- トランスって結局なに?変圧器と同じ?
- なんで電圧を変えられるのか原理が分からない
- 昇圧・降圧ってどういう仕組み?
- 単相と三相、油入とモールドの違いは?
- キュービクルの中のトランスって何をしてるの?
- トランス容量ってどう決めるの?計算式は?
- 据付や点検で気をつけることは?
- 図面のTとかTrってこれのこと?
上記のような悩みを解決します。
トランス(変圧器)は、電気施工管理が受変電設備で必ず向き合う機器のひとつです。「電圧を変える箱でしょ」とざっくり理解されがちですが、原理と種類、そして現場での容量選定や据付・点検のポイントを押さえないと、キュービクルの設計図を前にして職人さんや電力会社、保安協会と対等に話せません。
今回は、トランスの定義・電磁誘導の原理・巻数比・昇圧降圧といった基礎を100%押さえた上で、現役の電気施工管理目線で「キュービクル内のトランスの役割」「容量選定の計算と判断」「油入とモールドの選び方」「据付・点検で実際にハマるポイント」まで、現場で動く知識として網羅的に整理しました。
なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、電気が専門でない建築・土木の施工管理の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
トランス(変圧器)とは?
トランス(変圧器)とは、結論「電磁誘導を利用して、交流の電圧を上げたり(昇圧)下げたり(降圧)する機器」のことです。英語の Transformer が語源で、日本語では「変圧器」と呼びます。図面上では文字記号「T」または「Tr」で表されます。
身近なところでは、電柱の上に乗っているポリバケツのような「柱上変圧器」が代表例で、6,600Vの電気を一般家庭で使える100V/200Vまで落としています。ノートパソコンのACアダプターの中にも小さなトランスが入っていますし、工場やビル、商業施設の屋外にあるキュービクル(高圧受電設備)の中にも、6,600Vを200V/100Vに落とす電力用変圧器が必ず入っています。
つまりトランスは「電子部品レベルの小さなもの」から「受変電設備の主役級の大きなもの」まで、サイズも用途も幅広い機器です。ネット上の解説記事は「電子部品としてのトランス(基板に乗る小型のもの)」を中心に書かれたものが多いのですが、施工管理が現場で向き合うのは圧倒的に後者、つまりキュービクル内の電力用変圧器です。この記事は、基礎を押さえた上で後半はこの「現場のトランス」に軸足を置いて解説していきます。
キュービクルや受電全体の整理はこちらが詳しいです。

僕の感覚だと、トランスは「電圧を、その先で使う機器に合った高さに揃えるための機器」と覚えておくと整理しやすいです。新人の頃は「変圧器=なんか電気を変える箱」くらいの理解でしたが、「揃える」という言葉で捉え直してから、なぜ送電は高圧で、末端は低圧なのかが腑に落ちました。
トランスが必要な理由|「変圧」と「絶縁」の2つの役割
トランスの役割は、結論「①電圧を変える(変圧)」と「②回路を電気的に切り離す(絶縁)」の2つです。多くの人は①しか意識していませんが、現場では②の絶縁も同じくらい重要です。
まず①の変圧について。発電所で作られた電気は、送電ロスを減らすために数万〜数十万Vまで昇圧されて送られます。電圧が高いほど同じ電力を少ない電流で送れて、電線での損失(ジュール熱)が小さくなるからです。ただし高い電圧のままでは危険で機器も壊れるので、変電所→柱上変圧器→キュービクルと段階的に降圧して、最終的に200V/100Vにして使います。この「段階的に電圧を揃える」役を全部トランスが担っています。
次に②の絶縁について。トランスの一次側(入力)と二次側(出力)は、コイル同士が電線で直接つながっておらず、磁気を介してエネルギーだけが渡ります。だから一次側と二次側を電気的に分離(絶縁)できます。これにより感電防止やノイズ遮断ができるため、医療機器や精密機器の電源には「絶縁トランス」がわざわざ使われます。
| 役割 | 内容 | 現場での意味 |
|---|---|---|
| 変圧 | 電圧を昇圧・降圧する | 6,600V→210V/105Vに落として現場で使える電気にする |
