- 防煙垂れ壁って結局どこに入れなきゃいけないの?
- 高さ50cmって天井から?床から?
- 天井高が足りなくて500mm取れないときどうする?
- 防煙壁と防煙垂れ壁って同じ?防火垂れ壁とは違うの?
- 不燃材料で造るって、ボード何でもいいの?
- 500㎡区画ってどう数えるの?
- 扉の上が垂れ壁扱いって本当?
- ガラスの垂れ壁、地震で割れない?
- 可動式の点検って消防?建築?
- ダクトや配管が垂れ壁を貫通するときの処理は?
- 告示1436号で免除できるって聞いたけど条件は?
- 結局、自分の現場に当てはめると何をすればいい?
上記の様な悩みを解決します。
防煙垂れ壁は、排煙設備の計画とセットで出てくる、施工管理にとって避けて通れない部材です。「天井から50cm垂らせばいい」とだけ覚えていると、天井高が足りない場面や、扉の上部が垂れ壁扱いになる場面、ダクトが貫通する場面で必ず詰まります。今回は定義・設置基準・高さ・構造・種類といった法令の基本を正確に押さえた上で、現役の施工管理目線で「天井高と500mmの取り合い」「下地・納まり・貫通処理」「建築と消防どちらの検査か」といった、現場で実際にハマるポイントまで整理しました。
なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、施工図をチェックする若手の方にも、設備との取り合いで悩んでいる方にも役立つ内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
防煙垂れ壁とは?
防煙垂れ壁とは、結論「火災時に煙が水平方向へ広がるのを防ぐために、天井から下方へ垂らして設ける壁状の部材」のことです。建築基準法では「防煙垂れ壁」ではなく、正式には「防煙壁」という言葉で定義されています。
火災で本当に怖いのは炎よりも煙です。火災が起きると、高温の煙はまず天井に沿って一気に水平に広がっていきます。この「天井を這う煙」を、天井から垂れ下がった壁でせき止め、一定の区画内に煙を閉じ込めて、避難の時間を稼ぐ。これが防煙垂れ壁の役割です。
防煙垂れ壁は、排煙設備の計画と必ずセットになります。排煙設備は「床面積500㎡以内ごとに防煙壁で区画する」という考え方が基本にあり、その区画を作るのが防煙垂れ壁だからです。つまり、防煙垂れ壁単体で考えるのではなく、「排煙計画の一部」として捉えるのが正しい理解です。
排煙設備そのものの全体像は、こちらが詳しいです。

僕の整理では、防煙垂れ壁は「煙の堤防」とイメージすると分かりやすいです。堤防が水をせき止めるように、垂れ壁が天井を這う煙をせき止めて、各区画から隣の区画へ流れ込むのを遅らせる。この「区画する」という発想を押さえると、後述の高さや位置の規定がすべて腑に落ちます。
防煙壁・防火壁・防火垂れ壁の違い
現場でよく混乱するのが、「防煙壁」「防火壁」「防火垂れ壁」という似た用語です。ここを整理しておかないと、図面の指示を読み違えます。
| 用語 | 目的 | 何を防ぐか | 主な根拠 |
|---|---|---|---|
| 防煙壁(防煙垂れ壁) | 排煙計画上、煙を区画する | 煙の水平拡散 | 建基令126条の2(排煙設備) |
| 防火壁 | 延焼を防ぐための壁 | 火(延焼) | 建基法26条ほか |
| 防火区画 | 建物を区画して延焼を抑える | 火・煙の拡大 | 建基令112条 |
ざっくり言うと、防煙壁は「煙」を止めるもの、防火壁・防火区画は「火(延焼)」を止めるものです。狙っている対象がそもそも違います。
