- 安衛法って結局なにを決めてる法律?労基法とどう違う?
- 元請と下請、どっちにどんな義務がかかるの?
- 統括安全衛生責任者って何人の現場から要るんだっけ?
- 下請に是正の指示を出していい根拠は?
- 違反したら罰せられるのは会社?現場の担当者?
- 改正で一人親方(個人事業者)や発注者の扱いはどう変わった?
上記の様な悩みを解決します。
労働安全衛生法とは、労働災害を防ぐための危害防止基準と責任体制を定め、事業者に義務を課す法律です。建設現場では、一定規模以上の現場で元請が統括安全衛生責任者を選任し、規模にかかわらず下請への是正の指示も担います。違反の罰則は罰金(一部は拘禁刑も)で、行為者個人にも会社にも及びます。令和7年法律第33号の改正は2025年5月14日の公布日から令和9年(2027年)4月1日にかけて段階的に施行されています(一部は政令で定める日。労働安全衛生法第1条・第15条・第29条・第122条、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認/施行日は厚生労働省 基発0514第1号)。
「労働安全衛生法」で調べると、上位には会社の総務や労務の担当者に向けた解説が並び、健康診断やストレスチェックの話が中心になりがちです。ところが建設現場で問われるのは、同じ現場に元請と何次もの下請が入ったときに、誰が誰を選任し、誰が誰に指示を出すのか、という請負の段ごとの話なんですよね。今回は法律の目的・管理体制・教育・罰則・改正といった基本を押さえた上で、「何人から」が法律本体ではなく施行令に書かれているという読み方、元請が下請に是正を指示する条文上の根拠、罰金だけの違反と拘禁刑まである違反の対応表、改正の施行日を施行済みとこれからに分けた一覧まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、協力会社から「それは安衛法のどこに書いてあるの?」と聞かれて詰まったことがある方にも、読み進めやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
そもそも労働安全衛生法とは?労働災害を防ぐ最低基準と事業者の責務
労働安全衛生法は、働く人がけがをしたり病気になったりしないように、事業者が守るべき最低限の基準と、そのための責任の持ち方を決めた法律です。「安衛法って労基法と何が違うの?」という疑問には、第1条の書き出しがそのまま答えになっています。
法令番号は昭和47年法律第57号です。第1条は、この法律が「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて」働くものだと書いたうえで、危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進といった措置を通じて、職場の労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的に掲げています(労働安全衛生法第1条、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。労基法と張り合う別の法律ではなく、2つが組になって働く人を守る位置づけだと読めます。
守る相手の範囲も労基法から借りています。第2条は「労働者」を労働基準法第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業に使用される者などを除く)と定義し、「事業者」は事業を行う者で労働者を使用するもの、「労働災害」は就業に関わる建設物・設備・原材料などや作業行動その他業務に起因して労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること、としています(労働安全衛生法第2条第1号〜第3号、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。義務を負う主語が「事業者」、つまり会社や個人事業主の側に置かれているのが、この法律の読み方の出発点です。
もう1つ押さえておきたいのが第3条第1項です。事業者は「単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく」、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない、とされています(労働安全衛生法第3条第1項、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。法律が決めているのはあくまで下限で、そこを満たせば終わりという書き方にはなっていません。