| 絶縁 | 一次側と二次側を電気的に分離 | 感電防止・ノイズ遮断・地絡時の保護範囲の切り分け |
僕としては、現場で「なんでここにトランスが要るの?」と職人さんに聞かれたとき、「電圧を落とすため」だけでなく「一次と二次を切り離すため」という絶縁の観点も即答できると一段信頼されると感じます。特に制御回路用の絶縁トランスは「電圧は変えないのに入ってる」ケースがあって、ここで絶縁の役割を知らないと「なんでこれ要るの?」に答えられません。
トランスの仕組み・原理|ファラデーの電磁誘導の法則
トランスが電圧を変えられるのは、結論「ファラデーの電磁誘導の法則」を使っているからです。難しく聞こえますが、現場で説明できるレベルに噛み砕くと次の流れです。
トランスの中身は、鉄心(コア)に「一次コイル」と「二次コイル」の2つのコイルを巻きつけた構造になっています。この2つのコイルは電線でつながっていません。
- 一次コイルに交流電圧をかけると、コイルに電流が流れる
- その電流が鉄心の中に「磁束(磁力線の束)」を発生させる
- 交流なので磁束は向きと大きさが常に変化し続ける
- 変化する磁束が二次コイルを貫くと、二次コイルに電圧(誘導起電力)が生まれる
この「磁束が変化すると、それを貫くコイルに電圧が生まれる」現象がファラデーの電磁誘導の法則です。鉄心は、発生した磁束を漏らさず効率よく二次コイルに届けるための「磁束の通り道」の役割をしています。
僕の感覚だと、ここは「水車」のイメージで説明すると職人さんにも伝わりやすいです。一次コイルが水流を起こし、鉄心がその流れを二次コイルまで導く水路で、二次コイルが水車として回って電気を生む。直接水(電気)を渡すんじゃなくて、流れ(磁束)を介して力を渡している、という絵が描けると一気に腑に落ちます。
巻数比で電圧が決まる|昇圧・降圧と電流の関係
トランスの電圧の変換比は、結論「一次コイルと二次コイルの巻き数の比(巻数比)」で決まります。式にすると次の通りです。
V1 : V2 = N1 : N2
- V1:一次側電圧、V2:二次側電圧
- N1:一次側コイルの巻き数、N2:二次側コイルの巻き数
二次側の巻き数が多ければ電圧は上がり(昇圧)、少なければ下がります(降圧)。例えば一次:二次の巻き数が2:1なら、電圧は半分になります。6,600Vを210Vに落とすトランスなら、巻数比はおよそ31.4:1です。
ここで現場的に超重要なのが「電力は一次側と二次側でほぼ等しい(P=V×Iが保存される)」という点です。電圧を下げると、その分だけ電流は増えます。
| 項目 | 関係式 | 意味 |
|---|---|---|
| 電圧比 | V1:V2 = N1:N2 | 巻き数の比で電圧が決まる |
| 電流比 | I1:I2 = N2:N1 | 電圧と逆。降圧すると二次電流は増える |
| 電力 | P1 ≒ P2 | 一次と二次で電力はほぼ一定(損失分だけ減る) |
僕としては、新人にトランスを教えるときこの「降圧したら電流は増える」を一番強調します。理由は、二次側の電流が増えるからこそ、二次側のケーブルは太く、ブレーカー(遮断器)の定格も大きくなるからです。6,600V側の電線は細いのに、210V側の幹線がやたら太いのは、電流が31倍に増えているからです。ここを理解していないと、二次側の幹線サイズやブレーカー選定の話についていけません。
電圧降下やケーブル選定の話はこちらも参考になります。

なぜトランスは交流でしか動かないのか
トランスは、結論「直流では動作しません」。理由は、電磁誘導が「磁束の変化」によって電圧を生む仕組みだからです。
交流は電流の向きと大きさが常に変化するので、鉄心の中の磁束も常に変化し続けます。だから二次コイルに電圧が生まれ続けます。一方、直流は流れが一定なので、最初に電源を入れた一瞬を除いて磁束が変化しません。磁束が変化しないと二次側に電圧は生まれず、トランスとして機能しないのです。
だから「直流の電圧を変えたい」ときはトランスではなく、DC/DCコンバーターという別方式の機器を使います。
僕の感覚だと、これは「トランスは交流専用」とだけ覚えておけば現場では十分です。ただ「なぜ?」と聞かれたときに「直流だと磁束が変化しないから二次側に電圧が出ない」と一言添えられると、理解の深さが伝わります。最近は太陽光やEV絡みで直流の話も増えてきたので、交流専用という前提を押さえておくと混乱しません。