「防火垂れ壁」という言い方は法律上の正式用語ではなく、現場では防火区画を構成する垂れ壁部分を指して使われることが多いです。一方「防煙垂れ壁」は、排煙計画で煙を区画する垂れ壁を指します。図面で「垂れ壁」とだけ書かれていたら、それが防煙目的(排煙計画の区画)なのか、防火区画の一部なのかを必ず確認する必要があります。根拠条文も要求性能(不燃か準耐火か等)も変わるからです。
防火区画やその貫通処理については、こちらで詳しく解説しています。

防煙垂れ壁の設置基準(建築基準法と500㎡区画)
防煙垂れ壁(防煙壁)の根拠条文は2つに分かれます。まず「防煙壁」という言葉の定義は、建築基準法施行令126条の2(排煙設備の設置)にあります。条文では「間仕切壁、天井面から50cm以上下方に突出した垂れ壁、その他これらと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので、不燃材料で造り、又は覆われたもの」を「防煙壁」と定義しています。
そして、排煙設備が必要な建物での「床面積500㎡以内ごとに防煙壁で区画する」という規定は、排煙設備の構造を定めた施行令126条の3(第1項第一号)にあります。つまり「防煙壁とは何か(定義)」が126条の2、「500㎡以内ごとに防煙壁で区画せよ(構造基準)」が126条の3、という役割分担です。排煙設備が必要な建物では、500㎡を超える空間を、防煙壁(防煙垂れ壁)で500㎡以内ごとに分割する必要があります。
500㎡区画の数え方のポイントは次の通りです。
- 区画する床面積は、防煙壁で囲まれた部分ごとに500㎡以内
- 排煙設備は、この防煙区画ごとに有効な排煙ができるように計画する
- 防煙区画をまたいで1つの排煙窓・排煙機でカバーすることはできない
つまり、防煙垂れ壁の位置は「どこで500㎡に区切るか」「排煙窓・排煙口をどこに置くか」と一体で決まります。意匠・設備・排煙計算がセットになるので、施工管理としては「垂れ壁の位置=排煙区画の境界」という意識を持っておくと、施工図のチェック精度が上がります。
なお、排煙設備まわりは2025年(令和7年)にも改正があり、排煙窓の高さの算定などが見直されています。最新の改正内容は確認しておくと安心です。

防煙垂れ壁の高さ(50cm/300mm緩和)
防煙垂れ壁の高さは、原則「天井面から50cm(500mm)以上下方に突出させる」ことが必要です。ここでよくある誤解が「50cmは床から?天井から?」ですが、答えは天井からです。天井面を基準に、そこから下に50cm以上垂らす、と覚えてください。
この50cmという数字には根拠があります。火災時の煙はまず天井付近に層を作って広がるので、その煙層をせき止めるのに必要な突出量として50cmが定められています。
高さを緩和できるケース(300mmまで)
天井が低くて500mm取れない、という現場は珍しくありません。建具高さ2000mmの扉の上を垂れ壁とみなす場合、天井高2500mm以上が必要になり、一般的な内装では当たってしまうことがあります。
この場合の緩和として、次のいずれかの構造を持つ不燃製の戸(鉄製扉など)の上部であれば、垂れ壁高さを300mmまで低くしても防煙間仕切り壁とみなされる、という扱いがあります。
- 常時閉鎖式の不燃戸
- 煙感知器と連動して閉鎖する不燃戸
ただし、この300mm緩和は建築基準法の本文ではなく「建築物の防火避難規定の解説」という運用上の書籍に記されているものです。確認検査機関や特定行政庁の判断によるので、設計者・審査側と必ず事前協議してから採用するのが安全です。
扉の上部も垂れ壁扱いになる
見落としがちなのが、防煙区画を構成する扉の上部(建具上端から天井までの部分)も防煙垂れ壁とみなされる点です。つまり、防煙区画の境界に扉を設けるなら、建具上端から天井まで原則500mm以上が必要になります。施工図で建具と天井の取り合いを見るときは、ここを必ずチェックしてください。
