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砂防ダムとは?役割、種類、構造、効果、土砂災害との関係など

  • 砂防ダムって普通のダムと何が違うの?
  • 種類はいくつあるの?
  • どんな構造で土砂を止めてるの?
  • 不透過型と透過型ってどっちが新しいの?
  • 実際に土砂災害をどれくらい防げるの?
  • 施工管理として絡むときの注意点は?

上記の様な悩みを解決します。

砂防ダムは、上流から流れ下る土砂や流木を「敢えてゆっくり溜める」ことで、下流の集落・道路・河川を守るための土木構造物です。水を貯める普通のダムとは目的も構造もまったく別物。砂防工事は土木の現場監督が直接絡むことが多いのですが、近年は集落付近の砂防ダム周辺で電気・通信工事の付帯整備が増えていて、電気施工管理側でも輪郭は押さえておいて損はないんですよね。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

砂防ダムとは?

砂防ダムとは、結論「土石流や土砂・流木を一時的に貯めて、下流の被害を抑えるための治山治水構造物」のことです。

国土交通省の正式名称では「砂防堰堤(さぼうえんてい)」と呼ばれます。建設業界の現場では「砂防ダム」が定着していますが、国交省の図面・公告文書では基本的に「堰堤」表記なので、書類仕事のときはこちらに切り替えるのが無難ですね。

普通のダム(利水・発電・治水ダム)との一番の違いは、水を貯めることが目的ではない という点。砂防ダムは平時には水も土砂もスルーで通し、豪雨で土石流が起きたタイミングで初めて土砂を引っかけて止める「動的に効く」構造物なんです。これを知らないと「砂防ダムなのに水溜まってないじゃん」と勘違いしがちですが、それで正解。むしろ常に満砂(満杯)でも機能を失わない設計がされています。

主な目的は次の4つ。

  • 土石流の捕捉:山腹崩壊で発生した土砂を直接受け止める
  • 土砂の調整(調節):下流に流れる土砂量をピークカット
  • 河床の安定化:縦方向の浸食を止め、河床勾配を緩やかに保つ
  • 流木の捕捉:橋桁を破壊する流木を上流側で食い止める

砂防に関連する地下構造物としては暗渠やボックスカルバートがよく出てくるので、そちらも合わせて押さえておくと地形と水回りの理解が立体的になります。

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砂防ダムの種類

砂防ダムは「機能(透過性)」と「材料」の2軸で分類されます。

機能(透過性)による分類

不透過型

堤体に土砂が通り抜ける開口部を持たない、いわゆる「壁」タイプ。最も古典的で、コンクリート造の重力式が代表格です。土砂を確実に止められる反面、平常時の生態系(魚の遡上や砂利の流下)を分断するデメリットがあります。

透過型(スリットダム)

堤体の中央にスリット(隙間)を設けたタイプ。平常時は水・小さな砂利・魚をそのまま通し、土石流のような巨石・流木が来たときだけスリットに引っかかって止める仕組みです。生態系・景観への配慮が進み、近年の新設はこの透過型が増えています。

部分透過型

下部だけ開口して水を流し、上部は壁という中間タイプ。地形条件や流域の生態系の状況に応じて選定します。

材料による分類

種別 特徴 主な用途
コンクリート重力式 自重で土砂圧に抵抗。最もメジャー 中〜大規模
ソイルセメント(INSEM工法など) 現地土砂をセメント混合で堤体化 山奥・運搬条件が厳しい現場
鋼製スリット スリット部に鋼管・鋼材を組む 透過型・流木捕捉重点
鋼製枠(鋼製セル)型 鋼製枠に礫を詰めた中詰め式 仮設・段階施工

近年は、現地で出る土砂を有効利用しつつ運搬コストを削るINSEM(イン・サイチュ・ステイブライズド・マテリアル)工法が増えています。「山奥の現場までセメント運ぶのキツい問題」を、現地土砂の活用で解決した賢い工法ですね。

砂防ダムの構造

砂防ダムは見た目こそシンプルな壁ですが、各部位ごとに役割がきっちり分かれています。土木独自の部位名が多いので、ここで一気に整理しておきましょう。

堤体(本堤)

メインの壁部分。土砂圧と土石流の衝撃に耐える躯体。重力式なら自重で抵抗、鋼製スリットならスリット枠で受け止めます。

水通し

堤体の中央上部にある、平常時の水を流すための切り欠き。台形状にカットされていることがほとんどです。水通しの幅・高さは流域の計画流量から決まる ので、現場で勝手に寸法を変えると下流に水がオーバーフローして大事故になります。

袖部(そでぶ)

水通しの両脇、堤体上部の傾斜した翼部。土石流が水通しからオーバーフローしたときの予備の壁、というイメージ。袖部は計画堆砂面より上に必ず立ち上げる、というルールがあります。

水叩き(みずたたき)

