工事進行基準とは?完成基準との違い、進捗度、仕訳、廃止後など

  • 工事進行基準って結局なに?
  • 現場監督の自分が知る必要あるの?
  • 経理に「進捗度は?」って聞かれたけど何を答えればいい?
  • 工事完成基準とどう違うの?
  • 進捗度って工程表の進み具合と同じ?
  • 原価比例法って急に出てきたけど何?
  • 仕訳とか未成工事支出金とか簿記が分からない…
  • 「2021年に廃止」って書いてあるけど、じゃあ今は何?
  • 廃止されたのに、なんで今も普通に検索に出るの?

上記の様な悩みを解決します。

工事進行基準は、建設業の会計を語るうえで避けて通れない用語ですが、検索するとほとんどが会計ソフトやSaaSベンダーの経理向け記事で、現場監督の目線で「自分にどう関係するのか」を書いたものが見当たりません。今回は定義・工事完成基準との違い・適用条件・仕訳といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「進捗度は原価比例法で出す」「工程表の進み具合とは別物」「現場の原価データと会計がどう繋がるか」まで、経理と話が通じるようになる形で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

工事進行基準とは?

工事進行基準とは、結論「工事の進み具合(進捗度)に応じて、毎年少しずつ売上と原価を計上していく会計方法」のことです。工事が全部終わってからまとめて売上を立てるのではなく、途中の決算でも「今期はこれだけ進んだから、これだけ売上にする」と分けて計上するのがポイントになります。

なぜ現場監督がこれを知っておくべきかというと、この「進捗度」を出す元データが、現場が日々つけている原価表だからです。経理は現場から上がってくる原価情報をもとに進捗度を計算し、売上を立てています。つまり工事進行基準は「経理だけの話」ではなく、現場の数字が会社の決算書に直結する仕組みそのものなんです。施工管理技士の試験でも建設業会計として問われますし、所長を目指すなら避けて通れない知識になります。

主に対象になるのは、土木・建築・建設業のように「請け負って、時間をかけて成果物を完成させる」仕事です。ソフトウェアの受託開発なども同じ考え方が使われます。要は「注文を受けて、長い期間かけて作って引き渡す」タイプの契約で使われる計上方法だと押さえておけば十分です。

建設業の会計そのものの全体像は、こちらで整理しています。

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工事進行基準と工事完成基準の違い

工事進行基準と工事完成基準の違いは、結論「売上と原価を計上するタイミングだけ」です。中身の金額は同じでも、それを”いつ”帳簿に乗せるかが真逆になります。

工事完成基準は、工事が終わって引き渡した時点で、売上も原価も一括で計上します。3年かかる工事なら、1年目・2年目は帳簿上ほぼ動きがなく、3年目に一気にドンと計上される形です。分かりやすく確実ですが、途中の年度は「実際は動いているのに数字に出てこない」状態になります。

対して工事進行基準は、毎年の進み具合に応じて売上を分けて計上します。両者を並べると違いは次の通りです。

比較項目 工事進行基準 工事完成基準
計上のタイミング 毎期、進捗度に応じて 完成・引渡し時に一括
途中年度の損益 実態が反映される ほぼ反映されない
赤字の気づき 早い(途中で見える) 遅い(完成まで見えにくい)
事務作業 多い(毎期計上・進捗計算) 少ない(完成時のみ)
向いている工事 長期・大規模 短期・小規模

損得で言うと、工事進行基準は「タイムリーに損益が見える」代わりに事務負担が重く、工事完成基準は「ラクで確実」な代わりに完成まで実態が見えないという関係です。どちらが優れているという話ではなく、工事の規模と期間で使い分けるものだと理解しておくと混乱しません。個人的には、赤字になりそうな現場を早く炙り出せるのが工事進行基準の一番の値打ちだと思っています。

工事進行基準が使える条件

工事進行基準は結論「どんな工事でも自由に使えるわけではなく、成果が確実に見積もれることが大前提」になります。ここを飛ばして「うちも進行基準で」とはいかない点が、現場の感覚とズレやすいところです。

具体的には、次の3つを信頼できる精度で見積もれることが条件になります。これを「成果の確実性」と呼びます。

  • 工事収益総額:最終的にいくらで請け負ったか
  • 工事原価総額:最後までにいくら原価がかかる見込みか
  • 決算日時点の進捗度:今どこまで進んだか

この3つがブレていると、進捗度で売上を計算しても数字が信用できないため、その場合は工事完成基準を使うことになります。逆に言うと、実行予算がきちんと組まれ、原価管理が回っている現場でないと工事進行基準は成り立たないわけです。

さらに、税務上は一定規模を超える工事は工事進行基準が強制適用されます。目安は「請負金額10億円以上」「工期1年以上」「代金の1/2以上が引渡し後1年より前に支払われる」といった要件を満たす長期大規模工事です(法人税法64条)。ここまで大きいと、一人親方や小規模な工務店が日常的に意識する話ではありません。ただ「進捗度=原価管理の精度」という考え方自体は、現場の規模に関係なく効いてくるので、小さい現場でも知っておいて損はないです。原価管理の土台になる実行予算や積算の考え方は、こちらも参考になります。

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工事進行基準の進捗度の出し方(原価比例法)

進捗度の出し方は、結論「原価比例法」がほぼ標準です。原価比例法とは、決算日までに実際に発生した工事原価を、工事原価総額で割って進捗度とする方法のことです。式にすると「進捗度=発生原価÷原価総額」だけで、拍子抜けするくらいシンプルです。