個人的には、垂れ壁で一番トラブルになるのがこの「高さが取れるか」の部分だと思っています。法令の数字(500mm/300mm緩和)と、実際の天井高・建具高さの取り合いを、施工図の段階で必ず突き合わせておくべきポイントです。
構造・材質(不燃材料で造る・覆う)
防煙垂れ壁は、次のいずれかの構造でなければなりません。
- 不燃材料で造る
- 不燃材料で覆う
代表的なのは、不燃材料の石膏ボード(化粧ボード含む)、金属パネル、ガラス(不燃材料として認められたもの)などです。ガラスは告示で不燃性能が認められているため「不燃材料で造る」に該当しますが、垂れ壁にガラスを使う場合は、防火避難規定の解説で網入りガラスが推奨されています(破損・落下対策)。
「不燃材料で覆う」の考え方も押さえておくと現場で役立ちます。下地や仕上げそのものが不燃でなくても、次のような構成なら防煙垂れ壁として認められる場合があります。
- 下地(壁本体)をコンクリート・ALCなど不燃材料で造れば、その表面の壁紙・塗料の仕上げまでは不燃性能を問われない
- 表面側を不燃認定の壁紙・塗料、または不燃の化粧ボードとすれば、内部の構成について不燃性能を問われない
要は「煙をせき止める壁本体が不燃で構成されていればよい」という発想です。内装の仕上げを優先したい場合でも、下地で不燃を成立させれば成り立つので、意匠との調整の余地があります。
垂れ壁の下地ボードには、防火認定のある強化石膏ボードが使われることも多いです。

防煙垂れ壁が必要になる位置
排煙設備が必要な建物で、防煙垂れ壁を設けるべき主な位置は次の通りです。
- 500㎡以内ごとの防煙区画:排煙計画の基本。大空間を500㎡以内に区切る
- 告示1436号で排煙設備を免除する場合の区画:免除条件として防煙壁の設置が求められるケース
- 階段・エスカレーター・吹き抜け周り:竪穴的に煙が上昇・拡散する部分を区画する
特に階段・エスカレーター・吹き抜けは、煙が上下方向にも広がりやすい弱点部です。階段室は排煙の免除規定が適用されることが多い一方で、階段とその他の部分を防煙壁で区画する必要があります。エスカレーターや吹き抜けは開口が大きく煙が拡散しやすいので、周囲に防煙垂れ壁を配置して区画します。
現場目線で言えば、この「位置」は意匠図・排煙計算と一体で決まるので、施工側が勝手に動かせるものではありません。施工図に落とすときは、排煙区画の境界線(=垂れ壁の位置)が排煙計算の前提とずれていないかを照合するのが大事です。
種類(固定式・可動式と素材)
防煙垂れ壁は、大きく固定式と可動式に分かれます。
| 種類 | 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 固定式 | 常時設置されている垂れ壁 | 確実に煙を遮断、メンテが軽い | 常に空間を区切り開放感を損なう |
| 可動式 | 火災時に降下する垂れ壁 | 通常時は収納で開放的、意匠性が高い | 作動機構の信頼性確保・定期点検が必要 |
可動式は、煙感知器と連動して火災時に自動で降下する仕組みです。普段は天井に収納されているので空間の開放感を保てますが、特殊な防火設備として位置づけられ、設計に当たっては次のような要件があります。
- 火災時に有効に作動すること
- 降下後、垂れ壁の高さは50cm以上とし、床面から1.8m以上の空間を確保すること
- 煙感知器に連動し、近くに手動降下装置を設けること
- 中央管理室(防災センター)が必要な建物では、作動の制御・監視ができること
素材は、ガラス・不燃シート・軽量パネルなどから選びます。ガラスは透明で開放感がありますが地震時の破損リスクがあり、近年は地震時の安全性を理由に不燃シートや軽量パネルへ移行する例も増えています。可動式には軽量なシート素材が多く使われます。