トランスの種類|単相/三相・複巻/単巻・油入/モールド
トランスは分類軸が複数あって混乱しがちですが、施工管理が押さえるべき軸は、結論「①相数(単相/三相)」「②巻線構造(複巻/単巻)」「③冷却・絶縁方式(油入/モールド・乾式)」の3つです。
単相変圧器と三相変圧器
| 種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 単相変圧器 | 構造がシンプルで安価。容量は小さめ | 電灯・コンセント(100V/200V)、制御電源 |
| 三相変圧器 | 送電効率が良く大容量向き | 動力(三相200V)、空調・ポンプ・エレベーター等 |
ビルや工場のキュービクルでは、照明・コンセント用の「単相変圧器(電灯トランス)」と、動力機器用の「三相変圧器(動力トランス)」の2台を載せるのが基本構成です。電灯と動力で系統を分けるからです。動力配線の話はこちらが詳しいです。

複巻変圧器と単巻変圧器
- 複巻(絶縁)変圧器:一次と二次が電気的に分離されている標準タイプ。絶縁できるので安全。受変電のトランスはほぼこれ
- 単巻変圧器:一次と二次がコイルの一部を共有する非絶縁タイプ。小型・安価だが絶縁できない。電圧を少しだけ変える用途(200V↔210V等)に使う
油入変圧器とモールド(乾式)変圧器
ここが施工管理にとって一番実務に効く分類です。詳しくは後の「選び方」の章で深掘りします。
| 種類 | 冷却・絶縁 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| 油入変圧器 | 絶縁油で冷却・絶縁 | 冷却性能が高く大容量向き、安価 | 油の管理が必要、火災リスク、重い |
| モールド変圧器 | エポキシ樹脂で絶縁、空冷 | 火災リスク低、保守が楽、屋内向き | 高価、騒音やや大、過負荷に弱い |
僕としては、種類の暗記そのものより「この現場のこのトランスは、単相か三相か、油入かモールドか」を図面と実物で結びつけて覚えるのが一番だと感じます。新人の頃に種類の表を丸暗記しようとして全然頭に残らず、結局キュービクルの扉を開けて「これが動力の油入トランスね」と実物で確認してから一気に覚えました。
トランスの構成部品|鉄心・巻線・絶縁
トランスは、結論「鉄心(コア)・巻線(コイル)・絶縁材料」の3要素で構成されています。性能・サイズ・コストはこの3つの組み合わせで決まります。
- 鉄心(コア):磁束の通り道。商用周波数(50/60Hz)の電力用トランスでは珪素鋼板が主流。アモルファス鉄心にすると待機損失(無負荷損)が小さく省エネになる
- 巻線:銅線が一般的。軽量化のためアルミ線を使うこともある。一次巻線と二次巻線がある
- 絶縁材料:巻線間・巻線と鉄心間を絶縁する。油入なら絶縁油、モールドならエポキシ樹脂、その他に絶縁紙やワニスなど。耐熱クラス(A種〜H種)で許容温度が決まり、寿命を左右する
僕の感覚だと、施工管理として構成部品で意識すべきは「鉄心材料による省エネ性能」と「絶縁の耐熱クラス」の2点です。前者は後述するトップランナー基準(省エネ法)に直結し、後者は据付後の温度管理・寿命に効いてきます。部品名を全部覚える必要はなく、「鉄心で損失が決まり、絶縁で寿命が決まる」とだけ押さえておけば実務では困りません。
【現場の本丸】キュービクル内のトランスの役割
電気施工管理にとってのトランスの本丸は、結論「キュービクル(高圧受電設備)の中で、6,600Vを210V/105Vに落とす電力用変圧器」です。ネット記事の多くが電子部品トランスの話で終わるなかで、ここが現場の実態です。
工場・ビル・商業施設など、契約電力が原則50kW以上の施設は、電力会社から6,600Vの高圧で受電し、キュービクルの中で自前で降圧して使います。このキュービクルの中で主役を張っているのがトランスです。受電の流れは「電力会社→引込→PAS(区分開閉器)→VCB等の遮断器→トランス→低圧の分電盤・動力盤」という順で、トランスが「高圧側と低圧側の境目」になります。
キュービクルそのものの解説はこちら。

受電全体の流れはこちらが詳しいです。

