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固定法とは?モーメント分配法、不静定構造、剛比、計算手順など

  • 固定法ってなに?モーメント分配法と同じ?
  • 不静定構造を解くって具体的に何をするの?
  • 剛度・剛比・分配率の違いがよく分からない
  • 到達モーメント(伝達モーメント)の意味は?
  • 計算手順を1から知りたい
  • マトリクス法と何が違うの?

上記の様な悩みを解決します。

固定法は、構造力学の中でもラーメン構造の応力を手計算で解くための代表的な手法。コンピュータが普及した今でも、剛度・剛比・分配率の感覚を養うには欠かせない解法で、構造設計の入門書では必ず登場します。「節点を一旦固定して、ぐるりと釣り合いを回しながら徐々に解く」というイメージさえ掴めば、複雑な計算式に見える固定法もスッと頭に入ってきますね。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

固定法とは?

固定法とは、結論「ラーメン構造などの不静定構造の応力を、節点を固定→開放を繰り返して収束させていく解析手法」のことです。

英語では Moment Distribution Method。日本語では「モーメント分配法」「ハーディ・クロス法(Hardy Cross Method)」などとも呼ばれます。1930年代にアメリカの構造技術者ハーディ・クロスが発表した手法で、コンピュータがない時代に手計算で不静定構造を解くための画期的な方法として広まりました。

ざっくりイメージすると

ラーメン構造の柱と梁が交わる節点で、

  1. 一度すべての節点をガッチリ固定する(固定端モーメントを計算)
  2. その後、節点を1つずつ順番に開放して、不釣り合いモーメントを各部材に剛比に応じて分配
  3. 分配されたモーメントの半分が反対端に伝達(到達モーメント)
  4. これを繰り返して残差がほぼゼロになるまで収束させる

という流れ。「節点に溜まった不釣り合いをぐるぐる回して薄めていく」ようなイメージです。

なぜ建築で重要か

ラーメン構造は基本的に不静定構造。釣り合い式(ΣV=0、ΣH=0、ΣM=0)の3本だけでは未知反力の数が足りずに解けません。固定法は変位法(剛性法)の発想を手計算用に簡略化したもので、コンピュータ計算が当たり前になった現代でも、

  • 構造力学の試験で必ず出題される基礎手法
  • 一級建築士の構造分野で頻出
  • 設計実務で電卓レベルの概算検討に使える
  • マトリクス法(剛性マトリクス法)の理解の前段階

として、構造設計者なら必ず通る登竜門ですね。

構造体の主要構造部の整理は別記事も参考にしてください。

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固定法に必要な3つの基本量(剛度・剛比・分配率)

固定法を使う前に、剛度・剛比・分配率という3つの基本量を理解しておく必要があります。ここがフワッとしているとずっと迷子になるので、最初に一気に整理します。

①剛度 K(Stiffness)

剛度とは、部材が変形しにくさを表す指標で、

K = E × I / L

  • E:ヤング率(材料の硬さ)
  • I:断面二次モーメント(断面の形状効率)
  • L:部材長

で計算します。「同じ断面でも、長い部材ほど剛度は小さく、変形しやすい」という直感に合います。

②剛比 k

剛比とは、節点に集まる複数の部材の剛度を、ある基準値で割って無次元化したもの

k = K / K0

  • K0:基準剛度(適当に決めた基準値)

剛比を使うのは、手計算で扱いやすい数字に直すため。たとえば各部材の剛度が「1230、4920、2460」のように汚い数字でも、基準を1230にすれば「1、4、2」とスッキリした比率になります。

③分配率 D(Distribution Factor)

分配率とは、節点に集まった不釣り合いモーメントを、各部材にどの割合で分配するかを表す比率。

D = ki / Σk

  • ki:その部材の剛比
  • Σk:節点に集まる全部材の剛比の合計

剛比が大きい部材ほど、不釣り合いモーメントを多く受け持つのが分配率の本質。「硬い部材ほど頑張る」と覚えておけばOK。

剛度・剛比・分配率の関係表

項目 記号 意味 単位
剛度 K 部材の変形しにくさ N・mm(曲げ剛性/長さ)
剛比 k 剛度を基準値で割った比率 無次元
分配率 D 節点での分配割合 無次元(節点ごとに合計1.0)

節点の分配率の合計は必ず1.0になるのがチェックポイント。「節点に集まった不釣り合いモーメントを100%分け合う」ので当然ですね。

影響線の解説は別記事を参照してください(剛比・分配率の関連概念)。

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固定法(モーメント分配法)の手順

ここから本題の計算手順です。固定法は5ステップで進みます。

ステップ1:固定端モーメント(C)を計算する

まず、すべての節点を完全に固定して、外力(集中荷重・等分布荷重など)による固定端モーメントを求めます。

主な公式は、

荷重条件 両端固定梁の固定端モーメント
中央集中荷重P M = P・L / 8
等分布荷重w M = w・L² / 12
三角形分布荷重 M = w・L² / 20(最大端)
偏心集中荷重Pa,b M = P・a・b² / L²

