- 平行軸の定理ってなに?
- 公式の意味がわからない
- どんなときに使うの?
- H形鋼の断面二次モーメントを計算したい
- 合成断面はどう計算する?
- 図心軸と中立軸の違いは?
上記の様な悩みを解決します。
平行軸の定理は、構造力学・材料力学を学ぶときに最初の壁になりがちな定理です。式そのものはシンプルですが、何のために使うかが見えていないと「ただの暗記」で止まってしまう。実務で断面二次モーメントを計算するときに、これを使えないと話が始まらない場面が結構あります。設計と現場の両方の視点で整理しておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
平行軸の定理とは?
平行軸の定理とは、結論「ある軸まわりの断面二次モーメントを、その軸に平行な別の軸(とくに図心軸)まわりの断面二次モーメントに換算するための公式」のことです。英語では parallel axis theorem、Steiner(シュタイナー)の定理とも呼ばれます。
何のために存在する定理かをひと言で言うと「図心軸まわりの断面二次モーメントを使い回せるようにするため」。複雑な断面(H形鋼、L形鋼、合成断面など)を計算するとき、各部品ごとに図心軸まわりの値はわかっていることが多いので、それを断面全体の中立軸まわりの値に変換する道具として平行軸の定理が活躍します。
断面二次モーメントは「軸からの距離」が二乗で効くので、軸が変われば値も大きく変わる。そのときに使える換算式、というイメージです。僕としては、平行軸の定理は「式そのものより、距離の二乗が効くというイメージ」を体に染み込ませることが一番大事だなと感じていて、ここが腹落ちすると断面性能の考え方が一気にクリアになります。
H鋼のような断面性能を扱う際の基礎としてこちら。

平行軸の定理の公式
平行軸の定理は、断面二次モーメント(I)を別の軸まわりに変換する次の式で表されます。
I_x = I_x0 + A × d²
I_x が求めたい軸(X軸)まわりの断面二次モーメント、I_x0 が断面の図心軸まわりの断面二次モーメント、A が断面の面積、d が図心軸とX軸の距離。式の構造は「図心軸まわりのIに、面積×距離²を足したものが、ずれた軸まわりのI」というシンプルな足し算です。
距離が二乗で効くので、軸が遠くなればなるほど断面二次モーメントは急激に大きくなる、というのが平行軸の定理が伝えてくれる本質。たとえば長方形断面で図心まわりのIが100cm⁴、面積10cm²、20cm離れた軸まわりに換算すると、I_x = 100 + 10×20² = 4,100 cm⁴ で、図心まわりのIの41倍になります。フランジを上下に離した断面のほうが同じ材料量でも曲げに強い理由が、この計算で一発で腑に落ちます。
Y軸まわりでも同じ式で記号を入れ替えるだけ。
平行軸の定理の具体例(H形鋼)
実務で平行軸の定理を一番使うのは、合成断面や複合断面の計算です。代表例としてH形鋼で見てみましょう。
H形鋼を3つの長方形(上フランジ、下フランジ、ウェブ)に分解して、各部の図心軸まわりのIを長方形のbh³/12で計算。そのあと平行軸の定理で全体の中立軸まわりに換算します。全体の中立軸はH形鋼は対称断面なのでちょうど真ん中、上フランジは中立軸から (hw/2 + tf/2) だけ離れているので、
I = 2×{bf×tf³/12 + (bf×tf)×(hw/2+tf/2)²} + tw×hw³/12
具体的な数値で計算すると、H-300×150×6.5×9のH形鋼の場合、Iz(強軸まわり)は約7,210 cm⁴で、規格表に載っているおなじみの値になります。
鉄骨の規格表(断面性能表)に載っているIは、まさにこの平行軸の定理で計算された値。フランジの位置(中立軸からの距離)が二乗で効いているから、H形鋼は「フランジを離して配置」することで強軸まわりのIを大きく稼いでいる訳ですね。
平行軸の定理が必要な場面
平行軸の定理が現場・設計で実際に登場するのは、次のような場面です。
- 合成断面の計算(既存梁+補強プレート)
- 補強板付きH鋼の曲げ耐力計算
- 不等辺L形鋼の主軸計算
- 鉄骨梁+RCスラブの合成梁設計
- 基礎の偏心荷重時の応力計算
- ボルト群の重心まわりのせん断+曲げ計算
実務での合言葉は「軸が変わったら d²×A を足す」「図心軸まわりのIから出発する」「距離が二乗で効くので、なるべく外側に材料を置きたい」。H形鋼やパイプ柱が「強い」のは、材料を外周近くに集中させて、平行軸の定理の d²×A を大きく稼いでいるから、というのが構造力学的な理屈です。
図心軸・主軸との関係
平行軸の定理は「図心軸まわりのI」を起点にして話が進むので、図心と主軸の関係を整理しておきます。
- 図心軸:断面の重心を通る軸
- 中立軸:曲げを受けたとき応力ゼロになる軸、弾性域では図心軸=中立軸
- 主軸:断面二次モーメントが最大/最小になる軸
- 断面相乗モーメント I_xy:対称断面で0、非対称で非0
対称断面では主軸=図心軸ですが、非対称断面(L形鋼など)では主軸が斜めに傾きます。応力分布の理解と並行して押さえておくと、断面性能の計算が立体的になります。

平行軸の定理を使うときの注意点
実際に手計算で平行軸の定理を使うときの注意点を整理します。
注意点①:軸の方向と図心位置
強軸(X軸)か弱軸(Y軸)かで計算が変わるので、計算前に軸を定義する図を書くのが安全。平行軸の定理は「図心軸まわりのI」が出発点なので、図心の位置を間違えるとIも全部ずれます。複雑断面では面積モーメント(A×y)の和÷全体面積で重心を出します。
注意点②:単位と中空断面
mmで揃えるかcmで揃えるかを最初に決めて、規格表との単位を合わせて確認。中空(パイプ、箱形)はI = 外形のI − 中空部のI で計算するので、中空部もそれぞれ図心軸まわりのI+平行軸の定理で計算します。
注意点③:合成断面は弾性係数比で換算
異種材料(鋼+コンクリートなど)の合成断面では、弾性係数比nで面積を換算してから平行軸の定理を使います。鋼骨+RCスラブの合成梁設計で必須。各部品ごとに「部品名・面積・図心位置・図心I・距離d・d²×A・合計I」の表を作って計算すると、ミスが見える化されます。
座屈との関係も押さえておくと、構造設計の流れが見えてきます。

平行軸の定理に関する情報まとめ
- 平行軸の定理とは:図心軸まわりのIから別軸まわりのIに換算する公式
- 公式:I_x = I_x0 + A × d²
- 距離が二乗で効くので、材料を外側に置くほどIが大きい
- 具体例:H形鋼の上下フランジ寄与計算
- 用途:合成断面/補強板/L形鋼主軸/合成梁/ボルト群
- 注意点:軸の方向/図心位置/単位/中空/合成断面
以上が平行軸の定理に関する情報のまとめです。
平行軸の定理は構造力学・材料力学の中でも実務頻度の高い定理で、規格表のIがどう作られているか・補強板を入れるとなぜ効くかが、これを使えると一発で腑に落ちます。施工管理者でも「設計者が何を計算しているか」を理解しておくと、現場での補強案の妥当性を即座に判断できるようになります。一通り基礎知識は網羅できたかなと思います。
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