- 固定法って何のための方法?
- モーメント分配法・固定モーメント法と同じもの?
- 不静定構造を解く方法なの?
- 剛比って何?どう求める?
- 分配率(分割率)の出し方は?
- 固定端モーメント(FEM)って何?
- 到達モーメントって何が「到達」するの?
- なんで1/2が相手側に伝わるの?
- 解放→到達を繰り返すって、いつ終わる(収束)?
- 計算手順を順番に・表組みで知りたい
- 符号(時計回り)が混乱する
- たわみ角法とどう違う?ソフトがある今、学ぶ意味は?
上記の様な悩みを解決します。
固定法は、構造力学で不静定構造を手計算で解くための代表的な方法です。ただ、ネット上の解説は数式中心のものが多く、「読んでも自分では解けない」という人がとても多い分野です。剛比・分配率・到達モーメントといった用語が次々に出てきて、符号や収束のところで挫折しがちです。
今回は定義・4つの用語・計算手順といった基本を押さえた上で、初学者がつまずく「到達モーメントが1/2になる理由」「表組みでの解き方」「符号と支持条件の扱い」「たわみ角法との違い」「資格・実務での位置づけ」まで、自分で解けるようになることを目標に整理しました。
なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、構造力学が苦手な方にも手順が追える内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
固定法とは?
固定法とは、結論「不静定構造(静定では解けない構造)の曲げモーメントを、手計算で解くための方法」です。アメリカのハーディ・クロスが考案した手法で、いくつかの呼び名があります。
| 呼び名 | 備考 |
|---|---|
| 固定法 | 最も短い呼称 |
| 固定モーメント法 | 教科書で多い表記 |
| モーメント分配法 | 「モーメントを分配する」性質を表す呼称 |
| クロス法 | 考案者の名前から |
これらはすべて同じ方法を指します。呼び名が複数あるせいで「別の方法かも」と混乱しがちですが、中身は一緒だと押さえておけば大丈夫です。
固定法の基本的な考え方は、「いったん全部の節点を固定して計算し、その後1つずつ固定を解放して、生じるモーメントを各部材に剛比で分配していく」というものです。この「分配」を繰り返して、本当の答えに近づけていきます。
不静定梁・不静定構造の基礎はこちらが参考になります。

曲げモーメントなど断面力の基礎はこちらが参考になります。

僕の感覚だと、固定法は「いきなり全部解こうとせず、固定して→解放して→分配して、を繰り返して近づける」という発想がキモです。一発で答えを出す方法ではなく、サイクルを回して収束させる方法。この「繰り返して近づける」イメージを最初に持っておくと、後の手順が腑に落ちます。
固定法で使う4つの用語
固定法を解くには、4つの用語を理解する必要があります。逆に言えば、この4つさえ分かれば手順は追えます。
| 用語 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 剛比 | k | 部材の曲げにくさの比(基準部材を1とした相対値) |
| 分配率(分割率) | DF | 節点で各部材にモーメントを分ける割合 |
| 固定端モーメント | FEM(C₀) | 全節点を固定したときに各端に生じるモーメント |
| 到達モーメント | C | 分配したモーメントの一部が相手端へ伝わる分 |
剛比(k)
剛比は「その部材がどれだけ曲げに対して効くか」を相対的に表した値です。部材の剛度(断面二次モーメント÷長さ、EI/L)をもとに、基準となる部材を1としたときの比で表します。剛比が大きい部材ほど、モーメントを多く受け持ちます。柱と梁の剛比の考え方はこちらが参考になります。

分配率(DF)
分配率は、ある節点に集まる部材の剛比の合計に対する、各部材の剛比の割合です。
DF=(その部材の剛比)÷(節点に集まる全部材の剛比の合計)
たとえば節点に剛比1・2・3の部材が集まっていれば、剛比3の部材の分配率は3÷(1+2+3)=0.5。つまり、その節点に生じるモーメントの半分をこの部材が受け持つ、という意味です。
固定端モーメント(FEM)
固定端モーメントは、全部の節点をいったん固定したと仮定したときに、荷重によって各部材端に生じるモーメントです。等分布荷重なら wL²/12、中央集中荷重なら PL/8 など、荷重と支持条件ごとに公式が決まっています。等分布荷重はこちらが参考になります。

