- 許容曲げ応力度って結局なに?許容応力度と何が違う?
- fbっていう記号、計算式はどうなってる?
- 長期と短期、どっちがどっちで何倍?
- SS400のF値は235、SM490は325でいい?
- 板厚で値が変わるって聞いたけど40mmが境目?
- なんで曲げだけ別扱い(引張・圧縮と違う)なの?
- 横座屈って何?なんで曲げ応力度が下がるの?
- SS400とSM490の使い分けは?
- 計算書の「検定比」って何を見ればいい?
- 結局、現場で何を確認すればいい?
上記の様な悩みを解決します。
許容曲げ応力度は、結論「梁などの部材が安全に許容できる曲げ応力度(fb)」のことです。構造計算書や鉄骨製作図のチェックで必ず出てくる値ですが、長期と短期の関係や、なぜ曲げだけ横座屈で低減されるのか、SM490とSS400で何が変わるのか、が曖昧なまま、という人は多いですよね。今回はfbの計算式・長期短期・SS400/SM490のF値といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「検定比の見方」「横補剛を図面通り入れる意味」「SM490の材料確認・溶接の注意点」まで、現場で効くところを網羅的に整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
許容曲げ応力度とは?
許容曲げ応力度とは、結論「部材が安全に許容できる曲げ応力度(fb)」のことです。
そもそも曲げ応力度(σb)とは、梁などに曲げモーメントが作用したときに断面に生じる応力度のことで、「曲げモーメント M ÷ 断面係数 Z」で計算します。この曲げ応力度が、材料の許容できる限界(許容曲げ応力度 fb)を超えなければ部材は安全、という考え方です。記号は許容曲げ応力度を fb、曲げ応力度を σb で表します。
梁や柱といった主要部材には曲げモーメントが作用するので、許容曲げ応力度は構造設計の中でも特に重要な値です。鋼材には許容応力度として「許容圧縮応力度」「許容引張応力度」「許容せん断応力度」「許容曲げ応力度」がありますが、このうち曲げだけは後述する「横座屈」の影響で低減されることがある、という点が特徴です。
曲げ応力度・曲げモーメントの基本はこちらが参考になります。


僕の感覚だと、許容曲げ応力度は「梁がここまでの曲げ応力なら耐えられる、という上限ライン」とイメージすると掴みやすいです。実際の曲げ応力度(σb)がこのラインを下回っていればOK、という関係で、ここが構造計算書のチェックの基本になります。
許容応力度設計での位置づけ(検定比)
許容曲げ応力度を理解するうえで欠かせないのが、「許容応力度設計」という設計法の枠組みです。
許容応力度設計とは、結論「部材に生じる実際の応力度が、許容応力度以下に収まっているかを確認する設計法」です。式で書くと次のようになります。
- 曲げの検定:曲げ応力度 σb ≦ 許容曲げ応力度 fb
- これを比で表したものが「検定比」:σb ÷ fb ≦ 1.0
構造計算書では、各部材についてこの「検定比(σb/fb)」が一覧で出てきます。検定比が1.0以下なら許容範囲内、1.0を超えていればアウト、という見方です。施工管理として計算書をチェックするときは、この検定比が1.0を超えている部材がないか、特に1.0ギリギリの部材がどこかを把握しておくと、現場で「この梁はあまり余裕がない」という勘所が持てます。
許容応力度計算の全体像はこちらが詳しいです。