僕の感覚だと、トランスを「キュービクルの心臓」と捉えると、PASやVCB、計器用変成器(VT・CT)、力率改善用のコンデンサといった周辺機器がなぜ必要かが芋づる式に理解できます。トランスの一次側を守るのがPASや遮断器、トランスの効率を上げるのがコンデンサ(力率改善)、計測のために電圧電流を落とすのがVT・CT、という具合に、全部トランスを中心に役割が決まっているからです。
力率改善やコンデンサの話はこちらも合わせてどうぞ。


【施工管理の実務①】トランス容量の選定と計算
トランス容量の決め方は、結論「設備容量を力率と需要率で補正し、余裕を持たせて標準容量から選ぶ」です。ここが競合記事のほとんどが触れていない、施工管理が一番知りたいところです。
基本の考え方は次の式です。
必要容量[kVA] = 設備容量[kW] ÷ 力率 × 需要率
- 設備容量:その系統につながる機器の合計容量
- 力率:おおむね0.8〜0.9で計算(改善後は0.95程度)
- 需要率:全機器が同時にフル稼働する訳ではないので割り引く係数(用途により0.5〜0.8程度)
計算で出た値そのままではなく、必ず余裕(10〜20%程度)を持たせて、トランスの標準容量(…75・100・150・200・300・500kVA…)から1つ上を選びます。例えば計算値が260kVAなら、標準の300kVAを選ぶイメージです。
単相と三相で容量の出し方が違う点も要注意です。
- 単相:容量[VA] = 電圧[V] × 電流[A]
- 三相:容量[VA] = √3 × 電圧[V] × 電流[A]
僕としては、容量選定は「大きすぎても小さすぎてもダメ」というのが現場の肌感覚です。小さいと過負荷で焼けるリスクや増設時に困る一方、大きすぎると無負荷損(待機電力)が無駄に増えてランニングコストが上がり、初期コストも嵩みます。新人の頃、将来の増設を見越して安易に大きめを選んだら、先輩から「無負荷損で毎月電気代を捨てることになる」と指摘されて、余裕率の取り方が雑だったと反省しました。負荷率が低すぎるトランスは効率が悪い、という視点を持つと選定の精度が上がります。
電力会社との契約区分(低圧・高圧・特別高圧)の話はこちら。

【施工管理の実務②】油入トランス vs モールドトランスの選び方
油入とモールド、どちらを選ぶかは、結論「設置場所(屋内か屋外か)・火災リスク・容量・コスト・保守体制」で判断します。ここも現場の意思決定そのものです。
| 判断軸 | 油入変圧器が有利 | モールド変圧器が有利 |
|---|---|---|
| 設置場所 | 屋外キュービクル | 屋内変電室・地下・ビル内 |
| 火災リスク | (油があるため不利) | 樹脂絶縁で延焼しにくい |
| 容量 | 大容量に強い | 中小容量向き |
| コスト | 安い | 高い(油入の1.5〜2倍程度) |
| 保守 | 絶縁油の劣化管理が必要 | 油管理不要で楽 |
| 騒音・環境 | 比較的静か | やや音が大きい場合がある |
ざっくりした使い分けの目安は、「屋外設置・大容量・コスト重視なら油入」「屋内設置・防災重視・保守を楽にしたいならモールド」です。特にビル内の電気室や地下に置く場合は、消防法・建築基準法の観点から火災リスクの低いモールドが選ばれるケースが増えています。
僕の感覚だと、設計段階で「なんとなく前例踏襲」でトランスの種類が決まっているケースが多いのですが、ここは設置場所の防災要件とライフサイクルコストで一度立ち止まって考える価値があります。屋内なのに油入を選んで防油堤や消火設備の追加でかえって高くついた、という話も聞きます。種類選定は本体価格だけでなく、付帯設備と保守までトータルで見るのが施工管理の腕の見せどころです。
【施工管理の実務③】据付・点検で気をつけること
トランスの据付・点検で外せないポイントは、結論「離隔距離・換気と温度上昇・騒音・絶縁の健全性」の4つです。机上の知識だけでは現場で事故ります。
据付段階で気をつけること。
- 搬入経路と重量:大容量の油入は数百kg〜トン級。搬入ルートと荷重、基礎の強度を事前確認
- 離隔距離:充電部からの保安距離、点検スペース、壁からの離れを確保(キュービクルの離隔は消防・保安規程に従う)
- 換気・温度:トランスは発熱するので、変電室は十分な換気が必要。温度上昇は寿命に直結