法律の本体は第一章 総則から第十二章 罰則までで、第七章と第八章の間に第七章の二が入ります(e-Gov法令検索 労働安全衛生法 目次・2026年11月7日確認)。この記事で扱う話は、章の名前でいうと次のあたりに当たります。
- 第三章 安全衛生管理体制
- 第四章 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置
- 第六章 労働者の就業に当たつての措置
- 第十章 監督等
- 第十二章 罰則
条文を読むときに迷いやすいのが、法律・施行令・規則の3層の関係です。たとえば第10条は総括安全衛生管理者について「政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより」選任すると書いていて、何人の事業場から要るかは政令(労働安全衛生法施行令)に、選任の手続きは省令(厚生労働省令)に任されています。実際に建設業の「百人」が出てくるのは施行令第2条の側です(労働安全衛生法第10条・労働安全衛生法施行令第2条、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。条文を引いても人数や時間が見つからないときは、法律ではなく施行令か規則を開く、と覚えておくと探す場所を間違えません。所管する役所を名指しした一文は条文にありませんが、報告を求める主体として厚生労働大臣が出てきます(同法第100条第1項)。
なお、名前の似た建設業法とは別の法律で、建設業法の中身は建設業法の要点をまとめた記事に分けています。省令の側、つまり労働安全衛生規則の条番号を現場で引きたいときはパトロールで指摘されやすい安衛則の条を逆引きした記事が近道です。
建設現場の安全衛生管理体制|統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者・安全衛生責任者
建設現場の管理体制は、「一の場所」(同じ現場)ごとに選ぶ人と、会社の事業場ごとに選ぶ人の2系統に分かれています。元請と下請のどちらに義務がかかるかも、この2系統を分けると見通せます。
まず登場人物を整理します。第15条は、一の場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者を「元方事業者」と呼び、請負契約が何段にもなるときは最も先次の請負契約の注文者、つまり元請がこれに当たるとしています。そのうち建設業その他政令で定める業種の事業を行う者が「特定元方事業者」で、政令で足されている業種は造船業です(労働安全衛生法第15条第1項・労働安全衛生法施行令第7条第1項、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。建設の元請は、そのまま特定元方事業者になると読めます。
一の場所ごとに選ぶ人は、次の表のとおりです(労働安全衛生法第15条・第15条の2・第15条の3・第16条、労働安全衛生法施行令第7条第2項、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。
| 選ぶ人 | 根拠 | 選ぶ義務がある者 | 人数の線 | 主な役割 |
|---|---|---|---|---|
| 統括安全衛生責任者 | 法第15条・施行令第7条第2項 | 特定元方事業者(元請) | ずい道等の建設、厚生労働省令で定める場所での橋梁の建設、圧気工法の仕事は常時30人。それ以外は常時50人(作業従事者の数) | 元方安全衛生管理者の指揮、第30条第1項各号の事項の統括管理 |
| 元方安全衛生管理者 | 法第15条の2 | 統括安全衛生責任者を選任した建設業等の事業者 | 統括安全衛生責任者を選任した場合 | 第30条第1項各号の事項のうち技術的事項の管理(厚生労働省令で定める資格者から選任) |
| 安全衛生責任者 | 法第16条 | 統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、仕事を自ら行うもの(下請) | 統括安全衛生責任者が選任される場合 | 統括安全衛生責任者との連絡など |
| 店社安全衛生管理者 | 法第15条の3 | 建設業の元方事業者 | 統括安全衛生責任者の選任義務が無い場所が対象。人数は厚生労働省令で定める | この記事では扱わない |
数え方で気をつけたいのは、30人・50人が元請の社員だけの数ではない点です。第15条は、元請の労働者である作業従事者に加えて、関係請負人(後次の全ての請負契約の請負人を含む)に係る作業従事者が作業を行うときを対象にしていて、ただし書で「これらの作業従事者の数が政令で定める数未満であるとき」は選任しなくてよい、としています(労働安全衛生法第15条第1項、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。朝礼に並ぶ下請各社の人数まで足して線を超えるかどうかを見る、というイメージです。
