揺れが何倍にも増幅されます。固有周期は「この建物がどんな地震に弱いか」を示すもっとも基本的な指標、と言っても過言ではありません。

固有周期の計算式

物理的には、1質点系(質量・ばね・減衰の単純化モデル)で考えるのが基本です。

基本式

質量 m、ばね定数 k で、

  • $T = 2\pi \sqrt{\dfrac{m}{k}}$

質量が大きいほど周期は長く、剛性が高いほど周期は短くなります。10階建てくらいまでなら、この1質点系の近似でも実情とそれなりに合います。

略算式(建築基準法 告示の式)

設計実務でよく使われるのが、建築物の高さHから直接Tを出す略算式。

建物の主要構造 固有周期の略算式(H:建物の高さ m)
鉄骨造(S造) $T = 0.03 H$
鉄筋コンクリート造(RC造) $T = 0.02 H$
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) $T = 0.02 H$
木造(在来) およそ $T = 0.02H \sim 0.04H$

S造の方がRC造より周期が長いのは、同じ高さでもS造の方が柔らかいから。「鉄骨は揺れやすい、RCは揺れにくい」という感覚的な現場感とも一致します。

例:30m建物の固有周期

  • S造 30m → T = 0.03 × 30 = 0.9秒
  • RC造 30m → T = 0.02 × 30 = 0.6秒

10階建て程度のビルが0.6〜1.0秒前後に集中するのはこのためです。地震力計算のC₀やAi分布の話と組み合わせて使うので、こちらも参考にしてください。

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建物別の固有周期の目安

具体的な数値感を持っておくと、現場での説明がぐっと楽になります。

用途・規模別の目安

建物の種類 高さの目安 固有周期 T
木造2階建て住宅 6m前後 0.1〜0.3秒
低層RC(3〜5階) 10〜15m 0.2〜0.4秒
中層S造(10階前後) 30〜40m 0.8〜1.2秒
高層ビル(30階前後) 100m前後 2〜3秒
超高層ビル(50階以上) 200m超 5〜6秒

100mを超えるあたりから周期は2秒を超え、長周期地震動の影響を強く受ける領域に入ってきます。タワーマンションの揺れが大きく感じる原因の本体は、ここにあります。

風揺れと地震揺れで効く周期は別物

固有周期は地震だけでなく、強風時の揺れ感にも直結します。超高層では、

  • 地震応答:周期2〜6秒の長周期地震動と共振しやすい
  • 風応答:常時風から台風まで、低い振動数(長い周期)で揺れ続ける

両方を一つの構造で抑える必要があり、制震ダンパーTMD(Tuned Mass Damper)が組み合わされる事情はここから来ています。

周期測定の現場感

竣工後の建物では、常時微動測定で実際の固有周期を測れます。設計値と±10〜20%ズレることはよくあるので、設計時点での想定とのズレは耐震診断や制震計画の見直しに使われます。

共振と長周期地震動

固有周期の話のクライマックスが、共振長周期地震動です。

共振の正体

共振とは、入力(地震動)の周期と、建物の固有周期が一致すると、揺れが増幅されてしまう現象。応答スペクトルで見ると、

  • 入力周期 ≒ 建物固有周期 → 応答倍率は2〜5倍に増幅
  • 入力周期 >> 建物固有周期 → 応答は入力以下
  • 入力周期 << 建物固有周期 → 応答は入力以下

この「入力と建物のリズムが合う」条件をどう外すかが耐震・制震設計の核です。

長周期地震動とは

長周期地震動は、周期2〜10秒の成分が卓越する地震動。プレート境界型の巨大地震(東日本大震災、南海トラフ想定地震など)で発生しやすい特徴があります。

長周期地震動が問題視されるのは、

  • 超高層ビル(固有周期2〜6秒)と共振する
  • 揺れが長時間続き、内部の家具・天井が破損しやすい
  • 震源から遠い首都圏・大阪平野・濃尾平野などの堆積平野で増幅されやすい