到達モーメント(C)
到達モーメントは、節点で分配されたモーメント(分割モーメント)の一部が、部材の反対側の端へ伝わる分です。次の項で、なぜこれが分割モーメントの1/2になるのかを説明します。
僕としては、固定法は「用語の意味さえ分かれば、あとは表に数字を埋めるだけ」だと感じます。剛比→分配率を先に求め、固定端モーメントを出し、分配と到達を繰り返す。4用語の役割を押さえておけば、計算は機械作業になります。
なぜ到達モーメントは1/2なのか
固定法で初学者が一番「なんで?」となるのが、到達モーメントが分割モーメントの1/2になる点です。ここを理解すると、固定法の納得度が一気に上がります。
結論から言うと、両端固定の部材で一方の端にモーメントを加えると、その端には加えたモーメント、反対側の固定端にはその1/2のモーメントが生じる、という性質があるからです。これは部材のたわみの理論(材料力学)から導かれる固定の関係で、固定法はこの「1/2が伝わる」性質を利用しています。
つまり、ある節点を解放してモーメントを分配すると、各部材の手前端に分割モーメントが生じ、その1/2が部材を通って反対側の端(隣の節点)へ「到達」します。到達したモーメントは隣の節点で新たな不釣り合いを生むので、今度はその節点を解放して分配する……という連鎖が起きます。
この「分割すると半分が隣へ伝わる」という連鎖こそが、固定法で解放→到達を繰り返す理由です。
正直なところ、ここは「両端固定の梁では、片方を回すと反対側に半分の力が伝わる」という1点だけ覚えれば十分です。理論的な導出を完璧に追わなくても、「1/2が隣に飛ぶ」という性質を受け入れれば、手順は問題なく進められます。
固定法の計算手順
固定法の計算手順は、次の流れで進みます。一見複雑ですが、同じ作業の繰り返しです。
- 各部材の剛比(k)を求める
- 各節点で分配率(DF)を計算する
- 荷重から固定端モーメント(FEM)を求める
- 節点の不釣り合いモーメントを、分配率で各部材に分配する(解放)
- 分配モーメントの1/2を反対端へ伝える(到達)
- 到達によって生じた新たな不釣り合いを、再び分配する
- 値が十分小さくなるまで4〜6を繰り返す(収束)
- 各端でFEMから分配・到達をすべて合計し、最終的な曲げモーメントを求める
収束はいつ終わるか
「解放→到達をいつまで繰り返すのか」という疑問は当然です。回を重ねるごとに分配・到達するモーメントは小さくなっていき、やがて無視できる大きさになります。実務上は、必要な精度(たとえば元の値の数%以下)になったら打ち切ります。試験では2〜3サイクルで十分な精度が出る問題が多いです。
剛性マトリクス法(コンピュータでの解法)はこちらが参考になります。

個人的には、手順は「準備(剛比・分配率・固定端モーメント)→繰り返し(分配・到達)→集計」の3ブロックに分けて捉えると整理しやすいと感じます。準備さえ正確にできれば、あとは分配と到達を機械的に回すだけ。最初の準備でミスると全部ずれるので、剛比と分配率は丁寧に出すのがコツです。
表組みでの固定法の解き方
固定法は、表組みで解くのが圧倒的に分かりやすく、ミスも減ります。数式を追うより、表に数字を埋めていく感覚で進めるのがおすすめです。
表の基本フォーマット
節点・部材端ごとに列を作り、行で計算ステップを管理します。
| 行 | 記号 | 内容 |
|---|---|---|
| 分配率 | DF | 各部材端の分配率 |
| 固定端モーメント | FEM | 荷重から求めた初期値 |
| 分配 | D | 不釣り合いを分配率で分けた値 |
| 到達 | C | 分配の1/2が相手端から到達した値 |
| 分配 | D | 到達分を再び分配 |
| …繰り返し… | 収束まで | |
| 合計 | M | 各列を縦に合計=最終モーメント |
表で解く流れ
- 一番上にDF(分配率)を書き込む
- その下にFEM(固定端モーメント)を符号付きで記入
- 各節点で不釣り合い(FEMの和)を求め、符号を反転して分配率で分け、D行に記入
- Dの1/2を、矢印で結んだ相手端のC行に書き込む(到達)
- 新たな不釣り合い(C)を再びD行に分配
- これを繰り返し、最後に各列を縦に合計する
この「DF→FEM→D→C→D→C…→合計」を表で機械的に進めるのが、固定法を確実に解くコツです。具体的な数値での計算例は、構造力学の問題集で手を動かすのが一番身につきます。

