- 両端固定梁ってなに?
- 公式の数字が単純梁と違う理由は?
- 固定端モーメントってどう計算するの?
- たわみは単純梁より小さい?
- 実建物では両端固定梁ってどこにあるの?
- 試験で覚えるべき公式を整理したい
上記の様な悩みを解決します。
「両端固定梁」は、構造力学で必ず出てくる代表的な不静定梁です。両端が壁や柱にがっちり固定されていて、回転もたわみも一切許さない梁を理想化した形で、固定端モーメントの公式は試験頻出。本記事では、両端固定梁の公式・特徴・実建物との対応をまとめておきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
両端固定梁とは?
両端固定梁とは、結論「梁の両端が、回転もたわみも許さない『固定支点』で支えられている梁」のことです。
支点条件を整理すると次の通り。
| 支点種別 | 拘束する自由度 | 反力数 |
|---|---|---|
| ローラー支点 | 上下方向のみ | 1 |
| ピン支点 | 上下+水平 | 2 |
| 固定支点 | 上下+水平+回転 | 3 |
両端固定梁は反力数が3+3=6あり、つり合い式(3本)だけでは解けない3次不静定梁です。
両端固定梁の力学的な特徴は次の3つ。
- 両端で曲げモーメントが発生:単純梁は両端のMが0、両端固定梁は両端で大きな負のモーメント
- 中央のたわみが単純梁の1/5:拘束が強いのでたわみが大幅に小さい
- 不静定構造:たわみ角法・固定法・3モーメント定理などで解く
不静定構造の判別はこちらで整理しています。
単純梁・片持ち梁との比較
3つの梁の挙動を1表で比べると、両端固定梁の位置付けがクリアになります。
等分布荷重w・スパンL時の比較
| 区分 | 両端の最大M | 中央の最大M | 中央のたわみδ |
|---|---|---|---|
| 単純梁 | 0 | wL²/8 | 5wL⁴/(384EI) |
| 両端固定梁 | wL²/12(負) | wL²/24 | wL⁴/(384EI) |
| 片持ち梁 | wL²/2(負) | – | wL⁴/(8EI) |
両端固定梁のたわみは単純梁の1/5、最大曲げモーメントの絶対値は2/3(両端のwL²/12と単純梁のwL²/8を比較)に減ります。
「両端を固めると、たわみは大幅に減るが、両端に大きなモーメントが集中する」という関係です。
中央集中荷重P時の比較
| 区分 | 両端のM | 中央のM | 中央のたわみδ |
|---|---|---|---|
| 単純梁 | 0 | PL/4 | PL³/(48EI) |
| 両端固定梁 | PL/8(負) | PL/8 | PL³/(192EI) |
| 片持ち梁(先端集中荷重) | PL(負) | – | PL³/(3EI) |
中央集中荷重の場合、両端固定梁ではモーメントが両端と中央で同じPL/8になり、応力分布がより均等になります。
単純梁との比較はこちらでも詳述。

両端固定梁の主要公式
試験で頻出の公式を覚えやすいように整理しておきます。
等分布荷重w(全長均等にかかる場合)
- 両端の固定端モーメント:M = wL² / 12(負、絶対値)
- 中央の最大正モーメント:M = wL² / 24
- 両端の反力:R = wL / 2(左右等しい)
- 中央のたわみ:δ = wL⁴ / (384EI)
「両端 wL²/12、中央 wL²/24」と覚えておけば、設問の8割は対応可能です。
中央集中荷重P
- 両端の固定端モーメント:M = PL / 8(負)
- 中央の正モーメント:M = PL / 8
- 両端の反力:R = P / 2
- 中央のたわみ:δ = PL³ / (192EI)
両端と中央で符号は逆だが大きさは同じ(PL/8)になるのが特徴的です。
任意位置の集中荷重
任意位置a・bに集中荷重Pがかかる場合の固定端モーメントは、
- 左端:MA = Pab² / L²
- 右端:MB = Pa²b / L²
「遠い側ほどモーメントが大きい」イメージで覚えておくと符号ミスが減ります。
曲げモーメント図の描き方の基礎はこちら。
解き方(不静定3次の解法)
両端固定梁は3次不静定なので、つり合い式だけでは解けません。代表的な解法は次の3つ。
3モーメント定理を使う
両端固定の支点を「仮想の延長スパンを持つ連続梁」と見立てて、3モーメント定理を使う方法。やや回りくどいですが、連続梁の延長で解けます。
たわみ角法を使う
両端の回転角・たわみが0という変形条件を未知数の式に組み込む方法。たわみ角法のほうがフォーマルで、コンピュータ計算と相性が良いです。
たわみ角法の詳細はこちら。

