プライムコートとタックコートの意味・目的・違いを解説

  • プライムコートってなに?
  • タックコートってなに?
  • プライムコートとタックコートの違いは?
  • これからアスファルト舗装の工事をする予定があるが不安

この記事では、上記の様な悩みを解決します。

プライムコートとタックコートのそれぞれの役割や目的を理解することで、適切な使用方法や施工のポイントが明確になります。

また、具体的な製品や使用される場面、散布量の目安、注意すべき点なども紹介します。これにより、工事の品質向上や効率的な施工が期待できますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

プライムコート(PK-3)とは?

プライムコートとは、結論「舗装工事において、下地と舗装層の接着を促進するために用いられる材料のこと」です。

アスファルト舗装において、道路の層は下記の様な構成になっています。

  • 表層
  • 基層
  • 上層路盤
  • 下層路盤
  • 路床

プライムコートは基層と上層路盤の間に散布します。

素材の話をすると、上層路盤までは砕石を使用します。対して、基層ではアスファルトを使いますので、使っている素材が異りますよね。そこで、砕石とアスファルトの接着を促進するために用いられます。

アスファルトエマルジョンやカチオン型ビチューメンが主な材料として使われており、これらの材料が乾燥することで強固な接着力を発揮します。

 

プライムコート(PK-3)を散布する目的

目的 説明
接着性の向上 プライムコートを使用することで、下地と舗装層の接着を強化します。これにより、舗装の一体化が進み、耐久性が向上します。
防水性の向上 下地に防水層を形成し、雨水や凍結に対する耐性を向上させます。これにより、舗装寿命が延び、メンテナンスの頻度が減少します。
耐久性の向上 舗装全体の耐久性を向上させることで、長寿命化を実現します。交通量が多い道路や厳しい気象条件に耐えるためにも有効です。

 

プライムコートの豆知識(歴史的な部分)

プライムコートの使用は20世紀初頭に始まりました。

当時はタールベースの材料が主に使われていましたが、現代では化学技術の進歩により、より強力で長持ちするエマルジョン型アスファルトが開発されています。特に環境に優しい素材が多く取り入れられ、施工効率も大幅に向上しました。

 

プライムコート(PK-3)の成分

通常、プライムコートはエマルジョン型アスファルトを使用します。

エマルジョンは水と乳化ビチューメンを含み、散布後に急速に乾燥することで高い接着性を発揮します。この特性により、防水性や耐久性が向上し、施工する距離や面積に応じて簡単に調整することができます。

 

プライムコートの種類

エマルジョン型プライムコート

エマルジョン型は、水分を含むため施工が容易で環境にも優しい特性があります。そのため広く利用されています。特に都市部の舗装工事でよく使用されます。

カチオン型プライムコート

カチオン型プライムコートは化学的に安定しており、その接着力は特に優れています。高速道路や工業地帯の道路など、耐久性が特に求められる場所に適しています。

アニオン型プライムコート

アニオン型は特定の下地材料との相性が良く、特定の条件下で優れた接着力を発揮します。特に特殊な合成下地材を使用する場面で有効です。

プライムコートの適用例と選定基準

  • エマルジョン型は都市部や一般的な舗装道路に適用されます。施工が簡単で多くの条件に対応可能です。
  • カチオン型は高速道路や工業地帯の道路に適しています。高い接着力と耐久性が求められる場面で使用されます。
  • アニオン型は特殊な下地材を使用する場面に有効で、特定の施工条件下で優れた効果を発揮します。

 

タックコート(PK-4)とは?

