- 鋼板の規格って何種類あるの?
- SS400とSN400とSM490の違いって何?
- 厚みや寸法って自由に注文できるの?定尺は?
- 図面の「PL-9」「t=12」って何のこと?
- 現場で受け入れるとき、どこを確認すればいい?
上記の様な悩みを解決します。
鋼板の規格とは、結論「JIS(日本産業規格)が定めた、鋼板の化学成分・機械的性質・寸法・表面仕上げのルール」のことです。鋼板は同じ”鉄の板”でも、用途によって要求性能が違うため、規格を分けて管理しています。建築で使うなら主にSS材・SN材・SM材の3系統を押さえれば十分です。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
鋼板の規格とは?
鋼板(Steel Plate)の規格とは、鋼板を製造・流通・施工する各段階で「同じ品物」として扱えるように、JISが定めた約束事です。
具体的には次のような項目がJISで決められています。
- 化学成分(C・Si・Mn・P・S等の含有率)
- 機械的性質(降伏点・引張強さ・伸び・シャルピー衝撃値など)
- 寸法許容差(厚みのバラツキ範囲)
- 表面仕上げ(黒皮・酸洗・ミガキなど)
- 表示方法(製造ロット・刻印・ミルシート発行)
たとえばSS400という規格を発注すれば、どこのメーカーから買っても「引張強さ400〜510N/mm²、降伏点245以上(板厚16mm以下)、化学成分の上限値が〜」という統一された性能の鋼板が届きます。これが規格の最大の意義ですね。
JIS規格は鋼板に限らず、鋼材全般・コンクリート・電線など建築材料の品質基盤になっています。
JIS鋼板規格の3系統(SS/SN/SM)
建築でよく出てくる鋼板規格は、大きく3つの系統に分かれます。
| 系統 | 代表規格 | JIS番号 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 一般構造用 | SS400 | JIS G 3101 | 安価・流通量No.1、衝撃靭性は規定なし | 屋外架台、ブラケット、二次部材 |
| 建築構造用 | SN400A/B/C、SN490B/C | JIS G 3136 | 降伏比・シャルピー値・成分の上限を厳しく規定、耐震性能を担保 | 主要構造部材(柱・梁・ガセット) |
| 溶接構造用 | SM400A/B/C、SM490 | JIS G 3106 | 溶接性を担保、シャルピー値を規定 | 橋梁、産業機械、溶接が前提の部材 |
SS材(Steel Structure):一般構造用圧延鋼材
もっとも流通している鋼板で、安価で入手しやすい。ただし溶接性や靭性(粘り強さ)の規定が緩いため、建築の主要構造部材には基本使えません。あくまでブラケット・架台などの二次部材用です。
SN材(Steel New structure):建築構造用圧延鋼材
1995年の阪神淡路大震災以降に整備された、建築の主要構造部材用の規格。降伏点の上限・降伏比(降伏点/引張強さ)・シャルピー衝撃値などが厳しく規定されており、地震時に粘り強く変形する性能が担保されています。柱・梁・ダイヤフラムなどの主要部材は基本SN材を使う、と覚えておけばOKです。
SM材(Steel Marine/Welded):溶接構造用圧延鋼材
溶接が前提の構造物用。橋梁・産業プラント・船舶など、溶接が大量に発生する用途で使われます。建築でも一部で採用されますが、建物の主要構造部材という意味ではSN材のほうが優先順位は上です。
SS400は流通量が多くて安いので、つい「とりあえずSS400」と発注しがちですが、構造設計図に「SN400B」と指定されている部材を勝手にSS400で代替するとアウトです。受け入れ前に図面と発注書の規格が一致しているか、必ず照合しましょう。
鋼板の厚み・幅・長さの定尺
鋼板の寸法は、メーカーが標準寸法(定尺)として用意しています。
厚み(t)の主な定尺
| 区分 | 厚みの目安 |
|---|---|
| 薄板 | 1.0、1.2、1.6、2.3、3.2、4.5mm |
| 中板 | 6、9、12、16、19、22、25mm |
| 厚板 | 28、32、36、40、45、50mm以上 |
建築でよく使うのは中板(6〜25mm)。薄板は屋根・壁のガルバリウム鋼板などの板金、厚板は重量鉄骨やベースプレートなど。
幅×長さの定尺
最も流通しているのは「5’×10’(フィート)」サイズで、メートル換算で約1,524×3,048mmです。これより小さい「3’×6’」「4’×8’」も流通しています。長尺物は「2,438mm×6,096mm」などミルから直接圧延された大判もあります。
