不動産ファンドとは?発注者が特定目的会社の理由と現場の変化

  • 不動産ファンドって結局、誰のお金で何を買ってるの?
  • 注文者が「◯◯特定目的会社」って、会社の実体はあるの?
  • 契約の相手は合同会社なのに、打合せに来るのは別の会社。誰に確認すればいい?
  • TMKとかGK-TKとか、略語が多すぎて打合せについていけない
  • J-REITと私募ファンドとクラファン、何が違うの?
  • ER(エンジニアリング・レポート)の調査って、何を見られるの?
  • 竣工したら売られる前提なの?引渡し後の不具合は誰に言えばいいんだろう

上記の様な悩みを解決します。

不動産ファンドとは、出資を集めた会社や事業者が不動産で事業を営み、そこから生まれた利益や収益を出資者に分配する仕組みで、根拠の法律で、J-REITなどのリート、TMKやGK-TKスキームの私募ファンド、電子取引業務としてクラウドファンディングにも対応した不動産特定共同事業に分かれます。発注者がファンドの器の会社だと知らずに現場に入ると、エンジニアリング・レポートの調査が入る案件で図面や届出書類などを求められても、その理由が分からず戸惑います。上位の解説は投資家として買う側の話が中心で、工事の発注者側にファンドが立った時の現場対応にはほとんど触れていません。今回は定義・お金の流れ・種類・利点とリスクといった基本を押さえた上で、種類を根拠の条文で分ける読み方、注文者欄に特定目的会社や合同会社の名前があったときの読み方、ERで見られる書類と施工側の備えまで、施工管理の目線で掘り下げました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、ファンドが発注者に立つ現場を初めて担当する方にも理解しやすい内容にまとめたつもりです。

それではいってみましょう!

目次

不動産ファンドとは?お金の流れと、器の会社を用意する理由

不動産ファンドとは、結論「出資を集めた会社や事業者が不動産で事業を営み、そこから生まれた利益や収益を出資者に分配する仕組み」のことです。「誰のお金で何を買っているのか」という疑問に当てはめると、お金を出すのは出資者で、そのお金を受けて不動産の事業を営むのは出資を受けた側の会社や事業者、という関係になります。

この「出資→事業→分配」の形は、法律が契約や法人の種類ごとに定めています。商法第535条は匿名組合契約を「当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。」と定めています。不動産特定共同事業法第2条第3項第2号も、出資を受けた相手方が「不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる利益の分配を行う」契約を、不動産特定共同事業契約の一つに挙げています。法人の形をとるものでは、資産の流動化に関する法律第2条第3項の特定目的会社と、投資信託及び投資法人に関する法律第2条第12項の投資法人が、どちらも法律に基づいて設立された「社団」と定義されています(いずれもe-Gov法令検索で2026年9月11日に確認)。

お金と権利の動きを、条文や公的な資料で確かめられる範囲で順に並べると次のようになります。

順番 動き 確かめられる根拠
1 出資者が、事業を営む相手方(器の会社を含む)やその事業に出資する 商法第535条(匿名組合契約)、不動産特定共同事業法第2条第3項第1号・第2号
2 出資を受けた相手方が、出資された財産で不動産取引を営む 不動産特定共同事業法第2条第3項第2号
3 運用や管理の実務を専門の会社に出す 登録投資法人は資産運用会社への委託が義務(投資信託及び投資法人に関する法律第198条第1項)、特定目的会社は特定資産の管理・処分を信託会社等に信託(資産の流動化に関する法律第200条第1項)。国交省の用語集は、特定資産が不動産なら不動産業者等に委託できるとも説明
4 資産の購入・売却や、テナントの募集・契約条件の交渉といった運営が行われる ARES不動産証券化用語集(アセットマネジメント、プロパティマネジメント)
5 生まれた利益や収益を出資者に分配する 商法第535条、不動産特定共同事業法第2条第3項

