- 親子フィラーって何の金物なの?
- 一般のフィラープレートと何が違う?
- アンカーボルトの芯ずれを吸収できるって本当?
- 台直しやベースプレートの孔あけ直しから解放される?
- どれくらいの芯ずれまで吸収できる?
- 厚みや種類、施工方法は?
- 構造的に安全なの?評価を受けてる?
- 注意点や適用範囲は?
上記の様な悩みを解決します。
親子フィラーは、鉄骨の柱脚工事で「アンカーボルトが少しずれて入ってしまった」という、現場で本当によく起きるトラブルを救ってくれる金物です。名前は知っていても「フィラープレートと何が違うの?」と混同しやすいところでもあります。今回は、親子フィラーの役割・仕組み・吸収できる芯ずれの大きさ・種類・施工方法・注意点を押さえた上で、混同されがちな一般のフィラープレートとの違いまで、現場目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
親子フィラーとは?
親子フィラーとは、結論「露出型柱脚で、コンクリートに埋め込まれたアンカーボルトの位置ずれ(芯ずれ)を吸収するための柱脚金物」のことです。
鉄骨の柱は、基礎コンクリートに埋め込んだアンカーボルトに、柱脚のベースプレートを差し込んで固定します。ところが、アンカーボルトはコンクリート打設前にセットするため、どうしても多少の位置ずれが出ます。このずれ(芯ずれ)が大きいと、ベースプレートの孔とボルトの位置が合わず、柱が建てられません。
親子フィラーは、孔の大きい「親フィラー」と、正規の孔をもつ「子フィラー」を組み合わせ、子フィラーを親フィラーの中で偏心した位置にセットすることで、このずれを吸収します。親の大きな孔の中で子をずらして据える、という入れ子構造から「親子」フィラーと呼ばれます。
柱脚そのものの基礎知識は、こちらが参考になります。

僕の感覚だと、親子フィラーは「アンカーがずれた時の保険」として捉えると役割がつかみやすいです。理屈は入れ子構造でずれを逃がすだけなんですが、これがあるかないかで、柱脚施工のリカバリーの幅がまるで変わってきます。
親子フィラーの役割
親子フィラーの一番の役割は、結論「アンカーボルトの芯ずれを吸収して、性能上問題のある後処理(台直し・孔のあけ直し)を回避すること」です。
アンカーボルトがずれた場合、親子フィラーを使わないと、現場では次のような処置に追い込まれがちです。
- 台直し:ずれたアンカーボルトを叩いて曲げ、無理に位置を合わせる
- 孔のあけ直し:ベースプレートの孔を現場で大きく開け直す
- ガス孔あけ:ガスで孔を広げて無理やりボルトを通す
これらはいずれも、アンカーボルトやベースプレートの本来の性能を損なう恐れがある処置です。台直しでボルトを曲げれば、引張耐力が落ちたり破断の原因になったりします。孔を大きく開け直せば、ボルトとの遊びが増えて応力伝達が不安定になります。
親子フィラーは、こうした「やってはいけない後処理」をせずに、許容範囲内のずれを正規の状態で吸収できるのが最大の価値です。告示で定められた一般の露出柱脚(告示柱脚)はアンカーボルトの設置許容誤差が±2.5mm程度とシビアですが、親子フィラーを使う工法ではこれを大きく上回る誤差を許容できます。
アンカーボルトの基本については、こちらが詳しいです。

正直なところ、現場でアンカーの芯ずれが出ると一気に空気が重くなります。親子フィラーは、その場面で「台直しせずに正規でリカバリーできる」という安心感をくれる金物で、役割を一言でいえば現場の精度の逃げ道をつくることだと考えています。
親子フィラーの仕組み(親と子の役割)
親子フィラーは、名前のとおり「親フィラー」と「子フィラー」の2つの部品で成り立っています。それぞれの役割はこうです。
- 親フィラー:大きめの孔(過大孔)をもつ部品。子フィラーを偏心して受け入れる土台になる
- 子フィラー:アンカーボルトが通る正規の孔をもつ部品。親の孔の中で位置を調整して据える
仕組みはシンプルで、ずれたアンカーボルトの位置に合わせて、子フィラーを親フィラーの大きな孔の中で偏心させてセットします。アンカーボルトは子フィラーの正規孔を通り、子フィラーが受けた力を親フィラーへ、親フィラーからベースプレートへと伝えていきます。