もう1つの系統が、会社の事業場ごとに選ぶ人です。こちらは現場の作業従事者ではなく、その事業場が常時使用する労働者の数で線が引かれています(労働安全衛生法第10条、労働安全衛生法施行令第2条〜第4条、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。
- 総括安全衛生管理者:法第10条。建設業は常時100人以上の労働者を使用する事業場(施行令第2条第1号)
- 安全管理者:施行令第3条。常時50人以上(建設業を含む業種)
- 衛生管理者:施行令第4条。常時50人以上
「総括」と「統括」は一字違いで混ざりやすいのですが、総括安全衛生管理者は事業場単位、統括安全衛生責任者は一の場所(現場)単位と、数える単位そのものが違います。作業従事者の数が施行令第7条の線(ずい道等の建設・一定の場所の橋梁の建設・圧気工法の3つの仕事は30人、それ以外は50人)に届かない現場では統括安全衛生責任者の選任は要りませんが、それで元請の義務がなくなるわけではありません。次の節の第29条には人数の条件が書かれていないからです。
元方事業者と特定元方事業者の義務|下請への是正指示と協議組織
「是正の指示を下請に出していいの?」という疑問への答えは、出してよいどころか、違反を認めたら出さなければならない、です。根拠は第29条にあります。
第29条第1項は、元方事業者に、関係請負人と関係請負人に係る作業従事者が法律や命令に違反しないよう必要な指導を行う義務を課しています。続く第2項は、元方事業者は関係請負人又はその作業従事者が違反していると認めるときは「是正のため必要な指示を行わなければならない」とし、第3項は指示を受けた側は「当該指示に従わなければならない」としています(労働安全衛生法第29条第1項〜第3項、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。ここで引いた第2項・第3項は令和8年4月1日施行の改正後の文言で、是正の指示の相手が「関係請負人に係る作業従事者」まで含む書き方になっています(厚生労働省 基発0514第1号 第1 Ⅰ1(7))。この条は特定元方事業者ではなく元方事業者が主語なので、前の節の30人・50人に届かない現場でもかかります。
建設業の元請には、場所に着目した義務も別にあります。第29条の2は、建設業に属する事業の元方事業者に対し、土砂等が崩壊するおそれのある場所、機械等が転倒するおそれのある場所その他の厚生労働省令で定める場所で関係請負人に係る作業従事者が作業を行うときは、関係請負人が講ずべき危険防止の措置が適正に講ぜられるように、技術上の指導その他の必要な措置を講じなければならない、としています(労働安全衛生法第29条の2、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。掘削の法面や重機の据付け位置のように、下請任せにしておくと危ない場所ほど、元請が指導する側に立つという作りです。
特定元方事業者になると、現場全体を回すための措置が加わります。第30条第1項は、元請と関係請負人の作業従事者の作業が同じ場所で行われることによる労働災害を防ぐため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならないとしています(労働安全衛生法第30条第1項、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。
- 協議組織の設置及び運営
- 作業間の連絡及び調整
- 作業場所の巡視
- 関係請負人が行う安全衛生教育に対する指導及び援助
- 仕事を行う場所が仕事ごとに異なることを常態とする業種で厚生労働省令で定めるものでは、工程の計画と機械・設備等の配置の計画の作成と、その機械・設備等を使う作業についての指導
- 以上のほか労働災害を防止するため必要な事項
統括安全衛生責任者が統括管理するのは、この第30条第1項各号の事項です(同法第15条第1項)。安全書類の束を「法律で決まった様式」として見るより、その書類が協議組織・連絡調整・巡視・教育の指導のどれをやったかを残すものなのかを考えると、協力会社に説明するときの筋が通ります。ここで引いた条文には、書類の様式までは書かれていません。
反対に、注文する側がやってはいけないことも決まっています。第31条の4(違法な指示の禁止)第1項は、注文者は請負人に対し、その指示に従って作業すれば法律や命令に違反することになる指示をしてはならない、としています(労働安全衛生法第31条の4第1項、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認、厚生労働省 基発0514第1号 第1 Ⅰ1(12))。主語は「注文者」で、元請に限られていません。是正を指示する義務と、違法な指示をしない義務が対になっていると捉えると、元請と下請の関係が整理しやすいはずです。