一般社団法人不動産証券化協会(ARES)の用語集(2026年9月11日確認)は、アセットマネジメントの業務に「資産の購入、売却の実施」を、プロパティマネジメントの業務に「新規テナント募集及び契約条件の交渉」を挙げています。僕は、事業の収益を物件を貸すことと売ることの両面から見ておくと、ファンドの動きを追いやすいと考えています。建物を建てる側が、賃料や売却を収入に置いて事業が成り立つかを試算する組み立ては、こちらで整理しています。

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では、なぜわざわざ器の会社を用意するのか。国土交通省の「不動産証券化に係る用語集」は、特定目的会社を「実態のない器(ビークル)」と説明しています。不動産特定共同事業法第2条第8項も、特例事業の要件の一つ目に「当該行為を専ら行うことを目的とする法人」が行うことを置いています。これは同条第4項第1号の行為のうち要件を満たすものを指す「特例事業」の要件で、不動産特定共同事業のすべてに求められるものではありません。国土交通省の「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック」(令和7年7月)は、平成25年の法改正でこの特例事業を「倒産隔離型スキーム(特例事業)」として導入したと書いています。

僕の理解では、器の会社を用意するのは「その不動産の事業を、ほかの事業から切り分けて持つため」です。本業も別の不動産も抱えた会社がそのまま出資を受けると、どこまでが出資者に分配する事業なのかが見えにくくなります。事業のためだけの法人を立てておけば、出資と分配の範囲をその事業に絞り込める、という発想だと捉えています。

不動産ファンドの種類は、根拠になる法律で3つに分けて読む

「J-REITと私募ファンドとクラファンは何が違うの?」という疑問は、結論「リート」「不動産特定共同事業」「その他の私募ファンド(TMK、GK-TKスキーム)」の3つを、根拠の法律ごとに分けると整理がつきます。この区分は、国土交通省の報道発表(令和7年6月30日)が、証券化の対象となった不動産の集計範囲として「リート、不動産特定共同事業、その他私募ファンド(TMK、GK-TKスキーム)」と注記しているものです。

区分 器・契約の形 根拠になる法律 条文で押さえる点
リート 投資法人 投資信託及び投資法人に関する法律 投資法人は同法に基づき設立された社団(第2条第12項)。登録投資法人は資産の運用を資産運用会社に委託する(第198条第1項)
その他私募ファンド(TMK) 特定目的会社 資産の流動化に関する法律 特定目的会社は同法の規定に基づき設立された社団(第2条第3項)
その他私募ファンド(GK-TKスキーム) 合同会社と匿名組合契約 会社法、商法、金融商品取引法 匿名組合契約は商法第535条。匿名組合契約に基づく権利は金融商品取引法第2条第2項第5号に挙がり、同法第63条に適格機関投資家等特例業務の定めがある
不動産特定共同事業 不動産特定共同事業契約 不動産特定共同事業法 不動産特定共同事業を営もうとする者は主務大臣または都道府県知事の許可を受けなければならない(第3条第1項)。平成29年改正で登録制の小規模不動産特定共同事業と届出制の適格特例投資家限定事業も創設(国交省ハンドブック、令和7年7月)。電子取引業務を行う場合は許可申請書にその旨を書く(第5条第1項第11号)

不動産特定共同事業法は第1条で、許可等の制度を実施することなどにより「事業参加者の利益の保護を図る」ことを目的に掲げています。同法第5条第1項第11号の電子取引業務は、「情報通信の技術を利用する方法」で勧誘の相手方に契約の申込みをさせる業務と定義されています。国土交通省のハンドブック(令和7年7月)によると、平成29年の法改正で「登録制の小規模不動産特定共同事業と届出制の適格特例投資家限定事業」が創設され、「クラウドファンディングに対応した環境(電子取引業務)」が整備されました。広告で見かける不動産クラウドファンディングが気になったら、国交省がクラウドファンディングへの対応をこの電子取引業務として説明している、という位置関係から押さえると迷いにくいです。