ポイントは、ボルト軸力(締め付けの力)と、地震などで生じる引張力・せん断力を、この親子2部品を介して確実に伝達できるよう設計されている点です。単にずれた孔を埋めるのではなく、力をきちんと流す構造になっているのが、ただの座金との違いです。
アンカーボルトが偏心していなければ子フィラーは中央に、最大に偏心していれば端に寄せる、というように、ずれ量に応じて子の位置を変えて対応します。これによって、許容偏心距離の範囲なら、どの方向のずれにも追従できます。
僕の整理では、親=ずれを許容する受け皿、子=ボルトを正規に保持する芯、という役割分担で覚えておくと、図面を見たときにも納まりがイメージしやすくなります。
親子フィラーで吸収できる芯ずれ・厚み・寸法
実務で気になるのが「結局どれくらいのずれまで吸収できるのか」です。これはアンカーボルトの径(サイズ)によって決まります。
吸収できる芯ずれ(許容偏心距離)の目安は下表のとおりです。
| 項目 | 一般の告示柱脚 | 親子フィラーを使う柱脚 |
|---|---|---|
| アンカーボルトの設置許容誤差 | ±2.5mm程度 | ±8.5mm(M12)〜±22mm(M80)程度 |
| ずれた時の処置 | 台直し・孔あけ直しが必要になりがち | 正規のまま吸収できる |
ボルト径が大きいほど、吸収できる偏心量も大きくなる傾向です。細径のM12でも±8.5mm程度、太径のM80では±22mm程度まで対応できる製品があり、いずれも告示柱脚の許容値を大きく上回ります。実際の許容値は製品・タイプごとに定められているので、設計図書や評価書で確認します。
厚み(板厚)については、製品やタイプによって設定が異なります。荷重を確実に伝達できるよう、部品ごとに必要な厚みが決められているので、現場で薄板を流用するようなことはせず、指定された製品をそのまま使うのが原則です。
注意したいのは、「許容偏心距離の範囲内」でしか使えないという点です。範囲を超えるような大きな芯ずれが出てしまった場合は、親子フィラーでは吸収できないので、別の対応(設計者との協議や別工法)が必要になります。
実務だと、まず手元の製品が「ボルト径いくつまで・偏心いくつまで対応か」を寸法表で押さえておくと、現場でずれが出た瞬間に「これは吸収できる/できない」を即判断できて動きが速くなります。
親子フィラーの種類
親子フィラーには、用途やボルト径に応じた複数のタイプがあります。メーカーによって名称は異なりますが、代表的な区分を挙げると次の3タイプです。
- 一般柱脚用タイプ:M12〜M80程度まで対応する標準的なタイプ
- 階段・小径専用タイプ:M16・M20など特定径に絞った専用タイプ
- 用途別タイプ:耐震補強・あと施工アンカー・橋梁などに対応したタイプ
タイプの違いは、対応するアンカーボルト径と、吸収できる偏心距離、適用できる柱脚の形式に表れます。一般的な鉄骨造の柱脚なら標準タイプ、鉄骨階段のように小径ボルトを使う部位なら専用タイプ、というように使い分けます。
また、柱脚以外にも適用範囲は広く、耐震補強の接合部、あと施工アンカー、橋梁や落橋防止装置、木造柱の柱脚など、アンカーの位置調整が必要な様々な場面で使われています。
選定で迷ったら、メーカーの寸法表・評価書で「アンカーボルト径」と「必要な許容偏心距離」を照合するのが確実です。製品ごとに技術評価の適用範囲が決まっているので、その枠内で選ぶのが前提になります。
個人的には、種類選びは「ボルト径」と「現場で想定されるずれの大きさ」の2点さえ押さえれば、あとは寸法表が答えを出してくれる、という感覚で十分だと思います。
親子フィラーの施工方法
親子フィラーの施工は、結論「在来の露出柱脚とほぼ同じ要領で、現場で親子フィラーを据えるだけ」です。特別な技能や資格は基本的に不要とされています。
施工の流れは、おおまかにこんな順番です。
- ベースプレートに、所定のアンカーホール(過大孔)をあらかじめあけておく