ここで注意が必要なのは符号の取り方。一般に「節点を時計回りに回そうとするモーメントを正」とする規約が多いですが、教科書によって違うので、最初に決めて統一すること。

ステップ2:分配率(D)を計算する

各節点で、集まる部材の剛比から分配率を計算します。

例:節点Bに梁BCと柱BAが集まっていて、剛比がそれぞれ kBC = 4、kBA = 2 なら、

  • DBC = 4 / (4+2) = 0.667
  • DBA = 2 / (4+2) = 0.333

合計が1.0になっているかを必ずチェック。

ステップ3:不釣り合いモーメントを分配する

節点に集まった固定端モーメントの代数和不釣り合いモーメント。これを節点で符号を反転して、分配率に応じて各部材に振り分けます。

節点を開放したときに釣り合いを取り戻すための逆向きのモーメント」を加える、というイメージ。

ステップ4:到達モーメント(C×1/2)を反対端に伝達

ある部材の節点側で分配されたモーメントの半分(1/2)が、反対端に同符号で伝達されます。これを到達モーメント(Carry-Over Moment)と呼びます。

自分の節点が動いたら、反対端は半分だけ振動する」イメージ。両端固定梁の幾何学的な性質から導かれる係数で、固定法の核心ともいえる部分です。

ステップ5:収束するまでステップ3〜4を繰り返す

到達モーメントが反対端に届くと、その節点でも新しい不釣り合いが発生します。再度節点を開放→分配→伝達を繰り返します。

繰り返すたびに不釣り合いモーメントの絶対値が小さくなっていき、残差が無視できる大きさになったら計算終了。実務では2〜3回の繰り返しで十分な精度が出ることが多いですね。

最終的に、各部材の節点モーメント = 固定端モーメント + 累積した分配モーメント + 累積した到達モーメント で求まります。

固定法と他の解法の違い

不静定構造の解法は固定法だけではありません。代表的な手法と比較しておきます。

①固定法 vs たわみ角法

項目 固定法 たわみ角法
計算方法 反復計算で収束 連立方程式を解く
手間 手計算向き 未知数が多いと大変
精度 反復回数で調整 厳密解
適用範囲 ラーメン全般 ラーメン全般
学習難度 直感的 数学的

たわみ角法は節点回転角を未知数として連立方程式を立てる手法。理論的にはより厳密ですが、未知数が3個以上になるとかなりの計算量になります。固定法は「適当に答えを当てて、ズレを直していく」反復計算なので、未知数が増えても1ステップが楽。

②固定法 vs マトリクス法(剛性法)

項目 固定法 マトリクス法
計算手段 手計算 コンピュータ
表現 数値の表 行列演算
規模 中小規模 大規模
設計実務 概算・検算 本設計

実務の構造設計ではマトリクス法(剛性法)をベースにした構造解析ソフトが主流。固定法はソフトの計算結果を概算でチェックする用途や、学習・教育の場で使われています。

コンピュータが出した値が妥当か、固定法で簡易検算」という使い方ができると、構造設計者として一段プロらしくなりますね。

剛性率は固定法と直結する指標なので別記事も参考にしてください。

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③固定法 vs 仮想仕事法

仮想仕事法はエネルギー保存則をベースにした手法で、たわみや反力を求めるのに向いています。固定法は節点モーメントを直接求めるのが得意で、用途が違います。

固定法の簡単な計算例

具体的な数字で固定法を体感しましょう。両端固定梁ABに中央集中荷重P=100kN、L=4mがかかったケースを、節点A・Bが固定の状態から固定法で解いてみます。

ステップ1:固定端モーメント

両端固定梁の中央集中荷重Pでは、

  • MA = -P・L / 8 = -100×4/8 = -50 kN・m
  • MB = +P・L / 8 = +50 kN・m

ステップ2:分配率

両端完全固定なので、分配率は両節点で0.0(節点を回す自由度がない)。

ステップ3〜5:分配・到達なし

完全固定では分配の必要がないので、MA = -50、MB = +50 がそのまま最終解。

…これだけだと固定法のありがたみが分からないので、節点Bが剛接合のラーメン構造にしてみます。

例題2:節点Bで柱と梁が剛接合された片側固定梁

  • 梁ABの剛度:4
  • 柱BCの剛度:2
  • 節点Bの分配率:DBA = 4/(4+2) = 0.667、DBC = 2/(4+2) = 0.333

ステップ1:固定端モーメント … 上と同じく MA=-50、MB=+50

ステップ2〜3:節点Bを開放

節点Bの不釣り合いモーメント = +50 kN・m。これを符号反転して分配:

  • 梁BAへの分配 = -50 × 0.667 = -33.3 kN・m
  • 柱BCへの分配 = -50 × 0.333 = -16.7 kN・m

ステップ4:到達モーメント

  • 梁BAの分配-33.3の半分が、反対端Aに伝達 → MA に +(-33.3/2)=-16.7 kN・m が加算
  • 柱BCの分配-16.7の半分が、柱の反対端Cに伝達 → MC = -8.3 kN・m

ステップ5:節点Aを開放

節点Aは固定なので、ここで計算終了。最終解は、

  • MA = -50 + (-16.7) = -66.7 kN・m
  • MB側梁端 = +50 + (-33.3) = +16.7 kN・m
  • 柱BC側上端 = -16.7 kN・m
  • 柱BC側下端C = -8.3 kN・m

このように、節点を順番に開放しながら釣り合いを取り戻すのが固定法の進め方ですね。

層間変形角の解説を押さえておくと、固定法で求めたモーメントが現場でどう効いてくるかが腹落ちしやすいです。

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固定法を使うときの注意点

固定法は便利な手法ですが、現場で混乱しやすいポイントがいくつかあります。

①符号規約の統一

教科書や問題集によってモーメントの符号規約が違います。

  • 時計回りを正
  • 反時計回りを正
  • 部材の右側引張を正

など複数の流儀があるので、1つの問題内では絶対に統一すること。途中で符号がバラバラになると、最終解が全部おかしくなります。

②到達モーメントの係数1/2は両端固定梁限定

到達モーメント = 分配モーメント × 1/2 という係数は、両端ピンや片側固定など端部条件が違うと変わります

反対端の条件 到達係数
完全固定 1/2
ピン(自由回転) 0(伝達されない)
ローラー 0

カンチレバー(片持ち梁)の自由端を含む場合などは、修正剛度(K_modified = (3/4)×K)を使うなどの工夫が必要。

③収束速度は剛比で決まる

剛比のバランスが悪い(極端に大きな剛比と小さな剛比が混在する)と、収束が遅くなることがあります。実務では3〜4回の反復で済むことが多いですが、収束しない場合は計算ミスを疑うのが先。

④斜め部材・水平変位を含む構造には限界

純粋な固定法は節点回転のみを扱う手法。斜材を含むトラスや、節点が水平移動するラーメン(層間変位を考慮するケース)では、追加で移動の方法などを併用する必要があります。

⑤実務ではあくまで概算検算用

設計実務では構造解析ソフトの結果が正なので、固定法は「ソフトの結果が直感的に正しいか」を電卓で確認するためのもの。「ソフトが出した梁端モーメントが、剛比から見て妥当な分配になっているか」という視点で使えると、設計レビューの精度が一段上がります。

⑥試験では計算ミスとの戦い

一級建築士や構造設計一級建築士の試験では、固定法そのものより四則計算のミスで失点することの方が多いと言われます。剛比・分配率の合計チェック符号の確認収束の確認を徹底して、計算ミスを防ぐのが合格への近道。

固定法に関する情報まとめ

最後に、固定法の重要ポイントを整理します。

  • 固定法とは:ラーメン構造などの不静定構造の応力を、節点固定→開放→分配→伝達を繰り返して解く反復解析法。モーメント分配法・ハーディ・クロス法とも呼ぶ
  • 3つの基本量:剛度K(=EI/L)、剛比k(剛度を基準で割った比)、分配率D(節点での分配割合、合計1.0)
  • 手順5ステップ:固定端モーメント計算→分配率計算→不釣り合い分配→到達モーメント伝達→収束まで繰り返し
  • 到達モーメントの係数:両端固定梁では1/2(節点で動いた分の半分が反対端に伝達)
  • 他の解法との違い:たわみ角法は連立方程式、マトリクス法はコンピュータ向き、固定法は手計算向き
  • 注意点:符号規約の統一、端部条件による到達係数の違い、水平変位を含むラーメンへの限界

以上が固定法に関する情報のまとめです。

固定法は「節点を一旦固定→不釣り合いを徐々に振り分けて解く」という発想さえ掴めば、見た目ほど難しくありません。剛度・剛比・分配率の3つの基本量を体に染み込ませると、構造解析ソフトの結果を見ても「この梁端モーメントは剛比から見て妥当だな」と直感的に判断できるようになります。一通り固定法の基礎知識は理解できたと思います。

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