実務だと、検定比は「その部材の余裕度」を表す数字として使えます。検定比0.5なら半分の余裕、0.95ならほぼ限界、という感覚です。設計変更や開口追加の相談が来たときに、検定比に余裕のある部材かどうかで判断材料になるので、計算書の検定比一覧はざっと目を通しておく価値があります。
長期と短期の許容曲げ応力度
許容応力度には「長期」と「短期」の2種類があり、許容曲げ応力度も長期・短期で値が変わります。
- 長期許容曲げ応力度:常時かかり続ける荷重(自重・積載荷重など)に対する許容値。基準強度Fを使い「F ÷ 1.5」
- 短期許容曲げ応力度:一時的にかかる荷重(地震・暴風・積雪など)に対する許容値。「F」(長期の1.5倍)
つまり、長期と短期の関係は「短期 = 長期 × 1.5」「長期 = 短期 × 2/3」です。地震や台風のような一時的な力に対しては、常時より大きな応力度まで許容してよい、という考え方で、長期より短期のほうが許容値が大きくなります。
| 区分 | 想定する荷重 | 許容曲げ応力度 |
|---|---|---|
| 長期 | 自重・積載など常時の荷重 | F ÷ 1.5 |
| 短期 | 地震・暴風・積雪など一時的な荷重 | F |
ここで「長期=常時の荷重」「短期=地震・暴風・積雪など一時的な荷重」という対応を押さえておくと、計算書で「長期」「短期」のどちらの検定を見ているのかが分かります。
現場目線で言えば、施工中の仮設荷重や資材の仮置きも「荷重」なので、計算書で想定された積載荷重を大きく超える仮置きをしないよう管理するのも、広い意味では許容応力度の考え方とつながっています。長期・短期の区別を知っておくと、なぜその荷重制限なのかが腑に落ちます。
許容曲げ応力度の計算式(Fb1・Fb2)
許容曲げ応力度fbの計算式は、横座屈の影響を考慮するため、引張や圧縮より少し複雑です。建築基準法(鋼構造設計規準)の旧規準式では、次の2式のうち大きい方を採用できます。
- Fb1 = {1 − 0.4 × (lb/i)² ÷ (C・Λ²)} × F ÷ 1.5
- Fb2 = 89000 ÷ (lb・h / Af)
ここで lb は梁の座屈長さ(横補剛間の距離)、i は断面二次半径、C は補正係数、Λ=√(π²E / 0.6F)、h は梁せい、Af はフランジの断面積(フランジ厚×フランジ幅)です。
Fb1・Fb2はいずれも旧規準式で、手計算で求められるため実務でよく使われます。なかでもFb2式は「部材の長さ・梁せい・梁幅・フランジ厚」だけで計算でき、材料のF値も不要で簡便なので、こちらを使うことが多いです(Fb1式の計算には材料のF値が必要です)。一方、現行の新規準式は手計算レベルでは求められず、コンピュータの構造計算ソフトで処理します。
断面二次半径・断面係数の考え方はこちらが参考になります。


僕としては、施工管理が式そのものを丸暗記する必要はないと考えています。大事なのは「許容曲げ応力度は、梁の長さ(横補剛間隔)が長いほど小さくなる」という式の意味のほうです。lb(横補剛間の距離)が分母側に効いているので、横補剛が少なく梁が長く拘束されないほど、許容曲げ応力度が下がる、という関係を掴んでおけば十分実務で通用します。
横座屈と横補剛(なぜ曲げだけ低減されるか)
許容曲げ応力度が引張・圧縮と違って低減されることがあるのは、「横座屈(おうざくつ)」という現象があるためです。
横座屈とは、梁に曲げモーメントが作用したとき、梁の圧縮側フランジが横方向に倒れる(はらみ出す)ように座屈する現象です。特にH形鋼の梁は、上下フランジが薄く幅広なので、強い軸(曲げに強い向き)に対しては強くても、横方向には倒れやすい性質があります。この横座屈が起きると、本来の曲げ耐力に達する前に壊れてしまうため、許容曲げ応力度を低減して安全を見る必要があるのです。
この横座屈を防ぐのが「横補剛(よこほごう)」です。梁の途中に小梁や間柱などを取り付けて、圧縮側フランジが横に倒れないように一定間隔で拘束します。横補剛がしっかり入っていれば横座屈は起きにくく、許容曲げ応力度はF/1.5まで使えます。逆に横補剛が少ない(間隔が広い)と、許容曲げ応力度はF/1.5未満まで下がってしまいます。
横座屈・細長比と関わる断面二次半径はこちらも参考になります。