タックコート(PK-4)とは、簡単に言うと「接着剤のこと」です。

もう少し細かく説明すると、タックコート(PK-4)とは「舗装工事において、アスファルト混合物を次の層と接着させるために使用される粘着性のある材料のこと」です。

表層と基層の間に施工されます。表層の部分と基層の部分が正しく接合されていないと、車が走ったときに表層部分がズレてしまい、道路が壊れてしまいます。そこで、表層と基層を強く接続するためにタックコートと呼ばれる接着剤を使います。

施工する際はアスファルト舗装の表面に均一に散布され、次の層のアスファルトとしっかりと結合させる役割を果たします。

 

タックコート(PK-4)を散布する目的

タックコートを散布する目的には以下の点が挙げられます。

上層と下層のアスファルトの結合を強化する

タックコートは上層と下層のアスファルトを強固に結合させることで、舗装の一体性を確保します。

舗装の耐久性を向上させる

タックコートの使用により、舗装の耐久性が向上し、長期間にわたって利用可能になります。

層間剥離を防止する

層間剥離を防止することで、舗装のダメージを最小限に抑え、補修頻度を減少させます。

 

タックコートの製品・種類

一般的に使用されるタックコートの製品について紹介します。これらの製品は、用途や現場の条件に応じて使い分けられます。

製品名 特徴 使用目的
PMR-6 速乾性と高粘着性に優れる 一時的な交通開放が必要な場所
HMAタック 高温安定性と低温柔軟性を持つ 寒冷地や高温地域

タックコート(PK-4)の施工方法

タックコートの施工方法について説明します。適切な施工手順を守ることで、効果的な結合が期待できます。

表面の清掃を行い、ホコリや汚れを除去する

まず、舗装面のホコリや汚れをしっかりと除去します。

タックコートを均一に散布する

散布機を使用して、タックコートを均一に表面に散布します。

適切な乾燥時間を確保する

十分な乾燥時間を取ることで、次層との接着性を高めます。

次の層のアスファルトを敷設する

タックコートが乾燥した後、次の層のアスファルトを敷設します。

 

タックコート(PK-4)使用時の注意点

タックコート(PK-4)を使用する際には、以下の点に注意することが重要です。

散布量は規定量を守ること

適切な散布量を確保することで、必要な接着力を維持します。

施工環境の温度に注意し、適切な温度での施工を行う

施工温度が高すぎる、または低すぎると、タックコートの効果が減少します。

 

タックコート(PK-4)の散布量

一般的なタックコートの散布量は以下の通りです。これは使用環境や具体的な製品により多少異なります。

用途 散布量(㎏/m²)
下層舗装 0.2~0.3
上層舗装 0.25~0.35

 

プライムコートとタックコートの違いは?

用途と目的の違い

プライムコートとタックコートの違いは、結論「目的と使用場所」です。

プライムコートは基層と路盤のなじみを良くするためのものであり、タックコートは表層と基層の接合を強くするためのものです。

項目 プライムコート タックコート
目的 基盤との接着性を高めるため 表層との接着性を高めるため
使用場所 基盤面(例: 未舗装道路) 既設舗装面(例: アスファルト舗装)

材料の違い

プライムコートとタックコートの材料については以下の通りです。

プライムコートの材料

  • 乳剤タイプ(例: アスファルト乳剤)
  • 溶剤タイプ(例: カットバックアスファルト)

タックコートの材料

  • アスファルト乳剤
  • 改質アスファルト乳剤

施工方法の違い

コストの違い

プライムコートとタックコートのコストについては、以下の通りです。

一般的に、プライムコートの方が使用材料の量や種類によりコストが高くなる可能性があります。このため、特に基盤の条件が厳しい場合に適用されることが多いです。例えば、砂利道のような開発の少ないエリアではプライムコートの適用が一般的です。

 

プライムコート・タックコート施工前後にやること

施工前の準備

施工計画の立案

  • 現地調査を行い、施工面積や必要な材料量を確認
  • 施工スケジュールを作成し、必要な人員や機材を手配
  • 交通規制の有無を確認し、必要な場合は関係機関との調整
  • 施工に影響を与える気象条件(温度、湿度、降雨)の確認を事前に行う

使用材料の確認

  • プライムコートの種類と仕様を確認
  • 使用するプライムコートの濃度や適用温度を確認
  • 使用する機材や散布方法を再確認
  • 材料の保管方法と期限を確認し、品質保持が必要な場合は適切な手段を準備

施工前の準備作業

施工面の準備

  • 施工面の清掃を行い、ゴミや異物を除去
  • 施工面の凹凸を修正し、均一な状態に整える
  • 施工面の湿潤状態を確認し、必要に応じて乾燥させる
  • コンクリート表面のクラックをチェックし、必要に応じて修繕