排煙設備・告示1436号との関係(免除・緩和)
防煙垂れ壁は排煙設備とセットですが、逆に「排煙設備が免除される」場合にも防煙壁が登場します。代表が告示1436号(排煙設備の免除・緩和)です。
告示1436号では、室の用途・床面積・内装制限・区画の条件を満たすと排煙設備を免除できますが、その条件の中に「防煙垂れ壁による区画」が入ってくるケースがあります。たとえば、排煙窓を設置できない物置・更衣室などは、告示1436号を適用して排煙設備を免除する代わりに、防煙垂れ壁で区画する、という設計になりがちです。
整理すると、防煙垂れ壁が出てくる場面は次の2系統です。
- 排煙設備を設ける場合:500㎡以内ごとの防煙区画を作るために設置
- 排煙設備を免除する場合:告示1436号などの免除条件として設置
つまり「排煙設備があってもなくても、防煙垂れ壁の検討は必要になりうる」ということです。免除規定(避難安全検証法や告示1436号)が絡むと条文が一気に複雑になるので、設計者・審査機関と前提条件をすり合わせてから施工図に落とすのが鉄則です。
消火・防火設備の全体像はこちらが参考になります。

【施工】天井高と高さ500mmの取り合い
ここからは施工管理目線の実務です。防煙垂れ壁で現場が一番ハマるのが、「天井高と垂れ壁高さ500mmの取り合い」です。
たとえば、防煙区画の境界に高さ2000mmの建具があると、その上端から天井まで500mm必要なので、天井高は2500mm以上ないと成立しません。内装で天井をできるだけ高く取りたい設計と、垂れ壁500mmの要求がぶつかる典型パターンです。
施工管理として押さえるべきチェックは次の通りです。
- 施工図の段階で、各防煙区画境界の「天井高 − 垂れ壁下端」を全部拾い、500mm(緩和なら300mm)が成立するか確認する
- 緩和(300mm)を当てにする場合は、常時閉鎖or煙感連動の不燃戸という前提が満たされているか、審査側の合意があるかを確認する
- 梁下や下がり天井で天井高が部分的に変わる場所は、垂れ壁の起点(天井面)が変わるので個別に確認する
天井高がギリギリの現場では、「設計が想定していた緩和が、現場の建具仕様では成立しない」という食い違いが起きがちです。垂れ壁の高さは確認申請の前提に直結するので、勝手に詰めず、必ず設計者へ確認を上げるのが正解です。
【施工】下地・納まりとダクト/配管の貫通処理
防煙垂れ壁の施工で次に問題になるのが、下地の組み方と、設備の貫通処理です。
下地・納まりの実務ポイントは次の通りです。
- 軽量鉄骨(LGS)で下地を組み、不燃ボードを張るのが一般的な構成
- 天井面との取り合いに隙間が空くと、そこから煙が抜けて防煙性能が成立しないので、天井との見切り・気密を確実にする
- 天井裏(ふところ)まで垂れ壁を立ち上げる必要があるかは、防煙区画の考え方によるので設計確認が必要
LGS下地の基本は、こちらが参考になります。

そして見落とされがちなのが、ダクト・配管・電気配線が防煙垂れ壁を貫通する場合の扱いです。防煙区画を貫通する設備は、煙が貫通部から漏れない・煙で機能が損なわれない配慮が必要で、防火区画を兼ねる垂れ壁の場合は貫通部に防火区画貫通処理(不燃材充填・防火ダンパー等)が求められます。
実務だと、設備のダクトルートと垂れ壁の位置が干渉して「ダクトが垂れ壁を突き抜ける」納まりはよく出ます。このとき「防煙だけの垂れ壁なのか、防火区画を兼ねているのか」で処理が全く変わるので、まず垂れ壁の性能を確認し、防火を兼ねるなら正規の貫通処理を行うのが必須です。
貫通処理の具体的なやり方は、こちらで詳しく解説しています。

可動式の検査・点検(建築と消防)
可動式防煙垂れ壁は「動く設備」なので、固定式と違って作動の確認が要ります。ここで施工管理が混乱しやすいのが、「これは建築の検査?消防の検査?」という点です。