施工管理として横補剛で押さえること
ここが施工管理にとって最も重要なポイントです。横補剛材(小梁・つなぎ材など)は「見た目は小さくて省略できそうな部材」に見えますが、構造計算上は許容曲げ応力度を決める前提条件になっています。
- 横補剛材を図面通りの位置・間隔で確実に取り付ける(勝手に省略・移動しない)
- 横補剛の取り付け(ボルト・溶接)を確実に施工する
- 設計変更で横補剛を抜く相談が出たら、必ず構造設計者に確認する
正直なところ、横補剛材は現場で「なくても建ちそう」と軽視されがちですが、これを抜くと梁の許容曲げ応力度が一気に下がり、構造の前提が崩れます。「横補剛は許容曲げ応力度を担保するための重要部材」という認識を持って、図面通りに納めることが施工管理の役割です。
SS400・SM490のF値と早見表
許容曲げ応力度の計算に使う基準強度Fは、材料の種類と板厚によって決まります。
代表的な鋼材のF値は次の通りです。F値は板厚40mmを境に変わる点に注意します。
| 鋼材 | 板厚 | 基準強度 F (N/mm²) | 長期許容曲げ fb=F/1.5 | 短期許容曲げ fb=F |
|---|---|---|---|---|
| SS400 | 40mm以下 | 235 | 約156 | 235 |
| SS400 | 40mm超100mm以下 | 215 | 約143 | 215 |
| SM490 | 40mm以下 | 325 | 約216 | 325 |
| SM490 | 40mm超100mm以下 | 295 | 約196 | 295 |
SS400のF値は235、SM490のF値は325(いずれも板厚40mm以下)が基本の数字です。板厚が40mmを超えると、同じ材料でもF値が下がる(SS400で215、SM490で295)ので、厚板を使う部材では板厚を確認してF値を拾う必要があります。
SS400そのものの数値はこちらで詳しく解説しています。

なお、ここで示したのは横座屈を考慮しない場合(横補剛が十分な場合)の上限値です。前述の通り、横補剛が少ない梁では、これより小さい許容曲げ応力度になります。
僕の考えでは、F値は「材種×板厚」のセットで早見表として頭に入れておくのが実務的です。SS400=235、SM490=325という板厚40mm以下の値だけでもまず覚えて、「厚板になると下がる」という方向だけ押さえておけば、計算書の数値が妥当かどうかをその場で当たりをつけられます。
SS400とSM490の使い分け・現場確認
最後に、SS400とSM490の違いと、施工管理として現場で何を確認するかを整理します。
両者の違いは、材料の規格(用途)と強度です。
- SS400:一般構造用圧延鋼材(JIS G3101)。「SS」はSteel Structure。一般的な構造用鋼材
- SM490:溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106)。「SM」のMは溶接構造用を表す(もとは船舶用Marineに由来するとされる)。490N/mm²級で高強度
SM490は溶接構造用として溶接性に優れ、強度も高い(F値325)のが特徴です。大きな力がかかる部材や、溶接接合部の品質が重要な部材ではSM490など溶接構造用鋼材が使われます。一方、SS400は溶接性の規定がSMほど厳しくないため、重要な溶接部にはSM材やSN材(建築構造用)が選ばれることが多いです。
鋼材の材料の使い分け全体はこちらが参考になります。

施工管理としての現場確認ポイント
材料が図面通りか、施工が適切かを確認するポイントは次の通りです。
- ミルシート(鋼材検査証明書)で、材質(SS400/SM490等)・板厚・機械的性質(降伏点・引張強さ)が図面の指定と合っているか照合する
- 鋼材に表示された材質記号・ロール刻印を確認する
- SM490などの溶接構造用鋼材を溶接する際は、材料に応じた溶接施工要領(予熱の要否・溶接材料の選定・溶接後の検査)を守る
- 高強度材ほど溶接条件がシビアになるので、溶接欠陥が出ないよう管理する
溶接欠陥のチェックはこちらが参考になります。