安全対策の実施

  • 施工現場の安全管理計画を策定
  • 必要な安全装備を整え、作業員に指示
  • 現場周囲の安全対策として、バリケードや標識を設置
  • 現場周囲の立ち入り禁止区域を設定し、周知徹底を図る

施工中の作業

散布作業

  • プライムコートを均一に散布するための機材確認
  • 実際の散布作業
  • 施工面全体に均一に散布されているか確認
  • 定められた乾燥時間を守る
  • 散布時の温度と湿度を観測し、適切な条件下で作業を行う

品質管理

  • 散布後のプライムコートの乾燥状態を確認
  • 施工面の均一性や密着性をチェック
  • 施工前後の写真を撮影し、記録を残す
  • 他の施工業者やエンジニアとのダブルチェックを行う

施工後にやること

完了確認と仕上げ作業

  • 散布されたプライムコートの状態を最終確認
  • 仕上げ作業として、必要に応じて追加散布や修正
  • 完了確認リストを作成し、チェック項目ごとに確認

施工面の保護

  • 施工面の乾燥を待つ間、必要に応じて保護シートを使用
  • 誤って踏みつけられないように注意喚起
  • 適切な標識を設置し、通行禁止区域を明確に示す

施工後の評価

  • 施工後数日間の経過を観察し、問題がないか確認
  • 施工記録を整理し、報告書を作成
  • 顧客や関係者とのフィードバックセッションを実施し、改善点を議論
施工前 施工中 施工後
施工計画の立案
使用材料の確認
散布作業
品質管理
完了確認と仕上げ作業
施工面の保護
施工後の評価

プライムコート・タックコートを施工する際の注意点

プライムコート・タックコート施工時の安全対策について

PK-3とPK-4施工時の安全対策①適切な防護具の使用

  • 手袋:化学薬品対応の手袋を使用
  • マスク:有害なガスや粉塵を防ぐ高性能マスク
  • ゴーグル:目を保護するための防護ゴーグル

換気の確保

  • 屋内作業時は常に通気を確保
  • 換気扇や扇風機を使用して空気の流れを作る

火気の厳禁

  • 散布材料が可燃性の場合、火気近くでの作業を避ける
  • 指定された安全距離を守る

気象条件

適切な気温

  • 施工時は5℃以上が適切
  • 気温が低いと乾燥時間が長くなるため注意

 湿度の管理

  • 高湿度や降雨が予想される場合は施工を避ける
  • 風速が高いと散布が不均一になる可能性がある

下地の準備

表面の清掃

  • 埃やゴミ、汚れを完全に除去
  • 高圧洗浄機を使用して効果的に清掃
下地の乾燥
  • 施工前に下地が完全に乾燥していることを確認
  • 湿潤状態だと接着力が低下する

散布技術

均一散布
  • 専用のスプレーヤーやローラーを使用して均一に分布させる
  • 散布の速度や距離が均一になるよう心がける
適切な量
  • メーカーの指示に従うことが重要
  • 過剰な散布は材料の無駄や品質低下を引き起こす

施工後の確認

乾燥時間の確保
  • 製品説明書に記載された乾燥時間を守る
  • 急いで次の作業を進めると接着力が低下する可能性がある
品質確認
  • 施工後に表面の品質を確認
  • 均一に散布されていない場合は修正を行う

環境への影響

廃棄物の処理
  • 使用済みの材料や防護具は適切な方法で廃棄
  • 地域の廃棄物処理ガイドラインに従う
環境保護
  • 施工中および施工後に環境保護に配慮
  • 汚染物質を含む排水は適切に処理
  • プライムコートとタックコートの散布量

プライムコートの散布量の目安

プライムコートの散布量は、施工条件や材料の種類によって異なりますが、一般的には以下のような目安があります。

地盤の種類 散布量(ℓ/㎡)
安定化地盤 0.5〜1.0
砕石の基層 0.8〜1.5
砂地 1.0〜2.5

プライムコートの施工事例例

例えば、東京都内で行われた道路拡張工事では、砂地の地盤に対して1.5ℓ/㎡のプライムコートが使用されました。この施工により、地盤の強化と防塵対策が効果的に行われました。