固定端モーメントの公式から代入する
実は試験では、固定端モーメントの公式(wL²/12、PL/8など)を覚えていれば、解かずに答えが出ます。固定法(モーメント分配法)の最初のステップで使う「FEM(Fixed-End Moment)」がまさにこれで、両端固定梁の公式の暗記は固定法解法の前提知識です。
固定法は実務でラーメン構造を解くときの基本ツールです。ラーメン構造の解説はこちらで補足。

実建物での両端固定梁
「実建物に両端固定梁ってあるの?」という疑問は、構造力学を学んだ人が一度は持つ疑問です。
厳密には存在しないが、近似はできる
完全な両端固定(回転0、たわみ0)を実現する支点は、現実の建物には存在しません。柱や壁に剛接合された梁でも、柱自体が変形するため、「完全固定」にはならないからです。
ただし、柱が太くて剛性が高い場合や、両側に対称な梁が連続している場合は、両端固定梁に非常に近い挙動をします。
ラーメン構造の中間スパンの梁
マンションの中間スパンの大梁(左右にも梁が続いている)は、両側の柱がほぼ回転を許さないため、実質的に両端固定梁とみなして概略設計することがあります。
ラーメン構造の挙動はこちら。

鉄骨造の溶接接合梁
S造で柱と梁を完全溶接した場合は、回転拘束が非常に強く、両端固定梁に近い挙動が出やすいです。ただし、地震時には接合部のせん断変形が出るため、完全固定とまでは言えません。
なぜ両端固定梁を勉強するか
実建物で完全な両端固定梁が存在しなくても、勉強する意味は次の3つ。
- 不静定構造の解法の入り口:たわみ角法・固定法の理解の前提
- 固定端モーメント公式の暗記:実建物の概略設計で頻繁に使う
- 建築士試験頻出:1級・2級ともに固定端モーメントの問題が出る
「実建物そのものではなく、実建物を解く道具として勉強する」と捉えると、学ぶモチベーションが続きます。
両端固定梁に関する情報まとめ
- 両端固定梁とは:両端が回転・たわみを許さない固定支点で支えられた梁
- 不静定次数:3次不静定(反力6本−つり合い式3本)
- 等分布荷重時の公式:両端 M=wL²/12、中央 M=wL²/24、たわみ δ=wL⁴/(384EI)
- 中央集中荷重時の公式:両端・中央 M=PL/8、たわみ δ=PL³/(192EI)
- 単純梁との比較:たわみは1/5、両端モーメントは0→wL²/12(負)に変化
- 解き方:3モーメント定理/たわみ角法/固定端モーメント公式の暗記
- 実建物:完全な両端固定は存在しないが、対称ラーメンの中間梁が近似形
以上が両端固定梁に関する情報のまとめです。
両端固定梁は、不静定構造を学ぶときの最初の壁になりがちなんですが、「両端が回転を許さなくなった分、両端に負のモーメントが新しく現れる」というイメージを持つと一気に頭に入ります。「wL²/12と単純梁wL²/8を引き算したら wL²/24(中央モーメント)が出てくる」という関係も、構造の連続性で繋がっていて綺麗ですね。
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