個人的には、施工管理が許容曲げ応力度の知識を持つ意味は「計算書の数字を読める」だけでなく、「その数字を成立させる材料・横補剛・溶接を現場で担保する」ところにあると感じます。F値が325のSM490を使う設計なら、ミルシートでその材料が本当に入っているか、溶接がその強度を出せる品質かまで見届けて初めて、計算書通りの構造性能が実現します。
許容曲げ応力度に関する情報まとめ
- 許容曲げ応力度(fb)とは:部材が安全に許容できる曲げ応力度。曲げ応力度σb=M÷Z がこれを超えなければOK
- 許容応力度設計での位置づけ:σb ≦ fb、検定比(σb/fb)≦1.0 で安全。検定比は部材の余裕度を表す
- 長期と短期:長期=F/1.5(常時荷重)、短期=F(地震・暴風・積雪等)。短期=長期×1.5
- 計算式:Fb1・Fb2の大きい方を採用(旧規準式)。実務では簡便なFb2をよく使う
- 横座屈:曲げで圧縮側フランジが横に倒れる現象。曲げだけ低減されるのはこのため
- 横補剛:横座屈を防ぐ部材。図面通り入れないと許容曲げ応力度が下がる(施工で重要)
- F値(板厚40mm以下):SS400=235、SM490=325。40mm超でSS400=215、SM490=295に低下
- SS400とSM490:SS400=一般構造用、SM490=溶接構造用(Mは溶接性重視)・高強度
- 現場確認:ミルシートで材質・板厚・強度を照合、溶接は材料に応じた施工要領を守る
以上が許容曲げ応力度に関する情報のまとめです。
許容曲げ応力度は「梁が許容できる曲げ応力の上限」で、長期F/1.5・短期Fが基本、横座屈の影響で低減される点が引張・圧縮との違いです。施工管理にとっては、計算書の検定比を読めることに加えて、その数値を成立させる「横補剛を図面通り入れる」「SM490などの材料をミルシートで確認し、適切に溶接する」という現場での担保が本当の役割になります。応力度や許容応力度計算の基礎と合わせて押さえておくと、計算書チェックにも一級・二級の試験にもそのまま効いてくるはずです。
許容曲げ応力度に関するよくある質問
Q1:許容曲げ応力度と許容応力度は何が違うのですか?
「許容応力度」は、部材が許容できる応力度の総称で、許容圧縮応力度・許容引張応力度・許容せん断応力度・許容曲げ応力度などがあります。「許容曲げ応力度(fb)」はそのうち、曲げモーメントによる応力度(曲げ応力度)に対する許容値です。梁など曲げを受ける部材で重要になり、引張・圧縮と違って「横座屈」による低減があるのが特徴です。
Q2:長期と短期の許容曲げ応力度はどう違いますか?
長期は自重や積載荷重など常時かかり続ける荷重に対する許容値で「基準強度F÷1.5」、短期は地震・暴風・積雪など一時的にかかる荷重に対する許容値で「F」です。短期は長期の1.5倍(長期は短期の2/3)になります。一時的な力に対しては常時より大きな応力度まで許容してよい、という考え方です。
Q3:SS400とSM490のF値はいくつですか?
板厚40mm以下なら、SS400のF値は235N/mm²、SM490のF値は325N/mm²です。板厚が40mmを超え100mm以下になると、SS400は215、SM490は295に下がります。長期許容曲げ応力度はこのF値を1.5で割った値(SS400で約156、SM490で約216)、短期はF値そのもの(235、325)になります(横補剛が十分な場合)。
Q4:なぜ許容曲げ応力度だけ横座屈で低減されるのですか?
梁に曲げモーメントが作用すると、圧縮側のフランジが横方向に倒れる「横座屈」が起きやすいためです。特にH形鋼の梁は横方向に倒れやすく、本来の曲げ耐力に達する前に横座屈で壊れる恐れがあるので、安全を見て許容曲げ応力度を低減します。横補剛(小梁・つなぎ材)で圧縮側フランジを一定間隔で拘束すれば横座屈は起きにくく、許容曲げ応力度はF/1.5まで使えます。
Q5:横補剛材は省略してもいいですか?
省略してはいけません。横補剛材は許容曲げ応力度を決める前提条件で、構造計算上「この間隔で横補剛が入っている」ことを見込んで設計されています。横補剛を抜くと梁の許容曲げ応力度が下がり、構造の安全性が成立しなくなります。見た目が小さく省略できそうに見えても、図面通りの位置・間隔で確実に取り付けるのが鉄則です。やむを得ず変更したい場合は必ず構造設計者に確認します。
Q6:施工管理として許容曲げ応力度に関して何を確認すればいいですか?
大きく3つです。1つ目は構造計算書で曲げの検定比(σb/fb≦1.0)を確認し、余裕の少ない部材を把握すること。2つ目は横補剛材を図面通りの位置・間隔で確実に施工すること。3つ目は材料確認で、ミルシートでSS400/SM490などの材質・板厚・機械的性質が指定通りか照合し、SM490などの溶接構造用鋼材は材料に応じた溶接施工要領(予熱・溶接材料・検査)を守ることです。計算書の数値を成立させる材料と施工を現場で担保するのが役割になります。
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