2011年の東日本大震災では、震源から700km離れた大阪府咲洲庁舎(高さ約255m)で固有周期約6秒の建物が10分以上揺れ続け、エレベーター閉じ込めや内装損傷が発生しました。これが長周期地震動が一気に注目されたきっかけです。

一般地震動と長周期地震動の違い

区分 卓越周期 影響を受けやすい建物
一般地震動 0.1〜2秒 低層〜中層(戸建〜10階建て)
長周期地震動 2〜10秒 超高層、免震建物、堆積平野上の建物

「うちのビルは何秒で、どんな地震に弱いのか」を一覧で押さえておくと、施主への説明が一気に楽になります。

固有周期の低減・調整方法

「揺らしたい周期と一致させない」が耐震・制震・免震設計の基本戦略です。

剛性を上げて周期を短くする(耐震)

ブレース・耐震壁・SRC化などで剛性kを上げると、$T = 2\pi \sqrt{m/k}$ からTが短くなる
低層〜中層では、長周期地震動の卓越周期から逃げる方向に振れるので有効です。一方で、短周期地震動と共振しやすくなるリスクは残ります。

質量を減らす

軽量化(鉄骨化・乾式間仕切り・軽量屋根)でmを下げると、これもTが短くなる方向。低層住宅では木造化や2×4工法で実現される効果です。

あえて周期を伸ばす(免震)

逆の発想として、ベース部分にゴム・滑り支承を入れて建物全体の周期を3〜5秒に伸ばすのが免震構造。一般地震動の卓越周期(0.1〜2秒)から大きく外せるので、揺れが大幅に低減されます。長周期地震動とは共振しやすくなる弱点がありますが、ダンパーで抑えるのが標準的な解です。

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ダンパーで応答を抑える(制震)

固有周期そのものは大きくいじらず、応答時のエネルギーをダンパーで吸収する方針。オイルダンパー・粘弾性ダンパー・鋼材ダンパー・TMDなどがあり、超高層・既存建物の改修でも採用されます。

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設計手順での扱い

許容応力度設計から保有水平耐力計算まで、固有周期は地震力の出発点になります。Rt(振動特性係数)の式に固有周期Tが入っており、T = 0.5 → Rt = 1.0、T = 2.0 → Rt = 0.5前後と、周期が長くなるほど低層建物に比べ加速度応答は小さくなる、という整理で扱うのが基本です。

層間変形角の検討も、固有周期と応答倍率の組み合わせで成り立っています。

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建物の固有周期に関する情報まとめ

  • 固有周期Tとは:建物を揺らしたときに1往復するのにかかる時間(秒)。固有振動数fの逆数
  • 計算式:1質点系で T = 2π√(m/k)。略算ではS造 T = 0.03H、RC造 T = 0.02H
  • 目安値:木造住宅0.1〜0.3秒、中層S造0.8〜1.2秒、高層ビル2〜3秒、超高層5〜6秒
  • 共振:建物固有周期と地震動の卓越周期が一致すると応答が2〜5倍に増幅
  • 長周期地震動:周期2〜10秒の地震動。超高層・免震建物・堆積平野上の建物が影響を受ける
  • 低減方法:剛性を上げて周期短縮(耐震)、質量を減らす、ベース絶縁で長くする(免震)、ダンパーで応答を抑える(制震)

以上が建物の固有周期に関する情報のまとめです。

固有周期は「建物がどんな揺れに弱いか」を一発で示す指標ですから、現場で「うちのビルは何秒?」と聞かれたら、S造なら高さ×0.03、RC造なら高さ×0.02でざっくり答えられるようになっておくと説明が早いです。長周期地震動の話まで含めると、超高層やタワマン施主への説明にも応用できるので、設備・電気の納まり打ち合わせのトーンも変わってきます。

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