タックコート(PK-4)の散布量の目安

タックコートの散布量も、施工条件や材料の種類、気象条件によって異なりますが、次の基準を目安とします。

地盤または舗装層の種類 散布量(ℓ/㎡)
アスファルト表層 0.2〜0.4
セメント安定層 0.3〜0.5
従来の古い舗装層 0.5〜0.8

タックコートの施工事例

例えば、大阪市内で行われた道路補修工事では、古い舗装層へ0.6ℓ/㎡のタックコートが散布されました。この施工により、古い舗装層との密着性が向上し、耐久性が大幅に改善されました。

散布量の調整方法

具体的な施工現場での散布量を調整するためには、以下の点に注意が必要です。

  • 施工前に試験散布を行い、適正な散布量を確認すること
  • 気温や湿度、風速などの気象条件による影響を考慮すること
  • 使用する材料の密度や粒径分布を確認し、適正な散布量を設定すること

試験散布の重要性

試験散布は、実際の施工条件に基づいて最適な散布量を確認するために欠かせません。例えば、寒冷地では低温によって材料の粘度が高まり、散布量の調整が必要となります。

気象条件の考慮

気象条件も散布量に影響を与えます。高温時には材料の乾燥が速くなるため、散布量を増やす必要が出てくることがあります。また、風が強い場合は散布の均一性が損なわれる可能性があるため、風速を計測し適切な対策を講じることが重要です。

材料特性の確認

使用する材料の密度や粒径分布も散布量を決定する上で重要な要素です。特に高密度の材料や微細な粒径分布を持つ材料は、散布量を慎重に設定する必要があります。

プライムコート・タックコートが使われる現場の種類

道路工事現場

プライムコートおよびタックコートは、道路の新設や改修工事の際に広く使用されます。具体的には、以下のような現場での使用が一般的です。

  • 新設道路の下地処理
  • アスファルト舗装の修繕
  • 高速道路や一般道路の固定層の接着強化

特に、新設道路では床面の接着強化が重要であり、耐久性が高まります。

 

航空機用滑走路・誘導路

航空機が安全に離着陸するためには、滑走路や誘導路の舗装が重要です。ここでもプライムコートおよびタックコートが活用されます。

  • 滑走路の新設および改修
  • 誘導路の接着強化

滑走路の修繕時には、耐久性と密着性を高めるために特別な注意が払われます。

 

駐車場

駐車場の舗装にもプライムコートおよびタックコートが使用されます。具体的な使用場面は以下の通りです。

  • 新設駐車場の下地処理
  • 既存駐車場の舗装補修

駐車場の舗装補修において、表面の接着強化が求められます。

 

橋梁

橋梁の舗装工事でもプライムコートおよびタックコートが使用されます。具体的には、以下のような橋梁工事で利用されます。

用途 説明
橋梁の新設 新しい橋の舗装前の下地処理
橋の修繕 既存橋の舗装補修

橋梁の新設時には、下地処理の品質が重要であり、耐久年数にも影響を及ぼします。

 

産業施設

産業施設の現場でもプライムコートおよびタックコートが使用され、以下のような場所での利用が一般的です。

  • 工場敷地内の舗装工事
  • 物流倉庫の通路や駐車場

これにより、工場内や倉庫内の車両通行をスムーズにし、地面の耐久性が向上します。

 

工場内道路

工場内の専用道路の舗装工事でもプライムコートおよびタックコートが使用されます。具体的な使用場面は以下の通りです。

  • 工場内の新設道路
  • 既存工場内道路の補修

これにより、工場内の輸送効率が向上し、安全性も高まります。

 

記事のまとめ

今回は、プライムコートとタックコートの意味、目的、製品の種類、散布量、施工の注意点について詳細に解説しました。

プライムコートは基礎層との密着性を高めるために使用され、タックコートは次層のアスファルトとの接着性を高める役割があります。それぞれの違いを理解することで、最適な施工手法を選び、効率的かつ高品質な舗装を実現することができます。これにより、施工後のトラブルを防ぎ、道路の長寿命化を図ることが可能です。