CLT建築とは?意味、特徴、構造、強度、価格、メリット・課題など

  • CLT建築って結局なに?ただの木の板じゃないの?
  • 集成材や合板と何が違うの?
  • 木造で中層ビルって本当に建つの?強度は大丈夫?
  • 軽いみたいだけど、地震に弱くないの?
  • 木なのに火事は大丈夫なの?
  • 価格が高いって聞くけど、実際いくらするの?
  • 普及してないって聞くけど何で?
  • 施工管理として、CLTの現場は何が違うのか知りたい
  • 雨に弱いって本当?施工中の養生はどうする?
  • 設備配管は埋められないなら、どう通すの?

上記の様な悩みを解決します。

CLT建築は、中高層の木造を可能にする新しい工法として注目されていますが、「名前は聞くけど中身がよく分からない」「自分の現場で扱うとき何が違うのか不安」という施工管理の方も多いはずです。

今回は、CLT建築の意味・構造・強度・価格といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「集成材・合板との違い」「なぜ普及しないのかという課題」「CLTの現場は何が違うのか(建て方・接合・養生・配管)」まで、設計や環境の話で終わらせずに現場で動く話として整理します。

なるべく分かりやすくまとめていくので、CLT案件を初めて担当する方の予習にも使える内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

CLT建築とは?直交集成板を使った新しい木造建築

CLT建築とは、CLT(直交集成板)という大判の木質パネルを構造体に使った建築のことです。CLTはCross Laminated Timberの頭文字で、日本語では直交集成板と呼びます。

CLTは、ラミナと呼ばれるひき板を繊維方向が縦横に互い違いになるよう何層も積み重ねて接着した、大きく厚い板です。通常は3層・5層・7層・9層など奇数の層で構成され、層数によって厚みと性能が変わります。繊維を直交させることで縦横どちらの方向にも高い強度を持つため、柱や梁だけでなく床や壁といった面材として使えるのが最大の特徴です。

国内では最大で12m×3m、厚み36〜300mm程度の原板が製造可能で、この大判パネルで床・壁・屋根を組み立てて建物をつくります。CLTはヨーロッパ発祥で、日本では2013年にJAS(日本農林規格)で製造規格が定まり、2016年に建築基準法でCLT関連の規定が施行されたばかりの、比較的新しい建材です。

木造全体の中でのCLTの位置づけは、こちらもあわせて読むと整理しやすいです。

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集成材・合板との違い

CLTは、集成材と合板の長所を組み合わせた建材です。どちらも建築用に加工された木材ですが、繊維の向きと用途が異なります。

  • 集成材:ひき板を同じ繊維方向にそろえて接着したもの。長さ方向に強く、柱や梁などの軸材に使う
  • 合板:薄い単板を繊維方向を直交させて重ねたもの。縦横の変形に強く、壁や屋根に使う
  • CLT:厚みのあるひき板を、繊維を直交させながら何層も重ねたもの。大判の面材として壁・床に使える

集成材のように厚く、合板のように繊維を直交させる、という両者のいいとこ取りをしているのがCLTです。僕の感覚だと、「集成材=線(柱梁)、CLT=面(壁床)」と覚えると、現場での使われ方の違いがすっきり整理できます。

CLTの構造・工法(パネル工法と軸組併用)

CLT建築の工法は、CLTパネルを壁・床・屋根として組み立てる乾式工法が基本です。大きく分けて2つの組み方があります。

  • パネル工法:CLT板を立てて壁にし、寝かせて床や屋根にする。積み木やブロックを組む感覚に近く、共同住宅・ホテルなど壁の多い用途に向く
  • 軸組併用工法:従来の木造や鉄骨などの軸組とCLTパネルを組み合わせる。大きな建物や中高層建築に使われる

いずれの場合も、CLTは工場で建物に使う形に加工されてから現場に搬入される乾式工法です。コンクリートのように現場で打設・養生するのではなく、できあがったパネルを現場で組み立てるイメージで、ここが施工スピードの速さにつながります。

工法ごとの施工方法や採用事例をさらに詳しく知りたい場合は、こちらで掘り下げています。

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個人的には、RCやS造の現場経験がある人ほど「現場で固める」から「工場で作って現場で組む」への発想の切り替えがCLT理解の入口になると思います。プレキャストコンクリートに近い感覚を持つと腹落ちしやすいです。

CLT建築の強度・性能(耐震・軽量・耐火・断熱)