GK-TKスキームの匿名組合出資は、金融商品取引法の条文にも登場します。同法第2条第2項第5号は、商法第535条の匿名組合契約などに基づく権利のうち、出資した金銭を充てて行う事業から「収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利」を挙げ、第63条は「適格機関投資家等特例業務」として、適格機関投資家等を相手方として行う私募などの扱いを定めています(e-Gov法令検索、2026年9月11日確認)。特例の中身まで覚えなくても、「匿名組合契約に基づく権利は金融商品取引法の条文にも挙がっている」とだけ頭に入れておけば、打合せで話の土台を見失いにくいと僕は考えています。

規模を知りたいときは、集計した主体と基準日をそろえて読む必要があります。公表されている数値を、出典と基準日ごとに分けて並べます。

  • 国土交通省の報道発表(令和7年6月30日):令和6年度末時点で、不動産証券化の対象となった不動産又は信託受益権の資産総額は約66.6兆円(その他私募ファンドは令和6年12月末時点)
  • 国土交通省の令和6年度「不動産証券化の実態調査」の結果:令和6年度に取得された資産はリートが約2.1兆円、不動産特定共同事業が約0.7兆円
  • ARESマンスリーレポート2026年8月号(出所はARES J-REIT Databook、2026年7月末):上場58銘柄、資産規模(運用資産額)24兆5,164億円、保有物件4,956物件
  • 同レポート(2026年6月末):私募リートは61銘柄・8兆665億円、上場Jリートを含む国内リート市場全体は119銘柄・32.6兆円

国土交通省の約66.6兆円は証券化の対象になった資産全体を、ARESの数値はリートを数えたもので、集計の範囲も基準日も違います。両者を足したり、どちらが大きいかを比べたりはできないので、使うときは出典ごとに切り離して読んでください。

発注者が特定目的会社や合同会社のとき、その会社は何者か(TMK・GK-TK)

結論から言うと、発注者が特定目的会社や合同会社になっている案件なら、その会社はファンドが不動産の事業を営むために用意した器かもしれない、と一度疑ってみるのが近道です。注文者欄の聞き慣れない会社名に「実体はあるの?」と身構えたら、次の3つの形に当たるかどうかを確かめてみてください。

特定目的会社(TMK)

特定目的会社は、資産の流動化に関する法律第2条第3項で、同法の規定に基づき設立された「社団」と定義されています。国土交通省の「不動産証券化に係る用語集」は、特定目的会社を「TMK(Tokutei Mokuteki Kaisha)と表記することもある」とした上で、「実態のない器(ビークル)であるため、特定資産の管理・処分の業務は信託会社等に信託しなければならない。」と説明し、「特定資産が不動産である場合には、財産的基礎等を有する者(不動産業者等)に委託することができる。」とも書いています。管理や処分の実務を外の会社に出すことを前提に組み立てられた会社だ、と読めます。

合同会社と匿名組合(GK-TKスキーム)

GKは合同会社、TKは匿名組合のことで、この組み合わせは一般にGK-TKスキームと呼ばれます(国土交通省の報道発表もこの表記です)。合同会社は会社法第2条第1号が挙げる会社の一つで、同法第576条第4項により定款に「その社員の全部を有限責任社員とする旨」を記載する会社です。匿名組合契約は商法第535条のとおり「相手方の営業のために出資」する契約なので、営業するのは出資を受けた側です。GK-TKスキームの案件で注文者欄に合同会社の名前が入っているなら、その合同会社が事業の当事者として工事を注文している、と読むのが筋になります。

不動産特定共同事業の特例事業者

不動産特定共同事業法には、器の会社が工事に関わる場面を想定した規定もあります。同法第2条第8項は特例事業の要件として、専らその行為を行う法人が行うことに加え、「宅地の造成又は建物の建築に関する工事」などで費用が主務省令で定める金額を超えるものを行う場合は、特例投資家のみを相手方または事業参加者とすることを求めています。国土交通省のハンドブック(令和7年7月)には「不動産特定共同事業の特例事業者が施設開発を実施」した事例が載っていて、スキーム図には「建設会社(施工者)」「工事請負契約」「AM契約」のラベルが並んでいます。