- 水平・基礎:油入は傾けると油面・冷却に影響。基礎の水平と固定をきちんと
点検(運用段階)で気をつけること。
- 年次点検:自家用電気工作物は保安規程に基づき定期点検が必要。停電作業を伴う
- 絶縁抵抗測定:絶縁の劣化を絶縁抵抗計で確認。値が下がっていれば要注意
- 油入なら油の確認:油面・油温・油の劣化(必要に応じ絶縁油の試験)
- 異音・異臭・温度:うなり音の増大や焦げ臭は異常のサイン
年次点検や絶縁抵抗測定の詳細はこちらが参考になります。


僕としては、トランスは「一度据えたら20年は使う長寿命機器」なので、据付時の換気と離隔を妥協しないことが何より大事だと感じます。新人の頃、変電室の換気がギリギリの現場で夏場にトランスの温度が上がり、ヒヤッとした経験があります。図面上はOKでも、実際の熱のこもり方は現場でしか分からない。据付前に換気計画を一度自分の目で確認する癖をつけてから、温度トラブルがほぼ無くなりました。
なお、トランスは省エネ法の「トップランナー基準」の対象機器で、近年の更新ではアモルファス鉄心などの高効率トランスが選ばれる傾向があります。更新提案の際は省エネ性能も判断材料になります。
図面でのトランスの見方|文字記号TとTr
図面上のトランスは、結論「文字記号『T』または『Tr』」で表されます。単線結線図(単線図)では、受電の流れの中で高圧側と低圧側の境目に描かれます。
単線図では、PAS→遮断器→トランス→低圧母線、という縦の流れの中で、トランスの記号の脇に「6.6kV/210V」「300kVA」「Dyn11(結線・ベクトル群)」といった仕様が併記されます。三相の結線方式(デルタ・スターなど)もここで読み取ります。
単線図と複線図の違い、電気図面の読み方はこちらが詳しいです。

僕の感覚だと、図面のトランス記号は「ここで電圧が切り替わる」という目印として読むのがコツです。記号の上が6,600V、下が210V/105Vと頭の中で色分けできると、単線図全体が「高圧ゾーンと低圧ゾーン」に分かれて見えてきて、保護協調や幹線サイズの話が一気に読みやすくなります。
トランスに関する情報まとめ
- 定義:電磁誘導を利用して交流電圧を昇圧・降圧する機器。図記号はT/Tr
- 役割:①変圧(電圧を揃える)と②絶縁(一次と二次を電気的に分離)の2つ
- 原理:ファラデーの電磁誘導の法則。鉄心の磁束変化で二次コイルに電圧が生まれる
- 巻数比:V1:V2=N1:N2。降圧すると電流は増える(電力は一定)
- 交流専用:直流は磁束が変化しないので動かない。直流はDC/DCコンバーター
- 種類:単相/三相・複巻/単巻・油入/モールドの3軸で整理
- 構成部品:鉄心(損失を決める)・巻線・絶縁材料(寿命を決める)
- 現場の本丸:キュービクル内で6,600V→210V/105Vに落とす電力用変圧器
- 容量選定:設備容量÷力率×需要率に余裕を持たせ標準容量から選ぶ。大きすぎは無負荷損の無駄
- 種類選定:屋外・大容量・コスト重視なら油入、屋内・防災・保守重視ならモールド
- 据付点検:離隔・換気と温度・絶縁抵抗・油の管理。年次点検は停電作業
- 図面:単線図で高圧側と低圧側の境目に描かれ、容量・電圧・結線が併記される
以上がトランスに関する情報のまとめです。
トランスは「電圧を変える箱」と一言で済ませられがちですが、施工管理として向き合うと、原理・容量選定・種類選定・据付・点検と、押さえどころが幅広い機器です。基礎の電磁誘導と巻数比を押さえた上で、キュービクル内の電力用変圧器として容量・種類・据付を判断できるようになると、受変電設備まわりで電力会社や保安協会、職人さんと対等に話せるようになります。PASやVCB、コンデンサ、VT・CTといった周辺機器も、トランスを中心に役割を捉えると一気に整理がつくはずです。
電気施工管理として受変電やキュービクルまで分かるようになると、扱える現場の幅が広がり、年収やキャリアの選択肢も変わってきます。「今の現場でもっと電気設備のスキルを伸ばしたい」「設備に強い現場で経験を積みたい」と感じているなら、施工管理の求人を一度のぞいてみるのもおすすめです。
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トランスに関するよくある質問
Q1:トランスと変圧器は何が違うんですか?