CLT建築の性能は、軽くて強く、地震にも火にも一定の強さを持つのが特徴です。「木造で中層が建つのか」「地震や火事は大丈夫か」という不安に、数字で答えていきます。

主な性能を整理すると次のとおりです。

  • 軽量性:CLTは1㎥あたり約0.5t。鉄筋コンクリート(RC)の約2.4tに対しておよそ1/5の軽さで、基礎や地盤への負担が小さい
  • 耐震性:軽いほど地震時に建物にかかる力が小さくなる。阪神大震災クラスを想定した振動台実験でも、大きな損傷が出にくいという結果が報告されている
  • 耐火性:表面は炭化するが毎分約1mmとゆっくり燃え進み、厚さ90mmの壁は1時間燃えても焼け落ちないことが確認されている
  • 断熱性:厚さ90mmのCLTはコンクリート120mmとほぼ同等の断熱性能。熱伝導率も木はコンクリートの約1/10と低い

「軽い=地震に弱い」と思われがちですが、CLTはむしろ逆で、軽量化によって地震時の力そのものを減らせる点が耐震面の強みです。木の弱点とされる火についても、燃え進む速度が遅く、内部まで一気に燃え落ちにくいため、厚さと層数を適切に設計すれば法規上必要な耐火性能を満たせます。

構造の比較として、RC造やS造の特徴も押さえておくと違いが際立ちます。

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現場目線で言えば、CLTは「軽くて施工が速い木造でありながら、性能面でRC・Sと土俵に乗れる構造体」と捉えると、中高層で採用が進んでいる理由も納得できます。

CLT建築のメリットと注目される理由

CLT建築が注目されるのは、施工面のメリットに加え、林業・環境の課題解決につながるからです。建材としての利点と、社会的背景の両面があります。

まず建材としての主なメリットです。

  • 短工期:工場で加工して現場で組むため、コンクリートで1階あたり5日かかるところがCLTなら2日ほどで組み上がる。養生期間も不要
  • 軽量で基礎コスト減:自重が軽いため地盤補強や基礎の負担が小さくなり、輸送コストも抑えられる
  • 環境負荷が低い:木材はCO2を吸収・固定する。LCA(ライフサイクルアセスメント)でRC造より環境負荷が低いという研究結果もある

社会的背景としては、日本の人工林の約半数が伐採適齢期を迎えていることが大きいです。住宅需要が縮小するなかで、住宅以外の中・大規模建築を木造化できるCLTは、新たな木材需要を生み、林業の活性化や森林の若返り(CO2吸収力の維持)につながる建材として期待されています。

実務だと、施主や元請にCLTを提案する際は「工期短縮・基礎コスト減」という経済メリットと「脱炭素・木材利用」という社会的意義をセットで語れると、採用判断の後押しになります。

CLT建築の価格と「なぜ普及しないのか」

CLT建築の最大の課題は、価格の高さと国産材での生産の難しさです。メリットが多いのに普及がゆるやかなのは、ここに理由があります。

価格面では、欧州ではすでに1㎥あたり7万円を下回る単価も、日本では2019年時点で15万円と2倍以上の開きがありました。欧米はCLT市場が広くスケールメリットがあり、高性能な工場設備で安く作れるのに対し、日本は生産・流通体制がまだ十分に整っていません。

国産材での生産にも難しさがあります。

  • 国産のスギは含水率が高く、乾燥に手間と時間がかかる
  • CLTは加工工程が多く、歩留まりが約15〜30%と合板や無垢材に比べて低い
  • 山主の所有面積が小さく、原木を安定して大量供給しにくい

普及が進まない理由は価格だけではありません。設計者は「CLTの設計方法や予算に見合う使い方が分からない」、施工者は「施工方法や調達・価格が分からない」、建築主は「コストが高く木材利用のメリットが分からない」という、関係者それぞれの知識不足も大きな要因です。

正直なところ、CLTは「性能は十分だがコストと供給体制が追いついていない」という段階にあります。逆に言えば、生産量が増えてスケールメリットが効けば、価格面でも他工法と競争できるようになる余地が大きい建材です。

【施工管理視点】CLTの現場は何が違うのか

CLTの現場は、RC・S造とは段取りも注意点も大きく異なります。これは施工管理として一番知っておきたいポイントです。ここは設計・環境目線の解説記事がほとんど触れない部分なので、現場で効く話に絞って整理します。

CLTの現場で特に意識したいポイントは次のとおりです。

  • 建て方・揚重:大判パネルをレッカーで吊って組み立てる。プレキャストや鉄骨建方に近い段取りで、揚重計画とパネルの建て込み順序が工程の鍵になる
  • 接合:パネル同士はビスやドリフトピン、引きボルト、専用金物で接合する。釘打ちの在来木造とは別物で、金物の納まりと施工精度が性能に直結する
  • 雨仕舞い・養生:CLTは水に弱いのが弱点。施工中にパネルが雨で濡れると含水率が上がり、反りや品質低下の原因になるため、搬入・建て方中の防水養生が極めて重要
  • 設備配管の取り合い:CLTは面材なので、RCのように配管を躯体に埋め込めない。ふかし壁や二重天井、露出配管などで処理する段取りを設計段階から決めておく
  • 耐火・確認申請:耐火建築物として建てる場合、燃えしろ設計や被覆の有無で確認申請の内容が変わる。法規確認を早めに済ませておく