教育・選任・就業制限の線引き|特別教育・職長等の教育・作業主任者・免許
職長教育や特別教育、作業主任者、免許はどれも安衛法に根拠がありますが、条が違い、事業者に求めていることも違います。混ざりやすいので、条ごとに1つの表に並べます(労働安全衛生法第14条・第59条・第60条・第61条、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。
| 根拠 | 対象 | 事業者に求めていること | 細目の置き場所 |
|---|---|---|---|
| 第59条 | 雇い入れた労働者。第2項で作業内容を変更したときにも準用(特別教育も同じ条に置かれている) | その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行う | やり方は厚生労働省令 |
| 第60条 | 新たに職務につく職長その他作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く) | 作業方法の決定・労働者の配置、指導又は監督の方法などについて教育を行う | 業種は政令、やり方は厚生労働省令 |
| 第14条 | 高圧室内作業その他の政令で定める作業 | 免許を受けた者又は技能講習を修了した者から作業主任者を選任し、作業者の指揮などを行わせる | 作業は政令、選任の方法は厚生労働省令 |
| 第61条 | 政令で定める業務(条文はクレーンの運転を例に挙げる) | 免許・技能講習修了などの資格を持つ者でなければその業務に就かせない | 業務は政令、資格は厚生労働省令 |
表を縦に読むと、性格の違う3本の線があることが分かります。
- 教育の線(第59条・第60条):事業者が働く人に教える義務。受けた人が資格を持つ形ではない
- 選任の線(第14条):資格を持つ人の中から、その作業の指揮役を置く義務
- 就業制限の線(第61条):資格が無い人をその業務に就かせてはいけない義務
現場で「職長教育」と呼ばれているのは第60条の教育で、条文の括弧書きで作業主任者は対象から外されています。作業主任者は第14条で選任される別の仕組みなので、同じ作業名が付いていても、特別教育を受けた人と作業主任者は立場が違います(労働安全衛生法第14条・第60条、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。特別教育の対象業務や受けた記録の残し方は特別教育の解説で、どの作業に作業主任者が要るかは作業主任者の解説で、それぞれ条文から追っています。
新人に何から教えるかで迷ったら、僕の感覚だと、個別の資格名を覚えさせる前に「教える・置く・就かせない」の3本の線があることだけを先に伝えるのが早いと思います。入場時に確認する書類も、どの線の話なのかが分かれば、見るべき中身が自然に決まってきます。
違反したら誰が罰せられるか|第119条・第120条と両罰規定、監督署の権限
罰せられるのは会社だけではありません。第119条と第120条はどちらも「当該違反行為をした者」を罰すると書いていて、まず違反行為をした個人が対象になります。そのうえで第122条は、法人の代表者や従業者がその法人の業務に関して第119条・第120条などの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人にも各本条の罰金刑を科す、としています(労働安全衛生法第119条・第120条・第122条、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。現場の担当者と会社の両方に及ぶ、いわゆる両罰規定です。
刑の重さは条によって違います。第119条は「六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」、第120条は「五十万円以下の罰金」です。どの条の違反がどちらに当たるかを、ここまでに出てきた条で並べると次のとおりです(労働安全衛生法第119条第1号・第2号、第120条第1号・第5号、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。
| 違反した規定 | 当たる罰則 | 刑 |
|---|---|---|
| 第14条(作業主任者の選任)、第59条第3項(特別教育)、第61条第1項(就業制限) | 第119条第1号 | 六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金 |