契約の相手と打合せの相手が別の会社になり得るのも、条文と国交省の用語集から説明がつきます。投資法人については、投資信託及び投資法人に関する法律第63条第2項が「使用人を雇用することができない」と定め、第198条第1項が登録投資法人に資産運用会社への業務委託を義務づけています。投資法人は使用人を雇えず、特定目的会社は管理・処分を外に出す前提なので、打合せに来るのが注文者とは別の会社でも不自然ではない、というわけです。

そこで、契約の前後に紙で確かめておきたいのは次の4点です。

  • 工事請負契約書の注文者欄の会社名と、その会社の種類(特定目的会社・合同会社など)
  • 打合せに来る会社が、注文者とどんな契約で業務を任されているか
  • 設計変更や追加工事の承認を、どの会社の誰が出すのか
  • 引渡し後の不具合の連絡先を、契約書のどの条項で定めているか

契約書の注文者と「建築主」という言葉の関係は、用語の意味から押さえておくと迷いにくくなります。定義はこちらで確認できます。

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僕としては、注文者欄の会社名に身構えるより、「契約の相手」と「話をする相手」を着工前に分けて書き出しておくほうが、略語が飛び交う打合せで置いていかれにくいと考えています。

不動産ファンドの案件に出てくるAMとPMは、それぞれ何を担う会社か

「AMとPMって誰が何をやる人?」という疑問には、結論、ARESの用語集の定義で答えるのが確実です。アセットマネジメント(AM)はマネジメント計画や管理方針の策定と資産の購入・売却の実施を、プロパティマネジメント(PM)はテナント管理と建物・設備の保守管理などの運営・管理を担う業務として定義されています。

ARESの不動産証券化用語集(2026年9月11日確認)は、アセットマネジメントを「投資家や資産所有者等から委託を受けて行う不動産や金融資産の総合的な運用・運営・管理業務のこと。」とし、業務に「対象資産のマネジメント計画の策定、資産の購入、売却の実施や管理方針の策定等」を挙げ、賃貸不動産の場合は「プロパティマネジメント会社の選定や管理も行う」としています。プロパティマネジメントは「不動産所有者・アセットマネジャー等から業務委託を受けて行う投資対象不動産の収益向上等を目的とした不動産の運営・管理業務のこと。」で、テナント管理業務と、「建物・設備の保守管理業務の実行や不動産の管理に関する予算計画の策定等」の物件管理業務が挙がっています。

この定義の言葉を施工側の用件に当てはめると、どちらの会社に聞く話かの目安は次のように考えられます。

  • 建物をどう管理していくかの方針や、保有を続けるか売るかに関わる話:AMの業務(管理方針の策定、購入・売却の実施)に近い
  • 竣工後の設備の保守をどう回すかという話:PMの物件管理業務(建物・設備の保守管理業務の実行)に近い
  • テナントの入居時期に合わせた工事の調整:PMのテナント管理業務に近い
  • PM会社をどこにするか自体:賃貸不動産のような場合は、AMが選定や管理を行う側

もっとも、実際の分担は案件ごとの契約で決まります。この目安で決めつけず、最初の打合せで「この件はどの会社が決めるのか」を確かめるのが確実です。

AMの仕事の中身や、施工管理の経験との関係はこちらにまとめています。

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個人的には、AMとPMを役職の上下で覚えるより、ARESの定義にある業務の名前で覚えておくほうが、打合せで「それはどちらの会社に聞く話か」を判断しやすいと感じます。

発注者が不動産ファンドの現場で変わること:ER・地震リスク評価・書類・引渡し後

発注者がファンドの器の会社である現場で、施工側が特に意識しておきたいのはエンジニアリング・レポート(ER)です。公益社団法人ロングライフビル推進協会(BELCA)の説明では、ERは第三者の立場で対象不動産を評価し、書類等調査では図面や届出書類、保守管理報告書等から建物状況の情報を把握します。ERの調査が入る案件では、竣工までに残した書類がその材料の一部になり得ます。