- アンカーボルトの実際の位置(芯ずれ)を確認する
- ずれに合わせて子フィラーを親フィラーの中で偏心させてセットする
- アンカーボルトを子フィラーの正規孔に通し、ベースプレートを据える
- 平座金・ナットで締め付け、レベル調整を行う
- ベースプレート下に無収縮モルタル(グラウト)を充填する
ポイントは、ベースプレート側の孔を最初から過大孔にしておくことです。これによって、アンカーがどの方向にずれても親子フィラーで吸収できる余地が生まれます。締め付けやレベル調整、グラウト充填といった工程は、従来の露出柱脚と同じ要領で進められます。
ベースプレート下のグラウト(無収縮モルタル)の施工については、こちらが参考になります。

現場目線で言えば、親子フィラーの施工で一番ありがたいのは「建方のときに対角2点で仮止めして位置を決められる」ことです。台直しのために重機やバーナーを段取りする手間がなくなるので、建方の流れを止めずにリカバリーできるのが実務上の大きな利点になります。
一般のフィラープレートとの違い
ここが、多くの人が混同する最大のポイントです。「親子フィラー」と「フィラープレート」は名前が似ていますが、目的も使う場所もまったく違います。
両者の違いを並べてみます。
| 観点 | 一般のフィラープレート | 親子フィラー |
|---|---|---|
| 目的 | 板厚差による肌すき(すき間)を埋める | アンカーボルトの芯ずれ(水平ずれ)を吸収 |
| 使う場所 | 高力ボルト摩擦接合の継手部 | 露出型柱脚のアンカーボルト部 |
| 吸収する方向 | 板の厚さ方向のすき間 | 板面内(水平方向)の位置ずれ |
| 形状 | 隙間ぶんの厚みをもつ平板の鋼板 | 親(過大孔)+子(正規孔)の2部品 |
一般のフィラープレートは、接合する2枚の鋼板の板厚が違うときにできる「肌すき」を埋める鋼板です。高力ボルト摩擦接合では、肌すきが1mmを超えると摩擦力が落ちるため、すき間を埋めるフィラープレートを挿入します。つまり、厚さ方向のすき間対策です。
一方の親子フィラーは、柱脚でアンカーボルトが水平方向にずれたときに、その位置ずれを吸収する金物です。埋めるのはすき間ではなく、位置のずれです。
一般のフィラープレートの詳細は、こちらで解説しています。

高力ボルト摩擦接合の仕組みそのものは、こちらが参考になります。

僕の考えでは、この2つは「フィラー(埋めるもの)」という言葉が共通しているだけで、まったくの別物と割り切ったほうが混乱しません。肌すきを埋めるのがフィラープレート、芯ずれを埋めるのが親子フィラー、と覚えておけば十分です。
親子フィラーの注意点
親子フィラーは便利な金物ですが、使ううえで押さえておくべき注意点があります。主なものは次の5点です。
- 許容偏心距離の範囲内でしか使えない:範囲を超えるずれは別対応が必要
- 技術評価の適用範囲を守る:評価書で定められた条件・部品構成で使う
- 過大孔をそのまま放置しない:必ず親子フィラーで荷重を伝達する状態にする
- グラウトの充填は省略しない:従来柱脚と同様にベースプレート下を充填する
- 製品を勝手に加工・代用しない:薄板の流用や現場溶接は性能を損なう恐れ
特に重要なのが、適用範囲を守ることです。親子フィラーは、第三者機関の技術評価を受け、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録された評価工法です。実大実験や引張・せん断実験で構造安全性が確認されていますが、それはあくまで評価書で定められた条件の範囲内での話です。許容偏心距離を超えたり、指定外の使い方をしたりすると、その性能保証は効かなくなります。
もうひとつ、過大孔のまま放置しないことも大切です。ベースプレートの孔を大きくあけるのは、あくまで親子フィラーで力を伝達する前提だからです。親子フィラーを入れずに過大孔だけでボルトを締めると、応力伝達が不安定になり、本末転倒になります。
僕の感覚だと、親子フィラーは「正しく使えば台直しより圧倒的に安全な選択肢」ですが、それは評価範囲を守ってこそです。便利さに甘えて適用範囲を超えると、かえってリスクになるので、寸法表と評価書の確認はセットで習慣にしておくのがいいです。
