- PHC杭ってどんな杭?
- 鋼管杭・場所打ち杭と何が違うの?
- どんな地盤で使うの?
- 規格・強度区分は?
- 騒音・振動は大丈夫?
- 市街地でも施工できる?
上記の様な悩みを解決します。
PHC杭は、戸建〜中層マンション新築で圧倒的シェアを持つ既製コンクリート杭です。コストパフォーマンスに優れる一方、「軟弱地盤の深さ」「市街地での近隣配慮」「支持層の深度」で他工法と比較検討する必要があり、施工管理者として選定根拠と工法選択を理解しておくと、見積もり精査・業者打ち合わせの質が大きく変わります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
PHC杭とは?
PHC杭とは、結論「Pretensioned Spun High Strength Concrete Pile(プレテンション方式遠心力高強度プレストレストコンクリート杭)の略で、工場で製造される高強度の既製コンクリート杭」のことです。
英語では「PHC Pile」。JIS A 5373で規格化されています。
名称の由来
- P:Pretensioned(プレテンション方式でPC鋼線を緊張)
- H:High Strength(コンクリート設計強度80 N/mm²以上)
- C:Concrete
構造の特徴
- 円筒中空のコンクリート断面(軽量化+曲げ強度確保)
- PC鋼線を軸方向に配置して、製造時に緊張力を導入
- 遠心力でコンクリートを締め固める(工場専用設備)
- オートクレーブ養生で短期高強度
「工場で締め固めた高強度コンクリートのパイプ状の杭」と覚えれば概ねOK。
杭基礎の種類全体はこちらで整理しています。
PHC杭が選ばれる地盤条件
施工管理者として最重要なのは「いつPHC杭を選ぶのか」という選定ロジックです。地盤調査結果から判定できるように、考え方を整理します。
選定の判断軸(地盤調査結果から)
| 軟弱層の深さ | N値の分布 | 推奨工法 |
|---|---|---|
| 〜2m | 表層のみ軟弱、その下硬質 | 表層改良 |
| 2〜8m | 中軟弱、N値10前後 | 柱状改良 |
| 8〜15m | 軟弱だが支持層が見える | PHC杭 or 鋼管杭 |
| 15〜30m | 深い軟弱層 | PHC杭(継ぎ杭) or 鋼管杭 |
| 30m超 | 超深軟弱層 | 場所打ち杭 |
PHC杭の得意領域は「軟弱層8〜30m+明確な支持層あり」の現場です。戸建住宅の8〜15m級から、中層マンションの15〜30m級まで広くカバーします。
鋼管杭との使い分け
| 条件 | PHC杭 | 鋼管杭 |
|---|---|---|
| コスト | ◎(安い) | やや高い |
| 水平耐力(地震時) | ○ | ◎(靱性) |
| 狭小地・低空頭 | △ | ◎ |
| 大径対応 | ◎(〜φ1,000mm) | ○ |
| 継ぎ杭の容易さ | ○(機械継手or溶接) | ◎(溶接で自由) |
「コスト最優先+標準的な軟弱地盤=PHC杭」「狭小地+無振動が必須=鋼管杭(小径回転圧入)」と覚えておけば、選定の8割は付いていけます。
地盤の話はこちらで詳しく。

規格・強度区分・サイズ
JIS A 5373の主要な規格を整理します。
外径のラインナップ
| 外径 | 主な用途 |
|---|---|
| φ300〜φ400mm | 戸建住宅 |
| φ400〜φ600mm | 低層〜中層マンション |
| φ600〜φ800mm | 中高層 |
| φ1,000mm | 高層・大型構造物 |
1本あたりの長さ
- 標準長さ:5〜15m(1m刻み)
- 15mが運搬可能な単杭の上限
- それ以上は継ぎ杭(機械継手 or 現場溶接)で対応
強度区分(A種・B種・C種)