堤体下流側の床版コンクリート。落下する水流の浸食から下流の地盤を守る役割。水叩きが弱いと、堤体直下が深くえぐれて転倒破壊するため、地味だけど超重要な部位です。

副堤(ふくてい)/前庭部

水叩きのさらに下流側に、もう1基小さなダムを設けて、水叩きと副堤の間で水のエネルギーを吸収させる構造。落差が大きい現場で採用されます。

護岸

堤体の上下流の岸(川岸)を保護する壁。コンクリートブロック・現場打ち・かご工など、流速と地形で選びます。河川堤防の護岸工事と考え方は近いです。

砂防ダムの効果

「で、結局どれくらい効くの?」という話ですが、効果は大きく3つに分けて整理できます。

効果1: 土砂の捕捉

満砂までの容量分は、上流から来た土砂をダム上流側に堆積させ、下流に出る量を物理的に減らします。1基あたり数千〜数十万㎥の容量を持つので、土石流1発分くらいなら受け止められる設計です。

効果2: 河床勾配の緩和

ダムができると、上流側で土砂が堆積し、ダム背後の河床勾配が緩やかになります(堆砂勾配)。勾配が緩くなる=流速が落ちる=下流への土砂運搬力が落ちる、という連鎖でじわじわ効きます。長い目で見ると山全体の安定化に効く、という意味でこちらの方が本命の効果という見方もあります。

効果3: 河床浸食の防止

ダムから下流側は、堤体の落差で浸食を受け止めます。山地河川では「下流の浸食 → 川岸崩壊 → 山腹崩壊」と崩壊が連鎖するので、河床浸食を抑えるだけで山全体の崩壊リスクを下げられるんですよね。

砂防ダムと土砂災害の関係

土砂災害は大きく「土石流」「がけ崩れ」「地すべり」の3種類があります。砂防ダムが効くのはこのうち主に 土石流 で、がけ崩れや地すべりには別の対策(擁壁、地すべり抑止杭など)が必要です。

土石流とは

雨や雪解けで山腹の土砂・岩・流木が一気に流れ下る現象。流速は時速30〜40km、巨石は数十トン級まで運ばれることがあります。家屋が一瞬で飲み込まれるレベルの破壊力なので、集落の上流に砂防ダムが入っているかどうかで被害の桁が変わります。

土砂災害警戒区域との関係

国交省・都道府県は、土石流が到達するおそれのある範囲を「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」に指定しています。砂防ダムが整備されると、この警戒区域の見直し・縮小につながることがあります。建設業の側で言うと、「ここに砂防ダム入れた結果、下流のイエローゾーンが消えて開発できるようになった」という土地利用の話とも直結します。

擁壁の話は別記事に詳しくまとめているので、土砂災害対策の全体像として合わせて読むと理解が深まります。

砂防ダム施工の注意点

施工管理として絡むときに押さえておきたいポイントを整理します。

注意点1: 山奥アクセスとの戦い

砂防ダムは山地河川の中流〜上流に建設されるため、搬入路の確保が最大のテーマ になります。生コン車・大型クレーン・鉄筋・セメントが現場に届くかどうかで、工法選定が事実上決まると言っても過言ではありません。アクセスが厳しいときは、現地土砂を活用するINSEM工法やソイルセメント系が候補に入ってきます。

注意点2: 仮排水路(仮締切)の計画

ダム本体の打設中も、川の水は止まりません。コルゲートパイプや仮設のヒューム管で 仮排水路(バイパス) を作って水を逃しつつ、堤体を打つのが基本。出水期(梅雨〜台風シーズン)に施工が重なると、仮排水路の計画が一発勝負になります。

注意点3: マスコン対策

堤体は厚みも体積も大きいため、マスコンクリートとして温度ひび割れ対策が必須です。低発熱セメント(中庸熱・低熱ポルトランド・高炉セメント)の選定、打設リフトの管理、養生計画はマスコン記事を合わせてどうぞ。

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注意点4: 環境配慮(魚道・透過型化)

近年は、河川の上下流で魚や底生生物を分断しないように、堤体に魚道を併設するケースが増えています。透過型化との合わせ技で、防災と生態系のバランスを取る設計が主流です。

注意点5: 完成後の堆積管理

砂防ダムは満砂後も機能を失わないように設計されていますが、流域によっては流木除去や定期的な土砂排出(除石)が行われます。発注者側(国交省・自治体)と協議の上で、完成後の維持管理計画も合わせて押さえる必要があります。

砂防ダムに関する情報まとめ

  • 砂防ダムとは:土石流・土砂・流木を一時貯留して下流被害を抑える堰堤(正式名称:砂防堰堤)
  • 種類:不透過型/透過型(スリットダム)/部分透過型。材料はコンクリート重力式が主流、INSEMや鋼製枠も増加中
  • 構造:堤体(本堤)・水通し・袖部・水叩き・副堤・護岸の各部位で役割分担
  • 効果:土砂の捕捉、河床勾配の緩和、河床浸食の防止
  • 土砂災害との関係:効くのは主に土石流。警戒区域の見直しとも連動
  • 施工の注意点:山奥アクセス、仮排水路、マスコン対策、環境配慮、完成後の維持管理

以上が砂防ダムに関する情報のまとめです。

砂防ダムは「水を貯めない治水構造物」という、普通のダムのイメージから一段ズレた立ち位置の構造物です。土木と環境の境界領域にあるので、施工管理として直接絡まなくても、上流の砂防整備の有無で下流側の電気・通信ケーブルの敷設リスクが変わってくる、というレベルでは押さえておきたいですね。土木側の構造物の理解は、別記事で取り上げているマスコンクリート・擁壁・暗渠あたりと合わせて読むと、地中・地表の構造物が一気につながって見えるかなと思います。

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