僕の整理では、固定法は「数式で理解する」より「表で手を動かす」方が圧倒的に早く身につきます。最初の1問を表で最後まで解き切ると、用語の意味も手順も一気につながる。逆に数式の説明だけ読んでいると、いつまでも解けるようになりません。まず1問、表で完走するのが最短ルートです。
符号のルールと支持条件の扱い
固定法でミスが集中するのが「符号」と「支持条件の扱い」です。ここを最初に決めておくと、計算が安定します。
符号のルール
固定法では、一般に時計回りのモーメントを正(+)とする符号規約がよく使われます。重要なのは、どちらを正にするかを最初に決めて、最後まで一貫させることです。途中で符号の向きを変えると、合計の段階で破綻します。負の符号の扱いはこちらが参考になります。

支持条件による違い
支持条件によって、固定端モーメントの公式や扱いが変わります。
| 支持条件 | 扱い |
|---|---|
| 固定支持 | モーメントを伝える(標準的な固定端) |
| ピン支持(端部) | モーメントを負担しない(剛比を3/4倍する簡略法あり) |
| ローラー支持 | 鉛直反力のみ、扱いに注意 |
端部がピン支持の場合は、到達モーメントが戻ってこないため、剛比を3/4倍して計算を簡略化する方法(修正剛比)が使われます。剛接合とピン接合の違いはこちらが参考になります。

実務だと、符号は「時計回りを正と決めて貫く」、支持条件は「ピン端は剛比3/4の簡略法を使う」、この2つを最初に固定してから解き始めるのがミスを減らすコツだと感じます。符号と支持条件さえ最初に整理すれば、計算自体は淡々と進みます。
たわみ角法との違いと使い分け
不静定構造を手計算で解く方法には、固定法のほかに「たわみ角法」があります。混同されやすいので違いを整理します。
| 項目 | 固定法(モーメント分配法) | たわみ角法 |
|---|---|---|
| 考え方 | 分配と到達を繰り返して収束させる | 連立方程式を立てて解く |
| 計算の性質 | 反復計算(近似的に近づける) | 直接解(連立方程式を解く) |
| 向いている構造 | 節点が多い構造(表で処理しやすい) | 節点が少ない構造 |
| つまずきやすさ | 手順は単純だが繰り返しが多い | 方程式を立てる発想が必要 |
ざっくり言うと、固定法は「機械的に表を回す」方法、たわみ角法は「方程式を立てて一気に解く」方法です。節点が多くて方程式が増える場合は固定法が、節点が少なくシンプルな場合はたわみ角法が向く傾向があります。
ラーメン構造そのものの理解はこちらが参考になります。