BELCAは、ERを「技術的見地から、第三者の立場で、対象不動産を評価し、収益性に影響を及ぼす様々なリスクを明らかにし、出来うるものはリスクを定量化するという役割を持っています。」と説明しています(BELCA「エンジニアリング・レポート(ER)とは」、2026年9月11日確認)。明らかにするリスクの例として、物理的な品質や性能の低下に伴う費用、地震等の自然災害による損失、環境リスクの除去に伴う費用、遵法性(建築基準関係規定)の是正に伴う費用などが挙がっています。

ERの範囲について、BELCAは同じページで「建物状況調査」「建物環境リスク評価」「土壌汚染リスク評価」「地震リスク評価」に大別されると書き、ガイドライン(2019年版)の刊行案内には遵法性調査・修繕更新費用・再調達価格の算定の章も並んでいます。施工側に関わりの深い項目を、BELCAの説明の範囲で並べます。

調査・評価 BELCAの説明で確認できること
建物状況調査 書類等調査は図面、届出書類、保守管理報告書等から建物状況の情報を把握し、現地調査は足場や梯子を使わず立ち入り可能な範囲で代表箇所を目視する
遵法性調査 建築確認検査完了時点との相違や、建築基準法及び関係規定の法違反・不適合の可能性を指摘する
地震リスク評価 地震による対象不動産の経済的な損失をPML(Probable Maximum Loss)で表す
修繕更新費用・再調達価格の算定 ガイドライン(2019年版)の章として設けられている
建物環境リスク評価・土壌汚染リスク評価 ERのスコープの大別に含まれる

ガイドラインについて、BELCAは「令和6年7月現在、改訂作業を行っております。」「2019年版は絶版とさせていただきます。」と告知しています(2026年9月11日確認)。2019年版を最新の基準として扱わず、その案件の調査がどの前提で行われるかは調査会社に確かめてください。

「PMLって地震のやつ?」という点では、BELCAはPMLを「建物の共用期間中に発生すると予想される地震による最大の物的損失額あるいは予想される最大の物的損失額の再調達価格に対する割合のことです。」と説明しながら、日本建築学会の小委員会(2007年)によって「3つの定義に分類されており」、ERではどの定義に基づく評価かをレポートに明記するとしています。さらに、評価会社が独自に算定式やパラメータを構築していることが多く、「評価者が異なれば、同一の建物であってもPMLの評価結果が異なる場合があります。」とも書いています。打合せでPMLの数値が出てきたら、数値そのものより先に、どの定義で誰が評価したものかを確かめるのが順番です。

ここからは僕の考えです。ERの書類等調査が図面や届出書類、保守管理報告書などから建物の状況をつかむ以上(BELCA「ERとは」)、施工側では次の書類をそろえて、求められたらすぐ出せる状態にしておくと話が早いと考えています。BELCAがこの一覧を示しているわけではなく、調査の説明から逆算した施工側の備えです。

  • 確認済証と検査済証
  • 竣工図
  • 設計変更の記録と手続きの控え
  • 施工記録(隠れる部分の写真、試験や検査の成績書など)
  • 設備機器の一覧と保守点検の引継ぎ資料

BELCAの説明どおり遵法性調査が「建築確認検査完了時点との相違」を指摘するものなら、確認済証・検査済証と、その時点の建物の姿を示す竣工図や設計変更の記録を食い違いなく出せることが備えの中心になる、と僕は見ています。

検査済証そのものの意味や、見当たらないときの扱いはこちらが詳しいです。

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「竣工したら売られる前提なの?」「引渡し後の不具合は誰に言えばいい?」も気になるところです。国土交通省の報道発表(令和7年6月30日)では、令和6年度にリート及び不動産特定共同事業の対象として「譲渡された資産額は約1.1兆円」とされていて、ファンドの資産が売られることもあると数字で確認できます。ただし、個々の建物をいつ売るかはこの数字からは分からず、竣工した建物が必ず売られるとも言えません。引渡し後の不具合の連絡先は、工事請負契約書の条項で確かめ、会社名まで打合せ記録に残しておくと安心です。

正直なところ、ファンド案件の書類が細かく感じるとしたら、その理由の一つは、ERのように第三者が書類を手がかりに建物を読みに来る工程があるから、と捉えると腑に落ちます。