パネル同士の接合の考え方は、鉄骨と木造で異なる接合部の知識が土台になります。

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建て方の段取り自体も、鉄骨や木造の建方と共通する部分と違う部分があります。

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僕の整理では、CLTの現場で最初につまずきやすいのは「水に弱い」という性質への対応です。RCやSの感覚で雨を軽く見ると、せっかくの大判パネルが濡れて使えなくなる事態にもなりかねません。搬入から建て方完了、屋根仕舞いまでの雨対策を工程の頭に入れておくのが、CLT現場を回す第一歩だと考えています。

CLT建築の事例と補助金制度

CLT建築は、小規模なバス停から12階建てまで、用途も規模も広がっている段階です。実際の事例を知ると、自分の現場のイメージがつかみやすくなります。

国内のCLT活用建築物は2021年時点で779件に達し、その後も増え続けています。代表的な事例を挙げておきます。

  • FLATS WOODS 木場(東京都江東区):地上12階のCLT高層建築。最大で厚さ270mm・長さ約6mの大判CLTを床に使ったハイブリッド建築
  • 昭和学院小学校ウエスト館(千葉県):屋根・床・壁・階段に約700㎥分のCLTを使った2階建て校舎
  • 大崎市鳴子総合支所(宮城県):地元産木材によるCLTと集成材を組み合わせた地産地消のモデル
  • 白雲岳避難小屋(北海道):短工期・ヘリ輸送・狭小敷地という制約を、軽量なCLT工法で解決した山岳建築

事例を見ると、CLTは中高層の都市建築から、軽さを活かした山岳・小規模建築まで幅広く使われていることが分かります。

コスト面の課題に対しては、政府も補助金・助成金で後押ししています。農林水産省・林野庁のJAS構造材実証支援事業や、CLTを活用した建築物の実証事業など、調達費や設計費の一部を補助する制度があります。CLTを検討する際は、こうした支援制度を組み合わせることでコストの壁を下げられる可能性があります。最新の制度内容は年度ごとに変わるため、計画時に所管官庁の公募情報を確認するのが確実です。

CLT建築に関するよくある質問

最後に、CLT建築でよく出る疑問をまとめておきます。

CLT建築は何階建てまで可能ですか?

適切な構造設計と耐火対応をすれば、中高層も可能です。国内ではCLTと鉄骨などを組み合わせたハイブリッド構造で12階建ての事例があります。純CLT造か、鉄骨・RCとの併用かによって実現できる規模は変わるので、用途と規模に応じて工法を選びます。

CLTは本当に火事に強いのですか?

木材としては強い部類です。表面が炭化層を形成してゆっくり燃え進むため、厚さ90mmの壁は1時間燃えても焼け落ちないことが確認されています。厚さ・層数・被覆を適切に設計すれば、法規で求められる耐火性能を満たせます。

CLTとCLT工法は何が違うのですか?

CLTは建材(直交集成板)そのものを指し、CLT工法はそのCLTを使って建物を組み立てる施工方法を指します。CLT工法でつくられた建物がCLT建築です。工法の詳しい施工方法は専用の記事で解説しています。

CLTの現場は未経験でも管理できますか?

RC・S造の施工管理経験があれば、基本の考え方は応用できます。ただし、揚重計画、金物接合、特に雨に対する養生など、CLT特有の注意点を事前に押さえておくことが重要です。初めて担当する場合は、メーカーや専門業者と早い段階で施工方法をすり合わせておくと安心です。

CLT建築のまとめ

CLT建築に関する情報をまとめます。

  • CLT建築とは:直交集成板(CLT)を構造体に使った新しい木造建築
  • 集成材・合板との違い:両者の長所を組み合わせ、大判の面材として壁・床に使える
  • 構造・工法:工場加工のパネルを現場で組む乾式工法。パネル工法と軸組併用がある
  • 強度・性能:RC比約1/5の軽さ、振動実験でも損傷が少ない、90mm壁が1時間耐火、高い断熱性
  • 価格・課題:日本は約15万円/㎥と高め。国産材の歩留まりや供給体制が普及のネック
  • 施工管理視点:建て方・揚重、金物接合、雨への養生、配管の取り合い、耐火の確認申請が肝
  • 事例・補助金:12階建てから山岳小屋まで。政府の補助金でコストの壁を下げられる

以上がCLT建築のまとめです。CLTは性能面ではRC・S造と十分に渡り合える木造で、施工管理にとっては「工場で作って現場で組む」段取りと「水に弱い」性質への対応が現場を回す鍵になります。これから増える工法として、早めに基礎を押さえておくと現場で慌てずに済みます。

木造・S造・RC造を横断した構造の全体像と、CLT工法の施工詳細もあわせて読むと理解が深まります。

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