- ランキン土圧ってどんな式?
- クーロン土圧と何が違うの?
- 主働土圧と受働土圧の違いは?
- 公式の使い方を例題で見たい
- 実務でいつランキンを使うの?
- 擁壁設計で使う土圧はランキン?
上記の様な悩みを解決します。
土留め・擁壁の設計では「土圧をどう求めるか」が出発点です。代表的な計算式がランキン土圧とクーロン土圧の2系統。テキストでは公式の暗記を求められますが、現場で実務に入ると「どっちを使えばいいの?」「前提条件って何?」という疑問が次から次へと出てきます。
この記事では、ランキン土圧の理論的背景・公式・例題・クーロン土圧との実務的な使い分けまで、施工管理視点で整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ランキン土圧とは?
ランキン土圧とは、結論「英国の土木技師ランキン(Rankine)が考案した、土圧を求めるための古典理論」のことです。
1857年にランキンが提唱した理論で、地盤を半無限の塑性体と仮定し、塑性平衡状態の応力分布から土圧を導いたもの。地盤全体が一様に静水圧的に変化するという仮定が特徴です。
ランキン土圧の前提
- 地盤は半無限・等方均質
- 壁面は鉛直で滑らか(壁面摩擦なし)
- 地表面は水平
- 地盤は塑性平衡状態にある
シンプルな前提条件のおかげで、公式が分かりやすいのが大きな利点。土圧の入門理論として、教科書ではほぼ最初にランキンが登場します。
ランキン土圧には主働土圧と受働土圧の2種類があり、それぞれ意味が違います。
| 種類 | 状態 | イメージ |
|---|---|---|
| 主働土圧(Pa) | 地盤が壁を押す力 | 擁壁の背面側 |
| 受働土圧(Pp) | 壁が地盤を押すときの反作用 | 擁壁の前面側 |
擁壁の設計では「背面の主働土圧が壁を倒そうとする」ことを考え、それに対して「底版の摩擦・自重」と「前面の受働土圧」で抵抗する、という構図になります。
擁壁の話はこちらで深掘りしています。

ランキン土圧の公式
実務でよく使う基本式を整理します。
1. 主働土圧係数 Ka
Ka = (1 - sin φ) / (1 + sin φ)
= tan²(45° - φ/2)
2. 受働土圧係数 Kp
Kp = (1 + sin φ) / (1 - sin φ)
= tan²(45° + φ/2)
ここで φ は内部摩擦角(°)。砂質土では28〜36°程度、粘性土では小さくなります。
3. 単位面積当たりの主働土圧 pa(深さ z 地点)
pa = γ × z × Ka - 2c × √Ka
- γ:土の単位体積重量(kN/m³)
- z:地表面からの深さ(m)
- c:粘着力(kN/m²)
- 第2項:粘着力による減少分
4. 単位面積当たりの受働土圧 pp(深さ z 地点)
pp = γ × z × Kp + 2c × √Kp
5. 全主働土圧合力 Pa(高さ H の壁面)
Pa = (1/2) × γ × H² × Ka - 2c × H × √Ka
合力は底辺×高さ÷2の三角形分布の形で、壁底から H/3 の位置に作用すると考えます。
6. 全受働土圧合力 Pp(高さ H の壁面)
Pp = (1/2) × γ × H² × Kp + 2c × H × √Kp
いずれも H/3 から作用すると考えます(粘着力項は等分布なのでその分の補正あり)。
ランキン土圧とクーロン土圧の違い
土圧の2大理論を比較します。
| 比較項目 | ランキン土圧 | クーロン土圧 |
|---|---|---|
| 提唱者 | ランキン(1857年) | クーロン(1773年) |
| 手法 | 塑性平衡状態の応力解析 | 限界平衡(楔モデル) |
| 壁面摩擦 | 無視(δ=0) | 考慮できる |
| 壁面の傾斜 | 鉛直のみ | 任意角度OK |
| 地表面の傾斜 | 水平のみ | 任意角度OK |
| 粘着力 c の扱い | 反映可(pa式の第2項) | 通常 c=0 を仮定 |
| 計算の難易度 | 簡単 | やや複雑(試行楔法) |
| 得られる土圧の値 | やや大きめ(保守的) | やや小さめ |
どちらを使うか
「どちらが正しいか」ではなく「どの条件で使うか」が実務の論点。
| 設計対象 | 標準的な選択 |
|---|---|
| 重力式擁壁・もたれ式擁壁 | ランキン土圧(簡便、安全側) |
| L型擁壁・逆T型擁壁 | ランキン土圧(背面が垂直) |
| 片持ち擁壁 | ランキン土圧 |
| 土留め支保工(連続壁) | ランキン or クーロン |
| アンカー式擁壁 | クーロン土圧(壁面摩擦が大きい) |
| 盛土の傾斜地表面 | クーロン土圧(地表が水平でない) |
擁壁設計の指針(道路土工、宅地造成等規制法)では条件によって式を使い分けることが規定されており、現場で判断するというより指針に従うケースが多いです。
ランキン土圧の例題
代表的な計算例で公式の使い方を確認します。
例題1: 砂質土地盤に立つ重力式擁壁
条件
- 擁壁高さ H = 5m
- 砂質土:γ = 18 kN/m³、φ = 30°、c = 0