不動産を直接持つこととの違いと、不動産ファンドの利点・リスク

結論、不動産ファンドは不動産を自分で取得する代わりに、事業を営む会社や事業者、またはその事業に出資するなどの形で関わる仕組みで、運営を任せられる一方、分配のもとは事業から生まれる利益や収益だという点を押さえておく必要があります。「元本は大丈夫?」「利回りは何から出てくるの?」という疑問も、この形から読み解けます。

比べる点 不動産を直接持つ 不動産ファンドに出資する
関わり方 自分で不動産を取得する 事業を営む会社や事業者、またはその事業に出資する(商法第535条、不動産特定共同事業法第2条第3項第1号・第2号)。同項第3号は、自らの共有に属する不動産の賃貸をし、又はその賃貸の委任をする形の契約
運用の実務 自分で行うか、自分で委託先を選ぶ 登録投資法人は資産運用会社への委託が義務(投資信託及び投資法人に関する法律第198条第1項)。AMやPMが担う形がある(ARES用語集)
受け取るもの 自分で貸せば賃料を、売れば売却代金を受け取る 事業から生ずる利益・収益の分配(商法第535条、不動産特定共同事業法第2条第3項)

条文と国土交通省の資料から読み取れる、利点とリスクの押さえどころは次のとおりです。

  • 利点:匿名組合契約は相手方の営業のために出資する契約なので、出資者が自分で物件を運営する形にはならない(商法第535条)
  • 利点:不動産特定共同事業法は、事業を営む者について許可等の制度を実施し、事業参加者の利益の保護を図ることを目的に掲げている(第1条)。ただし許可(第3条第1項)のほかに、登録制の小規模不動産特定共同事業と届出制の適格特例投資家限定事業もある(国交省ハンドブック、令和7年7月)
  • リスク:定義の文言は利益・収益の分配を定めるもので、分配額や元本の返還を約束する言葉は入っていない(商法第535条、不動産特定共同事業法第2条第3項第1号〜第3号)
  • リスク:国土交通省の小規模不動産特定共同事業のパンフレットが、元本保証と誤解させる広告表示や、合理的な根拠のない予想利回りの表示に規制があると注意している

不動産クラウドファンディングの広告が気になっている人は、その国土交通省のパンフレットにある「事業者が広告を行う際には、「元本保証」など元本の返還について保証されているかのように誤解させる表示をしてはならない等、一定の規制があります。」「事業者が勧誘を行う際には、合理的な根拠を示さずに予想利回りを表示してはならない等、一定の規制があります。」という記載を一度読んでおくとよいです。これは小規模不動産特定共同事業の説明の中にある記載なので、ほかの形のファンドにそのまま当てはめず、気になる商品がどの法律のどの事業に当たるかを先に確かめてください。個別の商品や事業者の良し悪しはこの記事では扱いません。

「利回りは何から出てくるの?」については、表の「受け取るもの」のとおり、もとになるのは事業から生ずる利益・収益です。数字の大小を比べる前に、どの区分のどの事業から生まれる分配なのかを確かめる順番が崩れなければ、広告の言葉に振り回されにくくなります。

現場目線で言えば、この違いを押さえておく意味は投資のためだけではありません。注文者が器の会社で、運営をAMやPMに任せている案件なら、その構図は工事の打合せで誰が席に着くかにそのまま表れることがあります。