結論、同じものです。「トランス(Transformer)」を日本語にしたのが「変圧器」で、呼び方が違うだけで指している機器は同一です。現場では「トランス」、図面や仕様書では「変圧器」、文字記号では「T」「Tr」と、場面で呼び方が変わるだけなので、全部同じと考えて大丈夫です。
Q2:なぜトランスは電圧を変えられるのに、勝手に電力が増えたりしないんですか?
電力(P=電圧×電流)は一次側と二次側でほぼ一定に保たれるからです。電圧を半分に下げると、その分だけ電流が2倍になり、かけ算した電力は変わりません。トランスは「電圧と電流の配分を変える」機器であって、電力そのものを増やす機器ではありません。実際には鉄心や巻線で多少の損失が出るので、二次側の電力は一次側よりわずかに小さくなります。
Q3:キュービクルの中にトランスはいくつ入っているんですか?
施設の構成によりますが、基本は「電灯用の単相変圧器」と「動力用の三相変圧器」の2台構成が多いです。照明・コンセント系統(単相100V/200V)と、空調・ポンプ・エレベーターなどの動力系統(三相200V)で系統を分けるためです。負荷が大きい施設では、それぞれを複数台にしたり、容量を増やしたりします。
Q4:トランス容量はどうやって決めればいいですか?
「設備容量[kW]÷力率×需要率」で必要容量を計算し、10〜20%程度の余裕を見て、トランスの標準容量から1つ上を選ぶのが基本です。力率は0.8〜0.9、需要率は用途に応じて0.5〜0.8程度で見ます。大きすぎると無負荷損(待機電力)で電気代が無駄になり、小さすぎると過負荷リスクや増設時に困るので、余裕率の取り方がポイントです。
Q5:油入トランスとモールドトランス、どちらを選べばいいですか?
設置場所と防災要件で判断します。屋外設置・大容量・コスト重視なら油入、屋内(特にビル内電気室や地下)・火災リスクを抑えたい・保守を楽にしたいならモールド、が基本の使い分けです。モールドは本体価格が油入の1.5〜2倍程度しますが、油の管理が不要で延焼しにくいため、屋内設置では付帯設備込みのトータルコストで有利になることもあります。
Q6:トランスは点検が必要ですか?
必要です。キュービクル(自家用電気工作物)のトランスは、保安規程に基づいて定期点検(月次・年次)が義務付けられています。年次点検は停電作業を伴い、絶縁抵抗測定や外観・温度・異音の確認、油入なら絶縁油の確認などを行います。点検は電気主任技術者の管理のもとで実施します。
Q7:トランスはなぜ「ブーン」とうなり音がするんですか?
鉄心が磁束の変化に合わせてわずかに伸縮する「磁歪(じわい)」という現象が主な原因です。商用周波数(50/60Hz)に対応した低い唸り音が出ます。正常な範囲のうなりは問題ありませんが、音が急に大きくなった場合は過負荷や鉄心のゆるみなど異常のサインのこともあるので、点検時の確認ポイントになります。屋内設置で騒音が気になる場合は、防振対策や設置場所の検討が必要です。
Q8:電気が専門じゃない建築・土木の施工管理でも、トランスは理解しておくべきですか?
最低限の役割は理解しておくと現場で役立ちます。建築の施工管理でも、キュービクルの据付位置・基礎・搬入経路・変電室の換気は建築側の調整事項になりますし、電気業者との打ち合わせで「このトランスの容量と種類」が話題に出ます。原理の細部まで覚える必要はありませんが、「電圧を落とす機器で、容量と設置場所で種類が決まり、発熱するから換気が要る」くらいを押さえておくと、電気業者と話が噛み合うようになります。
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