ここが現場監督にとって一番大事で、かつ競合記事がまず触れないポイントなんですが、進捗度は「工程表の進み具合」とは別物です。経理に「進捗度は?」と聞かれて工程表を見て「7割くらい進んでます」と答えると、実はズレていることがあります。会計上の進捗度は、あくまで「かけたお金の割合」で決まるからです。混同しやすい3つを整理すると次のようになります。

  • 会計上の進捗度:発生原価÷原価総額(お金ベース。工事進行基準で使う)
  • 出来高:施主に対して「ここまで出来ました」と査定する完成割合(請求ベース)
  • 工程の進捗:工程表上の日数や作業の進み具合(時間ベース)

たとえば躯体の高価な鉄骨や生コンを先行投入した現場だと、工程はまだ中盤でも、お金は先に大きく出ているので原価ベースの進捗度は高く出ます。逆に、仕上げで手間ばかりかかる終盤は、工程は進んでいても原価の伸びは緩やかです。だから「経理の言う進捗度」と「現場の体感」がズレるわけですね。現場目線で言えば、経理から進捗度を聞かれたら工程表ではなく原価表(発生原価の累計)を見て答える、と覚えておくと話が噛み合います。

原価の集計や実行予算の考え方は、完成工事原価の記事が土台になります。

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工事進行基準の仕訳シミュレーション

仕訳は、結論「発生した原価を積み上げつつ、進捗度で計算した売上を毎期計上する」だけの繰り返しです。簿記が苦手でも、勘定科目の役割さえ掴めば流れは追えます。まず登場する主な勘定科目を押さえます。

  • 未成工事支出金:まだ売上に対応させていない、支出済みの原価をいったん資産として貯めておく科目
  • 工事原価:売上を立てるのと同時に費用に振り替える、その期の原価
  • 工事未収入金:売上は認識したが、まだ請求・入金していない金額(建設業の売掛金のようなもの)
  • 完成工事高:工事進行基準で計上する、その期の売上

具体的に「工事売上総額15億円・原価総額10億円・工期3年」で見てみます。1年目に原価2.5億円が発生したとすると、進捗度は2.5億円÷10億円=25%です。当期売上は15億円×25%=3.75億円となり、「工事未収入金 3.75億円/完成工事高 3.75億円」と計上します。

2年目に原価5億円が発生すれば、累計進捗度は(2.5+5)÷10=75%。当期売上は15億円×75%-前期3.75億円=7.5億円です。最終年度は「総額15億円-既計上分」で残りを埋めて完成、という流れになります。実務だと、この進捗度の元になる発生原価をどれだけ正確に、タイムリーに集計できるかが勝負で、そこが現場と経理の連携どころになります。

工事進行基準の廃止と新収益認識基準

「2021年に廃止」という記述で混乱する人が多いので、結論から言うと「用語としての工事進行基準は廃止されたが、やっていることはほぼそのまま新収益認識基準に引き継がれている」が正解です。だから廃止されても、現場では今も「工事進行基準」と呼ばれ続け、検索もされ続けているわけです。

2021年4月から、上場企業や大会社を中心に「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」が強制適用されました。これは日本独自だった収益計上のルールを、国際基準(IFRS)に合わせて統一したものです。この基準では、収益を「履行義務の充足」という考え方で認識します。工事のように長い期間をかけて義務を果たしていく契約は、次のいずれかに当てはまれば「一定の期間にわたり充足される履行義務」として扱われます。

  • 工事の進行につれて、発注者が同時に便益を受け取っている
  • 工事で造っている成果物を、発注者が支配している
  • 成果物が他に転用できず、かつ完了部分の対価を請求できる強制力のある権利がある

この「一定の期間にわたり充足される履行義務」が、まさに従来の工事進行基準に相当します。逆に「一時点で充足される履行義務」が工事完成基準に近い考え方です。つまり名前と建付けが変わっただけで、進捗度に応じて売上を立てるという実務の中身は生きています。正直なところ、現場監督としては「呼び方が新しくなっても、進捗度の元データを出すのは現場」という一点さえ押さえておけば、実務で困ることはほぼないです。

工事進行基準に関する情報まとめ

  • 工事進行基準とは:工事の進捗度に応じて毎期、売上と原価を計上する会計方法
  • 工事完成基準との違い:計上タイミングだけ。進行基準は毎期、完成基準は引渡し時に一括
  • 使える条件:収益総額・原価総額・進捗度を確実に見積もれること(成果の確実性)
  • 強制適用:請負10億円以上・工期1年以上などの長期大規模工事
  • 進捗度の出し方:原価比例法(発生原価÷原価総額)。工程表の進み具合とは別物
  • 現場の勘どころ:経理に進捗度を聞かれたら工程表でなく原価表を見て答える
  • 廃止:2021年に用語は廃止。中身は新収益認識基準に引き継がれている

以上が工事進行基準に関する情報のまとめです。

一通り基礎知識は網羅できたかなと思います。細かい仕訳は経理の仕事ですが、その計算の根っこにある「進捗度=現場が出す発生原価の割合」という関係だけは、現場監督が理解しているかどうかで経理との会話の質が変わります。明日から意識するのは一言、「進捗度を聞かれたら原価表を見る」。ここから完成工事原価や建設業の財務諸表に進むと、お金の流れが一気に立体的に見えてきますよ。

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