| 区分 | 用途 | 採用頻度 |
|---|---|---|
| A種 | 低強度、軽量物 | 限定的 |
| B種 | 標準、中規模建物 | 圧倒的に多い(特記なければB種) |
| C種 | 高強度、中高層・重量建物 | 中高層で採用 |
設計図書で特記指定がない場合はB種を選ぶのが標準です。
施工工法と近隣配慮
PHC杭の施工工法は4種類あり、近隣環境(特に市街地)で選定が変わります。
主な施工工法と特徴
| 工法 | 騒音 | 振動 | 主な現場 |
|---|---|---|---|
| 打撃工法 | × 大 | × 大 | 郊外・工事専用エリア |
| プレボーリング併用打撃 | △ 中 | △ 中 | 市街地でも可能(最普及) |
| プレボーリング併用回転圧入 | ○ 小 | ◎ 無 | 市街地・住宅地 |
| 中堀り工法 | △ | △ | 大径杭、排土最小化 |
「プレボーリング併用打撃」が国内最普及で、先行掘削+軽い打撃で着底するため、純粋な打撃工法より騒音・振動が大幅に少ない方式。
「プレボーリング併用回転圧入」はほぼ無振動・低騒音で、住宅密集地・夜間工事制限のある市街地で多用されます。
私が以前、住宅密集地のマンション新築でプレボーリング併用打撃工法を採用した現場では、近隣家屋から「振動で食器棚のカップが揺れる」というクレームが入り、途中から回転圧入工法に切り替えになったことがあります。当初の見積もりより杭工事費が約20%上振れしましたが、近隣トラブルを避けるための必要コストでした。「市街地のPHC杭はまず回転圧入が選択肢」という前提で見積もりを取るのが、後手にならないコツです。
施工管理の要点
PHC杭の現場で施工管理者が押さえるべきポイント。
1. 杭の品質確認(搬入時)
- ミルシートと現物の表示を照合
- ひび割れ・欠けがないか目視
- 強度区分(A・B・C)と杭径・長さの確認
2. 杭芯位置と垂直精度
- 杭芯位置のズレ:±50mm以内(JASS5)
- 垂直精度:1/100以内
- ズレを修正できるのは、施工開始から数十秒以内
3. 支持層到達の確認
- 設計杭長に対する実際の打止め深度を記録
- 打撃回数・圧入トルクの最終値を測定
- 設計支持層に到達しているかを構造設計者と確認
4. 継ぎ杭の溶接品質
- 機械継手の場合:トルク管理
- 現場溶接の場合:雨天時は溶接NG、UT検査で内部欠陥確認
5. 支持力試験
- 抜き取りで載荷試験を実施
- 設計支持力を満たしているかを確認
6. 引込み配管・接地極の事前計画
電気・給排水の建物への引込みは、杭工事と並行 or 直後に行うことが多いので、杭の配置と引込みルートが干渉しないように事前確認が必要です。
杭基礎・場所打ち杭の話はこちら。

PHC杭に関する情報まとめ
- PHC杭とは:JIS A 5373の高強度プレストレストコンクリート杭。工場製造、円筒中空、設計強度80 N/mm²以上
- 選定基準:軟弱層8〜30m+明確な支持層がある現場の標準。30m超は場所打ち杭、狭小地・無振動必須は鋼管杭
- 規格:外径φ300〜1,000mm、長さ5〜15m(継ぎ杭対応)、強度区分B種が標準
- 施工工法:プレボーリング併用打撃が普及。市街地は回転圧入が主流、見積もり差約20%
- 施工管理の要点:搬入時品質確認/杭芯±50mm垂直1/100/支持層到達/継ぎ杭品質/載荷試験/設備引込みとの取り合い
PHC杭は「コスト◎の標準杭」と思考停止しがちですが、市街地の振動・騒音規制で工法選択が大きく変わる領域です。見積もりを精査するときは、「打撃か圧入か」だけでなく、近隣条件まで含めた総コストで判断するのが、後で揉めないコツです。
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