整理すると次の通りです。
- 建築(建築基準法):防煙壁としての構造・高さ・不燃性、可動式なら煙感知器連動・手動降下装置・中央管理室での監視など、建基法上の要件を満たすかが対象
- 消防(消防法):自動火災報知設備など、連動する感知システム側は消防設備の点検対象になる
- 定期点検:固定式は目視中心、可動式は実際に降下作動の確認まで行う
可動式は感知器と連動するので、建築の防煙設備としての性能と、消防設備としての感知システムの両面が関わります。引き渡し前の試運転では、感知器連動で確実に降下するか、手動降下装置が機能するか、降下後に必要な空間(床から1.8m以上)が確保されるかを実地で確認しておくべきです。
建築の消防検査の流れは、こちらが参考になります。

防煙垂れ壁の費用の目安
費用は、固定式か可動式か、素材、面積、施工条件で大きく変わるため一概には言えませんが、考え方の目安は次の通りです。
- 固定式(不燃ボード・LGS下地):比較的安価。一般的な内装造作の延長で施工できる
- 固定式(ガラス):透明性・意匠性が高いぶん高額になりやすい
- 可動式:機構・感知器連動・大臣認定品となるため最も高く、初期費用+定期点検・メンテのランニングコストもかかる
コストを考えるときは、初期費用だけでなく維持管理(点検・交換)まで含めて比較するのがポイントです。特に可動式は、作動機構の信頼性確保と定期点検が前提なので、ランニングを見込んでおく必要があります。意匠を優先してガラスや可動式を選ぶか、コストと確実性で固定式・不燃ボードにするかは、建物の用途と予算で判断します。
防煙垂れ壁に関する情報まとめ
- 定義:火災時の煙の水平拡散を防ぐため天井から垂らす壁。建築基準法では「防煙壁」と定義
- 防火壁との違い:防煙壁は「煙」、防火壁・防火区画は「火(延焼)」を止める。目的も根拠条文も別
- 設置基準:防煙壁の定義は建基令126条の2、「500㎡以内ごとに防煙壁で区画」は126条の3(第1項第一号)
- 高さ:原則、天井面から50cm(500mm)以上。常時閉鎖or煙感連動の不燃戸の上部なら300mmまで緩和
- 扉の上部:防煙区画を構成する建具の上端から天井までも垂れ壁扱い(原則500mm以上)
- 構造・材質:不燃材料で造るか覆う。ガラスは網入り推奨。下地で不燃を成立させる方法もある
- 位置:500㎡区画/告示1436号の免除条件/階段・EV・吹き抜け周り
- 種類:固定式(確実・低コスト)と可動式(開放感・要点検)。素材はガラス・シート・軽量パネル
- 排煙との関係:排煙を設ける場合も免除する場合(告示1436号)も検討が必要
- 施工:天井高と500mmの取り合い、LGS下地と天井との気密、ダクト・配管の貫通処理に注意
- 検査:建築(構造・高さ・連動)と消防(感知システム)の両面。可動式は降下作動を実地確認
- 費用:固定式<ガラス<可動式。可動式は点検ランニングも見込む
以上が防煙垂れ壁に関する情報のまとめです。
防煙垂れ壁は「天井から50cm垂らす」と覚えるだけなら簡単ですが、実際の現場では天井高との取り合い、扉上部の扱い、緩和の可否、設備の貫通、可動式の検査と、判断ポイントが多い部材です。法令の数字(500mm/300mm緩和/500㎡区画/令126条の2・3)を正確に押さえたうえで、施工図の段階で天井高・建具・設備ルートと突き合わせておくこと。これができると、確認申請の前提を崩さず、後工程でのやり直しも防げます。防煙は排煙計画の一部なので、垂れ壁単体ではなく「排煙区画をどう作るか」という視点で捉えるのが、結局は一番確実です。
防煙垂れ壁に関するよくある質問
Q1:防煙垂れ壁の高さ50cmは、天井から測るのですか?