定尺以外の寸法でほしい場合は「切板(きりいた)」として発注します。鋼材問屋で定尺品をシャーリングやガス切断して、必要な寸法に切り出してくれます。多少単価は上がりますが、現場での切断作業を減らせるので、結果的に総コストが安くなることも多いです。
鋼板の表面仕上げ
鋼板の表面状態にも規格があります。
黒皮(くろかわ)
熱間圧延の段階で表面に付いている黒色の酸化スケール。そのまま流通する状態で、追加加工なしのため安価。屋内の架台・防錆塗装前の素地などに使われます。
酸洗(さんせん)
黒皮を酸で除去した状態。表面が銀灰色になり、塗装の食い付きが良くなります。塗装下地として一般的。
ミガキ(冷間圧延)
冷間で圧延された滑らかな表面。寸法精度が高く、表面美観も良い。意匠性が要求される部材や精密機器用に使われます。
表面に滑り止めの突起模様(チェッカープレート)を圧延した鋼板。床・階段・歩廊などで使われます。「縞鋼板 t=4.5(基板厚)」のように指定します。
仕上げは図面で指定があれば必ずそれに従う。指定がない場合、屋内で塗装下地が要らないなら黒皮、塗装するなら酸洗、を選ぶのが一般的な判断基準です。
図面の表記と発注書の書き方
施工管理として実務で一番使うのが、図面・発注書の表記ルールです。
図面での表記例
PL-9 ←9mm厚の鋼板(PL=Plate)
t=12 ←厚さ12mm(t=thickness)
SS400-PL-9-200×500 ←材質-Plate-厚9mm-200×500mm
「PL-9」は単に「鋼板9mm厚」を意味するだけで、材質や寸法は書かれていない場合があります。図面の他の場所(仕様書・凡例)で材質指定を確認するのが基本です。
発注書の書き方の例
材質:SN400B
規格:JIS G 3136
寸法:t=12mm × 250mm × 400mm
数量:20枚
表面:黒皮
備考:両端切り口バリ取り
材質・寸法・表面・数量・備考の5点セットで発注すれば、後でモメません。指定が曖昧だと、問屋側で勝手に「SS400で出しますね」と判断されるリスクがあります。
H鋼・C型鋼・Lアングルなど他の鋼材を発注するときも、規格+寸法+数量の3点セットを意識すると、漏れがなくなります。
受け入れ時の注意点
鋼板を現場で受け入れる際の確認ポイントを4つ。
1. ミルシートの受領と照合
ミルシート(鋼材の品質証明書)は、鋼板1ロットごとに発行されるJIS適合の証明書です。受け入れ時に必ず添付されているか確認し、
- 規格名(SS400/SN400Bなど)
- 寸法(厚み・幅・長さ)
- 機械的性質(降伏点・引張強さ・伸び・シャルピー値)
- 化学成分
が発注内容と一致しているか照合します。SN材なら降伏比(降伏点÷引張強さ)が規定範囲内(0.80以下など)に収まっているかも要チェック。
2. 刻印・マーキングの確認
現物の鋼板にも、規格名・ロット番号・メーカー名などの刻印やインクマーキングが入っています。ミルシートとマーキングが一致するかを目視確認するのは、規格詐称(昔ニュースで話題になりましたよね)を見抜く基本動作です。
3. 厚み・寸法の実測
JIS規格には「許容差」が定められており、たとえば厚み12mm以上の場合、上限はおおむね+1.5mm、下限はマイナス側にもバラツキがあります。実厚みを抜き取り測定しておくと、後の鉄骨溶接や穴あけ精度のトラブル防止になります。
4. 板の歪み・反り
長尺物や薄板は、製造・運搬中に反ったり波打ったりすることがあります。受け入れ時に明らかに変形している板は、現場での加工前に問屋へ交換依頼を出す、というのが施工管理として大事な判断です。気付かずに加工に回すと、組み立て時に「板が合わない」というトラブルに発展します。
鋼板の規格に関する情報まとめ
- 鋼板の規格とは:JISが定めた化学成分・機械的性質・寸法・表面仕上げのルール
- JIS3系統:SS400(一般構造用)/SN400・SN490(建築構造用)/SM400・SM490(溶接構造用)
- 主要部材は基本SN材、二次部材ならSS400、溶接前提ならSM材という使い分け
- 厚みの定尺:薄板1〜4.5mm/中板6〜25mm/厚板28mm以上、5’×10’が最流通サイズ
- 表面仕上げ:黒皮・酸洗・ミガキ・縞鋼板から用途で選ぶ
- 図面表記:PL=Plate、t=厚み、材質-PL-厚-寸法 が基本
- 受け入れ時:ミルシート照合、刻印・寸法・歪みの目視・実測
以上が鋼板の規格に関する情報のまとめです。
鋼板の規格を覚える優先順位は「SS400/SN400/SM490の使い分けと、JIS番号、定尺サイズ」の3点を押さえるところから。図面の「PL-9」を「9mm厚の鋼板で、材質指定は仕様書を見る」と即座に変換できれば、受け入れミスはほぼ起きなくなります。あわせてSS400・JIS・ミルシート・H鋼・縞鋼板・Lアングルあたりを読むと、鋼材まわりの知識が体系的に揃います。