| 第88条第6項の規定による命令 | 第119条第2号 | 六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金 |
| 第10条第1項、第15条第1項、第15条の2第1項、第16条第1項、第30条第1項、第59条第1項、第88条第1項〜第4項 | 第120条第1号 | 五十万円以下の罰金 |
| 第100条第1項の報告をしない、虚偽の報告、出頭しない | 第120条第5号 | 五十万円以下の罰金 |
統括安全衛生責任者や安全衛生責任者を選任しなかった場合は、第120条の罰金の側です。この記事に出てきた条に限って言えば、拘禁刑まであるのは作業主任者を置かずに作業させた場合(第14条)、特別教育を行わずに危険・有害な業務に就かせた場合(第59条第3項)、資格の無い人をクレーンの運転などの業務に就かせた場合(第61条第1項)、計画の届出に関する命令に違反した場合(第88条第6項)です。同じ第59条でも、雇入れ時の教育(第1項)の違反は第120条第1号の罰金だけです。第119条にはこのほか第20条〜第25条なども並んでいるので、全体の範囲は条文で確かめてください。なお、今の条文の刑名は「拘禁刑」です。
労働基準監督署がどんな権限で動き、事業者がどんな場面で報告や出頭を求められるかの根拠も、この法律の中にあります。第90条は、労働基準監督署長と労働基準監督官が、厚生労働省令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務をつかさどると定めています。第100条第1項は、厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長が、必要と認めるときは事業者や労働者などに必要な事項を報告させ、又は出頭を命じることができるとしています(労働安全衛生法第90条・第100条第1項、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。報告をしなかったり虚偽の報告をしたりすれば、上の表のとおり第120条第5号の対象です。
工事の前に出す計画の届出は第88条で、届け出る先と期限が項ごとに分かれています(労働安全衛生法第88条、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認)。
- 第1項:厚生労働省令で定める機械等を設置・移転し、又は主要構造部分を変更するとき。工事の開始の日の30日前までに労働基準監督署長へ
- 第2項:特に大規模な建設の仕事。開始の30日前までに厚生労働大臣へ
- 第3項:建設業等の仕事で厚生労働省令で定めるもの。開始の14日前までに労働基準監督署長へ
第1項にはただし書があり、厚生労働省令で定める措置を講じているとして労働基準監督署長が認定した事業者は届出が要りません(同法第88条第1項ただし書)。現場目線で言えば、届出の要否を判断するときは、自分の工事が第1項から第3項のどれに当たりそうかを先に決め、そのうえで規則の対象を確かめにいく順番にすると迷いにくいです。
2026年からの改正|個人事業者・注文者の義務と施行日の一覧
最近の改正は、令和7年法律第33号「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」です。2025年5月8日に可決成立し、同年5月14日に公布されました。改正の柱として、個人事業者等に対する安全衛生対策の推進、職場のメンタルヘルス対策の強化、化学物質による健康障害防止等の仕組みの整備、機械等による労働災害防止の促進、高年齢労働者の労働災害防止のための取組の強化などが挙げられています(厚生労働省労働基準局長通達 基発0514第1号「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について」令和7年5月14日、2026年11月7日確認)。
施行日は内容ごとに分かれていて、2026年11月7日時点で施行済みのものと、これからのものが混ざっています。e-Gov法令検索の現行版は2026年10月1日施行の版で、令和8年4月1日・10月1日施行分までが反映されています(e-Gov法令検索 労働安全衛生法 改正履歴・2026年11月7日確認)。
| 施行日 | 主な中身(通達の項番) | 2026年11月7日時点 |
|---|---|---|
| 公布日(2025年5月14日) | 注文者の配慮義務=第3条第3項(Ⅰの1の(2)) | 施行済み |
| 令和8年1月1日 | Ⅳの1(本記事の範囲外) | 施行済み |