親子フィラーに関する情報まとめ
- 親子フィラーとは:露出型柱脚でアンカーボルトの芯ずれを吸収する柱脚金物
- 役割:台直しや孔のあけ直しといった性能上問題のある後処理を回避する
- 仕組み:親フィラー(過大孔)+子フィラー(正規孔)の入れ子構造でずれを吸収
- 吸収量:告示柱脚の±2.5mm程度に対し、±8.5mm(M12)〜±22mm(M80)程度まで対応
- 種類:一般柱脚用、階段・小径専用、用途別タイプがあり、柱脚以外にも適用
- 施工:ベースプレートに過大孔をあけ、現場で親子フィラーを据えるだけ、資格不要
- フィラープレートとの違い:肌すき(厚さ方向)を埋めるのがフィラープレート、芯ずれ(水平方向)を吸収するのが親子フィラー
- 注意点:許容偏心距離と技術評価の適用範囲を守り、過大孔を放置しない
以上が親子フィラーに関する情報のまとめです。
親子フィラーは、アンカーボルトの芯ずれという現場で避けられないトラブルを、台直しに頼らず正規の状態でリカバリーできる金物です。名前の似たフィラープレートとは目的も使う場所も別物なので、そこを切り分けて理解しておくと混乱しません。一通り基礎知識は理解できたと思います。許容範囲と評価条件を守って使えば、柱脚施工の心強い味方になってくれるはずです。
親子フィラーに関するよくある質問
Q1:親子フィラーとフィラープレートは何が違いますか?
目的も使う場所も別物です。一般のフィラープレートは、高力ボルト摩擦接合で板厚差による肌すき(厚さ方向のすき間)を埋める鋼板です。一方、親子フィラーは露出型柱脚で、アンカーボルトの芯ずれ(水平方向の位置ずれ)を吸収する金物で、親(過大孔)と子(正規孔)の2部品で構成されます。名前が似ているだけで機能はまったく異なるので、肌すきを埋めるのがフィラープレート、芯ずれを吸収するのが親子フィラー、と覚えると混乱しません。
Q2:親子フィラーを使えば台直しはしなくていいのですか?
許容偏心距離の範囲内のずれなら、台直しをせずに吸収できます。台直し(ずれたアンカーボルトを叩いて曲げる処置)は、ボルトの性能を損なう恐れがある処置なので、本来は避けたいものです。親子フィラーを使えば、正規の状態のままずれを吸収できるため、台直しやベースプレートの孔あけ直しを回避できます。ただし、許容偏心距離を超える大きなずれは吸収できないので、その場合は設計者との協議など別の対応が必要です。
Q3:親子フィラーはどれくらいの芯ずれまで吸収できますか?
アンカーボルトの径によって決まります。細径のM12で±8.5mm程度、太径のM80で±22mm程度まで対応する製品があり、いずれも告示柱脚の設置許容誤差(±2.5mm程度)を大きく上回ります。実際の許容偏心距離は製品・タイプごとに定められているので、寸法表や評価書で「ボルト径」と「許容偏心距離」を確認して選定します。
Q4:親子フィラーの施工に資格は必要ですか?
基本的に特別な資格は不要とされています。施工は在来の露出柱脚とほぼ同じ要領で、ベースプレートに過大孔をあけておき、アンカーのずれに合わせて子フィラーを親フィラーの中で偏心させて据えるだけです。締め付け・レベル調整・グラウト充填も従来柱脚と同様の流れで進められます。ただし、評価工法なので、評価書で定められた条件・部品構成のとおりに施工することが前提です。
Q5:親子フィラーは構造的に安全ですか?
第三者機関の技術評価を受けた評価工法で、実大実験や引張・せん断実験によって構造安全性が確認されています。国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録されています。ただし、安全性が保証されるのは評価書で定められた適用範囲内での話です。許容偏心距離を超えたり、指定外の加工や代用をしたりすると保証は効かなくなるので、適用範囲と評価条件を守って使うことが重要です。
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