不動産ファンドに関する情報まとめ

  • 不動産ファンドとは:出資を集めた会社や事業者が不動産で事業を営み、利益や収益を出資者に分配する仕組み。器の会社を用意するのは、事業をほかから切り分けて持つためと理解できる
  • 種類:国交省の区分どおり、リート(投資法人)・その他私募ファンド(TMK、GK-TKスキーム)・不動産特定共同事業の3つを根拠の法律で分けて読む。規模の数値は出典と基準日ごとに切り離す
  • 注文者欄の会社:特定目的会社や合同会社の名前があれば、ファンドの器かもしれないと疑ってみる。特定目的会社は国交省の用語集で「実態のない器」とされ、GK-TKスキームで営業するのは出資を受けた合同会社、不動産特定共同事業の特例事業者は専らその事業を行う法人。契約の相手と打合せの相手が分かれることがある
  • AMとPM:ARESの定義では、AMはマネジメント計画や管理方針の策定と資産の購入・売却の実施、PMはテナント管理と建物・設備の保守管理業務の実行などを担う。実際の分担は契約で確かめる
  • 現場で変わること:ERの調査が入る案件では、図面や届出書類などが書類等調査の材料の一部になり得る。確認済証と検査済証、竣工図、設計変更の記録と手続きの控え、施工記録、設備機器の一覧と保守点検の引継ぎ資料をそろえるのが施工側の備え(調査の説明から逆算した提案)。引渡し後の連絡先は契約書の条項で確かめる
  • 直接持つこととの違い:出資するなどの形で、分配のもとは事業の利益・収益。元本保証と誤解させる広告表示の規制は、小規模不動産特定共同事業のパンフレットの記載として押さえる

以上が不動産ファンドに関する情報のまとめです。

不動産ファンドの案件だと分かったら、まず工事請負契約書の注文者欄の会社が、特定目的会社・合同会社(GK-TKスキーム)・不動産特定共同事業の特例事業者のどれかに当たるのか、そうではないのかを確かめ、打合せに来る会社との契約関係、設計変更や追加工事の承認をどの会社の誰が出すのか、引渡し後の連絡先の条項を着工前に押さえておく。そのうえでERの調査を見越して、確認済証と検査済証、竣工図、設計変更の記録と手続きの控え、施工記録、設備機器の一覧と保守点検の引継ぎ資料を竣工までにそろえておく。この2段の準備ができていれば、略語が飛び交う打合せでも、自分が何を聞き、何を出せばいいかで迷いにくくなると僕は考えています。

検査済証を受け取るまでの検査の段取りは、こちらにまとめています。

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不動産ファンドの案件を初めて担当するときの疑問

Q1:注文者が特定目的会社なのに、打合せに来るのが別の会社なのはなぜですか?

国土交通省の用語集が特定目的会社を「実態のない器(ビークル)」とし、特定資産の管理・処分は信託会社等に信託する前提(不動産は不動産業者等への委託も可)と説明しています。器の会社が実務を外の会社に出す前提なので、打合せに別の会社が来ても不自然ではありません。AMやPMが業務を担う形もあるので、誰がどの契約で来ているかを最初に確かめてください。

Q2:ERの調査が入ると、施工会社は何を準備すればいいですか?

BELCAは、書類等調査で図面・届出書類・保守管理報告書等から建物状況の情報を把握すると説明しています。そこから逆算した僕の提案は、確認済証と検査済証、竣工図、設計変更の記録と手続きの控え、施工記録、設備機器の一覧と保守点検の引継ぎ資料をそろえておくことです。

Q3:PMLの数値はどう受け止めればいいですか?

BELCAによると、PMLは日本建築学会の小委員会(2007年)により3つの定義に分類され、ERではどの定義に基づく評価かを明記することになっています。評価者が異なれば同じ建物でも結果が異なる場合があるので、数値だけで判断せず、定義と評価者を確かめてください。

Q4:不動産クラウドファンディングは元本が保証されているのですか?

商法第535条や不動産特定共同事業法第2条第3項第1号〜第3号の定義は利益・収益の分配を定めるもので、元本の返還を約束する言葉は入っていません。国交省の小規模不動産特定共同事業のパンフレットは、元本保証と誤解させる広告表示に規制があると書いています。これは小規模不動産特定共同事業の説明の中の記載なので、ほかの形のファンドにそのまま当てはめず、気になる商品がどの法律のどの事業に当たるかを先に確かめてください。

Q5:竣工した建物はすぐ売られるのですか?引渡し後の不具合は誰に言えばいいですか?

国交省の報道発表では、令和6年度にリート及び不動産特定共同事業の対象として譲渡された資産額は約1.1兆円ですが、個々の建物がいつ売られるかは分からず、必ず売られるとも言えません。引渡し後の連絡先は工事請負契約書の条項で確かめ、打合せ記録に残してください。

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