天井から測ります。建築基準法施行令126条の2では「天井面から50cm以上下方に突出した垂れ壁」と定められており、基準は天井面です。床からではありません。火災時の煙はまず天井付近に層を作って広がるため、その煙層をせき止めるのに必要な突出量として、天井から下方50cm以上が求められています。
Q2:天井が低くて50cm(500mm)取れません。どうすればいいですか?
緩和の余地があります。常時閉鎖式、または煙感知器と連動して閉鎖する不燃製の戸(鉄製扉など)の上部であれば、垂れ壁高さを300mmまで低くしても防煙間仕切り壁とみなされる扱いがあります。ただしこれは建築基準法本文ではなく「建築物の防火避難規定の解説」に基づく運用なので、確認検査機関・特定行政庁の判断によります。採用前に必ず設計者・審査側と協議してください。
Q3:防煙壁と防火壁は同じものですか?
別物です。防煙壁(防煙垂れ壁)は排煙計画上「煙」の水平拡散を防ぐもの、防火壁・防火区画は「火(延焼)」の拡大を防ぐものです。狙う対象も根拠条文も異なります。図面に「垂れ壁」とだけ書かれている場合は、防煙目的なのか防火区画の一部なのかを必ず確認してください。要求される性能(不燃か準耐火か)や貫通処理の要否が変わります。
Q4:防煙垂れ壁はどんな材料で造ればいいですか?
不燃材料で「造る」か「覆う」必要があります。不燃の石膏ボード(化粧ボード含む)、金属パネル、不燃認定のガラスなどが代表です。ガラスを使う場合は破損・落下対策として網入りガラスが推奨されます。仕上げを優先したい場合は、下地(壁本体)を不燃で造れば表面の壁紙・塗料の仕上げまでは不燃性能を問われない、といった「覆う」の考え方も使えます。
Q5:ダクトや配管が防煙垂れ壁を貫通するときはどうしますか?
まず、その垂れ壁が「防煙だけ」なのか「防火区画を兼ねている」のかを確認します。防煙のみなら煙が貫通部から漏れないよう気密に配慮し、防火区画を兼ねる場合は防火区画貫通処理(不燃材充填・必要に応じて防火ダンパー等)が必須になります。設備のダクトルートと垂れ壁が干渉する納まりは現場で頻発するので、施工図の段階でルートと処理方法を決めておくのが安全です。
Q6:500㎡の防煙区画は、どう数えればいいですか?
防煙壁(防煙垂れ壁)で囲まれた部分ごとに、床面積を500㎡以内にします。排煙設備は、この防煙区画ごとに有効な排煙ができるよう計画し、区画をまたいで1つの排煙窓・排煙機でカバーすることはできません。つまり垂れ壁の位置は「どこで500㎡に区切るか」「排煙口をどこに置くか」と一体で決まります。排煙計算と垂れ壁の位置が整合しているかを照合してください。
Q7:可動式防煙垂れ壁の点検は、建築と消防どちらですか?
両方が関わります。防煙壁としての構造・高さ・煙感知器連動・手動降下装置などは建築基準法側の要件で、連動する自動火災報知設備など感知システム側は消防設備の点検対象です。固定式は目視点検が中心ですが、可動式は実際に降下作動するか、手動降下装置が機能するか、降下後に床から1.8m以上の空間が確保されるかまで確認します。
Q8:排煙設備が免除される建物でも、防煙垂れ壁は要りますか?
要る場合があります。排煙設備を免除する告示1436号では、免除の条件として防煙垂れ壁による区画が求められるケースがあります。たとえば排煙窓を設置できない物置・更衣室などは、告示1436号で排煙設備を免除する代わりに防煙垂れ壁で区画する設計になりがちです。「排煙設備があってもなくても、防煙垂れ壁の検討は必要になりうる」と覚えておくと安全です。
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