門型ラーメンはこちらが参考になります。

現場目線で言えば、両方とも「不静定を手計算で解く道具」で、得意な場面が違うだけです。固定法は繰り返しが多いけれど発想がシンプル、たわみ角法は方程式を立てる頭の切り替えが要る。試験ではどちらも問われるので、固定法は表で、たわみ角法は方程式で、と解き方をセットで覚えておくと安心です。
実務・資格での固定法の位置づけ
「ソフトで構造計算できる時代に、固定法を手で覚える意味があるのか」という疑問は当然です。位置づけを整理します。
実務での位置づけ
実務の構造計算は、現在は専用ソフト(剛性マトリクス法)で行うのが標準で、固定法を手計算する場面はほとんどありません。ただし、原理を理解していると、ソフトが出した結果の妥当性を感覚でチェックできる、簡単な検算ができる、構造の挙動(どこにモーメントが集まるか)を直感的に掴める、といった土台になります。
資格試験での位置づけ
固定法は、建築士・構造系の資格試験で出題範囲に入ります。ただし出題頻度や配点は試験・年度によって変わるため、最新の出題傾向を確認した上で、学習の優先順位を判断するのが現実的です。構造力学全体の中では、不静定構造の解法という重要な一角を占めます。
自分としては、固定法は「実務で手計算はしないが、構造の感覚を養う基礎として価値がある」と捉えるのがバランスが良いと感じます。ソフトに数字を入れて終わりではなく、「この骨組みならこの辺にモーメントが集中するはず」と読める力は、固定法のような手計算で養われる。資格のためだけでなく、構造を扱う土台として学ぶ価値はあります。
固定法に関する情報まとめ
- 定義:不静定構造の曲げモーメントを手計算で解く方法(固定モーメント法・モーメント分配法・クロス法は同じもの)
- 基本発想:全節点を固定→1つずつ解放→剛比で分配→繰り返して収束させる
- 4つの用語:剛比k/分配率DF/固定端モーメントFEM/到達モーメントC
- 分配率:DF=その部材の剛比÷節点に集まる全剛比の合計
- 到達モーメント:分配モーメントの1/2が相手端へ伝わる(両端固定の性質)
- 計算手順:準備(剛比・分配率・FEM)→繰り返し(分配・到達)→集計
- 解き方:表組み(DF→FEM→D→C→…→合計)で機械的に進めるのが確実
- 符号:時計回りを正に固定して一貫、ピン端は剛比3/4の簡略法
- たわみ角法との違い:固定法=反復計算、たわみ角法=連立方程式の直接解
- 位置づけ:実務はソフトが標準だが、構造の感覚を養う基礎として価値がある
以上が固定法に関する情報のまとめです。
固定法は「全部固定して、1つずつ解放し、剛比で分配して、半分を隣へ到達させる」を繰り返して不静定構造を解く方法です。数式で身構えず、剛比・分配率・固定端モーメント・到達モーメントの4用語を押さえて、表組みで1問を完走すれば、一気に解けるようになります。実務ではソフトが主役ですが、構造の挙動を感覚で読む力の土台になるので、資格・実務の両面で学ぶ価値があります。不静定梁・断面力・剛接合といった各論の記事と合わせて読むと、理解が立体的になります。
固定法に関するよくある質問
Q1:固定法とモーメント分配法・固定モーメント法は違うものですか?
同じものです。固定法・固定モーメント法・モーメント分配法・クロス法は、すべてアメリカのハーディ・クロスが考案した同一の方法を指します。呼び名が複数あるため別の方法と誤解されがちですが、中身は一緒です。「全節点を固定し、1つずつ解放してモーメントを剛比で分配し、繰り返して収束させる」という不静定構造の手計算法です。
Q2:剛比と分配率はどう違いますか?
剛比(k)は、部材ごとの曲げにくさを相対的に表した値で、剛度(EI/L)をもとに基準部材を1として求めます。分配率(DF)は、ある節点に集まる部材の剛比の合計に対する、各部材の剛比の割合です。たとえば節点に剛比1・2・3の部材が集まれば、剛比3の部材の分配率は3÷6=0.5。剛比が「各部材の能力」、分配率が「その節点でモーメントを分ける割合」と捉えると分かりやすいです。
Q3:到達モーメントはなぜ分配モーメントの1/2になるのですか?
両端固定の部材で一方の端にモーメントを加えると、反対側の固定端にはその1/2のモーメントが生じる、という材料力学の性質によります。固定法はこの性質を利用していて、節点を解放して分配したモーメントの1/2が、部材を通って反対側の端(隣の節点)へ「到達」します。理論的な導出を完璧に追わなくても、「両端固定では片端を回すと半分が反対端へ伝わる」と覚えれば手順は進められます。
Q4:解放と到達はいつまで繰り返せばいいですか?
分配・到達するモーメントが十分小さくなる(無視できる大きさになる)まで繰り返します。回を重ねるごとに値は小さくなっていくため、実務では必要な精度(元の値の数%以下など)に達したら打ち切ります。資格試験の問題では、2〜3サイクルで十分な精度が得られるものが多いです。値が収束していく性質を持つので、無限に続けるわけではありません。
Q5:固定法とたわみ角法はどちらを使えばいいですか?
構造の規模で使い分けます。固定法は分配と到達を繰り返す反復計算で、節点が多い構造でも表で機械的に処理できます。たわみ角法は連立方程式を立てて直接解く方法で、節点が少ないシンプルな構造に向きます。節点が多くて方程式が増える場合は固定法、節点が少ない場合はたわみ角法が解きやすい傾向です。試験では両方問われるので、固定法は表で、たわみ角法は方程式で、とセットで覚えておくと安心です。
Q6:ソフトがある今、固定法を学ぶ意味はありますか?
あります。実務の構造計算は専用ソフト(剛性マトリクス法)が標準で、固定法を手計算する場面はほとんどありません。ただし原理を理解していると、ソフトの結果の妥当性を感覚でチェックでき、構造のどこにモーメントが集まるかを直感的に読めるようになります。資格試験の出題範囲でもあり、構造の挙動を読む力の土台として、学ぶ価値のある手法です。
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