| 令和8年4月1日 | 個人事業者の位置付け=第31条の3、統括安全衛生責任者の選任要件=第15条、是正の指示=第29条、建設業の元方事業者の措置=第29条の2、違法な指示の禁止=第31条の4、作業従事者の協力・遵守=第4条・第26条・第27条ほか | 施行済み |
| 令和8年10月1日 | Ⅲの1・2(本記事の範囲外) | 施行済み |
| 令和9年1月1日 | 厚生労働大臣による災害の発生状況等の調査と報告=第100条の2(Ⅰの3の(2)) | 未施行 |
| 令和9年4月1日 | 作業従事役員等の特別の教育=第59条第4項ほか(Ⅰの2の(5)など) | 未施行 |
| 公布日から3年・5年を超えない範囲で政令で定める日 | Ⅱ、Ⅲの3 | 未施行 |
建設現場に効く変更の中心は、労働者以外の人も作業従事者として条文に入ったことです。通達は、事業を行う者で労働者を使用しないものを「個人事業者」として安衛法に位置付けたとし、統括安全衛生責任者を選任しなければならない場合も、労働者の数ではなく、労働者である作業従事者と関係請負人に係る作業従事者が一の場所で作業を行うときに改めた、としています(基発0514第1号 第1 Ⅰ1(1)・(4)、令和8年4月1日施行)。労働者と同じ場所で作業する労働者以外の作業従事者も、事業者が講ずる措置に応じて必要な事項を守らなければならないとされました(同 Ⅰ2(2)、第26条・第27条第1項関係)。
発注者や注文者の側にも義務がかかっています。第3条第3項は、建設工事の注文者その他の仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、作業方法、工期、納期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない、としていて、これは公布日から施行されています(労働安全衛生法第3条第3項、e-Gov法令検索・2026年11月7日確認、基発0514第1号 第1 Ⅰ1(2))。現場の運用で見直すところを並べると、次の3つです。
- 統括安全衛生責任者の要否は、一人親方など労働者以外の作業従事者も含めて数える(第15条第1項)
- 下請や一人親方の違反を認めたら、是正のための指示を出す(第29条第2項)
- 工期や施工方法で無理な条件を付けず、従えば違反になる指示をしない(第3条第3項・第31条の4)
改正に合わせた政令・省令・告示の整備も済んでいます。厚生労働省労働基準局長通達 基発0330第1号(令和8年3月30日)によると、整備政令(令和7年政令第361号)が令和7年10月31日に、整備省令(令和8年厚生労働省令第3号)が令和8年1月20日に、整理告示(令和8年厚生労働省告示第44号)が令和8年2月20日に公布され、いずれも令和8年4月1日に施行又は適用されています(2026年11月7日確認)。一方で、作業従事役員等が特別の教育を受けなければならないとする第59条第4項は令和9年4月1日、第100条の2の調査と報告は令和9年1月1日の施行で、まだ現行の条文には入っていません(基発0514第1号 第1 Ⅰ2(5)・Ⅰ3(2))。個人的には、ここを「もう始まっている話」と混ぜずに、日付で区切って協力会社に伝えるのが、いちばん誤解を生まないやり方だと考えています。
労働安全衛生法に関する情報まとめ
- 労働安全衛生法とは:労働基準法と相まって労働災害を防ぐ最低基準と責任体制を定め、事業者に義務を課す法律。人数や細目は施行令と規則に書かれている
- 管理体制:一の場所では特定元方事業者が統括安全衛生責任者(30人・50人の線)を選び、下請は安全衛生責任者を選ぶ。事業場単位の総括安全衛生管理者(建設業100人)とは別系統
- 元方事業者の義務:第29条で指導と是正指示が義務、下請は従う義務。特定元方事業者は第30条の協議組織・連絡調整・巡視など。注文者は違法な指示をしてはならない
- 教育と就業制限:第59条・第60条は教育、第14条は作業主任者の選任、第61条は資格の無い人を就かせない就業制限
- 罰則:違反行為をした個人と会社の両方が対象。統括安全衛生責任者などの選任漏れは第120条の罰金、作業主任者・特別教育・就業制限の違反は第119条で拘禁刑もある
- 改正:令和7年法律第33号で個人事業者や作業従事者が条文に入り、令和8年4月1日施行分までは施行済み。令和9年施行分はこれから
以上が労働安全衛生法に関する情報のまとめです。
次の現場が始まる前に、まず下請各社の作業従事者を一人親方(個人事業者)まで含めて数え、30人・50人の線を超えるかを確かめてみてください。そこで統括安全衛生責任者と安全衛生責任者の要否が決まれば、第30条の協議組織や巡視をどう回すか、作業主任者や資格者を誰にするかまで、条文の順番で段取りが組めます。指摘を受けた条を規則の側でたどるときは、現場の場面から規則の条を引ける解説が次の手がかりになります。