- 地表は水平、壁面は鉛直、壁面摩擦なし
- 地下水なし
主働土圧係数 Ka
Ka = tan²(45° - 30°/2) = tan²(30°) = 0.333
底面(z = 5m)の主働土圧 pa
pa = 18 × 5 × 0.333 - 0
= 30 kN/m²
全主働土圧合力 Pa
Pa = (1/2) × 18 × 5² × 0.333
= 75 kN/m
作用点:壁底から H/3 = 1.67m の位置
これが擁壁の安定計算の出発点になります。後はこれと擁壁自重・摩擦力・受働土圧を組み合わせて、滑動・転倒・支持力の3つの安定をチェックします。
例題2: 粘性土地盤での主働土圧
条件:H = 4m、粘性土 γ = 17 kN/m³、φ = 5°、c = 20 kN/m²
Ka
Ka = tan²(45° - 5°/2) ≈ 0.84
底面の主働土圧
pa = 17 × 4 × 0.84 - 2 × 20 × √0.84
≈ 57 - 36.6
≈ 20.5 kN/m²
粘着力があるため、第2項で土圧が大幅に減るのがポイント。粘性土地盤では「c が効く」という言い方をしたりします。
例題3: 受働土圧の計算
擁壁の前面側にも土がある場合、その受働土圧を抵抗力として加算できます。
条件:受働側の土被り 1m、γ = 18 kN/m³、φ = 30°、c = 0
Kp
Kp = tan²(45° + 30°/2) = tan²(60°) = 3.0
受働土圧合力
Pp = (1/2) × 18 × 1² × 3.0 = 27 kN/m
ただし受働土圧は変位がないと発揮されないので、設計上は安全側で1/3〜1/2程度を割り引く運用が一般的。
実務でランキン土圧を使う場面
具体的な実務シチュエーションを整理します。
1. 擁壁の安定計算
道路擁壁・宅地擁壁の設計でランキン土圧で主働土圧合力を求めて滑動・転倒チェック。これが最もポピュラーな用途。
2. 土留め支保工の側圧計算
オープンカット工法でシートパイル・親杭横矢板などの土留めにかかる側圧を計算。深い地下構造ではランキンの主働土圧分布で切梁張力を推定します。
土留めの話はこちらで。

3. 地下構造物の側方土圧
地下駐車場・地下タンクの側方土圧の検討で利用。地下水位以下では土圧+水圧で考えます。
4. 盛土・切土の安定検討
切土法面・盛土法面の安定計算。斜面の勾配が緩く均質な地盤ならランキンが使えます。複雑な形状になったらスウェーデン法・Bishop法の出番です。
5. 護岸・桟橋の側圧
港湾構造物の岸壁・桟橋の背後土圧をランキンで概算。実際の設計では港湾基準書の規定に従いますが、考え方の出発点はランキンです。
6. 矢板背面の根入れ計算
シートパイルの根入れ深さは主働土圧と受働土圧のバランスで決まります。Free Earth法・Fixed Earth法のいずれでも、土圧計算はランキン or クーロン。
ランキン土圧における注意点
1. 前提条件を満たしているか
「壁面が鉛直」「地表が水平」「壁面摩擦なし」「地盤が均質」の4条件を確認。1つでも崩れている現場ではクーロン土圧またはより精緻な解析が必要です。
2. 地下水位の扱い
地下水位以下は有効応力で計算(γ’ = γ – γw)し、別途水圧を加算します。「水を入れ忘れる」と土圧を過小評価しがちなので要注意。
3. 粘性土での慎重姿勢
ランキン式の粘着力項(c)は実務では割り引いて使うのが定石。c は経時的に減衰したり乱れに弱かったりするため、c=0で再計算した値も併記する設計者も多いです。
4. 段階施工と土圧の変化
掘削深さが増えるごとに土圧分布が変わります。各掘削ステップで土圧計算をやり直すのが基本で、最終形だけで判断しない。
5. 安全率の確保
擁壁の安定計算では、滑動安全率1.5以上、転倒安全率2.0以上を確保するのが標準。土圧が小さく出すぎないよう保守的な土質定数を使うのが鉄則です。
6. 動的土圧(地震時)への対応
地震時は土圧が増えます。物部・岡部式で動的土圧を別途計算するのが標準。レベル2地震動を考慮する設計では必須です。
ランキン土圧に関する情報まとめ
- ランキン土圧とは:地盤を半無限塑性体と仮定して導いた古典土圧理論
- 公式:Ka = tan²(45°-φ/2)、Kp = tan²(45°+φ/2)
- 主働 vs 受働:地盤が壁を押す力/壁が地盤を押すときの反作用
- クーロンとの違い:壁面摩擦・壁面傾斜・地表傾斜の扱いが違う
- 使い分け:単純な垂直壁=ランキン、傾斜・摩擦=クーロン
- 実務での用途:擁壁安定/土留め側圧/地下構造物/斜面安定/護岸/矢板根入れ
- 注意点:前提条件確認/地下水/粘着力/段階施工/安全率/地震時
以上がランキン土圧に関する情報のまとめです。
ランキン土圧は「前提条件のシンプルさ」が最大の長所で、現場で電卓を叩くレベルでも使える式。ただし、前提が崩れた瞬間に過大評価/過小評価のリスクが出る、両刃の剣でもあります。条件に合えばランキン、合わなければクーロンか数値解析、という棲み分けを身体で覚えると土圧計算が一気に楽になります。
合わせて読みたい関連記事を貼っておきます。




